
商圏の形を外部の統計から取ることはできません。公的統計に都道府県別・市区町村別の中古品小売のデータは無く、警察庁の古物商許可件数614,118件も全国計のみです。令和3年経済センサス-活動調査は中古品小売業(骨とう品を除く)3,301所・年間商品販売額4,511億円のような細分類別の全国値を出しますが、地域別に確認できる集計は産業の大分類までです。
一方で、自店に売りに来た人がどこから来たかは、すでに記録されています。古物営業法第16条は、古物を受け取り、または引き渡したつど、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分を帳簿に記載することを求めています。第18条第1項により、最終記載の日から3年間の備付けが要ります。
この記録は法定なので省略できません。第33条第2号により、第16条の記載義務違反と虚偽記載は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。すでに作らざるを得ない記録が、そのまま商圏データになります。
住所を7桁の郵便番号に変換すれば、集計できる形になります。市区町村をまたいでも同じ体系で扱えるため、商圏が行政区画をまたぐ店ほど扱いやすくなります。買取市場のチャネル構成比は店頭買取78.2%、出張買取10.0%、宅配買取9.5%で、8割近くが客の持ち込みです。持ち込みの起点がどこかを知ることが、商圏分析の中身になります。
郵便番号は郵便の配達のために振られた番号で、統計のための区画ではありません。1つの郵便番号が複数の町域をまたぐことも、1つの町域が複数の郵便番号に分かれることもあります。市区町村の境界とも必ずしも一致しません。
面積も一定ではありません。都市部では狭い範囲に多くの番号が割り当てられ、郊外では1つの番号が広い範囲を覆います。同じ「1つの郵便番号」でも、含まれる世帯数は大きく違います。件数を単純に並べると、面積の差がそのまま順位に出ます。
番号は変更されます。町名変更や区画整理で番号が変わることがあり、大口事業所には個別の番号が振られています。3年分の帳簿を集計するときは、期間中に番号が変わった区域が混ざっていないかを確認してください。
それでも使う理由は、自治体をまたいでも共通の体系であることと、住所文字列から機械的に変換できることです。町丁字の表記ゆれをそろえる作業に比べれば、はるかに手間が少なくなります。粒度の粗さは、次に述べるメッシュで補います。
国勢調査の結果は、行政区画のほかに地域メッシュ統計としても提供されています。総務省統計局が定める基準地域メッシュでは、第3次メッシュが一辺およそ1キロメートル、これを分割した2分の1地域メッシュがおよそ500メートル、4分の1地域メッシュがおよそ250メートルの区画になります。
利点は、区画の大きさがそろっていることです。郵便番号のように面積がばらばらではないため、密度の比較ができます。行政区画にも依存しないので、市境をまたぐ商圏でも1枚の地図にそのまま載ります。
買取店にとって使う列は、人口ではなく世帯数です。冷蔵庫も洗濯機もテレビも世帯に1台単位で存在し、書籍や衣類も世帯単位で溜まります。環境省の2024年調査では、取引個数ベースの保管率が携帯電話・スマートフォン82.1%、ソフト・メディア類77.6%、パソコン・周辺機器77.4%、自転車72.9%、楽器類69.9%、家具類58.1%、書籍56.3%で、在庫は世帯の中にあります。
注意点として、人口や世帯数が少ない区域では秘匿処理が行われ、値が公表されない場合があります。空白のメッシュを0として計算すると、郊外側の分母が過小になります。空白は空白のまま扱ってください。
| 観点 | 郵便番号(7桁) | 国勢調査メッシュ |
|---|---|---|
| 作り方 | 帳簿の住所文字列から機械的に変換できる | 代表点の緯度経度が要る。住所からの変換が一段増える |
| 区画の大きさ | 都市部は狭く郊外は広い。面積がそろわない | 第3次メッシュ約1km、2分の1約500m、4分の1約250mでそろう |
| 行政区画との関係 | 町域や市区町村の境界と一致しないことがある | 行政区画に依存しない。市境をまたぐ商圏でもそのまま使える |
| 安定性 | 町名変更・区画整理で番号が変わる。大口事業所は個別番号 | 区画は固定。国勢調査の実施ごとに値が更新される |
| 分母になる統計 | 郵便番号単位の世帯数は直接は公表されていない | 人口・世帯数が同じ区画で取れる。少数区域は秘匿で空白 |
