
販売先の国の輸入規制、表示義務、認証、決済や返品に関する現地のルールは、それぞれの国の法令で定まります。この記事の基にしている一次情報にそれらは含まれていないため、要件も数値も書きません。
確認先は、販売先の国の所管当局と税関です。プラットフォームを経由する場合は、その事業者が公表している出品規約と禁止品目の一覧が実務上の一次資料になります。品目名と仕向地を具体的に示して確認してください。
他社の記事から相手国の要件を写して社内手順を作ると、改正に気づけません。手順書には、確認先・確認日・確認した担当者を書く欄を作り、要件そのものは出典のリンクで参照する形にしてください。
この記事が扱うのは、その前段です。越境で問題が起きる場面の多くは、売り先ではなく仕入れの側にあります。国内で買った時点の手続きは日本の法令で確定しており、条番号まで書けます。
消費者の自宅等、営業所等以外の場所で売買契約の申込みを受け、または契約を締結して物品を購入する取引は、特定商取引法の訪問購入に当たります。定義は第58条の4です。クーリング・オフは、法定書面を受け取った日から数えて8日以内です。
国内で転売する場合、8日のうちに買主が現れても、物は国内にあります。越境ではこれが変わります。仕入れた物をすぐ海外へ発送すれば、クーリング・オフの申出があった時点で、物は日本国内に存在しません。回収の可否と費用は、事業者側の負担になります。
第58条の9は、訪問購入に係る売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受けるときに、当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければならないと定めています。つまり、その場で物を受け取らないという選択肢を相手に示す義務があります。この告知をしていれば、8日以内の発送そのものが減ります。
さらに、クーリング・オフ期間内に第三者へ引き渡した場合、相手方に通知する義務があります。越境販売では第三者が海外の買主になり、この通知が実際に発生します。通知の文面と送付の経路を先に用意していない事業者は、ここで手が止まります。
クーリング・オフの適用除外物品は、特定商取引法第26条と施行令別表第二で定まっています。二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券です。
越境で扱われる商材と照らすと、本・CD・DVD・ゲームソフト類は適用除外に入り、ブランド品・時計・宝飾品・カメラ・工具類は入りません。1回の訪問で両方を買い取れば、同じ伝票の中に8日間の拘束がかかる物とかからない物が混在します。
運用としてまずいのは、混在を意識せずに「全部まとめて発送」と決めてしまうことです。適用除外でない物を8日以内に海外へ出すと、申出があったときに戻せません。逆に、適用除外の物まで8日間止めると、回転が落ちます。
現実的な設計は、伝票の段階で分けることです。品目ごとに、クーリング・オフの対象かどうかを判定して記録し、対象の物は8日を過ぎるまで国内の在庫に置きます。判定を現場の記憶に任せず、品目一覧を印刷して査定台に置いてください。
| 場面 | 効いてくる規定 | 越境で何が変わるか |
|---|---|---|
| 出張で買い取る | 特定商取引法第58条の4(訪問購入の定義) | 国内の消費者から買う限り、売り先が海外でも訪問購入 |
| 勧誘に先立つ告知 | 第58条の5(氏名・勧誘目的・物品の種類の明示) | 変わらない。公表処分の違反行為の筆頭 |
| 勧誘の可否 | 第58条の6第1項〜第3項(不招請勧誘・意思確認・再勧誘の禁止) | 変わらない |
| 書面の交付 | 第58条の7・第58条の8 | 変わらない |
| 引渡しの拒絶の告知 | 第58条の9 | 告知を実行すると、8日以内の発送そのものが減る |
| クーリング・オフ | 法定書面を受け取った日から数えて8日以内 | 8日以内に発送すると物が国内にない |
| 期間内の第三者引渡し | 相手方への通知義務 | 第三者が海外の買主になり、通知が実際に発生する |
| 適用除外物品 | 第26条・施行令別表第二(二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券) | 同じ伝票に対象と除外が混在する |
| 宅配で集荷する | 施行規則第15条第3項の13号 | どの号で確認したかを法第16条第5号として記帳 |
| 不正品の疑い | 古物営業法第15条第3項(直ちに警察官へ申告) | 海外へ出た後は国内で追跡できない |
| 記録の保存 | 古物営業法第18条第1項(最終記載の日から3年間) | 照会が来たときの復元の起点になる |
| 相手国の規制 | この記事では扱わない | 販売先の国の所管当局・税関・プラットフォームへ照会 |
特定商取引法の訪問購入の規定には、法自体の適用除外があります。営業のため若しくは営業として締結するもの、海外にいる人に対する訪問購入、国・地方公共団体が行うもの、特別法に基づく組合等が組合員を対象に行うもの、事業者がその従業員に対して行うものです。
ここで「海外にいる人に対する訪問購入」が挙げられているため、越境販売なら適用外だと読み違える例があります。これは買い取る相手方が海外にいる場合の話です。日本国内の消費者から買い取り、それを海外へ売る取引は、買取の段階で国内の訪問購入に当たります。
同様に「営業のため若しくは営業として締結するもの」も、相手方が事業者である場合の規定です。自店が事業者であることを理由に外れる規定ではありません。
御用聞き取引、常連取引、住居からの退去に際して誘引された場合は、一部の規定のみが適用されます。ただし「常連だから外れる」と現場が判断できる話ではないため、社内では原則として全件を訪問購入として扱い、例外の適用は弁護士に確認してから決めてください。
