
若年層とフリマアプリを結びつける根拠として引かれる数字は、多くが購入側のものです。環境省「令和6年度リユース市場規模調査報告書」の消費者アンケートでは、フリマアプリで中古品を購入した割合が10・20代20.8%、60代以上8.0%です。約2.6倍の差があり、年代差が明確に出ています。
購入で「利用したことがない」と答えた割合も、10・20代63.2%に対して60代以上76.1%と13ポイント開いています。40代と50代の間に大きな段差があり、40代より若い世代がリユースに積極的という結果です。ここまでは、若年層がフリマを使うという説明と整合します。
問題は、買取店にとって関係するのが購入側ではなく売却側だという点です。買取店の客は、中古品を買う人ではなく売る人です。購入側の年代差を売却側に持ち込むと、前提が入れ替わります。
売却側の数字を見ると、「利用したことがない」割合が最も低いのは30代の62.6%で、10・20代は63.5%です。差は1ポイント未満です。リユースショップでの売却は30代が60代以上より4.1ポイント高く、郵送・宅配買取での売却は30代が60代以上より2.4ポイント高くなっています。売却で最も動いているのは10・20代ではなく30代です。
時系列でも、前提の見直しが必要な動きが出ています。同調査の売却・引渡しの経験(過去1年間、複数回答)では、フリマアプリで売却した割合が2015年2.0%、2018年7.5%、2021年11.0%と伸びたあと、2024年に9.9%へ初めて減少しました。
同じ2024年調査で、減少傾向だったリユースショップ・中古品販売店での売却は14.3%へ増加に転じています。インターネットオークションでの売却は4.9%、家族・知人などへの譲渡は3.7%、不用品回収業・片付けサービス業への引渡しは3.4%、郵送・宅配での買取サービスは3.0%です。
つまり売却の手段としては、フリマから店に戻る動きが2024年調査で観測されています。この一年の反転だけで趨勢を決めることはできませんが、少なくとも「フリマアプリに客を取られ続けている」という前提は、現在の数字では支持されません。
ただし、市場全体が広がっているわけではありません。売却で「利用したことがない」割合は2015年60.5%、2018年66.4%、2021年68.7%、2024年70.0%と一貫して増えています。起きているのは経路の入れ替わりであって、売る人の増加ではありません。若年層を取り戻すという発想は、増えていない母集団のなかでシェアを動かす話になります。
買取店に来る動機は、家にある不要品です。若年層に届かない原因を媒体に置く前に、その層の家からどれだけ物が出るかを見ます。環境省の調査は、過去1年に不要品が発生した人の割合を品目別に出しています。書籍29.1%、ブランド品を除く衣類・服飾品25.8%、家具類17.2%、日用品・生活雑貨17.0%、ブランド品14.4%、ソフト・メディア類12.7%、パソコン・周辺機器11.2%です。
発生が少ない品目もあります。ゲーム機器0.6%、バイク・原付0.8%、自動車1.4%、カー用品3.3%、玩具・模型4.3%、楽器類4.4%です。これらは全年代の値であり、年代別の内訳は公表されていません。したがって「若年層の家には物が少ない」と断定はできません。断定できるのは、品目によって発生量が大きく違うという事実までです。
そのうえで、居住形態と保有年数から考えられることはあります。家具類の発生率17.2%、家電の排出時の費用負担44.0%といった数字は、世帯として物を蓄えた層で起きる事象です。買取の対象になる物が家に積み上がるまでには年数がかかります。若年層に届かないという課題は、媒体の問題ではなく、対象となる物がまだ発生していないという構造の可能性があります。
この見立てが正しいなら、若年層への投資はLTVの薄い層への投資になります。持ち込める物が少ない層に獲得費をかけると、1人あたりの累計粗利が獲得費を下回ります。若年層獲得を掲げる前に、自店の帳簿で年齢帯別の1件あたり金額と再訪率を出し、費用に見合うかを確認する順序になります。
| よく使われる前提 | 公表データで言えること | 言えないこと |
|---|---|---|
| 若年層はフリマを使う | 購入では10・20代20.8%、60代以上8.0%と差がある | これは購入側の値。買取店の客である売却側の分布ではない |
| 若年層は買取店に売らない | 売却で「利用したことがない」は30代62.6%、10・20代63.5%で差は1ポイント未満 | 年代別の売却チャネル利用率そのものは公表されていない |
| フリマに客を取られ続けている | フリマでの売却は2021年11.0%→2024年9.9%で初めて減少。リユースショップでの売却は14.3%へ増加に転じた | 1回の反転で趨勢が変わったとは言えない。ただし増加の前提は支持されない |
