
電通「2025年 日本の広告費」によると、交通広告費は1,736億円で前年比108.6%です。プロモーションメディア1兆7,184億円(102.0%)の内訳の中で、イベント・展示・映像ほか4,748億円(111.2%)に次ぐ伸び率になります。屋外3,042億円(105.3%)、POP1,540億円(103.8%)も前年を上回りました。
同じ区分の中で、配布して届ける媒体は逆の動きをしています。折込2,354億円(96.4%)、ダイレクトメール2,708億円(94.6%)、フリーペーパー1,056億円(80.9%)はいずれも前年割れです。マスコミ四媒体も2兆2,980億円(98.4%)で、テレビメディア17,556億円(99.7%)、ラジオ1,153億円(99.2%)、新聞3,136億円(91.8%)と横ばいから減少にあります。
総広告費は8兆623億円で、インターネットが4兆459億円・110.8%と構成比50.2%を占めます。ネットが半分を超えた市場の中でも、交通広告は伸びを続けています。特定の路線・特定の駅に絞って掲出できるという性質が、地域を限って人を集めたい業種の需要と噛み合っていると読めます。
ただしこれは市場全体の出稿額であって、1店舗あたりの費用相場ではありません。車内の中づり1枠がいくらか、駅貼りポスターが何日でいくらかを示す一次情報は存在しないため、金額をこの数字から導くことはできません。使えるのは、その媒体が伸びているか縮んでいるかという判断材料までです。
2023年の買取市場のチャネル別構成比は、店頭買取78.2%、出張買取10.0%、宅配買取9.5%です。店頭が8割を占めますが、この数字を「人が多く通る場所に出せばよい」と読み替えると出稿を誤ります。
買取店の客は、売る物を持って来店します。買い物のついでに立ち寄って売却する行動はほとんど起きません。物を運ぶ必要がある以上、商圏は客が持ち込める距離で決まります。交通広告で問うべきは、その路線の乗客が自店まで物を運べる位置に住んでいるかどうかです。乗客数の多い路線でも、沿線の大半が自店から持ち込めない距離にあるなら、掲出面の大半は無駄になります。
路線を評価するときは、駅ごとに切って見ます。ある路線の中で、自店から徒歩や自転車で来られる駅、車で来られる駅、来られない駅を分けます。駅貼りのように駅単位で出せる形態なら、この分け方がそのまま出稿範囲になります。車内広告のように編成単位で出す形態は、路線全体に配られるため、沿線のうち商圏に入る駅の比率が費用対効果を決めます。
扱う商材によって、この距離は変わります。貴金属・ブランド品・切手や金券のように小さく高単価な商材なら、徒歩や公共交通機関での来店が成立するため、駅を起点にした商圏が組めます。家具・家電・楽器・工具のように大型の商材は車での来店が前提になるので、電車の乗客に向けて掲出する意味が薄くなります。
環境省の令和6年度リユース市場規模調査によると、過去1年間に売却・引渡しを「利用したことがない」割合が最も低いのは30代の62.6%で、次いで10・20代の63.5%です。リユースショップでの売却は30代が60代以上より4.1ポイント高く、郵送・宅配買取での売却も30代が60代以上より2.4ポイント高くなっています。
購入側では、リユースショップ・中古品販売店の店頭での購入は40代が最多で15.1%です。「利用したことがない」割合は購入で10・20代63.2%、60代以上76.1%と約13ポイント差があり、40代と50代の間に大きな段差があります。フリマアプリでの購入は10・20代20.8%に対し60代以上8.0%です。
店頭買取の中心顧客は30〜40代、フリマアプリは10〜20代という分かれ方になります。一方、訪問購入の相談ではPIO-NETの2024年度データで契約当事者の70歳以上が26.2%と、2015年度以降で最高でした。買取の形式ごとに、相手の年齢層がはっきり分かれています。
通勤・通学で電車やバスを日常的に使うのは就業世代です。この点で、店頭買取の中心である30〜40代と交通広告の接触層は重なります。逆に、出張買取の高齢者層に向けて交通広告を出す設計は、接触層と客層がずれます。同じ買取事業でも、店頭を伸ばしたいのか出張を伸ばしたいのかで媒体の適否が変わります。
| 媒体 | 2025年の出稿額 | 前年比 | 買取店の集客から見た読み方 |
|---|---|---|---|
| 交通 | 1,736億円 | 108.6% | プロモーションメディアで最も伸び率が高い。路線と駅を指定して商圏に合わせられる |
| 屋外 | 3,042億円 | 105.3% | 掲げ続ける媒体として伸長。店頭の看板・ファサードと連続して考える |
| POP | 1,540億円 | 103.8% | 来店後の接点。買取強化品目の告知に使う |
