
古物営業法第13条第1項は、営業所・古物市場ごとに管理者を1人選任する義務を定めています。第13条第2項では、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に当たる者は管理者になれません。第13条第3項は、管理者に不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を事業者に課しています。
許可そのものは2020年4月1日施行の改正で主たる営業所を管轄する公安委員会の1件へ一本化されましたが、管理者を営業所ごとに置く義務は残っています。多店舗展開で先に足りなくなるのは許可ではなく、管理者に選任できる人です。
管理者は「その日たまたま出勤している人」ではなく、選任された特定の人物です。シフトの都合で日ごとに入れ替える性質のものではないため、店舗を増やす計画は管理者候補の育成計画とセットになります。
採用の段階で欠格事由を確認していないと、この段階で詰まります。何人採用したかではなく、管理者に選任できる人が何人いるかで出店の可否を見ます。
第14条第1項は、営業所または取引の相手方の住所・居所以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取ってはならないと定めています。仮設店舗については、日時と場所を事前に管轄の公安委員会へ届け出れば受け取れます。違反すると第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
この制約は人員配置に直接効きます。出張買取に人を出せば、その人は相手方の住所・居所で受け取ることになり、店頭の受付能力は同時に落ちます。人数が固定なら、店頭と出張はゼロサムです。
催事や仮設店舗も、当日の増員では動かせません。事前の届出が要るため、人の手当ては届出の時点で確定させておくことになります。急な人員不足が起きたときに、催事側を削るのか店頭を削るのかを先に決めておきます。
第14条第3項により、古物市場での売買・交換は古物商間でなければ行えません。市場への持ち込みは一般の来店対応とは別の役割として扱い、シフト上も別枠で確保します。
第15条第1項は相手方の真偽を確認する措置を義務づけ、第15条第2項第1号がその例外を定めています。免除される金額は施行規則第16条第1項で1万円と定められており、対価の総額が1万円未満の取引は確認が不要です。
ただし施行規則第16条第2項は、1万円未満でも確認が必要な7品目を挙げています。自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンディショナーの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。法第16条ただし書により記帳義務も同じ範囲で連動します。
この差が人員計画を分けます。ゲームソフト・CD・DVD・書籍を扱う店では、300円の買取でも本人確認と記帳が発生します。1人の客が50点持ち込めば、点数分の記帳が積み上がります。貴金属やブランド品は単価が高く点数が少ないため、同じ人数でも処理できる取引の性質がまったく違います。
したがって「1人あたり1日何件」という一律の基準は置けません。区分ごとに、1件あたりの確認と記帳にかかる時間を実測して、そこから必要人数を出します。
| 役割 | 根拠になる条文 | 不在のときに止まること | 代替できるか |
|---|---|---|---|
| 営業所の管理者 | 第13条第1項 | 営業所として選任状態を欠く | 選任された者に限られ、当日の交代はできない |
| 不正品の判断ができる者 | 第15条第3項 | 疑わしい品の受け入れ判断と申告 | 判断を保留して取引を止めるほかない |
| 値付けができる者 | 法令上の要件はない | 買取の成立そのもの | 上限額を決めた仮査定で保留は可能 |
| 確認・記帳の担当 | 第15条第1項・第16条 | 取引の記録 | 後日の記載は記憶に依存し、精度が落ちる |
| 出張買取に出る者 | 第14条第1項 | 相手方の住所・居所での受取 | 店頭要員と兼務すると受付能力が落ちる |
| 古物市場への持ち込み | 第14条第3項 | 滞留在庫の現金化 | 市場の開催日に縛られ、後ろ倒しにできない |
中小企業実態基本調査(令和6年確報・法人企業・小売業)では、従業者5人以下の粗利率が31.7%・営業利益率0.2%、6〜20人が31.2%・1.5%です。粗利率はほぼ同じなのに、営業利益率は7倍以上開きます。在庫回転率は6.53回と11.19回、回転期間は55.9日と32.6日、小売業全体は10.90回・33.5日です。
差を作っているのは在庫が現金に戻る速度です。人を増やして利益率が上がるのは、この日数が短くなった場合に限られます。査定カウンターだけを増やすと仕入が増えて在庫が積み、回転はむしろ延びます。
配置を決める順序は、先に出口の処理量を決め、そこから逆算して受け入れの人数を決めることです。撮影・出品・発送、古物市場への持ち込み、法人販路への売却に何人分の時間が要るかを固定してから、店頭に残せる人数を割り出します。
この統計は日本標準産業分類の小売業全体で、母集団は法人企業236,813社です。買取業の適正値ではありません。また古物市場への即売却を多用する事業者は回転が速く出るため、自店の運営形態を固定したうえで前年同期と比べます。