| フリマ市場は伸び続けている | CtoC-ECは2兆5,269億円で前年比1.82%。BtoC-EC 5.1%増・BtoB-EC 10.6%増に比べ鈍化 | 鈍化の理由や、買取店への回帰との因果は示されていない |
| 若年層を取り込めば市場が広がる | 売却で「利用したことがない」は2015年60.5%→2024年70.0%と一貫して増加 | 売る人の総数が増える見込みは、この数字からは読めない |
| フリマの売価と買取価格を比べれば優位を示せる | 「どこよりも高く買取り」は競合の買取価格を調査していない場合に問題になる(消費者庁 5類型) | フリマの売価は出品者の手取りではなく、比較の根拠にならない |
若年層に訴求するとき、フリマアプリで売った場合との比較が持ち出されます。ここは表示の面で慎重を要する領域です。フリマの売価は買い手が支払う金額であり、出品者の手取りではありません。手数料、送料、梱包、発送、購入者とのやり取り、返品対応が出品者側の負担として乗ります。
一方、買取店の提示額は、その場で受け取れる手取りです。両者は性質が違うため、単純な金額比較は成り立ちません。それでも比較の形で表示すると、優良誤認の判断に踏み込みます。
消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書」(令和7年4月30日)は、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。「どこよりも高く買取り」は、他社と比較して最も高いと消費者が受け取る表示で、事実と異なる場合に問題になります。報告書は、買取価格地域No.1と表示しながら競合他社の買取価格を何ら調査していない場合を問題として挙げています。比較の根拠として調査すべきは他社の買取価格であり、フリマの売価ではありません。
「買取価格アップ」の類型も、若年層向けのキャンペーン設計で当たりやすい場所です。実際にはアップしない場合が問題になるほか、キャンペーンの常態化も問題とされ、1月末までと表示して2月以降も同内容を継続する例が挙げられています。期間限定の見せ方を続ける運用は、この指摘に直接該当します。強調表示を使うなら、例外がある場合の打消し表示を分かりやすく適切に行う必要があります。
若年層をフリマから取り戻すという計画を立てるなら、その市場が今どう動いているかを確認します。経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)では、2024年のCtoC-ECは2兆5,269億円で、2023年の2兆4,817億円から1.82%の伸びです。
同じ調査でBtoC-ECは24.8兆円から26.1兆円へ5.1%増、BtoB-ECは465.2兆円から514.4兆円へ10.6%増です。EC化率はBtoC-ECが9.8%、BtoB-ECが43.1%です。CtoCの伸びは、他の区分に比べて明らかに鈍化しています。なお同調査は、CtoC取引には実際にはBtoB・BtoCの取引も含まれると注記しています。
環境省の売却データでフリマが初めて減ったことと、CtoCの伸びが1.82%に鈍化したことは整合します。フリマが伸び続けているという前提でシェアの奪還を計画すると、実際には縮んでいない代わりに広がってもいない市場を相手にすることになります。
この条件では、若年層の獲得を「フリマから奪う」ではなく「売る経験がない人に売るという選択肢を知らせる」と置き直すほうが実態に合います。売却で「利用したことがない」割合は10・20代63.5%、30代62.6%で、どちらも6割を超えています。奪う相手より、経験のない層のほうが人数として大きい構造です。
買取業では査定額がそのまま仕入原価になります。若年層向けに買取価格を上げる施策は、全額が原価の増加です。中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和6年確報(令和5年度決算実績)」の法人企業・小売業では、粗利率が小売業全体29.8%、従業者5人以下31.7%、6〜20人31.2%、営業利益率が全体2.4%、5人以下0.2%、6〜20人1.5%です。小規模帯は粗利を数ポイント削れば営業利益が消えます。
在庫と資金の側も同じです。在庫回転期間は小売業全体33.5日、5人以下55.9日、6〜20人32.6日です。件数を伸ばせば買取原資の支出が先行し、回収は小規模帯で2か月近く先になります。1人あたりの累計粗利が薄い層で件数を伸ばすと、資金の負担だけが増えます。
