
電通「2025年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で総広告費8兆623億円の50.2%を占めます。うち媒体費は3兆3,093億円(111.8%)、ビデオ広告は1兆275億円(121.8%)で初めて1兆円を超え、ソーシャル広告は1兆3,067億円(118.7%)です。制作費は4,922億円(104.0%)でした。
この数字から読み取れるのは、動画に出稿する企業が増えていることまでです。1店舗あたりの費用も、買取業での費用対効果も、ここからは出ません。買取業の動画広告について、再生単価、獲得単価、制作費の相場をまとめた一次情報は官公庁にも公的調査にも存在しません。ここでは相場を示しません。
同じ資料で、紙で配る媒体は縮小しています。折込2,354億円(96.4%)、ダイレクト・メール2,708億円(94.6%)、フリーペーパー1,056億円(80.9%)です。屋外3,042億円(105.3%)、交通1,736億円(108.6%)は伸びています。媒体を入れ替えるかどうかの議論で、市場全体の方向としてはこの通りだ、という材料までは使えます。
出すかどうかの判断は、伸びている媒体だからではなく、動画でしか伝わらない情報が自店にあるかで決めます。次節でその中身を分けます。
環境省の令和6年度リユース市場規模調査は、排出先を選んだ理由を聞いています。最も重視した理由を1つだけ選ばせると、金銭的な理由39.7%、煩雑な手続きや準備をしなくてすむから19.2%、まだ使用する人がいれば有効に利用して欲しかったから14.6%、自分で運搬する必要がなく家まで取りに来てくれるから6.2%です。
複数回答では、金銭的な理由56.0%に続いて、手続きの煩雑さの排除が39.4%、有効利用が33.6%、運搬不要が16.1%です。価格以外の理由が判断の6割を占めています。この6割は、文字より映像のほうが短く伝わる内容です。
具体的には、査定に何分かかるか、持ち込むときに何を用意するか、身分証の確認がどこで行われるか、金額の提示から現金の受け渡しまでの流れ、大型品の搬出で何人が来て家のどこを養生するか、といった手順です。これらは静止画や文章では手数の多さがそのまま伝わり、動画では実際の所要時間として伝わります。
逆に、価格の高さを動画で主張しても根拠は付きません。映像で提示した金額は、そのまま景品表示法上の表示になります。買取参考価格や買取実績価格を映すなら、実際に買い取った取引の記録と対応づけられる金額だけを使います。
消費者庁は令和6年4月18日に景品類等の指定の告示の運用基準を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。物品を査定して金銭と引き換える行為が「自己の供給する役務の取引」に当たるという整理です。令和7年4月30日には買取業者50社の広告を調べた実態調査報告書が公表され、問題になりやすい表示が5類型に整理されています。
5類型は、買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取り、です。動画広告では、テロップだけでなくナレーションや出演者の発言もこの対象です。「どこよりも高く買い取ります」と話す音声は、画面に書いた文字と同じ扱いになります。競合他社の買取価格を何ら調査していない状態でのNo.1表示は、報告書が名指しで問題としています。
強調表示に例外がある場合、打消し表示を分かりやすく適切に行うことが求められます。動画は打消し表示が最も機能しにくい形式です。画面下部に数秒だけ出る小さい文字は、読み終える前に切り替わります。音声で読み上げる方法も、早口で流せば伝わりません。書ける条件だけを話す、あるいは強調表示を使わない構成にするほうが、実務上は成立します。
「何でも買取」を映像で言い、実際には買い取らない品目や状態がある場合は優良誤認にあたります。買取不可の品目を先に画面で示してから、買い取る範囲を話す構成にすれば、この類型を避けられます。
| 媒体 | 2025年 | 前年比 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 総広告費 | 8兆623億円 | 105.1% | 100% |
| インターネット広告費 | 4兆459億円 | 110.8% | 50.2% |
| うち媒体費 | 3兆3,093億円 | 111.8% | — |
| うちビデオ広告 | 1兆275億円 | 121.8% | — |
| うちソーシャル広告 | 1兆3,067億円 | 118.7% | — |
| うち制作費 | 4,922億円 | 104.0% | — |
| テレビメディア | 17,556億円 | 99.7% | 21.8% |
| 屋外 | 3,042億円 | 105.3% | 3.8% |
| 交通 | 1,736億円 | 108.6% | 2.2% |
| 折込 | 2,354億円 | 96.4% | 2.9% |
| ダイレクト・メール | 2,708億円 | 94.6% | 3.4% |
| フリーペーパー | 1,056億円 | 80.9% | 1.3% |
買取店の動画で最も説得力が出るのは実際の査定風景ですが、この場面には法律上の記録が同時に存在します。古物営業法第15条第1項は、買受け時に相手方の真偽を確認する措置として、住所・氏名・職業・年齢の確認や本人署名のある文書の交付を受けることを定めています。
