
事業承継の記事の多くは、「相続なら承継できる」「譲渡では新規取得が要る」といった結論から入ります。この記事はそこを書きません。手元にある古物営業法の条文は、第3条の許可、第4条の欠格事由、第12条の標識、第13条の管理者、第14条の受取場所、第15条の確認、第16条の記帳、第18条の保存、第31条から第35条の罰則であり、許可の承継を定めた規定がここに含まれていないためです。
確認先は2つです。主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係と、その都道府県警の公式ページです。古物商許可の申請実務では、申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署(防犯係)、手数料は19,000円で不許可でも返金されず、標準処理期間は約40日(書類の補正期間を含まない)とされています。承継の手続きが新規申請と同じ流れになるのかどうかも、ここで確認する事項です。
照会するときは、承継の形を具体的に示してください。個人事業主が死亡した場合、個人事業主が生前に子へ引き継ぐ場合、個人事業を法人化する場合、法人の株式を譲渡する場合、法人の事業の一部を譲渡する場合では、前提が違います。
書けないことを書かないのは、記事を薄くするためではありません。承継の手続きは1回しか起きず、やり直しが効かない場面が多いためです。誤った結論を前提に段取りを組むと、営業を止める期間が発生します。
法第3条は、古物商・古物市場主の営業に都道府県公安委員会の許可を求めています。個人で取得した許可はその個人に、法人で取得した許可はその法人に付きます。ここが承継の設計の出発点です。
1つ目の形は相続です。個人事業主が亡くなった場合、事業用の資産と債務は相続の対象になりますが、許可という行政上の地位がどう扱われるかは別の問題です。この記事では断定しません。
2つ目は法人成りです。個人事業を法人化すると、事業の中身が同じでも許可の名義人は別人格になります。「今までと同じ事業を続けるだけ」という感覚で手続きを省くと、名義と実態がずれた状態で営業することになります。ここは所轄へ必ず確認してください。
3つ目は譲渡です。法人の株式を譲渡する場合、許可を持つ法人そのものは変わりません。一方、事業だけを別の法人へ譲渡する場合、譲受側が許可を持っているかどうかが問題になります。同じ「事業承継」という言葉で括られていても、手続きの中身が違います。
法第4条は、許可を与えない場合として欠格事由を定めています。法第13条第2項は、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は管理者になれないと定めています。
承継の手続きがどうなるにせよ、後継者側がこれらの要件を満たしていなければ、営業を続ける形自体が作れません。承継の計画を立てるとき、資産の評価や税務より先に確認するのはここです。
法第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを定めています。承継で代表者が交代しても、営業所ごとの管理者は別に必要です。前経営者が全営業所の管理者を兼ねていた場合、交代と同時に選任の手当てが要ります。
法第13条第3項は、管理者に不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を定めています。後継者に真贋や不正品の判断を引き継ぐ作業は、この条文が想定している範囲です。引き継ぎの教材は帳簿から作れます。法第16条の記載事項には品目及び数量と古物の特徴が入っているため、過去3年分の取引が題材になります。
| 論点 | この記事で書けること | 確認先 |
|---|---|---|
| 許可が承継できるか | 書かない(手元の条文に承継の規定がない) | 主たる営業所を管轄する警察署の防犯係/都道府県警の公式ページ |
| 相続・法人成り・譲渡の手続きの違い | 形が別物であることまで | 同上 |
| 手続き中に営業を続けてよいか | 書かない | 同上 |
| 許可の性質 | 個人の許可は個人に、法人の許可は法人に付く(法第3条) | e-Gov法令検索の条文 |
| 後継者の資格 | 法第4条の欠格事由。法第13条第2項により管理者にもなれない | 同上 |
| 管理者の選任 | 法第13条第1項により営業所ごとに1人 | 同上 |
| 無許可営業の罰則 | 法第31条第1号は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 同上 |
| 帳簿の保存 | 法第18条第1項の3年間は事業をやめても期間が残る | 同上/所轄警察署 |
| 帳簿の亡失 | 法第18条第2項により直ちに所轄警察署長へ届出 | 同上 |
| 承継した顧客情報の利用 | 個人情報保護法第18条第2項が承継前の利用目的の範囲に制限 | 個人情報保護委員会・弁護士 |
| 新規申請の実務 | 手数料19,000円(不許可でも返金なし)・標準処理期間約40日 | 都道府県警の公式ページ |
| 承継の対価・費用の相場 | 書かない(一次情報がない) | 税理士・事業承継を扱う専門機関 |
法第31条第1号は、無許可で古物営業を営んだ場合に3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。第31条第2号は、偽りその他不正の手段で許可を受けた場合に同じ罰を定めています。
承継の手続きが完了するまでの間に営業を続けてよいかどうかは、承継の形と所轄の判断によります。この記事では断定しません。ただし、判断を待たずに営業を続けた結果が無許可営業に当たると評価される可能性は、条文の存在から否定できません。
実務として決めるのは、営業を止める期間を許容できるかどうかです。標準処理期間が約40日とされる新規申請と同じ流れになる場合、その間の売上と支払いをどう賄うかを先に見積もることになります。買取業は支払いが先行する商売で、在庫が現金に戻るまでに時間がかかります。中小企業実態基本調査の令和6年確報では、中小小売業のうち従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日です。
