
2026年8月4日、九州経済産業局は訪問購入業者3社に対し、特定商取引法に基づく業務停止命令9か月と指示を出しました。各社の代表者にも業務禁止命令9か月が出ています。
対象はいずれも宝石、貴金属、時計等の中古品を扱う事業者です。
遡ると2025年11月26日にも、消費者庁が宝石・貴金属・時計・ブランドバッグ等を購入する訪問購入業者に対し、9か月の業務停止命令を出しています。
| 処分日 | 処分行政庁 | 処分内容 | 取扱商品 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月4日 | 九州経済産業局 | 業務停止命令9か月+指示(代表者に業務禁止命令9か月) | 宝石、貴金属、時計等の中古品 |
| 2025年11月26日 | 消費者庁 | 業務停止命令9か月(勧誘・申込受付・契約締結) | 宝石、貴金属、時計、ブランドバッグ等の中古品 |
消費者庁が公表している執行状況には、事業者名・処分内容・取引類型・取扱商品・違反行為・適用条項・処分日・処分行政庁が1件ずつ記載されています。
2026年8月の3社について、公表されている違反行為は次の6項目です。
①氏名等の明示義務に違反する行為 ②書面の交付義務に違反する行為 ③物品の引渡しの拒絶に関する告知義務に違反する行為 ④勧誘の要請をしていない者に対する勧誘 ⑤契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘 ⑥勧誘を受ける意思を確認しないで行う勧誘
適用条項は、法58条の5、法58条の6・1項、法58条の6・2項、法58条の6・3項、法58条の8・2項、法第58条の9です。
並べてみると、特殊な手口や巧妙な仕掛けは含まれていません。④⑤⑥はすべて不招請勧誘の禁止に関するもので、①②③は明示・交付・告知という手続き義務です。
訪問購入は2013年施行の特定商取引法改正で規制対象に加わりました。背景には、東日本大震災後に被災者宅で横行した押し買いへの対応があります。そのため店舗買取にはない義務が課されています。
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| 氏名等の明示 | 勧誘に先立ち、氏名、勧誘目的、購入しようとする物品の種類を告げる |
| 不招請勧誘の禁止 | 相手方の自宅等で、売買契約の締結について勧誘をし、または勧誘を受ける意思の有無を確認してはいけない |
| 再勧誘の禁止 | 契約を締結する意思がないことを示した相手への継続勧誘・再勧誘は禁止 |
| 書面の交付義務 | 申込時または締結時に、必要事項を記載した書面を交付する |
| 引渡しの拒絶に関する告知 | クーリング・オフ期間内の引渡しの際、引渡しを拒めることを告知する |
| 第三者への引渡し通知 | クーリング・オフ期間内に第三者へ引き渡した場合、相手方に通知する |
| クーリング・オフ | 法定書面を受け取った日から数えて8日以内 |
現場で最も引っかかりやすいのが不招請勧誘です。条文は「相手方の自宅等で、売買契約の締結について勧誘をし、または勧誘を受ける意思の有無を確認してはいけない」としています。
査定依頼を受けて訪問した案件であっても、事前に商談していない物品について訪問先で「他に何かありませんか」と尋ねる行為は、原則として禁止されます。
着物の査定依頼で訪問し、その場で貴金属の有無を尋ねる、という流れは現場では自然に見えますが、規制上は問題になります。
クーリング・オフには適用除外があります。二輪を除く自動車、家具、大型家電、本・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券です。扱う商材によって負う義務の重さが変わります。
また、法自体の適用除外として、営業のため/営業として締結するもの、海外にいる人に対する訪問購入、事業者がその従業員に対して行うものなどがあります。御用聞き取引・常連取引・住居からの退去に際して誘引された場合は一部規定のみ適用されます。
国民生活センターのPIO-NETに登録された訪問購入の相談件数は、2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件と減少しています。
参考までに、同じ期間の点検商法は12,550件→19,249件→19,696件と増加しており、訪問購入は点検商法の4割程度の水準です。
件数は減っていますが、9か月という処分の重さを見る限り、執行が緩んでいるわけではありません。訪問購入を行うなら、契約書面の様式、クーリング・オフ処理の手順、記録の保管方法を整えておく必要があります。フランチャイズに加盟する場合は、本部がこれらを用意しているかが加盟の可否を分ける論点になります。



