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多店舗の統制:出せる店舗数は資金ではなく、営業所ごとに管理者を選任できる人数で決まる

古物営業法第13条第1項は、営業所ごとに管理者を1人選任することを定めています。令和2年4月1日施行の改正で許可は主たる営業所の公安委員会に一本化されましたが、管理者は営業所ごとのままです。許可が1件でも、営業所が5つあれば管理者は5人要ります。この記事では、許可の数と営業所の数が別であること、標識と帳簿が営業所単位でかかること、店舗ごとに運用の重さが変わる理由が施行規則第16条第2項の7品目にあること、そして統制の効果を自店の帳簿から測る方法を整理します。損益分岐点や店舗あたりの費用相場は、一次情報がないため書きません。
運営課題 🕐 2026-08-31 / 買取ラボ編集部
多店舗の統制:出せる店舗数は資金ではなく、営業所ごとに管理者を選任できる人数で決まる

許可は1件に一本化されたが、管理者は営業所ごとに要る

古物営業法第3条は、古物商・古物市場主の営業に都道府県公安委員会の許可を求めています。令和2年4月1日施行の改正で、許可の単位が「営業所等の所在する都道府県ごと」から「主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会」の1件に改められました。

この改正は、許可の枚数を減らしただけです。第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを定めており、この単位は変わっていません。許可1件で全国に出店できるとしても、営業所の数だけ管理者を選ぶことになります。

第13条第2項は、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は管理者になれないと定めています。第13条第3項は、管理者に不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を古物商に課しています。

つまり出店の速度を決めるのは、物件でも資金でもなく、第13条第2項の要件を満たし、第13条第3項の知識を持った人を何人育てられるかです。ここを先に数えずに出店計画を作ると、開店の直前に管理者が足りないという形で詰まります。

許可件数の統計を店舗数として読むと、市場を読み違える

警察庁の統計では、古物商の許可件数は平成30年787,779件、令和元年778,332件、令和2年395,526件と推移しています。1年で半減していますが、これは実数の減少ではありません。令和2年4月1日施行の改正で許可単位が一本化されたためです。

令和2年以降は増加が続き、令和3年440,874件、令和4年483,276件、令和5年529,024件、令和6年571,946件、令和7年614,118件です。令和2年の395,526件から令和7年の614,118件まで、5年で55%増えています。令和7年末の古物商等(古物商+古物市場主)は615,194件で、前年比42,170件の増加です。

改正前後をつなげて「市場が半分になった」と書かないでください。同時に、令和2年以降の増加を「店舗数の増加」と読むこともできません。統計が数えているのは許可の件数であって、営業所の数ではないためです。

自社の競合環境をこの統計から推し量ることはできません。営業所の数を示す全国統計は、この資料には含まれていません。都道府県別の内訳もありません。エリアの店舗数を知りたい場合は、実地で数えるか、各都道府県警の公表資料を個別に当たることになります。

標識・URL表示・帳簿は、いずれも営業所の単位でかかる

第12条第1項は、営業所、仮設店舗、古物市場ごとに、公衆の見やすい場所へ標識を掲示することを定めています。本部でまとめて掲示する形は想定されていません。新規開店のたびに、標識の手配が工程に入ります。

第12条第2項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名・許可した公安委員会の名称・許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供することを定めています。許可が一本化されているため、この表示は許可の単位で行うことになります。標識が営業所ごと、URL表示が許可ごとという、単位の違いがここにあります。

第18条第1項は、帳簿等を最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることを定めています。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。施行規則第19条は、電磁的方法で保存する場合に国家公安委員会が定める基準を確保するよう努めることを定めています。

本部のサーバーに帳簿を集約する運用をとる場合でも、「営業所等に備え付ける」という要件が消えるわけではありません。各営業所で直ちに書面に表示できる状態になっているかを、実際に端末を操作して確かめてください。通信が止まったときに表示できない構成は、この要件との関係を所轄警察署へ確認する対象になります。

多店舗で何が許可単位・営業所単位・取引単位でかかるか(出典は記事末尾)