| 折込 | 2,354億円 | 96.4% | 配布して届ける媒体。市場全体では縮小方向にある |
| ダイレクト・メール | 2,708億円 | 94.6% | 同上。既存客への再訪促進とは分けて考える |
| フリーペーパー | 1,056億円 | 80.9% | この区分で最も減少幅が大きい |
| テレビメディア | 17,556億円 | 99.7% | 横ばい。1店舗の商圏に対して放送エリアが広すぎる |
| ラジオ | 1,153億円 | 99.2% | 横ばい。構成比1.4% |
| インターネット | 4兆459億円 | 110.8% | 構成比50.2%で初めて半数超え |
交通広告の掲出料金は媒体社ごとに設定され、公的な統計として集計されたものはありません。買取業に限った出稿単価の一次情報も存在しません。したがって「電車広告1枠いくら」という数字をここで示すことはできません。桁を知りたい場合は、対象路線の媒体社が公表している媒体資料を直接取り寄せます。
単価が分からない状態で決められるのは、上限のほうです。1件の買取から得られる粗利を先に把握し、その何割までを集客費に充てられるかを決めれば、掲出料金の見積もりが出た時点で可否を判断できます。順序を逆にして、見積もりを見てから効果を期待すると、判断の基準がなくなります。
枠組みとして参照できる公開データはあります。BuySell Technologiesの2025年12月期決算説明資料では、出張訪問買取事業のKPIとして訪問あたり売上総利益74,787円、訪問あたり広告宣伝費23,518円、訪問あたり変動利益51,269円を開示しています。訪問数は445,199件です。訪問あたり広告宣伝費はFY2019の14,509円からFY2025の23,518円へ、6年で約1.6倍になっています。
この数字は出張買取のもので、全媒体を合算した広告宣伝費です。交通広告単体の費用でも、店頭買取の数字でもありません。そのまま自店に当てはめることはできません。流用できるのは「1件あたりの売上総利益から、1件あたりの広告費を差し引いて残るものを見る」という枠組みだけです。店頭買取なら、この売上総利益を自店の実績から作る作業が先に来ます。
中小企業実態基本調査の令和6年確報(令和5年度決算実績)では、法人企業・小売業の粗利率は29.8%、営業利益率2.4%です。従業者5人以下では粗利率31.7%に対し営業利益率0.2%、6〜20人では粗利率31.2%に対し営業利益率1.5%となっています。
小規模帯のほうが粗利率は高いのに、営業利益率は0.2%と6〜20人の1.5%を下回ります。在庫回転期間は5人以下で55.9日、6〜20人で32.6日、小売業全体で33.5日です。粗利を取れていないのではなく、在庫が現金に戻る速度で負けている構造です。
この水準の営業利益率に、交通広告の費用をそのまま上乗せすると、赤字に転じる幅は小さくなります。買取業は仕入原価を自分で決められる商売なので、集客費を積んだ分だけ査定額を下げるという調整が理屈のうえでは可能ですが、それは買取価格を下げることと同じで、客が離れる方向に働きます。
したがって交通広告を出すかどうかは、集客費の話であると同時に在庫回転の話になります。掲出で来店が増えても、増えた仕入が55.9日滞留すれば、現金は先に出て後から戻ります。支払いは客にその場で現金を渡す形で先行するため、出稿の判断には運転資金の余力を合わせて見ます。
消費者庁は令和6年4月18日に「景品類等の指定の告示の運用基準について」を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。運用基準3⑷は、一般消費者から物品等を買い取る取引も、査定して金銭と引き換える役務を提供していると認められる場合には「自己の供給する役務の取引」に当たると規定しています。
令和7年4月30日に公表された「買取サービスに関する実態調査報告書」は、買取業者50社の広告をサンプリング調査し、業者14社・関係団体2団体へのヒアリングを行ったうえで、問題になりやすい表示を5類型に整理しました。買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取り、の5つです。
交通広告で起きやすいのは、掲出期間と表示内容のずれです。掲出は期間契約で行われるため、期間中に相場が動いても面は貼り替わりません。「買取参考価格」として掲げた金額が、実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回った状態のまま残れば、報告書が挙げる類型に当たります。掲出期間中に相場が動く商材で金額を出すなら、そのリスクを織り込んで文言を決めます。
