
電通「2025年 日本の広告費」によれば、インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で構成比50.2%と初めて半数を超えました。うちビデオ広告は1兆275億円(121.8%)で初めて1兆円を超え、ソーシャル広告は1兆3,067億円(118.7%)です。総広告費8兆623億円(105.1%)の中で、動画は最も伸び率の高い区分です。
この数字が示すのは、動画に出稿する事業者が増えて総額が積み上がっているという事実です。同じ枠を取り合う相手が増えている方向にある、というところまでは読めます。
ここから先には進めません。この統計は市場全体の出稿総額であって、1店舗あたりの費用相場ではありません。「動画広告の月額はいくら」「再生あたりの単価がいくら」という話の根拠にはならず、買取業に限定した広告費相場の一次情報は存在しません。自店の水準は自社の実測値でしか判断できません。
伸びている媒体だから出すという判断も、単独では成立しません。判断の材料になるのは、その媒体から来た反響1件あたりに払った費用と、その反響から残った売上総利益です。この2つを出せる形にしてから出稿します。
買取の動画で最も反応が取りやすいのは、実際の査定場面です。ただしその場面には、古物営業法が扱いを定めている要素が同時に存在します。第15条第1項は買受け時に相手方の真偽を確認する措置を義務づけ、住所・氏名・職業・年齢の確認や本人署名のある文書の交付を受けることを挙げています。第16条は取引のつど、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分を帳簿に記載することを義務づけています。
つまり査定カウンターには、確認中の本人確認書類と、記載中の帳簿または端末画面があります。撮影の画角にこれらが入ると、公開した動画に第三者の氏名や住所が写り込みます。編集で消す前提にすると、素材の確認漏れが1本でも起きた時点で公開されます。
運用として決めておくのは、撮影する位置と、撮影可の場所そのものです。確認と記帳を行う場所を撮影範囲の外に固定し、査定台だけを撮る形にすると、編集の判断に頼らずに済みます。相手方が映る場合は、撮影と公開についてその場で承諾を得て、承諾の記録を残します。
第18条第1項により帳簿は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることになっています。動画素材の保管期間や公開範囲とは別の話ですが、同じ場所で扱う以上、撮影のたびに帳簿が画角に入っていないかを確認する手順を入れます。
消費者庁は令和6年4月18日、景品類等の指定の告示の運用基準を改定し、査定して物品を金銭と引き換える役務も「自己の供給する役務の取引」に当たると規定しました。令和7年4月30日には買取業者50社の広告をサンプリング調査した「買取サービスに関する実態調査報告書」が公表され、問題になりやすい表示が5類型に整理されています。
動画で「これが◯万円になりました」と言えば、それは買取実績価格の表示です。報告書は、買い取った実績のない金額を「買取実績価格」と表示することを不可とし、実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る金額を表示して著しく低い価格で買い取る場合を問題としています。未使用品の上限価格をはるかに上回る額を出す例も示されています。
動画では、金額を言う場面と条件を説明する場面が時間で分かれます。条件が動画の後半にあると、金額だけを見て離脱した人には条件が届きません。強調表示に例外がある場合、打消し表示は分かりやすく適切に行うこととされています。金額を出すなら、同じ画面内に対象品目・状態・付属品の条件を置きます。
撮影した取引が実在することは、古物営業法第16条の帳簿で確認できます。動画で使う金額は、帳簿上の取引と突き合わせられる状態にしておきます。演出のために実際より高い金額をテロップに入れる運用は、この突き合わせで成立しなくなります。
| 撮る内容 | 同時に発生する義務・規制 | 撮影前に決めること |
|---|---|---|
| 査定の実演 | 古物営業法第15条第1項(確認)・第16条(記帳) | 確認と記帳を行う場所を撮影範囲の外に固定する |
| お客様が映る場面 | 撮影・公開の承諾 | その場で承諾を得て、承諾の記録を残す |
| 金額のテロップ・発話 | 景品表示法(買取参考価格・買取実績価格) | その金額で成立した取引を帳簿で特定できる状態にする |
| 「何でも買い取ります」 | 景品表示法(何でも買取り/優良誤認) | 実際にすべて買い取れないなら、扱う品目を動画内で限定する |