第16条は、古物を受け取ったときにその都度、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分を帳簿等に記載する義務を定めています。帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます(第18条第1項)。査定カウンターを撮れば、身分証、記入中の書面、画面上の入力欄がフレームに入ります。
撮影する場合は、映る範囲を先に決めます。手元だけを寄りで撮る、書類は差し替えた見本を使う、客が映る場合は撮影と公開の同意を個別に取る、といった運用です。実際の取引をそのまま素材にするなら、公開前に一時停止して1フレームずつ確認する工程を入れます。
扱う商材によっては、持ち込まれる物の性質そのものが論点になります。令和7年中の古物商による不正品申告は129件で、区分別では道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件でした。上位3区分で90件、全体の約7割です。買い取った個別の品をそのまま映すなら、来歴の確認が済んだ物に限ります。
古物営業法第14条第1項は、古物を受け取れる場所を営業所または取引相手の住所・居所に限っています。出張買取はこの規定に基づく形式で、消費者の自宅で契約するため特定商取引法の訪問購入に当たります。
訪問購入では、勧誘に先立って氏名、勧誘目的、購入しようとする物品の種類を告げること、相手方の自宅等で勧誘の要請がない者に勧誘しないこと、契約締結の意思がないと示した相手に再勧誘しないこと、申込時または締結時に必要事項を記載した書面を交付すること、クーリング・オフ期間内の引渡しの際に拒絶できることを告知すること、第三者へ引き渡した場合に通知することが定められています。クーリング・オフは法定書面を受け取った日から8日以内です。
これらはすべて訪問の現場で行う行為で、事前に見た動画では代替されません。動画で手順を説明しておくことは、客が何が起きるかを知っている状態を作る意味では機能しますが、明示と書面交付の義務そのものは残ります。
2026年8月4日には、宝石・貴金属・時計等の中古品を扱う3社に業務停止命令9か月と代表者への業務禁止命令が出ています。公表された違反行為は、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反、勧誘の要請をしていない者への勧誘などでした。巧妙な手口ではなく、基本的な手続きの不履行で止められています。動画の訴求内容と現場の運用が食い違っていれば、集客が増えるほど不履行の件数が増えます。
動画広告は、配信を始める前に制作費が出ます。買取業では、その後に集客が効いた分だけ買取代金の支払いが増えます。客にはその場で現金を渡し、回収は売れた後です。制作費、配信費、買取代金の3つが重なる月が出ます。
中小企業実態基本調査(令和6年確報・法人企業・小売業)では、従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日、6〜20人は32.6日です。買取業に限った統計ではありませんが、同規模の小売業と比べる物差しになります。小規模帯では、仕入れた物が現金に戻るまで約2ヶ月かかります。
粗利率は5人以下が31.7%、6〜20人が31.2%とほぼ同じなのに、営業利益率は0.2%対1.5%です。粗利を取れていないのではなく、在庫が現金に変わる速度で差がついています。広告の制作費も配信費も、この営業利益から出ます。
動画は一度作れば繰り返し使える一方、内容が固定されます。買取価格やキャンペーンの条件を映像に焼き込むと、条件が変わるたびに作り直しになります。価格や期限は映像の外(テキスト部分や着地ページ)に置き、映像には手順や体制のように変わりにくい情報を入れておくと、作り直しの頻度を下げられます。
測る指標は、再生回数、再生完了率、クリック率で止めません。査定申込、来店または集荷、買取成立、その1件から出た粗利まで並べます。動画は再生の指標が豊富に取れるぶん、途中の数字で判断を終えやすい形式です。
商材によって、動画で説明する価値の大きさが違います。宅配買取で排出される割合が高いのは、玩具・模型23.2%、ソフト・メディア類18.7%、書籍13.6%です。梱包の仕方、集荷の呼び方、査定額に納得できないときの返送といった手順は、映像で見せるとやり取りが減ります。
費用を払って手放している品目も、動画の対象になります。保管を除いた排出時に費用負担が発生した割合は、テレビ・洗濯機・冷蔵庫・エアコンで44.0%、家具類で26.4%です。搬出の人数、養生、階段の扱いを映せば、費用と手間の不安に直接当たります。
逆に、発生したらすぐ売られている品目では、説明の余地が小さくなります。ゲーム機器は保管されている割合が16.1%で、保管を除いた排出先の72.3%がリユースショップでの売却です。手順を説明されなくても店に持ち込まれている品目に、制作費をかけた動画を当てても伸びしろは限られます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 動画で伝える内容が、文章より短く伝わる情報(査定の所要時間・搬出の様子・手順)になっているか |