刑の名称にも注意してください。2022年の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されています。古い資料や他社の記事の「懲役」表記をそのまま社内文書へ写さないでください。
法第18条第1項は、帳簿等を最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることを定めています。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。この期間は、事業を続けているかどうかで変わる規定ではありません。
承継や廃業のときに実際に起きるのは、店舗を引き払う場面での帳簿の扱いです。最終記載の日から3年が経っていない帳簿は、まだ期間の途中です。物理的な保管場所をどこに移すのか、電磁的記録の場合に誰が表示できる状態を維持するのかを、引き渡しの計画に入れてください。
法第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに、直ちに所轄警察署長へ届け出ることを定めています。引っ越しや整理の過程で失われた場合も、この届出の対象です。
誰が保管の責任を負うのかは、承継の形によって変わります。所轄へ照会する項目の1つとして、承継後に帳簿を誰がどこに備え付けるのかを必ず含めてください。譲渡の場合、譲渡契約の中で帳簿の引き渡しをどう書くかが実務の論点になります。
第16条の帳簿には、相手方の住所・氏名・職業・年齢が3年分残ります。承継では、この記録がそのまま次の事業者の手に渡ります。
個人情報の保護に関する法律第18条第2項は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合には、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて当該個人情報を取り扱ってはならないと定めています。
つまり、承継した顧客情報の使い道は、承継前に特定されていた利用目的の範囲に縛られます。前の事業者が「買取取引に伴う記録の保存」という目的だけを特定していた場合、承継後に新しい販促へ転用することは、この条文の制限にかかります。同法第17条は利用目的の特定、第18条第1項は利用目的による制限を定めています。
承継の準備として実行できるのは、現在の利用目的がどう特定され、どう公表されているかを確かめることです。同法第21条は取得に際しての利用目的の通知等、第23条は安全管理措置、第27条は第三者提供の制限を定めています。承継の具体的な当てはめは個人情報保護委員会の公表資料と顧問弁護士に確認してください。ここで断定はしません。
承継の場面では、直近の決算書で事業の状態を見ることになります。買取業では、この見方に固有の注意があります。仕入原価が査定額で決まるため、粗利率は市場環境だけでなく、前経営者が買取価格をどう付けていたかを直接反映します。
中小企業実態基本調査の令和6年確報(令和5年度決算実績、法人企業・小売業)によると、従業者5人以下は粗利率31.7%、営業利益率0.2%、在庫回転期間55.9日です。従業者6〜20人は粗利率31.2%、営業利益率1.5%、在庫回転期間32.6日です。小売業全体は粗利率29.8%、営業利益率2.4%、在庫回転期間33.5日です。
粗利率は5人以下のほうが高いのに、営業利益率は0.2%対1.5%と大きく劣ります。粗利を取れていないのではなく、在庫が現金に変わる速度で負けている構造です。承継の直前に買取価格を絞れば粗利率は上がりますが、集客が落ちて在庫の回転も落ちます。1期分の粗利率だけで事業の力を評価しないでください。
この数字は買取業に限定した統計ではなく、小売業全体の値です。「買取店の適正な粗利率」として使うことはできません。承継の対価の算定方法や費用の相場についても、公表された一次情報が手元にないため示しません。金額の算定は、税理士および事業承継を扱う専門機関に確認してください。
1つ目は照会です。承継の形(相続・生前の引き継ぎ・法人成り・株式譲渡・事業譲渡のいずれか)を具体的に書いた照会文を作り、主たる営業所を管轄する警察署の防犯係へ出します。確認する項目は、手続きの種類、必要な書類、営業を継続できる期間の扱い、帳簿の保管責任の4つです。
2つ目は後継者の資格です。法第4条の欠格事由と法第13条第2項の管理者の要件を、後継者と各営業所の管理者候補について確認します。営業所ごとに管理者を1人選任する必要があるため(法第13条第1項)、前経営者が兼任していた分の手当てを計画に入れてください。
3つ目は記録の引き渡しです。法第16条の帳簿について、最終記載の日から3年が経過していないものを特定し、承継後の保管場所と担当者を決めます。電磁的記録の場合は、直ちに書面へ表示できる状態を誰が維持するかまで決めてください。個人情報については、承継前の利用目的が何であったかを文書で確認し、承継後の取扱いを個人情報保護委員会の資料と弁護士に確認します。
この3つが片付いてから、対価の算定や税務の設計に入る順序になります。逆にすると、金額の話が固まった後で許可の手続きが想定と違い、条件を組み直すことになります。所轄への照会は無料で、日数もかかりません。最初に済ませてください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 承継の形(相続・生前の引き継ぎ・法人成り・株式譲渡・事業譲渡)を1つに特定したか |
| 2 | その形を具体的に書いた照会文で、主たる営業所を管轄する警察署の防犯係へ確認したか |
| 3 | 手続きの種類・必要書類・営業継続の可否・帳簿の保管責任の4項目を照会に含めたか |
| 4 | 後継者について、法第4条の欠格事由に当たらないことを確認したか |
| 5 | 各営業所の管理者候補について、法第13条第2項の要件を確認したか |
| 6 | 前経営者が兼任していた管理者の分を、選任の計画に入れたか |
| 7 | 手続きの間に営業を止める場合、その期間の資金繰りを見積もったか |
| 8 | 最終記載の日から3年が経過していない帳簿を特定し、承継後の保管場所と担当者を決めたか |
| 9 | 電磁的記録の帳簿について、直ちに書面へ表示できる状態を誰が維持するか決めたか |