| 「他社より高く」 | 景品表示法(どこよりも高く買取り) | 競合他社の買取価格を調査し、その記録を持つ |
| 期間限定の告知 | 景品表示法(買取価格アップ/常態化) | 開始日・終了日・内容を一覧で管理し、連続していないか確認する |
| 特典・アップ券の告知 | 景品表示法(総付景品) | その場で上乗せか次回使える券かを分け、券なら上限額を明記する |
| 外部クリエイターへの依頼 | ステルスマーケティングに関する告示(令和5年10月1日施行) | 広告であることを判別できる表示を付ける |
5類型の第4は「何でも買取り」です。特段の条件なく、どのような状態でも買い取ってもらえると消費者が受け取る表示について、持ち込んだ物品の一部または全部を買い取らない場合は優良誤認にあたるとされています。
動画では、この表現が出やすくなります。尺が短く、条件を並べるとテンポが落ちるため、「なんでもOK」「どんな状態でも」といった言い方に寄りやすい構造です。ところが買取の現場では、状態や品目によって買い取らない判断が日常的に発生します。
対応は、扱う品目の範囲を動画内で明示することです。「◯◯と◯◯を買い取ります」と限定すれば、それ以外を断ることは表示と矛盾しません。「何でも」を使う場合は、実際にすべて買い取る運用にできるかを先に確かめます。
残る類型も同じ性質です。「買取価格保証」は保証価格を下回る買取が問題で、報告書は1万円以上と強調しながら汚れを理由に5,000円で買い取る例を挙げています。「どこよりも高く買取り」は事実と異なれば不当表示で、買取価格地域No.1と表示しながら競合他社の買取価格を何ら調査していない場合が問題とされています。動画で言い切る表現ほど、根拠の記録が要ります。
動画で狙いやすい商材と、実際に家から出てくる量は一致しません。環境省の調査(2024年、消費者アンケート本調査 n=3,365)では、過去1年に不要品が発生した人の割合は、ゲーム機器0.6%、バイク・原付0.8%、自動車1.4%、カー用品3.3%、玩具・模型4.3%、楽器類4.4%です。一方で書籍29.1%、ブランド品を除く衣類・服飾品25.8%、家具類17.2%、日用品・生活雑貨17.0%、ブランド品14.4%、ソフト・メディア類12.7%と、生活寄りの品目が上位を占めます。
さらに、発生したあとの動き方も違います。ゲーム機器は保管されている割合が16.1%と低く、保管を除いた排出先ではリユースショップ店頭が72.3%と全品目で最も高くなっています。発生量は少ないが、発生すれば店頭に持ち込まれる商材です。対して携帯電話・スマートフォンは82.1%、ソフト・メディア類は77.6%、パソコン・周辺機器は77.4%が保管されたままです。
この2つを合わせると、動画で訴求する対象の決め方が変わります。ゲーム機器のように反応は取りやすいが発生量が少ない商材だけで組むと、再生は伸びても反響の母数が伸びません。保管率が高い商材を混ぜると、家にあるものを出すきっかけとして機能する余地が残ります。
この調査はTikTok利用者に限定したものではありません。媒体ごとの利用者属性を示す一次情報は手元にないため、「利用者は何歳が多いからこの商材」という組み立てはできません。当たりをつけたあとは、実際の反響の品目内訳で確かめ直します。
古物営業法第15条第2項第1号により、対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満の取引は確認義務が免除されます。その金額は施行規則第16条第1項で1万円と定められています。ただし同条第2項に例外があり、7品目は金額にかかわらず確認が要ります。
7品目は、自動二輪車及び原動機付自転車(汎用部分品を除く)、エアコンディショナーの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。ゲームソフト、CD・DVD、書籍が含まれます。
動画で反応が取りやすい商材はここと重なります。単価が低く点数が多いうえ、1点ごとではなく取引ごとに確認と記帳が発生します。法第16条ただし書は第15条第2項各号の場合を記帳義務からも外していますが、この7品目は外れません。
影響は査定時間ではなく受付時間に出ます。動画が伸びた月に、確認と記帳が現場を止めるという形で表面化します。訴求する商材を決める段階で、受付にかかる時間を見積もっておきます。
ステルスマーケティングに関する告示(令和5年10月1日施行)により、事業者の表示であることを一般消費者が判別しにくい表示は不当表示として扱われます。第三者に依頼して投稿してもらう形は、この告示が直接かかる領域です。
