
電通「2025年 日本の広告費」で、ダイレクト・メールは2025年に2,708億円、前年比94.6%、構成比3.4%でした。同じプロモーションメディアの中で、折込2,354億円(96.4%)、フリーペーパー1,056億円(80.9%)も減っています。紙で配る媒体が、方向をそろえて縮んでいます。
一方で屋外3,042億円(105.3%)と交通1,736億円(108.6%)は伸び、インターネットは4兆459億円(110.8%)で構成比50.2%と半数を超えました。総広告費8兆623億円は前年比105.1%で4年連続の過去最高です。市場全体が伸びる中でDMは減っている、という位置づけになります。
この数字は市場全体の出稿額です。1通あたりの費用ではありません。 「DMは1通いくら」の根拠にこの数値を使うことはできず、判断に使えるのは媒体が伸びているか縮んでいるかまでです。
縮んでいることを踏まえたうえで、それでもDMを選ぶ理由が要ります。買取業でその理由になるのは、次節で扱う送り先リストの出どころです。
古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき・引き渡したときに、その都度帳簿等へ記載することを義務づけています。記載事項は取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分の5つです。
第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。記載義務違反や虚偽記載は第33条第2号により6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。売った客の住所と氏名が、法律上の義務として3年分手元にある業種は多くありません。
確認と記帳が免除されるのは、対価の総額が1万円未満の取引です(施行規則第16条第1項)。ただし1万円未満でも免除されない古物が7品目あり、自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍が該当します(同条第2項)。
ゲームソフト・CD/DVD・書籍を扱う店は、少額買取でも毎回確認と記帳が要ります。 単価が低く点数が多い商材ほど記録が積み上がるため、リストの厚みと運用負荷は同じ方向に増えます。
第16条の帳簿は、盗品の流通を防ぐための記録として置かれています。この記録をそのまま販促の宛先に使ってよいかどうかは、このページで参照している一次情報の範囲では確認できません。 断定を避けます。
判断の分かれ目は、買取の受付時に取得した個人情報の利用目的をどう定めていたかです。利用目的の特定と通知は個人情報保護法の領域で、古物営業法とは別の枠組みになります。帳簿の記載義務があることは、販促利用の根拠にはなりません。
実務としては、法定帳簿とは別に、DM送付の同意を取った顧客名簿を分けて持つ形が整理しやすい方法です。受付票に送付可否のチェック欄を置き、可とした相手だけを名簿に入れます。帳簿から名簿へ機械的に流し込む運用にはしないでください。
送付を止める方法も同時に用意します。DMに停止の申し出先を記載し、申し出があった相手を名簿から外す手順を決めておきます。ここを決めずに始めると、止め方が属人的になります。
| 論点 | 根拠 | 確認すること | 外した場合 |
|---|---|---|---|
| 送付先リストの出どころ | 古物営業法 第16条・第18条第1項 | 法定帳簿とは別に、送付の同意を得た名簿を分けて持っているか | 利用目的の定め方によっては転用できない。断定できないため取得時の設計から確認する |
| DMを見た客の自宅へ行く | 特定商取引法(訪問購入) | 申込みを受けてから訪問しているか。DMに書いた品目と査定品目が一致しているか | 不招請勧誘の禁止に触れうる。2026年8月4日に3社が業務停止命令9か月 |
| 次回使えるアップ券 | 景品表示法(総付景品) | 今回の買取価格1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円が上限。券面に上限額を明記 | 景品規制違反。その場で上乗せする形なら原則として景品類に当たらない |
| 買取価格の表示 | 景品表示法(令和6年4月18日 運用基準改定) | 買取参考価格・買取実績価格・買取価格アップ・買取価格保証・何でも買取り・どこよりも高く買取りの裏づけ | 優良誤認等。買い取った実績のない金額を買取実績価格と表示することは不可 |
購入業者が店舗等以外の場所、つまり消費者の自宅等で契約を締結等して行う物品の購入は、特定商取引法の訪問購入に当たります。2013年施行の改正で規制対象に加わりました。DMを送る行為そのものは訪問購入ではありませんが、DMをきっかけに自宅へ行くところから規制がかかります。