「買取価格地域No.1」のような比較表示は、競合他社の買取価格を何ら調査していない場合に問題になると報告書が明示しています。掲出面は多くの人が繰り返し見るため、根拠の記録は掲出期間を通じて保管します。強調表示に例外があるなら、打消し表示を分かりやすく適切に行います。
交通広告には、クリックやコンバージョンのような自動で残る記録がありません。掲出の効果を測る公的な指標も存在しないため、来店・問い合わせの入口で自店が記録を取る以外に方法がありません。
買取店には、この記録を取りやすい事情があります。古物営業法第15条第1項は、買受けにあたって相手方の真偽を確認する措置を義務づけており、第16条は取引の都度、取引年月日・品目及び数量・古物の特徴・相手方の住所氏名職業年齢・第15条第1項でとった措置の区分を帳簿等に記載する義務を定めています。第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間保存します。来店客の住所を取る作業が業務として組み込まれている業種です。
帳簿は法定の記載事項が決まっており、集客の記録を目的とするものではありません。ただし来店客の居住エリアが日々記録として残る以上、掲出前と掲出中で、対象路線の沿線から来た客の比率がどう動いたかを見ることはできます。掲出面の枚数ではなく、沿線からの来店構成比を指標にすれば、路線選定の当否を次回に持ち越せます。
問い合わせ時の聞き取りも併用します。ただし、環境省の調査で排出先を選んだ理由の最重視項目は金銭的な理由39.7%、煩雑な手続きや準備をしなくてすむから19.2%、まだ使用する人がいれば有効に利用して欲しかったから14.6%と分かれています。何を見て来たかと、なぜここを選んだかは別の質問なので、分けて聞きます。
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の補助対象経費8区分には②広報費が含まれ、広告の出稿費用はここで扱われます。第17回ガイドブック(2025年4月25日 第1版)では、補助率2/3、補助上限50万円です。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方を満たす場合は+200万円の上乗せがあります。
対象になる小規模事業者は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で常時使用する従業員5人以下です。買取店は商業・サービス業にあたるため、この5人以下が目安になります。会社役員・個人事業主本人・一定条件を満たすパートタイム労働者は、常時使用する従業員に含みません。
枠に入ることと、枠に収まることは別です。通常枠の上限50万円に対して交通広告の掲出料金がどの水準になるかは、媒体資料を取らなければ分かりません。見積もりが上限を大きく超えるなら、補助金を前提にした計画は成立しません。掲出範囲を絞って収める設計にするか、別の媒体に振り替えるかの判断が先に来ます。
公募回次ごとに条件は変わります。確認時点で第20回の申請受付締切は2026年12月15日(火)17:00ですが、記事の数値をそのまま使わず、申請時は最新の公募要領で確認します。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 出稿を検討している路線のうち、自店から持ち込める距離にある駅がいくつあるかを数えたか |
| 2 | 扱う主力商材の来店手段(徒歩・公共交通・車)が、電車やバスの乗客と噛み合っているか |
| 3 | 店頭買取を伸ばしたいのか、出張買取を伸ばしたいのかを決めたうえで媒体を選んでいるか |
| 4 | 1件の買取から得られる売上総利益を自店の実績から把握し、集客費の上限を先に決めたか |
| 5 | 掲出料金の見積もりを、対象路線の媒体社の媒体資料から直接取ったか |
| 6 | 来店が増えたときの仕入増を、運転資金と在庫回転期間の面で吸収できるか |
| 7 | 掲出面に買取価格を出すなら、掲出期間中の相場変動を織り込んだ文言になっているか |
| 8 | 「地域No.1」等の比較表示を出すなら、他社調査の記録を掲出期間を通じて保管しているか |
| 9 | 掲出前と掲出中で、沿線から来店した客の構成比を比較できる記録の取り方を決めているか |
| 10 | 持続化補助金の広報費で申請するなら、掲出料金が通常枠の上限50万円に収まる設計になっているか |
乗客数の多い路線を選んだのに来店が動かない、という結果になることがあります。買取店の商圏は客が売る物を持ち込める距離で決まるため、沿線の大半が持ち込めない距離にあれば掲出面の大半は届かないからです。店頭買取が2023年に78.2%を占めるという数字は、通行量や乗客数の多い場所が有利という意味ではありません。路線ではなく駅単位で商圏に入るかを数えてから決めます。
