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新規顧客の獲得:獲得費用は広告費ではなく、初回の査定額に乗る

買取業の新規顧客は、新しい売り先ではなく新しい仕入先です。1人増えるたびに現金が出ていくため、獲得費用は広告費だけで測れません。この記事では、初回の査定額が獲得費用の一部であること、二度目の取引材料が客の家に眠っていること、そして新規と再訪を分ける手段が古物営業法第16条の帳簿にしかないことを、公表データと条文から整理します。
集客課題 🕐 2026-08-31 / 買取ラボ編集部
新規顧客の獲得:獲得費用は広告費ではなく、初回の査定額に乗る

新規顧客の獲得は、新しい仕入先の獲得である

買取業で新規顧客が1人増えるということは、こちらが現金を渡す相手が1人増えるということです。一般の小売業なら新規顧客の獲得は入金の増加ですが、買取業では出金の増加として先に現れます。売上として戻るのは、その品が売れた後です。

この順番のせいで、新規獲得の費用は広告費だけでは測れません。初回の来店で他社より高い査定額を出せば、その差額は事実上の獲得費用です。広告費を抑えて査定額で勝負した月は、獲得費用が広告費の欄から消えて粗利率の欄に移動します。数字上は効率的に見えて、利益は減っています。

中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和6年確報・令和5年度決算実績、法人企業・小売業)では、従業者5人以下の粗利率が31.7%、営業利益率が0.2%です。買取業に限定した統計ではありませんが、同規模帯の営業利益率が0%台であることは押さえておきます。粗利率を数ポイント削る獲得手段は、この水準では利益を消します。

新規獲得の評価は、広告費と査定額の両方を合わせた「1件を仕入れるために手放した金額」で見ます。広告費だけを見る運用は、査定額での獲得に切り替えたときに効果が改善したように見えてしまいます。

そもそも「売る」という行動をしたことがない人が7割いる

環境省の令和6年度リユース市場規模調査では、過去1年間に不要品の売却・引渡しをしたことが「ない」人が70.0%です。この割合は2012年の57.7%から一貫して増えています。売り先を比較検討している人を奪い合う前に、売るという行動自体をしたことがない層が母集団の7割を占めています。

売却経験の内訳は、リユースショップ・中古品販売店で売却14.3%、フリマアプリで売却9.9%、インターネットオークションで売却4.9%、家族・知人などへ譲渡3.7%、不用品回収業・片付けサービス業へ3.4%、郵送・宅配での買取サービス3.0%です。

2024年調査ではトレンドが2つ反転しています。フリマアプリでの売却が2021年の11.0%から9.9%へ初めて減少し、リユースショップでの売却は減少傾向から増加に転じて14.3%になりました。経済産業省の電子商取引に関する市場調査でも、CtoC-ECは2兆5,269億円で前年比+1.82%と伸びが鈍化しています。

つまり、新規獲得の相手はフリマアプリの利用者だけではありません。売却未経験の70.0%と、いま店頭に戻りつつある層の両方がいます。前者に対しては価格の比較よりも、売れること自体と手順を知らせることが入口になります。

二度目の取引材料は、初回に持ってこられていない。客の家に残っている

環境省の調査は、不要品が発生した後にどうなったかを取引個数ベースで集計しています。「自宅・物置等で保管」されたままの割合は、携帯電話・スマートフォン82.1%、ソフト・メディア類77.6%、パソコン・周辺機器77.4%、自転車72.9%、楽器類69.9%、スポーツ・レジャー用品69.3%、カメラ・周辺機器68.7%です。

書籍56.3%、ブランド品53.4%、ブランド品を除く衣類51.1%と、持ち込まれやすい商材でも半分以上が家に残ります。動いているのはゲーム機器16.1%と自動車20.8%くらいです。初回に来店した客は、家にあるものの一部を持ってきているだけだと考えられます。

この構造は、新規獲得のあとの設計を変えます。二度目の来店を促す材料は、新しい商材の入荷ではなく、その客の家に残っている品目です。初回の査定時にどの品目が持ち込まれたかが帳簿に残るので、同じ客の未持込品目を推定する材料はあります。

