
古物営業法第3条は、古物営業を営もうとする者に都道府県公安委員会の許可を課しています。実店舗を持たないECだけの形でも、古物を買い受けて売るなら対象です。無許可営業は第31条第1号で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係で、手数料は19,000円、標準処理期間は約40日です。不許可でも返金されません。 令和2年4月1日施行の改正により、許可は主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会による1件に一本化されています。全国から荷物が届くから都道府県ごとに許可が要る、という構造ではありません。
許可は事業者ごとに与えられます。個人で取った許可を、あとから設立した法人が使うことはできません。ECは開業後に法人化する例が多いため、切替時に取り直しになることを工程に入れてください。
第12条第2項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名、許可した公安委員会の名称、許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務を定めています。ECのみのモデルは、この条文が正面から掛かる典型です。 サイトの表記を後回しにしないでください。
第14条第1項は、古物商が営業所または取引の相手方の住所・居所以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取ってはならないと定めています。この制約は、店舗を持たないECモデルでも一切変わりません。
宅配買取が成立するのは、相手方の住所・居所から発送された品物を、届出をした営業所で受け取る形になるためです。したがってECのみで開業する場合でも、受け取る場所としての営業所を実在させ、届け出る必要が生じます。 自宅を営業所とするか事務所を借りるかは別として、「どこにも拠点を置かない」という設計は成り立ちません。
第14条第1項に違反した場合、第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。宅配の受取先をコインロッカーや宅配ボックスの類に置く、レンタルの私書箱を受取場所にするといった運用を考える前に、それが営業所として届け出た場所に当たるのかを、管轄の警察署防犯係に確認してください。
催事などで臨時に受け取る場合は、仮設店舗として日時と場所を事前に管轄公安委員会へ届け出れば足ります。ただしこれは事前届出が前提の例外で、EC中心の運用で常用できるものではありません。
第15条第1項は、買受け等をしようとするときに相手方の真偽を確認する措置を義務づけ、その第4号で「国家公安委員会規則で定める措置」を認めています。その中身が施行規則第15条第3項にあり、13の方法が列挙されています。 非対面でどう確認するかは解釈の余地の問題ではなく、この13号のどれを採るかという選択の問題です。
13号はいずれも、住所・氏名・職業・年齢の申出を受けることを共通の前提とし、その上に確認手段が乗る構造です。第一号は印鑑登録証明書とその印鑑を押印した書面の送付、第四号は住民票の写し等の送付または身分証明書等のICチップ情報の送信、第五号は身分証明書等・住民票の写し等のいずれか2種類の写し、または1種類に住所記載の書類(発行から6か月以内のもの)を加える方法です。
第八号と第九号が、いわゆるeKYCです。第八号は、古物商が提供するソフトで相手方の容貌と写真付き身分証明書等を撮影させ、画像情報の送信を受ける方法ですが、厚みその他の特徴が確認できることが要件です。 顔と身分証の画像を1枚ずつ受け取るだけでは足りません。第九号は容貌の画像の送信に加えて、身分証明書等のICチップに記録された情報の送信を受ける方法です。
第十一号は公的個人認証、つまりマイナンバーカードの署名用電子証明書による電磁的記録の提供を受ける方法です。第十二号は認定を受けた署名検証者が発行した特定認証業務用の電子証明書によります。どの号を採るかで、必要な機能も、査定から入金までの日数も変わります。 ECサイトを作る前に採用する号を決めてください。
| 号 | 方法の要点 | ECでの使いどころ |
|---|---|---|
| 一 | 印鑑登録証明書と、その印鑑を押印した書面の送付を受ける | 書面主体。手間が重く回転が落ちる |
| 四 | 住民票の写し等の送付、または身分証明書等のICチップ情報の送信を受ける | アプリでICチップを読む設計にできる |
| 五 | 身分証明書等・住民票の写し等のいずれか2種類の写し、または1種類+住所記載の書類(発行から6か月以内) | 画像アップロードで完結。書類の発行日を検査する |
