
警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、令和7年末の古物商等(古物商+古物市場主)の許可件数は615,194件で、前年比42,170件の増加です。古物商の推移は令和2年395,526件、令和3年440,874件、令和4年483,276件、令和5年529,024件、令和6年571,946件、令和7年614,118件です。5年で55%増えています。
この推移を読むときの注意が一つあります。令和元年の778,332件から令和2年の395,526件へ半減しているのは実数の減少ではありません。令和2年4月1日施行の改正で許可単位が一本化されたためです。改正前後をつなげて市場が半分になったと書くと誤りになります。読むのは令和2年以降の推移です。
一方、事業所の数は逆の動きをしています。経済産業省・総務省「経済センサス-活動調査」(令和3年)では、中古自動車小売業の事業所数が2016年の21,556所から11,168所へ48.2%減少しました。自動車中古部品卸売業も1,125所から810所へ28.0%減っています。統計の捕捉方法の変更も影響しますが、店舗の集約は起きています。
許可が増えて事業所が減るという組み合わせは、店舗を構えない形で許可を取る事業者が増えていることを示唆します。相見積もりの相手が、駅前に看板を出している店だけではなくなっているということです。競争の相手を近隣の店舗だけで数えていると、実態とずれます。
古物営業法第14条第1項は、営業所または取引相手の住所・居所以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取ってはならないと定めています。仮設店舗は日時・場所を事前に管轄公安委員会へ届け出れば可能です。この条文は、営業所が路面店であることを求めてはいません。
営業所ごとの義務も、店舗の規模とは連動しません。第13条第1項は営業所ごとに管理者を1人選任することを求めており、営業所が1つなら1人です。第12条第1項の標識の掲示と、第12条第2項のインターネット上での許可情報の閲覧も、営業所の大きさとは無関係にかかります。
つまり、店舗を構える事業者と構えない事業者の間には、法令上の義務の量にほとんど差がなく、家賃と店舗人件費だけが差になります。同じ商品に対して提示できる金額の上限が、そもそも違うことになります。価格だけで並べられたときに不利になるのは構造上の帰結です。
なお、どのような場所が営業所として認められるかは、管轄する公安委員会の判断によります。この記事では自宅を営業所にできるかどうかを断定しません。自店が営業形態を変える場合は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課で確認してください。
消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書」(令和7年4月30日)に掲載された2023年のチャネル別構成比は、店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。同報告書における買取市場規模は2023年で13,274億円です。相見積もりの話題は宅配やオンライン査定に集まりがちですが、金額の8割は店頭を通っています。
販売側のオンライン化も、思われているほど進んでいません。経済センサス-活動調査(令和3年)では、年間商品販売額に占めるインターネット販売の割合が骨とう品小売業17.1%、中古品小売業(骨とう品を除く)14.6%、中古電気製品小売業14.5%です。事業所数ベースでネット販売を行う割合は中古電気製品小売業29.3%、中古品小売業27.0%、古本小売業18.5%、骨とう品小売業17.6%、中古自動車小売業14.3%です。
やっている事業所は3割近いのに、売上に占める比率は15%前後です。多くの店にとってネットは主力ではなく補助チャネルという実態が読めます。相見積もりへの対応をオンライン査定の整備だけに寄せると、金額の8割が通る店頭の体験が手つかずのまま残ります。
見積もりを比較されるタイミングも確認してください。店頭に来た時点で他店の金額を持っている客と、店頭で提示を受けてから他店を回る客では、対応の意味が変わります。この区別を接客記録に残していない店が多くあります。
| 指標 | 数値 | 期間・出典区分 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 古物商の許可件数 | 395,526件→614,118件(+55%) | 令和2年→令和7年/警察庁 | 令和元年以前とつなげない。改正で許可単位が一本化されている |