判断の起点は、事業者が投稿内容に関与しているかどうかです。対価を払う、原稿や指定文言を渡す、投稿を条件に査定額を上げるといった関与があれば、事業者の表示として扱われる方向になります。この場合、広告であることを判別できる表示を付けます。
買取業では、対価が査定額の上乗せという形を取りやすい点に注意が要ります。その場で買取価格に上乗せするなら、上乗せ分を含めた買取価格全体が取引の対価になるため、原則として景品類には当たりません。一方、次回使える買取価格アップ券やポイントとして渡すと総付景品にあたり、上限は取引価額が1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円です。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、券面にその上限を明記します。
依頼した動画に金額が入る場合、その金額の根拠は依頼した側が持ちます。制作を外部に任せても、表示の責任は事業者側に残ります。金額・条件・特典が入る動画は、公開前に社内で同じ確認を通します。
再生数と反応数は、買取では成果指標になりません。比較に使うのは、反響1件あたりにいくら払い、いくらの売上総利益が残ったかです。上場企業の開示では、出張訪問買取事業の指標として「訪問あたり売上総利益 − 訪問あたり広告宣伝費 = 訪問あたり変動利益」という枠組みが使われ、FY2025は74,787円、23,518円、51,269円と示されています。訪問あたり広告宣伝費はFY2019の14,509円から6年で約1.6倍になっています。
この金額は1社の、出張訪問買取に限った値です。自店の目標値にはなりません。使うのは枠組みで、店頭なら「来店1件あたり」、宅配なら「発送1件あたり」に置き換えます。
動画制作にかかる費用も、この式の広告費側に入ります。撮影と編集に人手をかけている場合、配信費だけで比較すると動画の反響が実態より安く見えます。制作に使った時間を費用として算入します。
反響が増えれば、その場で渡す買取代金も同時に増えます。中小小売業の従業者5人以下では在庫回転期間が55.9日で、仕入れた品が現金に戻るまで約2か月かかります。同じ帯の粗利率は31.7%、営業利益率は0.2%で、6〜20人の31.2%・1.5%と比べると粗利率は高いのに営業利益率は低くなっています。広告費を増やす原資は、粗利率の改善ではなく在庫の回転から作ります。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 確認と記帳を行う場所が、撮影範囲の外に固定されているか |
| 2 | お客様が映る場合、撮影と公開の承諾をその場で得て記録を残しているか |
| 3 | 公開前に、本人確認書類や帳簿・端末画面が写り込んでいないかを1本ずつ確認しているか |
| 4 | 動画で出す金額について、その金額で成立した取引を古物営業法第16条の帳簿で特定できるか |
| 5 | 金額を出す画面に、対象品目・状態・付属品の条件を同じ画面内で置いているか |
| 6 | 「何でも」「どんな状態でも」を使う場合、実際にすべて買い取る運用にできるか確認しているか |
| 7 | 訴求する商材が、1万円未満でも本人確認が要る7品目に該当するかを確認しているか |
| 8 | 外部クリエイターに依頼した動画に、広告であることを判別できる表示を付けているか |
| 9 | 特典が「その場で上乗せ」か「次回使える券」かを分け、券なら今回の買取価格の20%以内に収めているか |
| 10 | 評価を再生数ではなく、制作にかけた時間も費用に含めた1件あたりの変動利益で行っているか |
査定カウンターをそのまま撮影し、本人確認書類や帳簿の画面が写り込んだ素材を公開してしまう失敗があります。古物営業法第15条第1項の確認と第16条の記帳は同じ場所で同時に行われるため、査定を撮ると必然的に画角に入ります。編集で消す前提にすると、1本の確認漏れで公開されます。確認と記帳の場所を撮影範囲の外に固定し、査定台だけを撮る形にします。
尺の都合で「何でも買い取ります」と言い切り、実際には状態や品目で断る運用になっている失敗があります。令和7年4月30日の実態調査報告書は、特段の条件なくどのような状態でも買い取ってもらえると受け取られる表示について、持ち込んだ物品の一部または全部を買い取らない場合を優良誤認としています。動画では条件を並べるとテンポが落ちるため、この表現に寄りやすくなります。扱う品目を動画内で限定する形にします。