仕入原価を動かさずに変えられるのは、手続きの手数、待ち時間、査定の説明、受付の段取りです。環境省の調査で、排出先を選んだ理由を1つだけ選ぶ設問では、金銭的な理由39.7%、煩雑な手続きや準備をしなくてすむから19.2%、まだ使用する人がいれば有効に利用して欲しかったから14.6%、自分で運搬する必要がなく家まで取りに来てくれるから6.2%です。価格以外で決まる比率が6割あります。
評価も分けます。価格を上げた施策は、増えた件数だけでなく粗利率の低下と在庫の増加を同じ表に置きます。手数を減らした施策は、粗利率を動かさずに件数が動いたかを見ます。両方を混ぜた月次では、どちらが効いたか判定できません。
年代別の来店構成を公表した業界統計はありません。したがって他店との比較はできず、判定は自店の記録で行います。古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき、または引き渡したときに、その都度帳簿等へ記載する義務を定めています。記載事項は取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条1項でとった措置の区分です。第18条1項により、最終記載の日から3年間備え付けます。
ここで若年層の測定には固有の問題が出ます。若年層が持ち込む商材は単価が低くなりやすく、1万円未満の取引は本人確認が免除されるためです。古物営業法第15条2項1号と施行規則第16条第1項により、免除の金額は1万円と定まっています。免除された取引では年齢が残りません。
ただし同条第2項の7品目は例外で、金額に関係なく確認が要ります。自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンディショナーの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。ゲームソフト、CD・DVD、書籍を扱う店では、低単価でも年齢が記録されます。法第16条の記帳義務も、この7品目では外れません。
したがって、自店の主力商材がこの7品目に該当するかどうかで、若年層の測定精度が変わります。該当しない商材が中心なら、法定帳簿だけでは若年層の来店が捕捉できません。施策の効果を測るなら、確認義務のない取引にも自店の記録を残すかどうかを、施策を始める前に決めておきます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 若年層とフリマを結びつける根拠が、購入側の数字になっていないか |
| 2 | 売却側で最も利用経験が高いのが30代(62.6%)であることを踏まえているか |
| 3 | フリマでの売却が2021年11.0%から2024年9.9%へ減少したことを、前提の見直しに反映しているか |
| 4 | 売却で「利用したことがない」割合が70.0%まで増え続けていることを、市場の広がりの前提に入れているか |
| 5 | 若年層の家から出る物の量について、断定せずに自店の帳簿で確認しているか |
| 6 | 年齢帯別の1件あたり金額と再訪率を出し、獲得費に見合うか確認しているか |
| 7 | フリマの売価と自店の買取価格を、比較の形で表示していないか |
| 8 | 「どこよりも高く」型の表示について、競合他社の買取価格を実際に調査した記録があるか |
| 9 | 期間限定のアップ表示を、期間経過後も同内容で継続していないか |
| 10 | 価格を上げる施策と手数を減らす施策を分けて評価しているか。前者では粗利率の低下と在庫の増加を同じ表に置いているか |
| 11 | 主力商材が施行規則第16条第2項の7品目に該当するか。該当しない場合、低単価取引で年齢が記録されないことを承知しているか |
購入側の年代差を売却側に持ち込み、若年層はフリマで売っていると決めてしまう失敗があります。環境省の調査でフリマアプリの利用に大きな年代差が出ているのは購入側で、10・20代20.8%、60代以上8.0%です。売却側では「利用したことがない」割合が30代62.6%、10・20代63.5%とほぼ同水準で、リユースショップでの売却は30代が60代以上より4.1ポイント高くなっています。買取店の客は売る人であり、参照すべきは売却側の数字です。
フリマが伸び続けている前提でシェア奪還の計画を立てる失敗があります。環境省の調査では、フリマアプリでの売却が2021年11.0%から2024年9.9%へ初めて減り、リユースショップでの売却は14.3%へ増加に転じています。経済産業省の調査でもCtoC-ECは2兆5,269億円で前年比1.82%と鈍化しており、BtoC-ECの5.1%増、BtoB-ECの10.6%増と差があります。奪う相手を前提にするより、売却で「利用したことがない」6割超の層を見るほうが人数として大きい構造です。