| 古物商等の許可件数 | 615,194件(前年比+42,170件) | 令和7年末/警察庁 | うち古物市場主1,076件、古物競りあっせん業の届出170件 |
| 中古自動車小売業の事業所数 | 21,556所→11,168所(48.2%減) | 2016年→2021年/経済センサス | 許可は増えたが事業所は減っている |
| 買取のチャネル構成比 | 店頭78.2%/出張10.0%/宅配9.5% | 2023年/消費者庁の報告書 | 金額の8割は店頭を通る |
| 粗利率 | 5人以下31.7%/6〜20人31.2% | 令和5年度決算実績/中小企業実態基本調査 | 規模による差はほとんど無い |
| 営業利益率 | 5人以下0.2%/6〜20人1.5% | 同上 | 粗利率が同じでも7倍以上の差がつく |
| 在庫回転期間 | 5人以下55.9日/6〜20人32.6日 | 同上 | 差は価格ではなく現金化の速度に出ている |
価格競争に負けている店は粗利率が低いはずだ、という前提は統計で確認できません。中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和6年確報(令和5年度決算実績)」の法人企業・小売業では、粗利率が従業者5人以下31.7%、6〜20人31.2%、小売業全体29.8%です。規模が小さいほうがむしろ高く出ています。
差が出ているのは営業利益率です。5人以下0.2%、6〜20人1.5%、全体2.4%で、5人以下と6〜20人の間に7倍以上の開きがあります。粗利を取れていないのではありません。在庫が現金に変わる速度で負けています。在庫回転期間は5人以下55.9日、6〜20人32.6日、全体33.5日です。
この構造は、価格競争の見方を変えます。他店より高く買った月は粗利率が下がりますが、統計上の勝敗を分けているのはそこではありません。買った在庫が55.9日たっても現金に戻らないことのほうが、営業利益に効いています。買取業に限定した統計ではありませんが、規模別の傾向は明確です。
自店の位置は自分で測れます。売上原価を期末の棚卸資産で割って在庫回転率を出し、365日を割れば回転期間が日数で出ます。56日を超えていれば同規模の小売業平均より滞留しています。相見積もりで負けた件数を数える前に、この数字を出してください。
価格競争への対応として、広告で高額買取をうたう選択があります。ここには景品表示法がかかります。買取サービスは2024年4月から同法の規制対象として整理されています。第5条は不当な表示を禁止しており、第1号は商品または役務の内容について実際のものよりも著しく優良であると示す表示、または他の事業者のものより著しく優良であると示す表示を対象としています。
違反があれば、第7条により内閣総理大臣が差止めや再発防止のために必要な事項を命ずることができます。第8条は課徴金納付命令を定めており、課徴金対象期間に取引をした商品または役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じた額が基準になります。
実務上の要点は、表示の根拠を先に持っているかどうかです。他店より高いと表示するなら、いつ、どの商品について、どの店の金額と比べたのかを記録しておく必要があります。根拠を持たずに表示を出し、あとから作れるものではありません。
第三者による発信も無関係ではありません。景品表示法第5条第3号にもとづく指定告示として、いわゆるステルスマーケティング告示が令和5年10月1日に施行されています。規制されるのは商品・サービスを供給する事業者であって、依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は対象外です。基準は関与の有無ではなく、関与が判別できるかどうかです。
提示額で勝つことだけを目的にすると、成約後の減額という形に問題が移ります。国民生活センターは中古自動車の相談カテゴリの説明で、買取業者に売却する際のトラブルについて、強引な契約トラブルや買取後の減額トラブルもみられると明記しています。
相談件数の水準も確認しておきます。PIO-NETによる中古自動車の相談件数は2023年度9,034件、2024年度7,059件、2025年度8,642件です。訪問購入は2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件で、2023年度をピークに減少しています。点検商法は2023年度12,550件、2024年度19,249件、2025年度19,696件と増加しています。
