
第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを定めています。第13条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は管理者になれません。義務の履行を現場で担保する単位が、営業所ごとに1つ置かれているということです。
監査の単位をこれに揃えると、指摘が誰宛てになるかが自動的に決まります。逆に部門や商材で区切ると、帳簿の備付けや標識の掲示のように営業所単位でしか成立しない項目の宛先が曖昧になります。
第14条第1項により、古物商が古物商以外の者から古物を受け取れる場所は営業所または相手方の住所・居所に限られ、仮設店舗は事前に日時と場所を管轄の公安委員会へ届け出た場合に認められます。受け取る場所が列挙されているので、監査の対象地点も数え上げられます。
営業所を増やしたときは、監査の対象も1つ増えます。同時に第12条第1項の標識掲示と第13条第1項の管理者選任も増えるため、新設した営業所を最初の監査対象に入れておくと、開設時の手続きの抜けをその場で拾えます。
第一の系統は、古物営業法が備付けや記載を命じている記録です。第18条第1項の帳簿等の備付け、第16条の記載事項、第15条第1項でとった措置の記録、第12条第1項の標識掲示、第13条第1項の管理者選任。これらは、あるかないか、埋まっているかいないかで判定できます。
第二の系統は、自社が持っている記録です。買取金額(取得原価)、査定した者、支払方法、現金出納、現物の棚卸。こちらは存在するだけでは判定になりません。同じ取引について、法定帳簿の1行、自社の原価記録の1行、現金出納の1行が揃うかどうかを突き合わせて初めて意味が出ます。
第16条の記載事項は①取引の年月日 ②品目及び数量 ③古物の特徴 ④相手方の住所・氏名・職業・年齢 ⑤第15条第1項でとった措置の区分の5つで、買取金額は含まれていません。法定記録だけを監査しても、原価の側は範囲外のままです。2系統に分けて計画を立てるのは、この構造によります。
監査計画の書き方としては、項目ごとに「存否で見るのか、突合で見るのか」を明記します。判定方法を書かずに項目だけ並べると、担当者ごとに見方が変わり、前回と比較できない結果が残ります。
第18条第1項は、帳簿等を最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けることを定めています。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面へ表示できる状態で保存します。監査で遡れる範囲は、この3年です。
3年分の全件を確認する監査は、件数の多い店では成立しません。そこで抽出します。抽出する以上、規則を先に決めておかないと、後から「なぜその取引を選んだのか」を説明できません。規則は、期間・件数・重みの3つで書けます。
期間は、前回の監査以降か、直近3年からの無作為かを決めます。件数は、監査に割ける時間から逆算します。重みは、どの取引を厚めに見るかという配分です。ここに自店の事情を入れます。
抽出した取引について、法定記録の存否と自社記録との突合の両方を見ます。抽出の規則と、実際に選んだ取引の一覧を残しておけば、次回に同じ方法で比較できます。件数だけを報告して対象を残さないと、改善したかどうかが判定できません。
| 監査項目 | 判定のしかた | 根拠条文 | 遡って直せるか |
|---|---|---|---|
| 帳簿等を営業所に備え付けているか(3年分) | 存否 | 第18条第1項 | 直せない期間が生じる |
| 取引の都度、5つの事項を記載しているか | 存否(欄の充足) | 第16条 | ③古物の特徴は現物が無いと直せない |
| 本人確認でとった措置の区分が残っているか | 存否 | 第15条第1項・第16条⑤ | 取引の場を過ぎると直せない |
| 1万円未満でも7品目を確認・記帳しているか | 存否(区分の分岐設定) | 施行規則第16条第1項・第2項 | 設定は直せる。過去の取引は直せない |
| 買取金額と支払額が一致しているか | 突合(自社の原価記録と現金出納) | 第16条に記載事項なし | 記録が両方あれば直せる |
| 現物の数量と帳簿の数量が一致しているか | 突合(棚卸) | 第16条② | 差異の原因追跡は可能 |
| 標識の記載内容が現在の許可証と一致しているか | 存否 | 第12条第1項・第2項 | 直せる |
| 営業所ごとに管理者が選任されているか | 存否 | 第13条第1項・第2項 | 直せる |
| 管理者講習の受講記録があるか | 存否 | 第13条第3項(努力義務) | 直せる |
| 出張買取の法定書面の控えが残っているか | 存否 | 特定商取引法(訪問購入) | 交付の事実は遡れない |
警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、令和7年中の古物商による不正品の申告は129件でした。区分別では道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件で、上位3区分の合計90件が全体の約7割を占めます。写真機類と金券類は0件でした。
0件は「その区分は安全」を意味しません。申告に至った件数が0だったというだけです。使えるのは、自店の扱う区分が上位に入るなら、その区分の取引を厚めに抽出するという配分の材料までです。
もう1つの材料が、実際に摘発されている態様です。令和7年中の古物営業法違反の検挙は19件・12人で、態様別の内訳は無許可7件、身分確認3件、帳簿等記載3件などでした。内訳は手続きの不履行に寄っています。 真贋の見極めや相場観のように習熟が要る領域ではなく、許可を受けたか、確認したか、書いたかという事実の有無です。