| 10 | 承継前に特定されていた個人情報の利用目的を、文書で確認したか |
| 11 | 承継後の顧客情報の取扱いを、個人情報保護委員会の資料と弁護士に確認したか |
| 12 | 直近1期の粗利率だけで事業を評価せず、買取価格の付け方と在庫回転期間を併せて見たか |
他社の記事の「相続なら許可を引き継げる」といった結論を前提に段取りを組むケースです。手元の古物営業法の条文には許可の承継を定めた規定が含まれておらず、この記事でも断定しません。承継の形は相続・生前の引き継ぎ・法人成り・株式譲渡・事業譲渡で別物で、それぞれ手続きが変わります。主たる営業所を管轄する警察署の防犯係へ、形を具体的に示して照会してください。照会に費用はかかりません。
個人事業を法人化するとき、事業の中身が同じだからと手続きを省くケースです。法第3条の許可は、個人で取得すればその個人に、法人で取得すればその法人に付きます。法人成りでは名義人が別人格になります。手続きの空白期間に営業を続けた場合、法第31条第1号の無許可営業(3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に当たると評価される可能性を、条文の存在から否定できません。所轄への確認を先に済ませてください。
承継した顧客名簿を、新しい体制の販促にそのまま使うケースです。第16条の帳簿には相手方の住所・氏名・職業・年齢が3年分残ります。個人情報保護法第18条第2項は、事業の承継に伴って個人情報を取得した場合、あらかじめ本人の同意を得ないで承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないと定めています。承継前の利用目的が何であったかを文書で確認し、当てはめは個人情報保護委員会の資料と弁護士に確認してください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 父が亡くなった場合、古物商の許可はそのまま使えますか | この記事では断定しません。手元にある古物営業法の条文に、許可の承継を定めた規定が含まれていないためです。主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係へ、相続であることを明示して照会してください。確認する項目は、手続きの種類、必要な書類、手続きが終わるまで営業を続けられるか、そして帳簿を誰が保管するかの4つです。都道府県警の公式ページも併せて確認してください。 |
| 個人事業を法人にする場合、許可はどうなりますか | 法第3条の許可は、個人で取得すればその個人に、法人で取得すればその法人に付きます。法人成りでは名義人が別人格になるため、事業の中身が同じでも手続きが必要かどうかは所轄への確認事項です。この記事では断定しません。新規申請と同じ流れになる場合、申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署、手数料は19,000円で不許可でも返金されず、標準処理期間は約40日(補正期間を含まない)とされています。 |
| 後継者に必要な資格はありますか | 法第4条の欠格事由に当たらないことが前提になります。法第13条第2項は、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は管理者になれないと定めています。加えて法第13条第1項により、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任します。前経営者が全営業所の管理者を兼ねていた場合、交代と同時に選任の手当てが要ります。法第13条第3項は、管理者に不正品を判断するための知識・技術・経験を得させる努力義務を定めています。 |
| 廃業したら帳簿は処分してよいですか | 法第18条第1項は、帳簿等を最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることを定めています。この期間は事業を続けているかどうかで変わりません。最終記載の日から3年が経過していない帳簿は、保管場所を移すことになります。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。第18条第2項は、き損・亡失・滅失したときに直ちに所轄警察署長へ届け出ることを定めています。 |
| 承継した顧客名簿はどう使えますか | 個人情報保護法第18条第2項は、合併その他の事由により事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合、あらかじめ本人の同意を得ないで承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないと定めています。承継前にどう利用目的が特定されていたかで、使える範囲が決まります。同法第17条が利用目的の特定、第21条が取得に際しての通知等、第23条が安全管理措置、第27条が第三者提供の制限です。具体的な当てはめは個人情報保護委員会の資料と弁護士に確認してください。 |
| 事業の価値はどう評価すればよいですか | 算定方法と費用の相場は、公表された一次情報が手元にないため示しません。税理士および事業承継を扱う専門機関に確認してください。買取業に固有の注意として、仕入原価が査定額で決まるため、粗利率は買取価格の付け方を直接反映します。承継直前に買取価格を絞れば粗利率は上がりますが、在庫の回転は落ちます。中小小売業の従業者5人以下は粗利率31.7%・営業利益率0.2%・在庫回転期間55.9日、6〜20人は粗利率31.2%・営業利益率1.5%・在庫回転期間32.6日です。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を12件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。












扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。後継者・事業承継をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