特定商取引法に基づく行政処分は、消費者庁・地方経済産業局・都道府県が公表しています。処分件数は2025年度80件、2026年度は2026年8月時点で23件です。取引類型は訪問販売・通信販売・訪問購入など全類型を含みます。
2026年8月4日、九州経済産業局は訪問購入を行う3社に対し、業務停止命令9か月と指示を出し、代表者にも業務禁止命令9か月を出しました。取扱商品はいずれも宝石、貴金属、時計等の中古品です。2025年11月26日には、消費者庁が1社に対し、勧誘・申込受付・契約締結について業務停止命令9か月を出しています。
3社に共通する違反行為として公表されているのは、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反、勧誘の要請をしていない者への勧誘、契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘、勧誘を受ける意思を確認しないで行う勧誘です。適用条項は法第58条の5、第58条の6第1項から第3項、第58条の8第2項、第58条の9とされています。
止まっている理由は、名乗る・書面を渡す・断られたら勧誘をやめる・引渡しを拒めることを告げる、という手続きの不履行です。越境の体制を作る前に、この4つが自店で実行されているかを確かめてください。順序としてはこちらが先になります。
古物営業法第15条第3項は、買い受けようとする古物について不正品の疑いがあると認めるときに、直ちに警察官へ申告することを定めています。承認を待つ手順を挟むと「直ちに」を満たせません。
警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、古物商による不正品申告は129件でした。区分別では道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件で、上位3区分の90件が全体の約7割を占めます。
越境で売れる商材は、時計・宝飾品類と機械工具類、道具類に集中しがちです。つまり販路の魅力が高い区分と、不正品の申告が多い区分が重なっています。いったん海外へ出れば、国内で追跡する手段はありません。
写真機類と金券類は0件ですが、これは申告に至った件数が0だったという事実にとどまります。その区分に不正品が流れていないことを示すものではないため、確認を省く根拠にしないでください。
越境販売を行う事業者は、仕入れを宅配買取で集める場合があります。非対面の確認は解釈の問題ではありません。法第15条第1項第4号の「国家公安委員会規則で定める措置」は、施行規則第15条第3項に13号列挙されています。
いずれも住所・氏名・職業・年齢の申出を受けることを共通の前提とし、その上に確認手段が乗ります。第三号・第六号・第七号は代金の支払方法とセットで、本人限定受取郵便物等での支払、住民票の写し等と同名義の預貯金口座への振込、身分証明書等の写しと転送しない取扱いの配達記録郵便物等による到達確認と同名義口座への振込という形をとります。
第八号・第九号がeKYCです。第八号は古物商が提供するソフトで容貌と写真付き身分証明書等を撮影させて画像情報の送信を受ける方法ですが、身分証明書等については厚みその他の特徴が確認できることが要件です。第十三号は識別符号による再取引の簡略化で、初回にとった措置の質がそのまま引き継がれます。
どの号で確認したかは、法第16条第5号の「第15条第1項でとった措置の区分」として帳簿に残ります。海外へ出した後に照会が来たとき、この記載が復元の起点になります。法第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。
1つ目は国内の手続きです。訪問購入をしているなら、氏名等の明示、勧誘を受ける意思の確認、書面の交付、引渡しを拒める旨の告知の4つが実行されているかを、実際の訪問に同行して確かめてください。公表されている処分事例は、この4つの不履行に集中しています。
2つ目は伝票の分離です。クーリング・オフの対象になる物と適用除外物品を、品目単位で判定して記録します。適用除外は二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券です。対象の物は8日を過ぎるまで国内に置く在庫区分を作ってください。
3つ目が相手国の照会です。品目名と仕向地を書いた照会文を、販売先の国の所管当局と税関、利用するプラットフォームの事業者に出します。回答を得るまで、その品目の出品は保留にします。
越境の販路を作ると、店頭よりも高い価格を出せる場面が生まれます。消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書」(令和7年4月30日)が整理した5類型のうち、買取参考価格・買取実績価格と、どこよりも高く買取りの2つは、根拠を持たずに書くと問題になります。同報告書に掲載された2023年のチャネル別構成比は店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%で、買取の大半は店頭での個人取引です。販路の話を仕入れ側の表示に持ち込むときは、比較調査の記録を残してください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 出張買取を訪問購入として扱い、氏名等の明示・意思確認・書面交付・引渡し拒絶の告知の4つを実行しているか |
| 2 | 実際の訪問に同行し、4つが現場で行われていることを確認したか |
| 3 | クーリング・オフの起算日(法定書面を受け取った日から8日以内)を、伝票上で管理しているか |
| 4 | クーリング・オフの対象物品と適用除外物品を、品目単位で判定して記録しているか |
| 5 | 適用除外物品の一覧を印刷し、査定の現場に置いてあるか |
| 6 | 8日を過ぎるまで国内に留め置く在庫区分を作り、発送の工程と分けたか |
| 7 | 期間内に第三者へ引き渡した場合の通知の文面と送付経路を、あらかじめ用意したか |