この2つを合わせると、抽出の重みは「自店が扱う区分のうち申告の多い区分」と「確認と記帳が実行されているか」に置くのが筋になります。査定額の妥当性を監査の主目的にすると、判定の基準を外部に持てないまま議論が止まります。
第13条第1項の管理者は、その営業所で義務が果たされているかを現場で担う立場です。その人が自分の営業所を監査すると、指摘する側とされる側が同じになります。指摘が出なかったときに、無かったのか出さなかったのかを区別できません。
組み方は3つあります。複数店舗があるなら管理者を相互に入れ替える、本部に監査の担当を置く、外部へ委託する。いずれの場合も、監査人が対象営業所の日常業務を担当していないことが条件になります。
1店舗だけの事業者では、この分離が難しくなります。その場合でも、日次の突き合わせを担当する者と、月次以上の間隔で抽出して見る者を分けることはできます。分けられないなら、監査の記録を経営者が確認するところまでを手順に含めて、判断が1人で完結しない形にします。
第13条第3項は、管理者に不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を古物商に課しています。令和7年中の古物商等管理者講習は150回・19,602人(うち自動車47回・4,618人)が受講しました。受講記録は、この努力義務に対して示せる資料になります。監査では、受講の有無と、その内容が現場の確認手順に反映されているかを見ます。
古物営業法に内部監査の実施頻度を定めた条文はありません。したがって頻度は自店で決めることになります。決め方の基準になるのは、見つけたときに直せるかどうかです。
第16条③の古物の特徴は、現物が手元を離れた後には事実として書けません。⑤の第15条第1項でとった措置の区分も、取引の場でしか記録できません。この2項目は、月次や四半期の監査で見つけても遡って直せません。直せない項目については、監査の役割は個別の是正ではなく、入力欄の設定や手順の見直しに移ります。
一方、金額の突合や数量の照合は、記録が両方残っていれば後からでも成立します。こちらは監査の間隔を空けても、遡って確認できます。項目を「遡れるもの」と「遡れないもの」に分けると、間隔の設計が具体的になります。
遡れない項目については、日次の運用側に確認を移し、監査は設定が維持されているかを見る側に回します。同じ項目を両方で見る設計にすると、日次の担当者が「監査で見るから」と省く動機が生まれます。役割の分担を明示してください。
第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに、直ちに所轄警察署長へ届け出る義務を定めています。監査で「一部の期間の帳簿が見つからない」と分かった場合、これは社内で再作成して収める場面ではなく、届出をする場面に当たりえます。
遡って作り直すという処理は、状況を悪くする方向にしか働きません。第16条③の古物の特徴は現物が無ければ推測になり、記載漏れと虚偽記載はどちらも第33条第2号で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。確認義務違反と帳簿の備付け義務違反は第33条第1号で同じ法定刑です。
したがって監査の手順書には、発見した事項のうち外部への届出や報告に当たりうるものを列挙し、判断する者を指定しておきます。現場の監査人が単独で判断すると、報告しない方向へ流れやすくなります。
罰則の表記は「懲役」ではなく「拘禁刑」です。2022年の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されました。社内の手順書やチェックリストが旧表記のままなら、根拠条文を確認した時期がそれ以前ということになります。監査の対象に、手順書自体の更新状況を入れておいてください。
監査で不備が出たとき、対応は2通りに分かれます。個別の取引を直す対応と、同じ不備が再発しない形に変える対応です。前者だけで終えると、次の監査で同じ項目が出ます。
後者の中身は、記録に残る形にできます。台帳の様式を変えたなら変更前後の様式、入力欄を必須にしたならその設定、締めの手順を変えたなら手順書と実施記録が対応します。とくに第16条③と⑤は伝票から自動では埋まらない項目なので、入力欄の設計を変えない限り同じ漏れが再発します。
口頭で周知しただけの是正は、担当者が替われば消えます。監査報告に「周知した」と書かれている項目は、次回に同じ指摘が出る候補として扱ってください。
参考として、令和7年中の行政処分は総数874件で、内訳は指示855件、営業停止8件、許可の取消し11件でした。ただし、この統計には処分の理由別の内訳も端緒も含まれていません。自店の監査項目の優先順位を、この数字から逆算することはできません。優先順位の材料になるのは、前段で挙げた自店の商材区分と、検挙の態様のほうです。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 監査の単位を営業所に揃え、指摘の宛先を管理者に対応させているか |
| 2 | 監査項目を、法定記録(存否で判定)と自社の記録(突合で判定)の2系統に分けているか |
| 3 | 抽出の規則(期間・件数・重み)を監査の前に文書で決めているか |
| 4 | 抽出した取引の一覧を残し、次回に同じ方法で比較できる状態にしているか |
| 5 | 自店が扱う区分のうち、不正品申告の多い区分を抽出の重みに反映しているか |
| 6 | 監査人が、対象営業所の日常業務を担当していない者になっているか |