| 買取需要 | 載っていない | 載っていない。常住地の人口と世帯のみ |
| 向いている用途 | 3年分の帳簿を粗く集計し、来ている方向を掴む | 浸透率の計算と、距離帯別の減衰の確認 |
国勢調査は常住地で人を数えます。メッシュの人口は、そこに住んでいる人の数であって、昼間そこにいる人の数ではありません。通勤先や商業地のメッシュは、人口が小さく出ます。
買取業では、この性質はむしろ都合が合います。売る物は住んでいる家にあるためです。店頭買取が78.2%を占め、客は自宅から物を持ってくるので、常住地ベースの世帯数のほうが実態に近い分母になります。
ただし、そのメッシュの世帯が何を持っているか、それが出てくるかどうかは、どの列にも入っていません。買取需要を地域別に測った公的統計は存在しません。メッシュが与えるのは分母だけです。
分子は自店の帳簿から作ります。分母が国勢調査、分子が自店の実績という組み合わせにすることで、全国平均を当てはめた推計ではなく、自店の商圏に限った実測値になります。この構造を崩さないでください。
最初に出す表は、自店から見た距離帯ごとの成約点数です。郵便番号またはメッシュの代表点と自店の距離を計算し、距離帯に区切って、各帯の買取点数と金額を並べます。
買取業の商圏半径には、根拠になる一次情報がありません。だから最初から半径を決めずに、実測した減衰の形から自分で決めます。どの距離帯から急に落ちるかが、その店とその商材の実際の外周です。
外周を決めているのは距離そのものではなく、その商材を人が持って移動できる限界です。指輪と腕時計を持って電車で移動することはできても、ソファと洗濯機で同じことはできません。距離帯別の表は、この限界を数字で見せます。
3年分あるので、年ごとに同じ表を作れます。外周が縮んでいるのか広がっているのかが分かります。競合が近くに出た時期と重ねると、影響の範囲も見えます。
品目によって、客が取る手段が違います。環境省の調査で、保管を除いた排出先のうちリユースショップ・中古品販売店で売却した割合は、ゲーム機器72.3%、書籍37.3%、ソフト・メディア類32.8%、ブランド品を除く衣類・服飾品31.3%、ベビー・子供用品29.6%、ブランド品22.7%です。
宅配買取サービスが多いのは玩具・模型23.2%、ソフト・メディア類18.7%、書籍13.6%で、小さく壊れにくく単価が読める商材に集中しています。インターネットオークションが多いのは玩具・模型38.2%、スポーツ・レジャー用品27.7%、カー用品25.9%で、この層は店に持ち込みません。
したがって、全品目を合算した距離帯別の表は、複数の異なる減衰カーブを足したものになります。ブランド品は遠くから来て、書籍は近くからしか来ない、といった差が消えます。第16条の記載事項には品目及び数量が含まれているので、分けること自体は帳簿の中でできます。
分けたうえで、遠い帯からも来ている品目と、近い帯にしか出ていない品目を分類してください。前者は商圏の拡張余地があり、後者は密度で戦う品目です。施策の作り方が変わります。
距離帯別の点数だけでは、遠い帯が少ないのは当たり前という結論で止まります。分母を入れると話が変わります。メッシュまたは郵便番号ごとの世帯数で成約世帯数を割ると、区域ごとの浸透率が出ます。
世帯数が多いのに浸透率が低い区域は、届いていない区域です。距離が近くても浸透率が低ければ、距離以外の理由があります。逆に世帯数が少ないのに浸透率が高い区域があれば、そこで何が起きているかを確かめる価値があります。
全国値を当てはめた推計と比べる意味もあります。環境省の2024年調査では、過去1年に売却・引渡しをしていない人が70.0%、リユースショップ・中古品販売店で売却した人は14.3%、郵送・宅配での買取サービスは3.0%です。自店の浸透率がこの水準とどれだけ離れているかは、比較の出発点になります。
ただし全国値は年代も地域もならした平均です。一致していないこと自体は問題ではありません。使い方は、区域間の相対比較の目盛りとしてです。
郵便番号やメッシュを点として扱うとき、区域の中心を代表点にします。実際の客の家は区域内のどこかにあるので、計算した距離には必ず誤差が入ります。
誤差の大きさは区域の広さに比例します。都市部の狭い郵便番号では小さく、郊外の広い郵便番号では大きくなります。距離帯別の表で郊外側が不自然に見えるときは、まずここを疑ってください。区域が広い場所ほど、メッシュに切り替える価値があります。