| 8 | 「海外にいる人に対する訪問購入」の適用除外を、越境販売に当てはめていないか |
| 9 | 宅配で集荷する場合、施行規則第15条第3項の何号の方法をとっているかを特定したか |
| 10 | 法第16条第5号の「措置の区分」を、実際に帳簿へ書き分けているか |
| 11 | 不正品の疑いに対する申告を、承認を待たずに担当者が実行できる手順にしてあるか |
| 12 | 販売先の国の所管当局・税関・プラットフォームへ、品目名と仕向地を書いた照会文を出したか |
仕入れた物を8日以内に海外へ発送し、クーリング・オフの申出があったときに戻せなくなるケースです。訪問購入のクーリング・オフは法定書面を受け取った日から数えて8日以内で、適用除外物品は二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券に限られます。ブランド品・時計・宝飾品・カメラ・工具類は対象です。特定商取引法第58条の9の引渡し拒絶の告知を実行し、対象物品は8日を過ぎるまで国内に置く在庫区分を作ってください。
「海外にいる人に対する訪問購入」という法自体の適用除外を、越境販売に当てはめてしまうケースです。これは買い取る相手方が海外にいる場合の規定であって、日本国内の消費者から買い取って海外へ売る取引は、買取の段階で国内の訪問購入に当たります。2026年8月4日に九州経済産業局が3社へ出した業務停止命令9か月の違反行為は、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、引渡しの拒絶に関する告知義務違反、不招請勧誘などで、いずれも手続きの不履行でした。
越境で売れる区分と、不正品申告の多い区分が重なっていることを見落とすケースです。令和7年の古物商による不正品申告は129件で、道具類37件・時計宝飾品類31件・機械工具類22件の上位3区分で90件、全体の約7割を占めます。海外へ出た後は国内で追跡できません。写真機類と金券類の0件は、申告に至った件数が0だったという事実にとどまり、その区分が安全であることを示しません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 海外に売るのだから、日本の訪問購入の規制は関係ありませんか | 関係します。特定商取引法第58条の4の訪問購入は、購入業者が営業所等以外の場所で売買契約の申込みを受け、または契約を締結して物品を購入する取引です。判定されるのは買い取る場面であって、その後どこへ売るかではありません。法自体の適用除外に「海外にいる人に対する訪問購入」がありますが、これは買い取る相手方が海外にいる場合の規定です。日本国内の消費者から買う限り、訪問購入に当たります。 |
| クーリング・オフ期間中に海外へ発送してもよいですか | 発送そのものを禁じる規定ではありませんが、申出があったときに戻せなくなります。クーリング・オフは法定書面を受け取った日から数えて8日以内で、期間内に第三者へ引き渡した場合は相手方への通知義務が発生します。第58条の9は、相手方から直接物品の引渡しを受ける時に、引渡しを拒むことができる旨を告げなければならないと定めています。この告知を実行すると、そもそも8日以内に手元へ来る物が減ります。 |
| どの品目がクーリング・オフの対象になりますか | 適用除外物品は特定商取引法第26条と施行令別表第二で定まっており、二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券です。それ以外は対象です。越境で扱われることの多いブランド品、時計、宝飾品、カメラ、工具類は対象に入ります。1回の訪問で対象と除外が同じ伝票に混ざるため、品目単位で判定して記録し、対象の物だけ8日を過ぎるまで国内に留めてください。 |
| 相手国の輸入規制はどこで確認すればよいですか | この記事では相手国の要件を扱いません。確認できる一次情報が手元にないためです。販売先の国の所管当局と税関、そして利用するプラットフォームが公表している出品規約と禁止品目の一覧に、品目名と仕向地を具体的に示して照会してください。社内手順書には要件そのものを書き込まず、確認先・確認日・担当者を記録する欄を作り、要件は出典のリンクで参照する形にしてください。 |
| 宅配で集荷する場合、本人確認はどうすればよいですか | 施行規則第15条第3項に13の方法が列挙されています。いずれも住所・氏名・職業・年齢の申出を前提とし、第三号・第六号・第七号は代金の支払方法とセットで本人限定受取郵便物等や同名義口座への振込を確認手段に使います。第八号・第九号がeKYCで、第八号は身分証明書等の厚みその他の特徴まで確認できることが要件です。とった措置の区分は法第16条第5号として帳簿に記載し、第18条第1項により最終記載の日から3年間備え付けます。 |
| 越境の販路があることを、買取価格の訴求に使えますか | 根拠の記録が要ります。消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書」(令和7年4月30日)は、問題になりやすい表示を買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取りの5類型に整理しています。他社比較を掲げるなら、競合他社の買取価格を実際に調査した記録が要ります。同報告書に掲載された2023年のチャネル別構成比は店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を6件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。






扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。越境販売の規制対応をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