| 7 | 1店舗の場合、監査の記録を経営者が確認する手順を入れて、判断が1人で完結しない形にしているか |
| 8 | 監査項目を「遡って直せるもの」と「直せないもの」に分けて、頻度を決めているか |
| 9 | 帳簿等の亡失など、外部への届出に当たりうる事項の一覧と、判断する者を指定しているか |
| 10 | 是正を、様式・入力設定・手順書といった記録に残る形で行っているか |
| 11 | 手順書やチェックリストの罰則表記が「懲役」のままになっていないか(2025年6月1日から拘禁刑) |
| 12 | 管理者講習の受講記録と、その内容が現場の確認手順に反映されているかを見ているか |
監査で見つけた記載漏れを、後から台帳に書き足して処理してしまうことがあります。第16条③の古物の特徴は現物が手元を離れると事実として書けず、埋め合わせは推測になります。記載漏れと虚偽記載はどちらも第33条第2号で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。遡れない項目については、個別の是正ではなく入力欄の設定や日次の手順を変える対応に切り替えてください。
管理者が自分の営業所を監査する体制のまま運用してしまうことがあります。第13条第1項の管理者は現場で義務の履行を担う立場なので、指摘する側とされる側が同一になります。指摘が出なかったときに、不備が無かったのか出さなかったのかを区別できません。複数店舗があるなら管理者を相互に入れ替える、本部に担当を置く、外部へ委託するのいずれかで分離してください。
抽出の規則を決めずに監査を始めてしまうことがあります。第18条第1項により母集団は3年分あり、全件を確認する監査は件数の多い店では成立しません。期間・件数・重みを先に決め、選んだ取引の一覧を残しておかないと、次回との比較ができず、改善したかどうかも判定できません。件数だけを報告する監査記録は、翌年に読み返しても使えません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 内部監査はどのくらいの頻度で行えばよいですか | 古物営業法に頻度を定めた条文はありません。決め方の基準は、見つけたときに直せるかどうかです。第16条③の古物の特徴と⑤の第15条第1項でとった措置の区分は、現物が手を離れた後や取引の場を過ぎた後には直せません。この2項目は日次の運用側で確認し、監査は設定と手順が維持されているかを見る側に回します。金額の突合や数量の照合は記録が両方残っていれば後からでも成立するので、間隔を空けても遡れます。 |
| 監査人は誰にすればよいですか | 対象営業所の日常業務を担当していない者にしてください。第13条第1項の管理者はその営業所で義務の履行を担う立場なので、自分の営業所を監査すると指摘する側とされる側が同じになります。複数店舗があるなら管理者を相互に入れ替える、本部に監査の担当を置く、外部へ委託するという3通りがあります。1店舗の場合は完全な分離が難しいので、日次の突き合わせを担当する者と抽出して見る者を分け、監査の記録を経営者が確認する手順を入れてください。 |
| 全件を確認できないのですが、どこから見ればよいですか | 抽出の規則を、期間・件数・重みの3つで先に決めてください。母集団は第18条第1項の3年分です。重みの材料になるのは自店の商材区分で、令和7年中の古物商による不正品申告129件は道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件と上位3区分で約7割を占めます。あわせて、令和7年中の古物営業法違反の検挙19件・12人の態様別内訳が無許可7件、身分確認3件、帳簿等記載3件だった点から、確認と記帳が実行されているかを厚めに見る配分になります。 |
| 行政処分の件数から、自店のリスクの高さを見積もれますか | 見積もれません。令和7年中の行政処分は総数874件(指示855件、営業停止8件、許可の取消し11件)ですが、この統計に処分の理由別の内訳も端緒も含まれていません。令和7年末の古物商等の許可件数615,194件と並べて割り算をする書き方も見かけますが、処分の端緒も母数の定義も一致しないため、その計算に意味はありません。監査項目の優先順位は、自店が扱う区分と、実際に摘発されている態様から決めてください。 |
| 監査で台帳の一部が見つからないと分かったらどうしますか | 第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに直ちに所轄警察署長へ届け出る義務を定めています。社内で再作成して収める場面ではなく、届出をする場面に当たりえます。遡って作り直すと、第16条③の古物の特徴は推測になり、記載漏れも虚偽記載も第33条第2号で同じ扱いです。監査の手順書には、外部への届出や報告に当たりうる事項を列挙し、判断する者を先に指定しておいてください。 |
| 是正はどこまで記録に残せばよいですか | 変更したものが残る形にしてください。台帳の様式を変えたなら変更前後の様式、入力欄を必須にしたならその設定、締めの手順を変えたなら手順書と実施記録が対応します。第16条③と⑤は伝票から自動では埋まらない項目なので、入力欄の設計を変えない限り同じ漏れが再発します。監査報告に「周知した」とだけ書かれている項目は、次回に同じ指摘が出る候補として扱ってください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を14件挙げます。














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店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