直線距離と道路距離の違いも残ります。川や線路や幹線道路があれば、直線で近くても実際には遠回りになります。店頭買取が78.2%で、客が自分で運んでくる以上、この差は成約に効きます。地図上で分断されている方向を、あらかじめ書き出しておいてください。
誤差をゼロにする方法はありません。やることは、誤差の方向を記録しておくことです。「郊外側の距離は過小に出ている可能性がある」と資料に一行書いておけば、後から読む人が判断を誤りません。
第16条の帳簿には、相手方の住所・氏名・職業・年齢が入ります。商圏分析で使うのは住所の郵便番号またはメッシュまでと、年齢層までです。氏名は分析に要りません。
作業用のファイルを作る段階で、氏名の列を落としてください。取引を特定する必要があるなら、帳簿側の通し番号だけを持たせます。外部のサービスに渡す場合は、渡す項目をこの粒度まで落としてから渡します。
帳簿そのものは、第18条第1項により最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。分析用のファイルは帳簿ではないので、帳簿の保存要件とは別に、保管場所と削除の時期を決めておいてください。
第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに直ちに所轄警察署長へ届け出ることを定めています。分析のために持ち出したファイルと、帳簿本体を混同しない運用にしてください。
出せる結論は4つです。自店に売りに来ている人がどの区域から来ているか。品目ごとに来店範囲がどう違うか。世帯数に対して浸透率が低い区域はどこか。3年間で外周が広がったか縮んだか。いずれも自店の帳簿と無料の公的データだけで出せます。
出せない結論も明確です。その区域で買取が年間何件出るか。競合が何店あるか。人口が増えれば買取件数が増えるか。地域別のデータが公的に存在しないため、どれも推計にしかなりません。
分析の成果を判断につなげるときは、資金の指標と並べてください。中小企業実態基本調査(令和6年確報、令和5年度決算実績、法人企業・小売業)では、従業者5人以下の粗利率31.7%・営業利益率0.2%・在庫回転期間55.9日、6〜20人は31.2%・1.5%・32.6日、小売業全体は29.8%・2.4%・33.5日です。
商圏を広げても、買取原資が尽きれば買えません。買取業では査定額がそのまま仕入原価になるため、遠い区域から呼ぶために査定額を上げれば粗利率はその場で下がります。距離帯別の表を見るときは、粗利率30%と在庫回転期間56日の判定線を横に置いてください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 帳簿3年分の相手方住所を、郵便番号に変換して集計したか(第16条・第18条第1項) |
| 2 | 集計期間中に郵便番号が変更された区域が混ざっていないかを確認したか |
| 3 | 郵便番号の面積差を踏まえ、件数の単純な順位で判断していないか |
| 4 | 分母に使うメッシュの秘匿による空白を、0として計算していないか |
| 5 | 距離帯別の成約点数と金額の表を、品目別に分けて作ったか |
| 6 | 区域ごとの浸透率(自店の成約世帯数÷世帯数)を出したか |
| 7 | 代表点を使ったことによる誤差の方向を、資料に1行で記録したか |
| 8 | 川・線路・幹線道路で分断されている方向を、地図上で書き出したか |
| 9 | 分析用ファイルから氏名の列を落としたか。外部に渡す粒度を決めたか |
| 10 | 距離帯別の表を、粗利率30%と在庫回転期間56日の判定線と並べて見ているか |
郵便番号ごとの成約件数を並べて、多い順に商圏の中心と判断する状態です。郵便番号は郵便の配達のために振られた番号で、統計区画ではありません。都市部では狭い範囲に多くの番号が割り当てられ、郊外では1つの番号が広い範囲を覆うため、面積の差がそのまま順位に出ます。1つの郵便番号が複数の町域をまたぐことも、町域が複数の番号に分かれることもあります。件数ではなく、世帯数で割った浸透率で並べてください。分母がそろう国勢調査メッシュに切り替えるのも手です。
メッシュの空白を0世帯として集計し、郊外側の浸透率を高く見せてしまう状態です。国勢調査の地域メッシュ統計では、人口や世帯数が少ない区域に秘匿処理が行われ、値が公表されない場合があります。これを0で埋めると分母が過小になり、浸透率が実態より高く出ます。空白は空白のまま扱い、集計から外した区域を記録してください。あわせて、メッシュに載っているのは常住地の人口と世帯だけで、その世帯が何を持っているかも、売りに出すかも含まれていないことを前提にしてください。