| 2 | 映像やナレーションで金額を提示する場合、実際に買い取った取引の記録と対応づけられるか |
| 3 | 「どこよりも高く」「何でも買取」を音声で言っていないか。言うなら根拠の記録があるか |
| 4 | 打消し表示を読める時間・大きさで置けない構成なら、強調表示そのものを外しているか |
| 5 | 査定風景を撮る場合、身分証・書面・入力画面の映り込みを1フレームずつ確認しているか |
| 6 | 出演する客から、撮影と公開の同意を個別に取っているか |
| 7 | 買い取った個別の品を映す場合、来歴の確認が済んだ物に限っているか |
| 8 | 出張買取を訴求する場合、氏名等の明示・書面交付・8日間のクーリング・オフの告知を現場の手順として固定しているか |
| 9 | 価格やキャンペーンの条件を映像に焼き込まず、外側に置いているか |
| 10 | 再生回数で止めず、買取成立とその粗利まで測っているか |
ビデオ広告費が1兆275億円(前年比121.8%)で初の1兆円超だという数字を、自店が出稿すべき根拠として使ってしまうケースがあります。これは市場全体の出稿額で、1店舗あたりの費用でも成果でもありません。買取業の動画広告について、再生単価や獲得単価の一次情報は存在しません。判断は自社の実測値で行います。
査定風景をそのまま撮って公開し、客の身分証や記入中の書面が映り込む事故が起きます。古物営業法第15条第1項の確認措置と第16条の記帳事項には、相手方の住所・氏名・職業・年齢が含まれます。手元だけを寄りで撮る、書類は見本に差し替える、公開前に1フレームずつ確認する、という工程を先に決めておきます。
映像に買取価格やキャンペーンの期限を焼き込み、条件が変わっても差し替えずに配信し続ける状態になります。令和7年4月30日の実態調査報告書は、キャンペーンの常態化を問題として挙げ、1月末までと表示しながら2月以降も同内容を継続する例を示しています。価格と期限は映像の外に置きます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 動画広告の制作費はいくらが相場ですか | 買取業の動画制作費や配信単価をまとめた一次情報は存在しないため、相場は示せません。市場全体の数字であれば、2025年のインターネット広告費のうち制作費は4,922億円(前年比104.0%)、ビデオ広告は1兆275億円(121.8%)です。これは全業種の出稿・制作の総額で、1店舗あたりの金額ではありません。予算は、月にいくらまで買取代金を出せるかを固定したうえで、その残りから置きます。 |
| 動画では何を見せるのが効果的ですか | 価格ではなく手順です。排出先を選ぶときに最も重視された理由は、金銭が39.7%、煩雑な手続きの排除が19.2%、有効利用が14.6%、運搬不要が6.2%で、価格以外が6割を占めます。査定の所要時間、用意する物、身分証の確認、金額提示から現金受け渡しまでの流れ、大型品の搬出体制は、映像で短く伝わる内容です。 |
| ナレーションで「高価買取」と言うのは表示にあたりますか | あたります。令和6年4月18日の運用基準改定で買取サービスも景品表示法の対象になり得ることが明確化され、媒体や表現形式による区別はありません。音声も画面の文字と同じ扱いです。令和7年4月30日の実態調査報告書は、買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取り、の5類型を問題になりやすい表示として整理しています。 |
| 実際の査定シーンを撮ってもよいですか | 撮る範囲を先に決めてください。古物営業法第15条第1項の確認措置と第16条の記帳では、相手方の住所・氏名・職業・年齢を扱います。身分証、記入中の書面、入力画面がフレームに入るため、手元だけを寄りで撮る、書類を見本に差し替える、客が映る場合は撮影と公開の同意を個別に取る、といった運用にします。公開前に1フレームずつ確認する工程を入れます。 |
| 動画広告で出張買取を訴求すれば、訪問時の説明は省けますか | 省けません。訪問購入では、勧誘に先立つ氏名・勧誘目的・購入しようとする物品の種類の明示、書面の交付、引渡しの拒絶に関する告知が現場で必要な行為として定められており、事前に動画を見せたことでは代替されません。2026年8月4日に業務停止命令9か月を受けた3社の違反行為も、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、引渡しの拒絶に関する告知義務違反でした。 |
| どの商材で動画広告を試すべきですか | 手順の説明で不安が減る商材からです。宅配買取での排出割合が高いのは玩具・模型23.2%、ソフト・メディア類18.7%、書籍13.6%で、梱包や集荷の手順を映せます。費用を払って手放されている大型家電44.0%、家具類26.4%は、搬出の体制を見せると直接当たります。逆にゲーム機器は保管率16.1%で、保管を除いた排出先の72.3%がすでにリユースショップでの売却です。説明の余地が小さい商材です。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を4件挙げます。




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