単位何がかかるか根拠
許可主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会に1件(令和2年4月1日施行の改正)法第3条
営業所ごと管理者を1人選任法第13条第1項
管理者の要件未成年者・第4条第1号〜第7号の欠格事由に該当する者はなれない法第13条第2項
管理者の教育不正品を判断するための知識・技術・経験を得させる努力義務法第13条第3項
営業所・仮設店舗・古物市場ごと公衆の見やすい場所へ標識を掲示法第12条第1項
許可ごと氏名・公安委員会の名称・許可証番号のインターネット上の表示法第12条第2項
営業所等ごと帳簿等を最終記載の日から3年間備え付け法第18条第1項
電磁的記録3年間、直ちに書面に表示できる状態。基準の確保は努力義務法第18条第1項・施行規則第19条
取引ごと相手方の真偽の確認(対価の総額1万円未満は免除、例外7品目あり)法第15条・施行規則第16条
取引ごと帳簿等への記載(5項目)法第16条
その場不正品の疑いがあるときは直ちに警察官へ申告法第15条第3項
営業所ごと帳簿等のき損・亡失・滅失は直ちに所轄警察署長へ届出法第18条第2項

店舗ごとに運用の重さが違うのは、取扱品目が違うからである

全店に同じマニュアルを配ると、守れる店と守れない店に分かれます。原因は担当者の練度ではなく、取扱品目です。法第15条第2項第1号と施行規則第16条第1項により、対価の総額が1万円未満の取引は確認義務が免除され、法第16条ただし書により記帳も免除されます。

ただし施行規則第16条第2項は、1万円未満でも確認が必要な7品目を挙げています。自動二輪車及び原動機付自転車(汎用部分品を除く)、エアコンディショナーの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。

ゲームソフト・CD/DVD・書籍を扱う店舗は、1点数百円の買取でも確認と記帳が全件発生します。同じチェーンの中でも、貴金属中心の店舗は単価が高く免除の帯域がほとんど発生しないため、1件あたりの処理時間がまったく違います。

統制の設計としては、店舗を取扱品目で類型に分け、類型ごとに手順書と処理時間の想定を分けることになります。全店共通で持つのは、確認の措置の区分(第16条第5号)の書き分け方と、不正品の疑いに対する申告の経路の2つに絞ると運用が保ちやすくなります。

不正品の申告は、本部の承認を待つ手順にできない

法第15条第3項は、買い受けようとする古物について不正品の疑いがあると認めるときに、直ちに警察官へ申告することを定めています。「直ちに」と書かれている以上、店長の判断や本部の承認を挟む手順は、この要件と両立しません。

多店舗になると、判断を本部へ吸い上げる設計が増えます。価格の決裁、値引きの承認、クレームのエスカレーション。同じ構造で申告のフローを作ると、条文の要件を満たさない手順が全店に配られることになります。

警察庁の統計では、令和7年の古物商による不正品申告は129件でした。区分別では道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件で、上位3区分の90件が全体の約7割を占めます。写真機類と金券類は0件ですが、これは申告に至った件数が0だったという事実にとどまります。

多店舗のチェーン全体で申告が長期間0件のとき、疑いが持ち込まれていないのか、現場が申告の経路を知らないのかは、外から区別できません。区別する方法は、各店舗の担当者に申告の連絡先を口頭で答えてもらうことです。答えられない店舗があれば、経路が届いていないという事実が分かります。

管理者講習の受講者数は、受講率ではない

警察庁の統計によると、令和7年の古物商等管理者講習は150回・19,602人で、うち自動車が47回・4,618人です。多店舗の教育計画を作るときに、この数字を「業界の受講率」として扱わないでください。分母となる管理者の総数は、この資料に示されていません。

第13条第3項の努力義務は、管理者に不正品を判断するための知識・技術・経験を得させることです。講習の受講は手段の1つであって、条文が受講そのものを義務づけているわけではありません。受講だけで努力義務を果たしたと社内で整理すると、判断の練習が抜けます。