一般の小売は、客が買いに来ないと売上が立ちません。買取店は、客が売りに来ないと仕入が立ちません。人が足りない時間帯に持ち込みがあると、査定が雑になるか、待たせるか、断ることになります。断られた客はその足で競合へ向かい、その品は二度と戻りません。
買取業の来店時間帯・曜日別の傾向を示す公的な統計はありません。ここは断定できないので、業界一般の傾向として語ることは避けます。代わりに自店の数字を使います。
第16条の帳簿には、取引の年月日が必ず記載されています。法定の記録なので、どの店にも例外なく存在します。ここから曜日別・時間帯別の取引件数と、区分別の点数を集計すれば、自店の波が出ます。新たな計測の仕組みを入れる必要はありません。
波が見えたら、査定できる人の配置をそこへ合わせます。合わせるのは受付の頭数ではなく、値付けの判断ができる人と、不正品の判断ができる人です。この2つが不在の時間帯は、客が来ても取引を完結できません。
シフト表に並べる列は、出勤する人の名前だけでは足りません。その時間帯に、営業所の管理者がいるか、値付けの判断ができる人がいるか、不正品の判断ができる人がいるかを、別の列として持ちます。
第15条第3項は、不正品の疑いがあると認めるときに直ちに警察官へ申告する義務を定めています。「認めるとき」の判断は取引の場でしか行えず、後から本部が補正できません。判断できる人が不在の時間帯に高額品や該当区分の持ち込みがあると、その場で選択肢がなくなります。
警察庁の令和7年統計では、不正品申告は総数129件で、道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件と続き、上位3区分の90件が全体の約7割です。自店の主力がこの区分に当たるなら、判断できる人の在席時間を優先して確保します。
記帳の担当も同様です。第16条は受け取り・引き渡しの都度の記載を求めており、後回しにすると記憶に依存します。第18条第1項の3年保存まで含めて、誰がいつ記載し、誰が確認するかをシフトの中で決めます。
賃金構造基本統計調査(令和7年)の卸売業・小売業は、所定内給与額が月349.1千円、平均年齢44.3歳、平均勤続年数14.5年です。年齢階級別では20〜24歳241.0千円、30〜34歳302.2千円、40〜44歳361.5千円、55〜59歳の423.4千円がピークで、60〜64歳は332.9千円です。
この数字には限界があります。卸売と小売の合算値であること、集計対象が常用労働者10人以上の民営事業所52,242事業所で小規模な買取店はほぼ入っていないこと、令和7年6月分の所定内給与額の月額平均で賞与・残業代・通勤手当を含まないことです。時給の相場としては使えません。
使えるのは、同業種帯としての水準感までです。シフトを組むときに問題になるのは総額よりも配分で、判断ができる人の時間をどこに置くかで同じ人件費でも成立する取引件数が変わります。
営業利益率が5人以下で0.2%という水準は、人件費の配分を誤ったときに吸収する余地がほとんどないことを示しています。人を増やす前に、いまいる人の配置で回転が動くかを確認する順序になります。
雇用関係助成金の中小企業事業主の判定で、買取業は小売業として扱われます。基準は資本金または出資の総額5,000万円以下、または常時雇用する労働者50人以下です。「または」なので、どちらか一方を満たせば該当します。判定時点は支給申請時です。
キャリアアップ助成金の正社員化コース(令和7年度版)では、有期雇用から正社員への転換が、重点支援対象者かつ中小企業で80万円(40万円×2期)、それ以外の中小企業で40万円です。無期雇用からの転換は重点支援対象者・中小企業で40万円、それ以外の中小企業で20万円。1年度1事業所あたり20名までです。
加算は、正社員転換制度を新たに規定して転換した場合の20万円と、勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれかを新たに規定して転換した場合の40万円で、それぞれ1事業所につき1回だけです。勤務地限定や短時間正社員はシフトの設計そのものなので、制度を先に作る順序で進めます。
支給は後払いで、正社員として6か月雇用した時点で1期目、さらに6か月で2期目です。買取業は客にその場で現金を渡し、給与も毎月先に出ます。入金までの1年前後を自己資金でまかなえるかを確認したうえで動かします。不支給要件として、支給申請日の前日から過去1年間の労働関係法令違反、雇用保険適用事業所でないことが挙げられています。要件は年度途中で変わるため、着手前に管轄の労働局・ハローワークで確認してください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 営業所ごとに管理者を選任できているか。後任候補の欠格事由を確認しているか(第13条) |
| 2 | 出張買取に人を出したとき、店頭の受付能力が何件落ちるかを見積もっているか |
| 3 | 催事・仮設店舗の人員を、事前届出の時点で確定させているか(第14条第1項) |
| 4 | 区分ごとに、1件あたりの確認と記帳にかかる時間を実測しているか |
| 5 | 1万円未満でも確認が要る7品目を扱っているか。点数の多い商材の処理時間を配置に反映したか |
| 6 | 出口側(撮影・出品・市場出し)の人数を先に固定してから、店頭の人数を決めているか |