特に携帯電話・スマートフォンは82.1%が保管されたままで、業界全体で見ても最大の未取得在庫です。品目を指定した案内は、価格を上げずに件数を動かせる手段になります。

出典:環境省「令和6年度リユース市場規模調査報告書」本編 第3章(消費者アンケート n=3,365、2025年1月実施)。保管割合は取引個数ベース。本人確認の扱いは古物営業法施行規則第16条第2項

品目不要品の発生率家に保管されたままの割合二度目の取引材料としての見方
携帯電話・スマートフォン—82.1%最も残っている。初回に持ち込まれることが少なく、指名して案内する余地が大きい
ソフト・メディア類12.7%77.6%1万円未満でも本人確認と記帳が要る(施行規則第16条第2項第四号)
パソコン・周辺機器11.2%77.4%無償で手放される割合が46.5%あり、価格以外の理由で動く
楽器類4.4%69.9%発生率は低いが残存が多い。持ち込みには大きさの制約がある
書籍29.1%56.3%発生率が最大。1万円未満でも本人確認と記帳が要る(同項第七号)
ブランド品14.4%53.4%単価が高く1万円を下回りにくい
ゲーム機器0.6%16.1%発生は少ないが、出たものの72.3%が買取店へ向かう

新規と再訪を分けられる記録は、法定帳簿にしかない

新規獲得の効果を測るには、来た人が初めてかどうかを判定しなければなりません。買取業には、この判定に使える記録が制度として存在します。古物営業法第16条は、古物を受け取り、または引き渡したときに、その都度、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分を記載する義務を定めています。第18条第1項により、最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。

相手方の住所と氏名が3年分そろっているので、初回か再訪かは後からでも判定できます。会員システムを導入していない店でも、過去3年の新規率と再訪率は帳簿から作れます。ここが一般の小売業と違う点で、レシートしか残らない業種にはこの記録がありません。

再取引の簡略化にも制度上の裏づけがあります。古物営業法施行規則第15条第3項第13号は、既に同項の措置をとった相手方に識別符号を付し、なりすましが困難な方法で措置済みであることを確かめる方法を、確認をしたものとされる措置に挙げています。二度目以降の非対面取引の手続きを短くできる根拠がここにあります。

ただし帳簿は記載事項が定まっているため、流入経路や広告の反応を書き足す場所ではありません。受付記録を別に作り、来店日・流入経路・査定の有無・成約の有無を残したうえで、取引日と相手方で帳簿と突き合わせます。帳簿側に取引の事実が必ず残るので、受付側の記入漏れは後から補正できます。

獲得したい年代によって、入口のチャネルが違う

環境省の調査には世代別の集計があります。「利用したことがない」割合は購入で10・20代63.2%、60代以上76.1%と約13ポイントの差があり、40代と50代の間に段差があります。40代より若い層のほうがリユースに接触しています。

売却側では、「利用したことがない」が最も低いのは30代の62.6%で、10・20代の63.5%がこれに続きます。リユースショップでの売却は30代が60代以上より4.1ポイント高く、郵送・宅配買取での売却も30代が60代以上より2.4ポイント高くなっています。

購入側を見ると、フリマアプリでの購入は10・20代20.8%に対し60代以上8.0%、リユースショップ店頭での購入は40代が最多で15.1%、ネットオークションでの購入は50代10.9%・40代10.7%です。店頭買取の中心は30〜40代、フリマアプリは10〜20代という分かれ方をしています。

新規獲得の施策を組むときは、狙う年代を先に決めます。年代を決めずに媒体を選ぶと、店頭に来られる年代と媒体の到達年代がずれます。特に宅配買取を新規の入口にする場合は、30代の利用率が相対的に高いという傾向と、扱う商材の相性を合わせて見ます。

