
古物営業法第3条により、古物営業には都道府県公安委員会の許可が要ります。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係、手数料は19,000円で、不許可でも返金されません。 標準処理期間は約40日で、書類の補正にかかった期間はこれに含まれません。
順序を逆にすると費用が積み上がります。物件を先に押さえて許可を待つと、営業できない期間の家賃が出ていきます。逆に許可の申請には営業所の所在地が要るため、物件を決めずに申請だけ先に出すこともできません。物件の契約日と申請日を、許可が下りる時期から逆算して並べてください。
無許可で始めた場合の罰則は第31条第1号で、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。2022年の刑法改正により懲役と禁錮が拘禁刑へ一本化され、2025年6月1日に施行されました。
警察庁の公表では、令和7年中の古物営業法違反の検挙は19件・12人で、態様別では無許可が最も多く、次いで身分確認、帳簿等記載でした。開業前後に最も踏まれている条文がここだということです。
令和2年4月1日施行の改正で、許可は主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会による1件に改められました。 それ以前は営業所等の所在する都道府県ごとに許可が要る仕組みでしたが、現在は違います。2号店を隣県に出す計画があっても、許可を都道府県の数だけ取る前提で資金を積む必要はありません。
この改正は統計の見え方も変えています。古物商の許可件数は平成30年に789,345件だったものが令和2年には396,378件へ半減していますが、事業者が減ったのではなく、1事業者が複数持っていた許可が集約されたためです。改正前後の数字をつなげて増減を語らないでください。
集約後の系列では増えています。令和7年末時点で古物商614,118件、古物市場主1,076件、合計615,194件で、前年から42,170件の増加です。参入は続いているという読み方ができます。
許可が1件でも、営業所ごとに残る義務はあります。第13条第1項は営業所ごとに管理者を1人選任することを、第12条第1項は営業所ごとの標識掲示を定めています。第12条第2項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名、許可した公安委員会の名称、許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務を定めています。
日本政策金融公庫 総合研究所の2025年度新規開業実態調査によれば、開業費用は平均975万円、中央値600万円でした。全業種の新規開業企業が対象で、買取業に限った統計ではありません。 調査対象は同公庫国民生活事業が2024年4月〜9月に融資した企業のうち融資時点で開業後1年以内の企業8,517社、回収2,165社です。
平均と中央値が375万円離れています。少数の高額開業が平均を押し上げているため、中央値600万円のほうが実感に近い数字です。 分布では250万円未満が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で、4割以上が500万円未満に収まっています。
開業時の資金調達額は平均1,219万円です。内訳は金融機関等からの借り入れが平均827万円で調達額の67.9%、自己資金が平均279万円で22.9%、この2つで90.7%を占めます。調達額1,219万円に対し開業費用が975万円なので、差額のおよそ244万円が運転資金にあたります。
買取業ではこの運転資金の中身が問題になります。一般の小売業なら仕入は掛けで買える場面がありますが、買取は客にその場で現金を渡します。運転資金の大半が買取原資に化ける前提で見積もってください。
| 順序 | 確定させること | 数値・条文 | 確定しないまま進めた場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 古物商許可の申請日 | 手数料19,000円・標準処理期間約40日 | 営業できない期間の家賃が出る |
| 2 | 営業所の所在地と受取場所の運用 | 法第14条第1項/違反は第32条 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 3 | 開業費用の総額 | 新規開業全体で平均975万円・中央値600万円 | 設備に使い切り、買取原資が残らない |
| 4 | 買取原資(別枠) | 月間買取額×約56日相当 | 3〜4か月目に買えない店になる |
| 5 | 資金調達の内訳 | 調達額平均1,219万円(借入827万円67.9%・自己資金279万円22.9%) | 限度額7,200万円を目安にして計画が膨らむ |
| 6 | 販路の比率 | 店頭78.2%/出張10.0%/宅配9.5% | 市場の8割から外れた設計になる |
| 7 | 出張を行う場合の手続き | 特商法第58条の5〜第58条の9、クーリング・オフ8日 | 明示・書面・再勧誘で処分事例が出ている |
| 8 | 広告表示と景品の設計 | 景表法5類型、総付景品の上限20% | 優良誤認・有利誤認の対象になる |
| 9 | 帳簿と回転の測定 | 法第16条・第18条第1項(3年保存) | 自店の回転日数が分からないまま買い続ける |
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とし、融資限度額は7,200万円です。返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内で、いずれも据置5年以内です。旧称は「新規開業資金」で、制度名が変わっています。
この7,200万円は、借りられる金額の上限であって、借りている金額ではありません。 同公庫の調査で、開業時に金融機関等から実際に借り入れた金額は平均827万円でした。限度額と実績が一桁近く違います。限度額を根拠に事業計画の規模を膨らませないでください。
利率は基準利率が原則で、女性・35歳未満・55歳以上、認定創業支援等事業の支援を受けた者などの要件に当たると特別利率A〜Cが適用されます。利率は事業内容より申込者の属性で決まる部分があります。 自分がどの要件に当たるかを、申込前に確認しておく価値があります。
担保・保証人は希望を聞いたうえで相談する扱いです。条件は個別に決まるため、金額も利率もここでは断定しません。制度の詳細は同公庫の公式ページで最新を確認してください。
買取業は客にその場で現金を渡し、売れてから回収します。内装や什器に自己資金を使い切ると、開店した翌日から買えない店になります。 買取原資は開業費用とは別の枠で積んでください。