| 六 | 住民票の写し等の送付を受け、その氏名の預貯金口座へ振込・振替で支払うことを約す | 確認と支払を1本の導線にできる |
| 七 | 身分証明書等の写しの送付+転送しない取扱いの配達記録郵便物等で到達確認+同名義口座へ振込 | 郵送が挟まるぶん入金が遅れる |
| 八 | 自社提供のソフトで容貌と写真付き身分証明書等を撮影させ、画像情報の送信を受ける(厚みその他の特徴が確認できるもの) | eKYC。厚みの確認まで満たす実装が要る |
| 九 | 容貌の画像の送信+写真付き身分証明書等のICチップ情報の送信を受ける | eKYC。読取対応の端末が前提 |
| 十一 | 公的個人認証(マイナンバーカードの署名用電子証明書)による電磁的記録の提供を受ける | 対応端末を持つ層に限られる |
| 十三 | 既に措置をとった者に識別符号を付し、なりすましが困難な方法で措置済みを確かめる | リピーターの簡略化。初回の措置が前提 |
施行規則第15条第3項のうち、第三号・第六号・第七号は支払方法とセットになっています。ECのみのモデルでは、確認と支払を同時に満たせるためこの3つが効きます。
第三号は、金品を内容とする本人限定受取郵便物等を送付する方法で代金を支払うことを約す方法です。第六号は、住民票の写し等の送付を受けたうえで、その氏名の預貯金口座へ振込・振替で代金を支払うことを約す方法です。第七号は、身分証明書等の写しの送付を受け、その住所宛に転送しない取扱いの配達記録郵便物等を送って到達を確認し、さらに同名義の口座へ振り込む方法です。
設計上の意味は、振込先の名義を確認手段の一部として使える点にあります。店頭のようにその場で現金を渡せない非対面買取では、入金の導線がそのまま本人確認の導線になります。 逆に、確認を済ませたのに別名義の口座へ振り込む運用にすると、採ったはずの措置が崩れます。
第十三号は、既に上記の措置をとった者に識別符号を付し、なりすましが困難な方法で措置済みであることを確かめる方法です。リピーターの手続きを簡略化する根拠がここにあります。 ただし「既に措置をとっていること」が前提なので、初回に手を抜くと2回目以降も簡略化できません。
消費者庁の買取サービスに関する実態調査報告書が引用している数字では、2023年の買取市場規模は13,274億円で、チャネル別構成比は店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。宅配は市場の1割弱です。 業界での話題の量と、実際の構成比は一致していません。
環境省の令和6年度リユース市場規模調査(消費者アンケート、2024年)でも、過去1年間に郵送・宅配での買取サービスで売却した人は3.0%でした。リユースショップ・中古品販売店での売却は14.3%です。売却手段としての宅配は、まだ広く使われている方法ではありません。
同調査ではフリマアプリでの売却が11.0%から9.9%へ初めて減少し、リユースショップでの売却が減少傾向から増加に転じました。経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査でも、CtoC-ECは2兆5,269億円で伸びは+1.82%に鈍化しています。「フリマアプリに客を取られ続けている」という前提も、「オンラインが一方的に伸びる」という前提も、現在の数字では支持されません。
参考として、BtoC-ECは26.1兆円でEC化率9.8%、物販系分野は15兆2,194億円です。買取と関係の深い区分では、生活家電・AV機器・PC・周辺機器等が2兆7,443億円でEC化率43.03%、書籍・映像・音楽ソフトが1兆8,708億円で同56.45%、衣類・服装雑貨等が2兆7,980億円で同23.38%です。販売側のEC化率が高い区分ほど、買い取った在庫をオンラインで売り切りやすいという読み方はできます。
買取業は客にその場で現金を渡し、売れてから回収する構造です。ECではさらに、申込から到着までの日数、査定と連絡の往復、同意が取れなかった場合の返送が加わります。店頭より確定が遅く、資金の拘束は長くなりやすい設計です。
中小企業実態基本調査(令和6年確報・令和5年度決算実績、法人企業・小売業)から在庫回転を計算すると、従業者5人以下の層で在庫が現金に戻るまで平均55.9日、6〜20人の層で32.6日です。買取業に限定した統計ではないため、同規模の小売業と比べる物差しとして使ってください。
同じ調査で、5人以下の層は粗利率31.7%・営業利益率0.2%、6〜20人の層は粗利率31.2%・営業利益率1.5%です。粗利率は小さい層のほうが高いのに営業利益率で劣っており、差がついているのは現金が戻る速度です。 ECのみで始めるなら、この差がそのまま自社の課題になります。
測る材料は帳簿から作れます。法第16条により受取と引渡しの都度記載し、第18条第1項により最終記載の日から3年間備え付けます。申込日ではなく受取日から入金日までを並べて、自社の実日数を出してください。 業界平均を探すより速く、正確です。
