
これまで、物品を買い取る取引は景品表示法の対象外と理解されていました。同法が規制するのは「自己の供給する商品または役務の取引」であり、買取は供給ではなく調達だからです。
消費者庁は令和6年4月18日、「景品類等の指定の告示の運用基準について」を改定し、この理解を変更しました。運用基準3⑷で、自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、その物品等を査定するなどして金銭と引き換える役務を提供していると認められる場合には「自己の供給する役務の取引」に当たると規定しています。
つまり、買取価格に関する広告表示が優良誤認・有利誤認の対象になります。
改定から約1年後、消費者庁は買取サービスの広告等について実態調査を行いました。買取業者50社の広告をサンプリングし、消費者アンケートと、買取業者14社・関係団体2団体へのヒアリングを実施しています。その結果が令和7年4月30日に「買取サービスに関する実態調査報告書」として公表されました。
報告書は、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。買取業界の広告表現は、ほぼどれかに該当します。
| 表示 | 消費者がどう受け取るか | 問題になる場合 |
|---|---|---|
| 買取参考価格・買取実績価格 | 表示価格またはそれに近い金額で買い取ってもらえる | 実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る額を表示し、著しく低い価格で買い取る場合。買い取った実績のない金額を「実績価格」と表示するのも不可 |
| 買取価格アップ | 通常の買取価格からアップされる | 実際にはアップしない場合。キャンペーンの常態化も問題になる |
| 買取価格保証 | 必ず保証価格以上で買い取ってもらえる | 保証価格を下回る金額で買い取る場合 |
| 何でも買取り | 特段の条件なく、どのような状態でも買い取ってもらえる | 持ち込んだ物品の一部または全部を買い取らない場合(優良誤認) |
| どこよりも高く買取り | 他社と比較して最も高い | 事実と異なる場合。競合の買取価格を調査していないのに「地域No.1」と表示する場合を含む |
報告書は類型ごとに具体例を示しています。抽象的な基準ではなく、実際の広告表現に照らして判断できます。
買取参考価格については、ある商材について過去に買い取ったことのある価格の中でも最も高い買取価格(たとえば未使用品の場合の買取価格)をはるかに上回る高い金額を「買取参考価格」や「買取実績価格」として表示する場合、問題となるおそれがあるとしています。
買取価格アップについては、通常査定した場合の買取価格が1万円のところ「買取価格20%アップキャンペーン」と表示しながら、実際にはアップせず1万円で買い取る場合を挙げています。さらに、有名ブランド腕時計の買取価格を10%アップするキャンペーンを1月末まで実施すると表示しながら2月以降も同じ内容を継続する場合も、問題となるおそれがあるとしています。
買取価格保証については、有名ブランドバッグを1万円以上で買い取る旨を強調しながら、実際には汚れがあること等を理由に5,000円で買い取る場合を挙げています。
どこよりも高く買取りについては、買取価格地域No.1と表示しながら同一地域内の競合他社の買取価格を何ら調査していない場合を挙げています。
買取の広告では断定的表現や目立つ表現を使った強調表示が行われることが多くあります。強調表示は、買取サービスの内容や取引条件について無条件・無制約に当てはまるものと受け止められます。
例外がある場合は、その旨の打消し表示を分かりやすく適切に行わなければ、誤認され不当表示として問題となるおそれがあります。小さな文字で欄外に書くだけでは足りません。
見落とされやすいのがこちらです。買取に付随して、次回の買取時に使える買取価格アップ券、現金のキャッシュバック、自社ポイントを付与するケースがあります。これらは景品類に該当し、総付景品の規制対象になります。
上限は、取引価額(買取サービスの場合は買取価格)が1,000円以上であれば取引価額の20%、1,000円未満であれば200円です。
「20%アップ券」を付与する場合は、今回の買取価格の20%が上限になります。今回の買取価格が1万円であれば上限は2,000円で、次回の買取価格が2万円であっても4,000円を上乗せすることはできません。アップの上限が2,000円であることを券面に明記しておく必要があります。
一方、その場で買取価格をアップする場合は、アップ分を含めた買取価格全体が取引の対価になるため、アップ分は原則として景品類に該当しません。
報告書は、運用基準の改定から約1年が経過した時点で、買取サービスに関する景品表示法の考え方が広く十分に理解されているとは必ずしも言い切れない状況にある、としています。
そのうえで、示した考え方を関係する事業者団体等とも連携しながら業界全体に広く周知していく予定であり、不当表示等が疑われる事案に接した場合には迅速に指導を行い是正を図ることを含め、景品表示法に基づき厳正に対処していく、と明記しています。
自社の広告とキャンペーン設計を、5類型と景品規制の両面から点検しておく必要があります。