フリマの売価と自店の買取価格を並べて比較訴求を行い、表示の類型に触れる失敗があります。フリマの売価は買い手の支払額であり、手数料・送料・梱包・発送・返品対応を差し引いた出品者の手取りではありません。消費者庁の実態調査報告書は「どこよりも高く買取り」について、買取価格地域No.1と表示しながら競合他社の買取価格を何ら調査していない場合を問題として挙げています。比較するなら他社の買取価格を実際に調査し、その記録を残してください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 若年層はフリマアプリで売っているから買取店に来ないのですか | 売却側の数字ではそう言えません。環境省の調査で「利用したことがない」割合が最も低いのは30代の62.6%で、10・20代は63.5%とほぼ同水準です。リユースショップでの売却は30代が60代以上より4.1ポイント高くなっています。フリマの年代差が大きく出ているのは購入側で、10・20代20.8%、60代以上8.0%です。買取店の客は売る人なので、購入側の差をそのまま持ち込むと前提が入れ替わります。 |
| フリマから客を取り戻すことは可能ですか | 2024年調査では、フリマアプリでの売却が2021年の11.0%から9.9%へ初めて減り、リユースショップでの売却が14.3%へ増加に転じています。経済産業省の調査でもCtoC-ECは前年比1.82%と鈍化しています。ただし売却で「利用したことがない」割合は2015年60.5%から2024年70.0%へ増え続けており、売る人の総数は広がっていません。起きているのは経路の入れ替わりです。奪還を目標に置くより、売る経験がない6割超の層に選択肢を知らせるほうが人数として大きい対象になります。 |
| 若年層に届かない原因は、使っている広告媒体ですか | 媒体を疑う前に、その層の家から買取の対象になる物が出ているかを確認してください。環境省の調査で不要品の発生率は書籍29.1%、衣類25.8%、家具類17.2%、ブランド品14.4%です。ゲーム機器0.6%、玩具・模型4.3%、楽器類4.4%と低い品目もあります。これらは全年代の値で、年代別の内訳は公表されていないため断定はできません。自店の帳簿から年齢帯別の1件あたり金額と再訪率を出し、獲得費に見合うかを先に確認してください。 |
| フリマで売るより高いと訴求してよいですか | 比較の土俵が違うため、金額を並べる形は避けるのが安全です。フリマの売価は買い手の支払額で、出品者は手数料、送料、梱包、発送、返品対応を負担します。買取店の提示額はその場の手取りです。消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書」は、「どこよりも高く買取り」について、買取価格地域No.1と表示しながら競合他社の買取価格を何ら調査していない場合を問題として挙げています。比較の根拠にできるのは他社の買取価格であり、その調査記録が必要です。 |
| 若年層向けにキャンペーンを常設するのは問題ありますか | 消費者庁の実態調査報告書は「買取価格アップ」の類型について、実際にはアップしない場合に加えてキャンペーンの常態化も問題としています。1月末までと表示して2月以降も同内容を継続する例が挙げられています。期間限定の見せ方を続けたまま内容を変えない運用は、この指摘に該当します。強調表示を使う場合は、例外があるときの打消し表示を分かりやすく適切に行う必要があります。 |
| 若年層の来店が増えたかどうかは、どう測ればよいですか | 古物営業法第16条の帳簿にある年齢欄で測ります。第18条1項により最終記載の日から3年間備え付けられているため、前年同月との比較ができます。ただし第15条2項1号と施行規則第16条第1項により、対価の総額が1万円未満の取引は本人確認が免除され、年齢が残りません。若年層の持ち込みは単価が低くなりやすいため、この欠けが効きます。同条第2項の7品目(家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、書籍など)だけは少額でも記録が残ります。主力商材がどちらかで測定精度が変わります。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を11件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。











扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。若年層にリーチできないをジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