反応の取りやすさだけで商材を選び、そもそも家から出てくる量が少ない領域に寄ってしまう失敗があります。過去1年に不要品が発生した割合は、ゲーム機器0.6%、玩具・模型4.3%、楽器類4.4%で、書籍29.1%や衣類・服飾品25.8%とは桁が違います。ゲーム機器は保管率も16.1%と低く、発生すれば店頭に持ち込まれる商材です。再生が伸びても反響の母数が伸びない構造になるため、保管率の高い商材を混ぜて設計します。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 査定の様子を撮影して公開してよいですか | 撮影範囲を決めたうえでなら可能です。査定の場には、古物営業法第15条第1項で確認する本人確認書類と、第16条で記載する帳簿が同時に存在します。確認と記帳を行う場所を撮影範囲の外に固定し、査定台だけを撮る形にすると、編集の判断に頼らずに済みます。お客様が映る場合は、撮影と公開についてその場で承諾を得て記録を残します。公開前には、書類や端末画面の写り込みを1本ずつ確認します。 |
| 動画で「これが◯万円になりました」と言ってもよいですか | その金額で実際に買い取った取引があり、記録で確認できるなら言えます。令和7年4月30日の実態調査報告書は、買い取った実績のない金額を「買取実績価格」と表示することを不可とし、実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る額を表示して著しく低い価格で買い取る場合も問題としています。金額を出すときは、対象となる品目・状態・付属品の条件を同じ画面内に置きます。条件を動画の後半に置くと、金額だけを見て離脱した人には届きません。 |
| TikTok広告の予算は、いくらから始めればよいですか | 買取業に限定した広告費の相場を示した一次情報は存在しないため、金額は示せません。市場全体ではビデオ広告が1兆275億円(前年比121.8%)、ソーシャル広告が1兆3,067億円(118.7%)と伸びていますが、これは出稿総額であって1店舗あたりの費用ではありません。決め方としては、想定する反響件数に1件あたりの平均買取価格を掛けた買取原資を先に見積もり、それを用意できる範囲で出稿額を決めます。中小小売業の従業者5人以下では在庫回転期間が55.9日で、仕入れた品が現金に戻るまで約2か月かかります。 |
| 若い層向けにゲームやトレカを訴求するのは有効ですか | 反応の取りやすさと、家から出てくる量は分けて見ます。過去1年に不要品が発生した割合はゲーム機器0.6%、玩具・模型4.3%で、書籍29.1%や衣類・服飾品25.8%と比べると桁が違います。ゲーム機器は保管されている割合も16.1%と低く、発生すれば店頭に持ち込まれる商材で、保管を除いた排出先ではリユースショップ店頭が72.3%と全品目で最も高くなっています。反響の母数を確保するなら、保管率の高いソフト・メディア類77.6%や書籍56.3%といった商材を混ぜて設計します。 |
| クリエイターに買取体験を投稿してもらう企画は可能ですか | 広告であることを判別できる表示を付けたうえでなら可能です。ステルスマーケティングに関する告示(令和5年10月1日施行)により、事業者が対価を提供したり内容に関与したりした投稿は、事業者の表示として扱われる方向になります。対価を査定額の上乗せで支払う場合は、その場で買取価格に上乗せするなら買取価格全体が取引の対価になるため原則として景品類には当たりませんが、次回使える券やポイントなら総付景品の上限(取引価額1,000円以上で20%、1,000円未満で200円)がかかります。動画に金額が入るなら、その根拠は依頼した事業者側が持ちます。 |
| 動画からの反響は、どう評価すればよいですか | 再生数ではなく、反響1件あたりの変動利益で評価します。1件あたりの売上総利益から1件あたりの広告費を引いた額です。上場企業の出張訪問買取事業の開示では、FY2025で訪問あたり売上総利益74,787円、訪問あたり広告宣伝費23,518円、変動利益51,269円という形で示されています。これは1社の値なので目標にはできませんが、枠組みとして店頭や宅配に置き換えて使えます。動画では撮影と編集の人件費も広告費側に入れないと、配信費だけの比較になって実態より安く見えます。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を4件挙げます。




扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。TikTok広告をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