訪問購入には不招請勧誘の禁止があります。相手方の自宅等で、売買契約の締結について勧誘をし、または勧誘を受ける意思の有無を確認してはならない、という定めです。ほかに、勧誘に先立って氏名・勧誘目的・購入しようとする物品の種類を告げる義務、再勧誘の禁止、書面交付義務、引渡しの拒絶に関する告知、第三者への引渡し通知があります。
クーリング・オフは法定書面を受け取った日から数えて8日以内です。適用除外物品は、二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券です。
DMを見た客が自分から申し込んだ場合と、こちらから訪問することは別の話です。 申込みを受けて訪問する形なら要請があったことになりますが、要請された物品の種類を超えて他の品目の買取を勧誘すると、要請の範囲の外に出ます。DMに書いた買取品目と、訪問時に査定する品目をそろえてください。
国民生活センターのPIO-NETによると、訪問購入の相談件数は2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件と2023年度をピークに減っています。 同じ基準で比較できる点検商法は2023年度12,550件から2025年度19,696件へ増えており、方向が逆です。「押し買いが増えている」という説明は、現在の数字では支持されません。
件数は減っていますが、行政処分は続いています。2026年8月4日、九州経済産業局は宝石・貴金属・時計等の中古品を扱う3社に対し、業務停止命令9か月と指示、代表者への業務禁止命令9か月を出しました。2025年11月26日には消費者庁が1社に業務停止命令9か月を出しています。
2026年8月の3社に共通する違反行為は、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反、勧誘の要請をしていない者への勧誘、契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘、勧誘を受ける意思を確認しないで行う勧誘でした。巧妙な手口ではなく、基本的な手続き義務の不履行で止められています。
相談内容として繰り返し登場するのは「不用品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」という型です。古本・洋服・食器などを名目に訪問し、貴金属を買い取る手口が中心にあります。DMの訴求品目を集客のために広げると、この型に外形が近づきます。
消費者庁は令和6年4月18日に運用基準を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。表示規制だけでなく、景品規制も同時にかかります。
次回の買取時に使える買取価格アップ券、キャッシュバック、自社ポイントの付与は景品類に該当し、総付景品の上限の対象になります。上限は、取引価額つまり買取価格が1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円です。
「20%アップ券」を配る場合、今回の買取価格の20%が上限です。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、次回の買取価格が2万円でも4,000円を上乗せすることはできません。アップの上限が2,000円であることを券面に明記する必要が生じます。 再来店を狙うDMの定番施策が、そのまま景品規制に触れる形です。
ただし、その場で買取価格をアップする場合は、アップ分を含めた買取価格全体が取引の対価になるため、アップ分は原則として景品類に該当しません。次回使える券にするか、その場で上乗せするかで扱いが変わります。
令和7年4月30日の「買取サービスに関する実態調査報告書」は、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取りの5つです。DMは価格を並べやすい媒体で、1通のうちに複数の類型へ同時に触れることがあります。
買取参考価格・買取実績価格は、実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る額を表示し、著しく低い価格で買い取る場合が問題になります。買い取った実績のない金額を「買取実績価格」と表示することも不可とされています。
買取価格保証は、保証価格を下回る金額で買い取る場合が問題です。報告書は、1万円以上と強調しながら汚れを理由に5,000円で買い取る例を挙げています。何でも買取りは、持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らない場合に優良誤認とされます。