多店舗で実行できる形は、実物を使った持ち回りの点検です。各店舗で判断に迷った物の写真と経緯を記録し、月次で全店へ回覧して、同じ物が来たらどうするかを答えさせる。回答のばらつきが、そのまま研修の題材になります。

この運用は帳簿から作れます。第16条の記載事項には品目及び数量と古物の特徴が入っているため、過去の取引から題材を拾えます。業界の平均データが手元になくても、自社の3年分の記録で教材が組めます。

店舗を増やすと、比べるべき指標の区分が変わる

中小企業実態基本調査の令和6年確報(令和5年度決算実績、法人企業・小売業)によると、従業者5人以下の粗利率は31.7%、営業利益率は0.2%、在庫回転期間は55.9日です。従業者6〜20人は粗利率31.2%、営業利益率1.5%、在庫回転期間は32.6日です。小売業全体は粗利率29.8%、営業利益率2.4%、在庫回転期間33.5日です。

この数字は買取業に限定した統計ではなく、小売業全体の値です。「買取店の粗利率は何%」とは読めません。使えるのは、同規模の小売業と比べて自社がどこにいるかを見る物差しとしてです。

注目すべきは、粗利率がむしろ5人以下のほうが高い(31.7%対31.2%)のに、営業利益率が0.2%対1.5%と大きく劣る点です。粗利を取れていないのではなく、在庫が現金に変わる速度で負けています。5人以下の55.9日と6〜20人の32.6日には1.7倍の差があります。

多店舗化で従業者数が6人以上の帯に入ると、比較対象がこちらへ移ります。店舗を増やしたのに在庫回転期間が55日前後のままなら、規模の帯に対して滞留しているという読み方ができます。買取業は仕入原価を自分で決められるため、粗利率の低下は原価が上がったのではなく買取価格を上げた結果です。店舗別に粗利率と回転期間を並べると、価格政策の差が数字に出ます。

統制の可否は、抜き打ちで1件の伝票を追えるかで判断する

統制の状態は、マニュアルの整備率では測れません。測るのは、任意の1店舗の任意の1取引を、本部が伝票から復元できるかどうかです。

手順は決まっています。無作為に日付と店舗を選び、その日の帳簿から1件を取り出す。記載事項5つ、すなわち取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分が埋まっているかを見ます。埋まっていない項目があれば、それが統制の穴です。

次に、その取引が施行規則第16条第2項の7品目に当たるかを判定し、1万円未満だった場合に確認と記帳がされているかを見ます。ここが抜けている店舗は、免除の線を品目で切り分けられていません。

測る頻度は四半期に1回、店舗数の分だけで足ります。全件を点検する必要はありません。復元できなかった件数を店舗別に記録し、次の四半期で同じ店舗を再度引くと、改善したかどうかが分かります。損益分岐点や1店舗あたりの必要売上といった数字は、公表された一次情報がないため、この記事では示しません。自店の帳簿と会計から作ってください。

確認すべきこと

#チェック項目
1営業所の数と、第13条第2項の要件を満たす管理者候補の人数を、名簿で突き合わせたか
2出店計画に、管理者の選任を工程として入れたか
3許可が1件であることと、営業所ごとに管理者が要ることを、店舗の責任者が説明できるか
4全営業所・仮設店舗で標識を掲示しているか(第12条第1項)
5インターネット上の表示(第12条第2項)が、現在の許可の内容と一致しているか
6帳簿を本部集約している場合、各営業所で直ちに書面に表示できることを端末で確かめたか
7取扱品目で店舗を類型に分け、類型ごとに手順書と処理時間の想定を分けたか
8施行規則第16条第2項の7品目を扱う店舗で、1万円未満でも確認と記帳をしているか
9不正品の疑いに対する申告を、承認を待たずに担当者が実行できる手順にしてあるか
10各店舗の担当者に、申告の連絡先を口頭で答えてもらったか
11四半期ごとに、無作為に選んだ1店舗1取引を帳簿から復元できるか試したか
12店舗別に粗利率と在庫回転期間を並べ、価格政策の差を数字で確認したか