新規を増やすと、原資は査定額×件数の速度で減る

新規顧客の獲得計画は、件数の目標だけでは運用できません。件数に平均の支払額を掛けた金額が、その月に出ていく現金だからです。買取業は客にその場で現金を渡し、その品が売れてから回収します。回収までの期間は、中小小売業の従業者5人以下で在庫回転期間55.9日、6〜20人で32.6日、小売業全体で33.5日です。

5人以下の水準で回している店が新規を月20件増やすなら、増えた支払額の約2か月分を切らさずに持っている必要が出てきます。ここを見ずに広告を出すと、反響が出た週の後半で査定を絞ることになり、来店した新規客を断る形になります。断られた客は再訪しません。

新規獲得の上限は、広告予算ではなく原資で決まります。運用としては、月の買取支払額の上限を先に置き、その範囲に収まる件数を集客の目標にします。上限に達したら広告を止め、原資が戻ってから再開するほうが、査定を絞って対応するより損失が小さくなります。

獲得した新規を単発で終わらせないことも、原資の効率に効きます。同じ客の二度目の取引は、広告費がかからないうえに、施行規則第15条第3項第13号の識別符号を使えば非対面の確認手続きも短くできます。

新規限定・初回限定の表示は、景品表示法の5類型に最も触れやすい

消費者庁は令和6年4月18日、景品類等の指定の告示の運用基準を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。令和7年4月30日には買取業者50社の広告をサンプリング調査した実態調査報告書を公表し、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。

新規獲得の広告は、この5類型のうち複数に同時に触れます。「初回買取価格アップ」は買取価格アップの類型で、実際にはアップしない場合が問題になります。期限を切ったキャンペーンを終了後も同内容で続ける常態化も指摘されており、1月末までと表示して2月以降も同じ内容を継続する例が挙げられています。

「何でも買取り」は、特段の条件なくどのような状態でも買い取ってもらえると受け取られるため、持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らない場合は優良誤認にあたります。新規客は何を売れるか分からずに来るので、この表示は実際の運用と食い違いやすい部分です。

初回特典を次回に使える形で出す場合は景品規制もかかります。次回使える買取価格アップ券、キャッシュバック、自社ポイントは景品類に当たり、総付景品の上限は取引価額が1,000円以上なら20%、1,000円未満なら200円です。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、次回の買取価格が2万円でも4,000円を上乗せすることはできず、上限額を券面に明記します。なお、その場で買取価格をアップする場合は、アップ分を含めた金額全体が取引の対価になるため、アップ分は原則として景品類に該当しません。

確認すべきこと

#チェック項目
1新規獲得の費用を、広告費と初回査定額の上乗せ分の合計で見ているか
2月の新規目標件数に平均支払額を掛けた金額を、月の買取原資の上限と突き合わせているか
3第16条の帳簿の相手方情報を使って、過去3年の新規率と再訪率を出しているか
4受付記録に流入経路・初回/再訪・査定の有無・成約の有無を残し、帳簿と突き合わせられる形にしているか
5初回に持ち込まれなかった品目を、二度目の案内の材料として整理しているか
6狙う年代を決めてから媒体を選んでいるか。媒体の到達年代と来店できる年代がずれていないか
7反響が出た週に査定を絞って対応していないか。原資が尽きたら広告を止める運用になっているか
8「初回買取価格アップ」の表示が、実際にアップした金額で運用されているか
9期限つきキャンペーンを終了後も同内容で継続していないか
10次回使えるアップ券やポイントを、今回の買取価格の20%以内に収め、上限額を券面に明記しているか

よくある失敗

広告費を抑えるために査定額を上げて新規を集め、獲得費用が下がったと判断してしまう失敗があります。買取業は査定額がそのまま仕入原価なので、価格による獲得は費用が広告費の欄から粗利率の欄へ移動しただけです。中小小売業の従業者5人以下は粗利率31.7%に対し営業利益率0.2%しかなく、粗利率を数ポイント削れば営業利益は消えます。新規1件あたりの費用は、広告費と査定額の上乗せ分を合算して見てください。