消費者庁は令和6年4月18日に運用基準を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。査定等をして金銭と引き換える役務を提供していると認められる場合、「自己の供給する役務の取引」に当たるという整理です。
令和7年4月30日の買取サービスに関する実態調査報告書は、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取りの5つです。ECは表示がすべてページに残り、いつからいつまで何を掲げていたかを後から確認できます。
とくにECで起こりやすいのが、キャンペーンの常態化です。報告書は、1月末までと表示して2月以降も同内容を継続する例を挙げています。期限を書いたバナーを外し忘れたまま延長を繰り返す運用は、この指摘に当たります。買取参考価格についても、買い取った実績のない金額を「買取実績価格」と表示することは認められません。
景品規制も同時に掛かります。次回使える買取価格アップ券やキャッシュバック、自社ポイントの付与は景品類に該当し、総付景品の上限(取引価額が1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円)の対象です。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、上限額を券面に明記します。 なお自社ポイントの設計によっては資金決済法の前払式支払手段に当たりうるため、条文だけで断定せず金融庁・管轄財務局に確認してください。
第16条の帳簿には、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分が記載され、第18条第1項により3年間保存されます。法律が保存を義務づけている個人情報という性格があります。
一方でECでは、同じ人の情報がマーケティング用の顧客データベースにも入ります。個人情報保護法第17条は利用目的をできる限り特定することを、第18条はあらかじめ本人の同意を得ないで特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱わないことを定めています。法定帳簿として取得した情報を販促に転用してよいかは、利用目的の立て方で決まります。
第23条は安全管理措置、第26条は漏えい等が生じたときの個人情報保護委員会への報告、第27条は第三者提供の制限を定めています。ECは本人確認書類の画像を扱うため、保管場所と保存期間、アクセスできる人の範囲を、開業前に決めてください。
台帳を電子化する場合、根拠は施行規則第19条で、法第18条により電磁的方法による記録を保存するときは国家公安委員会が定める基準を確保するよう努める、という努力義務の形です。国税関係帳簿を対象とする電子帳簿保存法とは別の法律です。 保存要件は財務省令で定まるため、税務側の要件は国税庁の公表資料と顧問税理士に確認してください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 古物商許可を、店舗の有無と切り離して申請の工程に入れたか(手数料19,000円・標準処理期間約40日) |
| 2 | 受け取る場所としての営業所を決め、第14条第1項の範囲内で受取の運用を組んだか |
| 3 | 宅配の受取先が営業所として届け出た場所に当たるかを、警察署防犯係に確認したか |
| 4 | 施行規則第15条第3項の13号から、採用する号を決めてからサイトの仕様を固めたか |
| 5 | eKYCを採るなら、厚みその他の特徴まで確認できる実装になっているか(第八号) |
| 6 | 振込先を本人名義に限る運用にしているか(第三号・第六号・第七号を採る場合) |
| 7 | リピーターの簡略化(第十三号)を使うなら、初回に正規の措置を完了させているか |
| 8 | 氏名・許可した公安委員会の名称・許可証番号をサイトに表示したか(法第12条第2項) |
| 9 | 受取日から入金日までの実日数を帳簿から集計し、拘束されている現金の額を把握しているか |
| 10 | 期限付きキャンペーンの掲載終了日を管理し、常態化していないか(景表法の5類型) |
| 11 | 本人確認書類の画像の保管場所・保存期間・アクセス範囲を、開業前に決めたか |
拠点を持たない前提で計画を組み、宅配の受取先を私書箱や宅配ボックスに置こうとするケースです。第14条第1項は、営業所または取引の相手方の住所・居所以外の場所で古物商以外の者から古物を受け取ることを禁じており、第32条は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。ECのみでも受け取る場所としての営業所は実在させ、その場所が届け出た営業所に当たるかを警察署防犯係に確認してください。