他社が公開しているKPIを、そのまま自店の交通広告の判断基準に使ってしまう例があります。BuySell Technologiesが開示する訪問あたり広告宣伝費23,518円・訪問あたり変動利益51,269円は、出張訪問買取事業の全媒体合算の数字です。交通広告単体でも店頭買取でもないため、自店の売上総利益を実績から作らないかぎり基準になりません。
掲出期間中に相場が動き、掲げた買取参考価格が実際の買取価格と離れたまま残ることがあります。交通広告は期間契約で、面をすぐには貼り替えられないためです。消費者庁の令和7年4月30日の実態調査報告書は、実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る金額の表示を問題として挙げています。相場が動く商材で金額を出すかどうかは、掲出前に決めます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 交通広告の費用はどのくらいかかりますか | 単価の一次情報は存在しないため、この記事では金額を示しません。掲出料金は媒体社ごとに設定されており、公的な統計として集計されたものがないためです。桁を知りたい場合は、対象路線の媒体社が公表している媒体資料を直接取り寄せます。電通「2025年 日本の広告費」の交通1,736億円という数字は市場全体の出稿額であり、1枠の料金の根拠にはなりません。 |
| どの路線に出すかは、乗客数で決めてよいですか | 乗客数だけでは決められません。買取店の商圏は、客が売る物を持ち込める距離で決まります。路線全体ではなく駅単位で、自店から徒歩・自転車で来られる駅、車で来られる駅、来られない駅に分けて数えます。駅貼りのように駅単位で出せる形態なら、この分け方がそのまま出稿範囲になります。 |
| 交通広告に向く買取店と、向かない買取店がありますか | 主力商材の来店手段で分かれます。貴金属・ブランド品・切手や金券のように小さく高単価な商材は、徒歩や公共交通機関での来店が成立するため、駅を起点にした商圏が組めます。家具・家電・楽器・工具のように車での来店が前提になる商材は、電車の乗客に向けて掲出する意味が薄くなります。また、出張買取を伸ばしたい場合は接触層と客層がずれます。訪問購入の相談ではPIO-NETの2024年度で契約当事者の70歳以上が26.2%を占めています。 |
| 効果はどうやって測ればよいですか | 来店・問い合わせの入口で自店が記録を取る以外に方法がありません。交通広告にはクリックのような自動で残る記録がなく、効果を示す公的な指標も存在しないためです。買取店は古物営業法第16条により取引の都度、相手方の住所・氏名・職業・年齢を含む事項を帳簿等に記載する義務があり、第18条第1項で最終記載の日から3年間保存します。この記録から、掲出前と掲出中で沿線からの来店構成比がどう動いたかを見ることはできます。 |
| 掲出面に買取価格を載せてもよいですか | 載せられますが、掲出期間中ずっとその表示が残ることを前提に決めます。消費者庁は令和6年4月18日の運用基準改定で買取サービスも景品表示法の対象になり得ることを明確化し、令和7年4月30日の実態調査報告書で5類型を示しました。実際に買い取ることを想定した金額を大きく上回る表示、買い取った実績のない金額を買取実績価格とする表示は認められません。相場が動く商材では、金額ではなく取扱品目や受付方法を出す選択もあります。 |
| 交通広告に補助金は使えますか | 小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の②広報費に該当します。第17回ガイドブックでは補助率2/3、補助上限50万円で、インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円の上乗せがあります。対象は商業・サービス業で常時使用する従業員5人以下です。ただし掲出料金が上限を大きく超えるなら、補助金を前提にした計画は成立しません。掲出範囲を絞るか別の媒体に振り替えるかを先に決めます。公募回次ごとに条件が変わるため、最新の公募要領で確認します。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を4件挙げます。




扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。交通広告(電車・バス)をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