| 7 | 自店の在庫回転期間が55.9日を超えていないか。超えているなら増員より配置の見直しを先にしたか |
| 8 | 第16条の帳簿の取引年月日から、曜日別・時間帯別の持ち込み傾向を集計しているか |
| 9 | シフト表に、不正品の判断ができる人の在席時間が列として入っているか |
| 10 | 勤務地限定・短時間正社員などの制度を、転換の前に規定しているか(加算は1事業所1回) |
来客数だけを見てシフトを組み、査定と記帳の処理時間を織り込まない例があります。施行規則第16条第2項の7品目に当たるゲームソフト・CD・DVD・書籍は、1万円未満でも本人確認が要り、法第16条ただし書により記帳も連動します。1人の客が数十点持ち込むと、点数分の手続きが積み上がります。受付の頭数ではなく、区分別の処理時間から必要人数を出します。
出張買取を増やすときに、店頭の受付能力が同時に落ちることを計算に入れないまま人を出してしまいます。第14条第1項により、古物商以外の者からの受取は営業所か相手方の住所・居所に限られ、仮設店舗は事前届出が要ります。人数が固定なら店頭と出張はゼロサムです。どちらを削るかを、人が足りなくなる前に決めておきます。
査定できる人だけを増やして、在庫が積み上がる状態になります。中小企業実態基本調査では、従業者5人以下の小売業が粗利31.7%・営業利益0.2%・回転期間55.9日、6〜20人が粗利31.2%・営業利益1.5%・32.6日です。粗利率はほぼ同じで、差は回転から生じています。出口側の処理量を先に固定してから、受け入れの人数を決めます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 1人あたり1日何件まで対応できると考えればよいですか | 一律の基準は置けません。扱う区分で手続きが変わるためです。本人確認が免除されるのは対価の総額が1万円未満の取引ですが(施行規則第16条第1項)、同条第2項の7品目は金額に関係なく確認が要り、法第16条ただし書により記帳も連動します。家庭用ゲームソフト、光学的方法により音又は影像を記録した物、書籍がここに含まれます。少額多点数の商材と高単価少点数の商材では1件あたりの時間が大きく違うので、自店で区分別に実測してください。 |
| 管理者は毎日出勤していなければなりませんか | 第13条第1項は営業所ごとに管理者を1人選任する義務を定めており、選任は特定の人物に対して行います。シフトの都合で日ごとに入れ替える性質のものではありません。ただし在席の要否や不在時の取扱いについては都道府県警の運用に関わる部分があるため、管轄の警察署で確認してください。多店舗展開で先に不足するのは許可ではなく、第13条第2項の欠格事由に当たらない管理者候補です。 |
| 繁忙期と閑散期はいつですか | 買取業の来店時間帯・曜日・季節の傾向を示す公的な統計は確認できていないため、業界の一般則としては書けません。自店の数字で作ることをおすすめします。第16条の帳簿には取引の年月日が必ず記載されており、法定の記録なのでどの店にも存在します。ここから曜日別・時間帯別の取引件数と区分別の点数を集計すれば、新しい計測の仕組みを入れずに自店の波が出ます。 |
| 出張買取に人を回すと店頭が薄くなります。どう判断しますか | 人数が固定なら店頭と出張はゼロサムです。判断材料は、その配置で在庫が現金に戻る日数が動くかどうかです。出張は仕入を増やしますが、出口側の処理量が伴わなければ在庫が積みます。中小企業実態基本調査では、従業者5人以下の小売業の在庫回転期間が55.9日、6〜20人が32.6日で、営業利益率は0.2%と1.5%です。仕入を増やす配置と、出口を増やす配置のどちらが自店に効くかを、回転期間で先に見積もってください。 |
| シフト表には何を書けばよいですか | 出勤者の名前だけでは足りません。その時間帯に営業所の管理者がいるか、値付けの判断ができる人がいるか、不正品の判断ができる人がいるかを、それぞれ列として持ちます。第15条第3項の申告義務は取引の場でしか果たせないため、判断できる人が不在の時間帯は取引を完結できない可能性があります。加えて第15条第1項の確認と第16条の記帳を誰が行い、誰が確認するかまで決めておきます。 |
| アルバイト中心の体制から正社員中心へ切り替えるとき、使える制度はありますか | キャリアアップ助成金の正社員化コース(令和7年度版)があります。買取業は小売業として判定され、中小企業事業主の基準は資本金5,000万円以下または常時雇用50人以下です。有期雇用からの転換は重点支援対象者かつ中小企業で80万円(40万円×2期)、それ以外の中小企業で40万円、1年度1事業所20名まで。勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれかを新たに規定して転換すると40万円、正社員転換制度の新設で20万円が加算されますが、各1事業所1回です。支給は正社員化から6か月で1期目、さらに6か月で2期目という後払いになります。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を8件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。








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