新規の来店数だけを目標に置き、原資が尽きた週に査定を絞って対応してしまう失敗があります。買取は支払いが先行し、回収までの期間は中小小売業の従業者5人以下で55.9日、6〜20人で32.6日です。新規を増やすと、増えた支払額の1〜2か月分が同時に走ります。断られた新規客は再訪しないため、原資を超えた集客は将来の再訪機会まで失います。月の買取支払額の上限を先に決め、上限に達したら広告を止めてください。

一度取引した客を新規としてもう一度数え、施策の効果を過大に見てしまう失敗があります。買取業には古物営業法第16条の帳簿があり、相手方の住所・氏名が最終記載の日から3年間保存されています。初回か再訪かは判定できる状態にあるにもかかわらず、受付記録だけで集計すると再訪が新規に混ざります。帳簿と受付記録を取引日と相手方で突き合わせる手順を、月次の作業として固定してください。

よくある質問

質問回答
新規獲得の1件あたりの費用は、いくらが目安ですか買取業の獲得費用について、業界平均を示した公的な統計はありません。消費者庁の報告書に載っているのは買取市場規模(2023年13,274億円)とチャネル構成比(店頭78.2%・出張10.0%・宅配9.5%)までで、1店舗の獲得費用は含まれていません。自店で出す場合は、その月の広告費に、新規に対して上乗せした査定額の合計を足して、成立した新規件数で割ります。査定額の上乗せ分を含めないと、価格で獲得した月に費用が見かけ上下がります。
フリマアプリに流れた客を取り戻すべきですかフリマアプリだけを競合と見る前提は、直近のデータでは弱くなっています。環境省の調査では、フリマアプリでの売却は2021年の11.0%から2024年の9.9%へ初めて減少し、リユースショップでの売却は減少傾向から増加に転じて14.3%になりました。経済産業省の調査でもCtoC-ECは2兆5,269億円・前年比+1.82%と伸びが鈍化しています。一方で、売却を「利用したことがない」層は70.0%あり、2012年の57.7%から増え続けています。母集団としては後者のほうが大きく、価格の比較よりも売れることと手順を知らせるほうが接点になります。
初回に来た客の二度目を作るには、何を案内すればよいですかその客が初回に持ってこなかった品目です。環境省の調査では、不要品の多くが家に残ったままで、携帯電話・スマートフォン82.1%、ソフト・メディア類77.6%、パソコン・周辺機器77.4%、書籍56.3%、ブランド品53.4%が保管されています。初回に何を持ち込んだかは古物営業法第16条の帳簿に品目として残るため、未持込の品目を案内の材料にできます。二度目の取引は広告費がかからず、非対面であれば施行規則第15条第3項第13号の識別符号によって確認手続きを短くすることもできます。
新規向けに「何でも買取ります」と出しても問題ありませんか実際に一部でも買い取らない場合は問題になります。消費者庁の令和7年4月30日の実態調査報告書は、「何でも買取り」を、特段の条件なくどのような状態でも買い取ってもらえると一般消費者が受け取る表示として挙げ、持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らない場合は優良誤認にあたるとしています。新規客は何が売れるか分からずに来るため、この表示は運用と食い違いやすい部分です。取り扱わない品目や状態がある場合は、その条件を同じ画面・同じ紙面に分かりやすく示してください。
会員システムを入れていませんが、新規率は出せますか出せます。古物営業法第16条は、取引の都度、相手方の住所・氏名・職業・年齢を記載する義務を定めており、第18条第1項によりその帳簿は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けられています。したがってどの店にも3年分の相手方情報があり、初回か再訪かは後から判定できます。手順としては、月次で帳簿の相手方を過去分と突き合わせ、初出の件数を新規として数えます。並行して受付記録に流入経路を残しておけば、経路別の新規件数まで出せます。

「新規顧客の獲得」に対応する解決策

この課題の打ち手になりうる解決策を12件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。

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取扱ジャンル別に見る

扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。新規顧客の獲得をジャンル別に見たページを用意しています。

買取形式別に見る

店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。

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