全品目を合算した距離帯別の表から、商圏半径を1つ決めてしまう状態です。品目ごとに客の取る手段が違います。保管を除いた排出先で、リユースショップに持ち込まれる割合はゲーム機器72.3%、書籍37.3%、衣類・服飾品31.3%である一方、宅配買取が多いのは玩具・模型23.2%、ソフト・メディア類18.7%、書籍13.6%、インターネットオークションが多いのは玩具・模型38.2%、スポーツ・レジャー用品27.7%です。合算すると異なる減衰カーブが足し合わされ、どの品目の外周も見えなくなります。第16条の記載事項には品目及び数量が含まれているので、帳簿の中で分けられます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 郵便番号と国勢調査メッシュは、どちらを使えばいいですか | 用途で分けてください。郵便番号は帳簿の住所文字列から機械的に変換できるので、3年分を粗く集計して来ている方向を掴む段階に向きます。ただし区画の面積がそろわず、町域や市区町村の境界とも一致しないことがあり、番号自体も変更されます。国勢調査メッシュは第3次メッシュが一辺およそ1キロメートル、2分の1地域メッシュがおよそ500メートル、4分の1地域メッシュがおよそ250メートルで大きさがそろい、人口・世帯数が同じ区画で取れるため、浸透率の計算に向きます。 |
| メッシュデータで、その地域の買取需要は分かりますか | 分かりません。国勢調査のメッシュに載っているのは常住地の人口と世帯であって、その世帯が何を持っているか、それを売りに出すかは含まれていません。買取需要を地域別に測った公的統計は存在しません。メッシュが与えるのは分母だけです。分子は自店の帳簿から作ってください。古物営業法第16条は取引のつど相手方の住所の記載を求め、第18条第1項は3年間の備付けを求めているので、材料は必ず手元にあります。 |
| 商圏半径は、この分析で何キロと決められますか | 外から与えられる目安はありません。買取業の商圏半径を示した一次情報が無いため、このページでも距離の数字は示しません。決め方は、自店から見た距離帯ごとの買取点数と金額を並べ、どの帯から急に落ちるかを見ることです。これを品目別に作ると、遠くから来る品目と近くからしか来ない品目が分かれます。買取市場のチャネル構成比は店頭買取78.2%で、8割近くが客の持ち込みなので、外周を決めているのは距離ではなくその商材を人が運べるかどうかです。 |
| 距離を計算するときの誤差は、どの程度見ておけばいいですか | 誤差の大きさをこのページで数値化することはできません。代表点と実際の住所のずれは区域の広さに比例するため、都市部の狭い郵便番号では小さく、郊外の広い郵便番号では大きくなります。加えて直線距離と道路距離の差、川や線路や幹線道路による分断が残ります。やることは誤差をなくすことではなく、方向を記録することです。「郊外側の距離は過小に出ている可能性がある」と資料に書き添えてください。区域が広い場所は、メッシュに切り替えると差が縮みます。 |
| 帳簿の住所を分析に使って問題ありませんか | 使う項目を落としてから使ってください。第16条の帳簿には相手方の住所・氏名・職業・年齢が入りますが、商圏分析で要るのは郵便番号またはメッシュまでと年齢層までです。作業用ファイルから氏名の列を落とし、取引の特定が要る場合は帳簿側の通し番号だけを持たせます。帳簿本体は第18条第1項により最終記載の日から3年間の備付けが要り、電磁的記録も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。第18条第2項は、き損・亡失・滅失したときの所轄警察署長への届出を定めています。分析用ファイルと帳簿本体を混同しない運用にしてください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を4件挙げます。




扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。郵便番号・国勢調査メッシュデータの分析をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