訪問購入の件数が減っているにもかかわらず規制が重いのは、相談者の年齢層が偏っているためです。2024年度の消費生活相談全体では、契約当事者の年代のうち70歳以上が26.2%で2015年度以降で最高でした。これは相談全体の数値であって、訪問購入に限った値ではありません。
自店で確認すべきは、提示額と最終的な支払額が一致しているかです。査定時の提示額、成約額、支払額を1件ごとに記録し、差が出た件数と理由を月次で集計してください。差が出る件が続いているなら、価格競争の勝ち方そのものに無理があります。
相見積もりの場で客が比べられるのは、提示された金額と、その場で確認できる条件だけです。条件が書かれていなければ、比較は金額だけになります。書いていないものは存在しないのと同じです。
書ける項目は自店の運用から作れます。支払いの時期と方法、査定額が変わる条件とその範囲、キャンセルできる期限、引き取りの方法と費用、成約後に減額しないことの明示です。いずれも自店で決められる事項で、他店との違いが出ます。
本人確認と記帳の運用も条件の一つです。古物営業法第15条第1項は、買受け等をしようとするときに相手方の真偽を確認する措置をとることを義務づけています。第15条第2項の例外として対価の総額が規則で定める金額未満の取引がありますが、金額は施行規則第16条で1万円と定まっており、同条第2項の7品目は1万円未満でも確認が外れません。何が必要かを事前に伝えておくと、当日の手戻りが減ります。
見積書の様式を固定すると、自店の比較優位が毎回同じ形で伝わります。金額だけの口頭提示をやめて、上の項目を印字した用紙に書き込む形にしてください。客が他店を回るときに、その用紙が比較の基準として持ち歩かれます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 相見積もりで比較された相手が、店舗を持つ事業者かどうかを記録しているか |
| 2 | 在庫回転期間を日数で出しているか。55.9日を超えていないか |
| 3 | 負けた件数を数える前に、勝った案件の在庫がその後何日で現金に戻ったかを見ているか |
| 4 | 他店の金額を持って来店した客と、提示後に他店を回る客を接客記録で区別しているか |
| 5 | 高額買取をうたう表示について、いつ・どの商品・どの店と比べたかの根拠を保存しているか |
| 6 | 査定時の提示額・成約額・支払額を1件ごとに記録し、差が出た件数と理由を月次で集計しているか |
| 7 | 見積書に、支払いの時期と方法、査定額が変わる条件、キャンセル期限、引き取りの方法と費用を書いているか |
| 8 | 1万円未満でも本人確認が要る7品目について、必要な持ち物を事前に伝えているか |
| 9 | オンライン査定の整備だけに寄せて、金額の8割が通る店頭の体験を後回しにしていないか |
| 10 | 第三者に発信を依頼する場合、関与が判別できる表示になっているか |
競争相手を近隣の店舗だけで数えてしまう失敗があります。警察庁の統計では古物商の許可件数が令和2年395,526件から令和7年614,118件へ5年で55%増えた一方、経済センサス-活動調査(令和3年)では中古自動車小売業の事業所数が2016年の21,556所から11,168所へ48.2%減っています。店舗を構えない形で許可を取る事業者が増えており、家賃と店舗人件費の分だけ提示できる金額の上限が違います。近隣の看板を数えて競合状況を把握したつもりになると、実際に比較されている相手が視野に入りません。
価格競争の敗因を粗利率に求めてしまう失敗があります。中小企業実態基本調査の法人企業・小売業では、粗利率が従業者5人以下31.7%、6〜20人31.2%、小売業全体29.8%で、規模による差はほとんどありません。差が出ているのは営業利益率で、0.2%、1.5%、2.4%と7倍以上の開きがあります。在庫回転期間は55.9日と32.6日です。統計上の勝敗を分けているのは提示額ではなく、買った在庫が現金に戻る速度です。相見積もりで負けた件数を数える前に、自店の回転期間を日数で出してください。