よくある失敗

許可が主たる営業所の公安委員会に一本化されたことを、管理者も一本化されたと読み違えるケースです。法第13条第1項は営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを定めており、令和2年4月1日施行の改正はこの単位に触れていません。許可の数と営業所の数は別です。第13条第2項の欠格に当たらず、第13条第3項の知識を持った人を、営業所の数だけ用意することになります。

許可件数の統計を店舗数の推移として社内資料に載せるケースです。古物商の許可件数は令和元年778,332件から令和2年395,526件へ半減していますが、これは改正で許可単位が一本化されたためで、実数の減少ではありません。令和7年は614,118件、古物商等の合計は615,194件(前年比42,170件増)です。統計が数えているのは許可の件数であって営業所の数ではなく、都道府県別の内訳も公表されていません。

全店に同じ手順書を配り、守れない店舗を練度の問題として扱うケースです。原因は取扱品目にあります。対価の総額1万円未満の取引は確認と記帳が免除されますが(法第15条第2項第1号・施行規則第16条第1項・法第16条ただし書)、施行規則第16条第2項の7品目は金額に関係なく確認と記帳が要ります。ゲームソフト・CD/DVD・書籍を扱う店舗は少額でも全件が対象になり、1件あたりの処理時間が他店と一致しません。

よくある質問

質問回答
許可が1件なら、管理者も1人でよいですか営業所ごとに1人です。法第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを定めています。令和2年4月1日施行の改正で変わったのは許可の単位で、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の1件になりました。管理者の単位はこの改正で変わっていません。許可の数と営業所の数は別のものとして計画を立ててください。
何店舗まで出せますか法令が上限を定めているわけではありませんが、実務上の制約は管理者の人数です。第13条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は管理者になれません。第13条第3項は、管理者に不正品を判断するための知識・技術・経験を得させる努力義務を古物商に課しています。要件を満たす候補者の名簿を作り、営業所の数と突き合わせてから出店の時期を決めてください。
帳簿を本部のサーバーにまとめてよいですか法第18条第1項は、帳簿等を最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることを定めています。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。集約そのものを禁じる規定は手元の条文にありませんが、各営業所で直ちに表示できる状態が保たれているかが要件です。実際に各店舗の端末で操作して確かめ、通信が止まったときの扱いは所轄警察署へ確認してください。
店舗によって確認と記帳の負担が違うのはなぜですか取扱品目で免除の帯域が変わるためです。対価の総額が1万円未満の取引は法第15条第2項第1号と施行規則第16条第1項により確認が免除され、法第16条ただし書により記帳も免除されます。ただし施行規則第16条第2項の7品目、すなわち二輪車、エアコン室外ユニット等、家庭用ゲームのプログラムを記録した物、光学的方法で音又は影像を記録した物、電線、金属製グレーチング、書籍は金額に関係なく確認と記帳が要ります。
不正品の申告は本部の承認を経てから行うべきですか法第15条第3項は、不正品の疑いがあると認めるときは直ちに警察官へ申告することを定めています。承認を挟む手順はこの要件と両立しません。価格の決裁やクレームのエスカレーションと同じ構造で申告のフローを作らないでください。令和7年の古物商による不正品申告は129件で、道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件、上位3区分の90件で約7割です。
多店舗化で経営指標はどう変わりますか比較する区分が変わります。中小企業実態基本調査の令和6年確報では、中小小売業のうち従業者5人以下は粗利率31.7%・営業利益率0.2%・在庫回転期間55.9日、6〜20人は粗利率31.2%・営業利益率1.5%・在庫回転期間32.6日です。粗利率は5人以下のほうが高いのに営業利益率は劣っており、差は在庫が現金に戻る速度にあります。これは小売業全体の値で、買取業の適正値ではありません。1店舗あたりの必要売上や損益分岐点は一次情報がないため示しません。

「多店舗の統制」に対応する解決策

この課題の打ち手になりうる解決策を10件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。

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扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。多店舗の統制をジャンル別に見たページを用意しています。

買取形式別に見る

店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。

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