顔写真と身分証の画像を1枚ずつ受け取れば本人確認は済むと考えてしまう誤りです。施行規則第15条第3項第八号は、古物商が提供するソフトで容貌と写真付き身分証明書等を撮影させ、厚みその他の特徴が確認できる画像情報の送信を受けることを求めています。既製のフォームに画像を添付させるだけの実装では、この要件を満たしません。採用する号を決めてからサイトの仕様を固める順序にしてください。
宅配買取が伸び続ける前提で、集客と在庫の計画を大きく置いてしまうケースです。2023年の買取市場13,274億円のうち宅配買取りは9.5%で、店頭買取りが78.2%を占めます。環境省の2024年調査でも郵送・宅配での売却経験は3.0%にとどまり、リユースショップでの売却は14.3%で増加に転じました。CtoC-ECの伸びも+1.82%に鈍化しています。オンラインが一方的に伸びるという前提では、想定した申込件数に届きません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 実店舗を持たなくても古物商許可は要りますか | 要ります。古物営業法第3条は営業の形態で区別していません。無許可営業は第31条第1号で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署防犯係、手数料19,000円(不許可でも返金なし)、標準処理期間は約40日です。令和2年4月1日施行の改正で、許可は主たる営業所を管轄する公安委員会による1件に一本化されているため、全国から荷物が届いても都道府県ごとに取る仕組みではありません。 |
| 宅配買取の品物はどこで受け取ればよいですか | 第14条第1項により、営業所または取引の相手方の住所・居所に限られます。宅配買取が成立するのは、相手方の住所・居所から発送された品物を営業所で受け取る形になるためです。違反は第32条で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。私書箱や宅配ボックスを受取先にする運用を検討する場合は、その場所が届け出た営業所に当たるかを管轄の警察署防犯係に確認してください。 |
| 非対面ではどうやって本人確認をしますか | 施行規則第15条第3項に13の方法が列挙されており、そのいずれかを採ります。いずれも住所・氏名・職業・年齢の申出を受けることが共通の前提です。書類の写しを2種類受け取る第五号、住民票の写し等の送付を受けて同じ氏名の口座へ振り込む第六号、容貌と写真付き身分証明書等を撮影させる第八号、マイナンバーカードの署名用電子証明書による第十一号などがあります。採用する号によって、必要な機能も入金までの日数も変わります。 |
| 顔写真と免許証の画像を送ってもらう方法で足りますか | 第八号を採る場合、古物商が提供するソフトで相手方の容貌と写真付き身分証明書等を撮影させ、厚みその他の特徴が確認できる画像情報の送信を受けることが要件です。既製のフォームに画像ファイルを添付させるだけの実装では、この要件を満たしません。第九号は容貌の画像に加えて身分証明書等のICチップに記録された情報の送信を受ける方法です。実装がこの要件を満たすかどうかは、導入前に事業者と条文を突き合わせて確認してください。 |
| リピーターの手続きを簡単にできますか | 施行規則第15条第3項第十三号が根拠になります。既に同項の措置をとった者に識別符号を付し、なりすましが困難な方法で措置済みであることを確かめる方法です。ただし「既に措置をとっていること」が前提なので、初回に正規の確認を完了させていない相手には使えません。初回の設計を省くと、2回目以降の簡略化もできなくなります。 |
| 宅配買取はこれから伸びますか | 現在の数字では、伸びを前提にした計画は支持されません。2023年の買取市場13,274億円のチャネル構成比は、店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。環境省の2024年調査では郵送・宅配での売却経験が3.0%、リユースショップでの売却が14.3%で増加に転じました。経済産業省の調査でもCtoC-ECは2兆5,269億円で伸びが+1.82%に鈍化しています。将来の伸びを見込むより、9.5%という現在の構成比で成り立つ規模から始めてください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を9件挙げます。









扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。ECのみで開業をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