根拠を持たずに高額買取の表示を出す失敗があります。買取サービスは2024年4月から景品表示法の規制対象として整理されており、第5条第1号は他の事業者のものより著しく優良であると示す表示を禁じています。第7条により差止めや再発防止のための措置命令が可能で、第8条の課徴金は課徴金対象期間の売上額に百分の三を乗じた額が基準です。他店より高いと表示するなら、いつ、どの商品について、どの店の金額と比べたのかの記録が先に必要です。表示を出してから根拠を作ることはできません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 近所に競合が増えた実感はないのに、相見積もりで負けます。なぜですか | 比較の相手が店舗とは限らないためです。警察庁の統計では古物商の許可件数が令和2年395,526件から令和7年614,118件へ5年で55%増えています(令和元年以前は許可単位が一本化される前の数値なのでつなげて読めません)。一方、経済センサス-活動調査(令和3年)では中古自動車小売業の事業所数が2016年の21,556所から11,168所へ48.2%減っています。古物営業法第14条第1項は営業所または相手方の住所・居所での受け取りを認めており、営業所が路面店であることは求めていません。家賃と店舗人件費を持たない相手とは、提示できる金額の上限が構造的に違います。 |
| オンライン査定を整えれば、相見積もりに勝てますか | 金額の8割は店頭を通っています。消費者庁の報告書に掲載された2023年のチャネル別構成比は、店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。販売側も同様で、経済センサス-活動調査(令和3年)では年間商品販売額に占めるインターネット販売の割合が骨とう品小売業17.1%、中古品小売業(骨とう品を除く)14.6%、中古電気製品小売業14.5%にとどまります。事業所数ベースでネット販売を行う割合は中古電気製品小売業29.3%、中古品小売業27.0%と3割近いのに、売上比率は15%前後です。オンラインの整備を否定するものではありませんが、店頭の体験を後回しにする理由にはなりません。 |
| 「どこよりも高く買います」と広告に書いてよいですか | 根拠がなければ書けません。買取サービスは2024年4月から景品表示法の規制対象として整理されています。第5条第1号は、実際のものよりも著しく優良であると示す表示、または同種・類似の役務を供給する他の事業者のものより著しく優良であると示す表示を禁じています。第7条により内閣総理大臣が差止めや再発防止のために必要な事項を命ずることができ、第8条の課徴金は課徴金対象期間に取引をした商品または役務の売上額に百分の三を乗じた額が基準です。表示を出す前に、いつ、どの商品について、どの店の金額と比較したのかを記録として残してください。 |
| 高く買えば勝てますが、利益が残りません。どこを見ればよいですか | 在庫回転期間です。売上原価を期末の棚卸資産で割って在庫回転率を出し、365日を割ると日数になります。中小企業実態基本調査の法人企業・小売業では、在庫回転期間が小売業全体33.5日、従業者5人以下55.9日、6〜20人32.6日で、粗利率は29.8%、31.7%、31.2%とほとんど差がありません。それでも営業利益率は2.4%、0.2%、1.5%です。差は提示額ではなく現金化の速度に出ています。高く買って勝った案件が、その後何日で現金に戻ったかを1件ずつ追ってください。勝率だけを追うと、この数字が見えません。 |
| 価格以外の何で比較してもらえばよいですか | 見積書に書いた条件だけが比較の対象になります。書けるのは、支払いの時期と方法、査定額が変わる条件とその範囲、キャンセルできる期限、引き取りの方法と費用、成約後に減額しないことの明示です。加えて、本人確認に必要な持ち物を事前に伝えると当日の手戻りが減ります。古物営業法第15条第1項は買受け等の際に相手方の真偽を確認する措置を義務づけており、施行規則第16条により1万円未満は免除されますが、同条第2項の7品目は1万円未満でも免除されません。なお国民生活センターは中古自動車の相談について、買取後の減額トラブルもみられると明記しています。提示額・成約額・支払額の一致は、条件として書く価値があります。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を11件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。











扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。相見積もり・価格競争をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