強調表示を行うなら、例外がある場合の打消し表示を分かりやすく適切に行うことになります。DMは面積に余裕がある媒体なので、打消し表示を小さく端へ寄せる設計にしないでください。
環境省の2024年調査では、不要品のうち保管されたままの割合は携帯電話・スマートフォン82.1%、ソフト・メディア類77.6%、パソコン・周辺機器77.4%、書籍56.3%、ブランド品53.4%、ブランド品を除く衣類51.1%です。スマホは8割超が家に眠っています。 過去に取引のある相手へ送るDMは、この保管在庫を思い出させる用途に向きます。
排出先を選んだ理由は、金銭的な理由56.0%、煩雑な手続きや準備をしなくてすむから39.4%、自分で運搬する必要がなく家まで取りに来てくれるから16.1%でした。最重視の設問では金銭39.7%、煩雑さの回避19.2%、運搬不要6.2%です。金銭は最重視でも4割弱にとどまります。
買取価格を上げれば仕入原価がそのまま上がります。これに対し、受付点数の下限をなくす、事前査定を用意する、持ち込みの手順を書く、といった手間の削減は原価を動かしません。DMの紙面配分をここから決めます。
買取市場のチャネル構成比は店頭買取78.2%、出張買取10.0%、宅配買取9.5%です。宅配が効くのは玩具・模型23.2%、ソフト・メディア類18.7%、書籍13.6%と、小さくて壊れにくく単価が読める商材に集中しています。送付先の商材で、来店を促すか宅配キットを案内するかを分けてください。
DMの費用相場について、このページでは金額を示しません。媒体別の費用相場は一次情報として取得できていません。 電通の2,708億円は市場全体の出稿額であって、1通あたりの費用ではありません。
比較するなら、送付通数、印刷仕様、封入か圧着かハガキか、郵送区分、宛名データの作成方法、差出の代行費の内訳をそろえた見積もりを複数取ります。通数が違う見積もりを並べても比較になりません。
効果の指標は反応数ではなく、送付から一定期間内の来店数、買取が成立した点数、その原価、売却までの日数に置きます。中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績、法人企業・小売業)では従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日、粗利率31.7%に対して営業利益率0.2%でした。回転で負ける構造がこの規模帯の平均であり、反応数だけを追うと原価を上げて反応を買った回が最も良く見えます。
費用の一部は小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の②広報費に当たります。第17回のガイドブック(2025年4月25日 第1版)では補助率2/3、補助上限50万円。対象は商業・サービス業なら常時使用する従業員5人以下が目安で、公募回次ごとに条件が変わります。最新の公募要領で確認してください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 法定帳簿(古物営業法第16条)とは別に、DM送付の同意を得た名簿を分けて管理しているか |
| 2 | 買取受付票に、DM送付の可否を選べる欄を置いているか |
| 3 | DMに送付停止の申し出先を記載し、申し出を受けたときに名簿から外す手順が決まっているか |
| 4 | DMに書いた買取品目と、訪問時に査定する品目が一致する運用になっているか |
| 5 | 訪問前に、氏名・勧誘目的・購入しようとする物品の種類を告げる手順が決まっているか |
| 6 | 訪問購入の書面を交付し、クーリング・オフ8日以内であることを伝えているか |
| 7 | クーリング・オフ期間内の引渡しについて、拒絶できることを告知する手順があるか |
| 8 | 次回使えるアップ券を付ける場合、今回の買取価格に対する上限額を券面に明記しているか |
| 9 | 「買取実績価格」を載せる場合、その金額で実際に買い取った実績が手元にあるか |
| 10 | 「1万円以上保証」等を載せる場合、状態による減額の条件を打消し表示として同じ面に置いているか |
| 11 | 見積もりを、送付通数・印刷仕様・形態・郵送区分・宛名データ作成・差出代行費の内訳でそろえたか |
| 12 | 送付後の来店数・成立点数・原価・売却までの日数を記録する準備ができているか |
古物営業法第16条の帳簿から宛名を機械的に抜き出してDMを送る状態です。第16条の記載義務は盗品流通の防止を目的とした記録であり、記載義務があることは販促利用の根拠になりません。転用の可否は買取受付時に定めた利用目的によって決まるため、このページでは可否を断定しません。法定帳簿とは別に、送付の同意を得た名簿を持つ形にしてください。
DMを送った相手へ「近くまで行くので伺います」と電話をかけ、そのまま訪問する状態です。訪問購入には不招請勧誘の禁止があり、相手方の自宅等で売買契約の締結について勧誘し、または勧誘を受ける意思の有無を確認することは禁じられています。2026年8月4日には、勧誘の要請をしていない者への勧誘などを理由に3社が業務停止命令9か月を受けています。申込みを受けてから訪問する順序を崩さないでください。
再来店を促すために「次回20%アップ券」を同封する状態です。次回の買取時に使えるアップ券は景品類に該当し、総付景品の上限がかかります。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、次回の買取価格が2万円でも4,000円を上乗せすることはできず、券面に上限額を明記することになります。その場で買取価格を上乗せする形なら、アップ分は原則として景品類に該当しません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 買取の帳簿に載っている住所へ、DMを送ってよいですか | このページでは可否を断定しません。古物営業法第16条の帳簿は盗品流通の防止を目的とした記録で、記載義務があることは販促利用の根拠になりません。転用してよいかどうかは、買取受付時に取得した個人情報の利用目的をどう定めたかで決まり、これは個人情報保護法の領域です。実務としては、法定帳簿とは別に送付の同意を得た名簿を持ち、受付票に送付可否の欄を置く形が整理しやすい方法です。 |
| DMを送った相手の家に、こちらから買取に行ってもよいですか | 相手から申込みを受けてから訪問してください。消費者の自宅等で契約を締結等して行う物品の購入は特定商取引法の訪問購入に当たり、不招請勧誘が禁止されています。相手方の自宅等で売買契約の締結について勧誘し、または勧誘を受ける意思の有無を確認することはできません。2026年8月4日には、勧誘の要請をしていない者への勧誘や書面の交付義務違反などを理由に、九州経済産業局が3社へ業務停止命令9か月を出しています。 |
| 和服の買取をDMで案内し、訪問先で貴金属も査定するのは問題ですか | 要請された物品の種類を超える点に注意が要ります。訪問購入では、勧誘に先立って購入しようとする物品の種類を告げる義務があり、不招請勧誘も禁止されています。国民生活センターに寄せられる相談で繰り返し登場するのが「不用品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」という型で、古本・洋服・食器などを名目に訪問して貴金属を買い取る手口が中心です。DMに書いた品目と訪問時に査定する品目をそろえてください。 |
| 「次回20%アップ券」をDMに付けたいのですが、上限はありますか | あります。次回の買取時に使えるアップ券は景品類に該当し、総付景品の上限がかかります。取引価額つまり今回の買取価格が1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円が上限です。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、次回の買取価格が2万円でも4,000円を上乗せすることはできません。券面にアップの上限額を明記することになります。その場で買取価格をアップする場合は、アップ分を含めた全体が取引の対価になるため、原則として景品類に該当しません。 |
| DMは1通いくらぐらいですか | このページでは金額を示しません。媒体別の費用相場は一次情報として取得できておらず、根拠のある数値を出せないためです。電通「2025年 日本の広告費」のダイレクト・メール2,708億円は市場全体の出稿額であって、1通あたりの費用ではありません。比較するなら、送付通数、印刷仕様、封入か圧着かハガキか、郵送区分、宛名データの作成方法、差出代行費の内訳をそろえた見積もりを複数取ってください。 |
| DMはもう時代遅れではないですか | 市場全体では縮んでいます。2025年のダイレクト・メールは2,708億円で前年比94.6%、折込96.4%、フリーペーパー80.9%と紙で配る媒体がそろって減る一方、インターネットは4兆459億円で110.8%、構成比50.2%です。ただし買取業には、古物営業法第16条により取引相手の住所・氏名が3年分手元に残るという条件があります。新規獲得の媒体としてではなく、既存の取引相手へ届ける手段として評価してください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を6件挙げます。






扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。DMをジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