拘束される期間の目安は中小企業実態基本調査(令和6年確報・令和5年度決算実績、法人企業・小売業)から計算できます。従業者5人以下の層では在庫が現金に戻るまで平均55.9日、従業者6〜20人の層では32.6日です。買取業に限定した統計ではないため、同規模の小売業と比べる物差しとして使ってください。
月200万円分を買い取る計画で拘束日数を約56日とすれば、常時370万円前後が動かせない資金になります。月300万円分なら550万円前後です。この金額は売上でも利益でもなく、口座から消えたまま戻ってこない現金の量です。
開業月から満額が要るわけではありません。買取が立ち上がるにつれて増えていきます。したがって危ないのは開業直後ではなく、集客がうまくいって買取額が伸びた3〜4か月目です。計画では、月間買取額の目標値に約56日分を掛けた額を、到達時点の必要額として置いてください。
同じ中小企業実態基本調査で、従業者5人以下の層は粗利率31.7%・営業利益率0.2%、従業者6〜20人の層は粗利率31.2%・営業利益率1.5%です。粗利率はむしろ小さい層のほうが高いのに、営業利益率で大きく劣っています。
差が出ているのは在庫回転です。5人以下は55.9日、6〜20人は32.6日で約1.7倍の開きがあります。粗利を取れていないのではなく、在庫が現金に変わる速度で負けている構造です。個人で開業するなら、最初から後者の側の数字になります。
買取業は仕入原価を自分で決められる商売です。査定額がそのまま原価になるため、粗利率が下がったときの原因は「コストが上がった」ではなく「買取価格を上げた」であることがほとんどです。集客が苦しい月に査定を上げると、粗利と現金の両方が同時に細ります。
測る材料は最初からあります。法第16条により帳簿は取引の都度記載し、第18条第1項により最終記載の日から3年間備え付けます。買取日と販売入金日を突き合わせれば、業界平均を探さなくても自店の回転日数が出ます。
消費者庁の買取サービスに関する実態調査報告書が引用している数字では、2023年の買取市場規模は13,274億円で、チャネル別構成比は店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%です。話題の量に対して、出張と宅配は合わせても2割弱です。 個人開業でいきなり出張中心に組むと、市場の8割から外れた設計になります。
出張買取を行う場合、古物営業法だけでなく特定商取引法の訪問購入の規制が加わります。第58条の5は勧誘に先立つ氏名等の明示、第58条の6は勧誘の要請をしていない者への勧誘の禁止と再勧誘の禁止、第58条の7・第58条の8は書面の交付、第58条の9は物品の引渡しの拒絶に関する告知を定めています。クーリング・オフは法定書面を受け取った日から数えて8日以内です。
この領域は実際に処分が出ています。2026年8月4日、九州経済産業局は3社に対し業務停止命令9か月と指示を行い、代表者にも業務禁止命令9か月を出しました。公表された違反行為は、氏名等の明示義務違反、書面の交付義務違反、物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反、勧誘の要請をしていない者への勧誘、契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘、勧誘を受ける意思を確認しないで行う勧誘です。2025年11月26日には消費者庁が別の1社に業務停止命令9か月を出しています。
処分の理由は手口の巧妙さではなく、基本的な手続き義務の不履行です。 名乗る、書面を渡す、断られたら引く。この3つを運用に落とせないなら、出張は後回しにしてください。なお、第14条第1項により古物を受け取れるのは営業所または相手方の住所・居所で、違反は第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
消費者庁は令和6年4月18日に「景品類等の指定の告示の運用基準について」を改定し、買取サービスも景品表示法の規制対象になり得ることを明確化しました。 自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、査定等をして金銭と引き換える役務を提供していると認められる場合は「自己の供給する役務の取引」に当たる、という整理です。
その1年後、令和7年4月30日に「買取サービスに関する実態調査報告書」が公表されました。買取業者50社の広告をサンプリング調査し、消費者アンケートと業者14社・関係団体2団体へのヒアリングを行ったもので、問題になりやすい表示を5類型に整理しています。買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取りの5つです。
個人開業で最初に手を出しやすいのが「どこよりも高く」と「何でも買取り」です。前者は競合他社の買取価格を何ら調査していない場合に問題になると報告書が明示しています。後者は持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らない場合、優良誤認にあたります。開店前に作ったチラシやサイトの文言を、この5類型で読み直してください。
景品規制も同時に掛かります。次回使える買取価格アップ券、キャッシュバック、自社ポイントの付与は景品類に該当し、総付景品の上限(取引価額が1,000円以上なら取引価額の20%、1,000円未満なら200円)の対象になります。今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円で、その旨を券面に明記します。 その場で買取価格をアップする場合は、アップ分を含めた全体が取引の対価になるため、原則として景品類に当たりません。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 許可が下りる時期(申請から約40日)から逆算して、物件契約日と開店日を並べたか |
| 2 | 手数料19,000円が不許可でも返金されないことを織り込んだか |
| 3 | 2号店の計画があっても、許可は主たる営業所の1件で足りると理解しているか |
| 4 | 営業所ごとの管理者選任(第13条第1項)と標識掲示(第12条第1項)を用意したか |
| 5 | ウェブに氏名・許可した公安委員会の名称・許可証番号を表示したか(第12条第2項) |
| 6 | 開業費用とは別枠で、月間買取目標額×約56日相当の買取原資を確保したか |
| 7 | 融資の限度額7,200万円ではなく、実績値(借入平均827万円)を基準に計画を組んだか |
| 8 | 特別利率A〜Cの要件(女性・35歳未満・55歳以上・認定創業支援等事業の支援など)に当たるか確認したか |
| 9 | 出張買取を行うなら、氏名等の明示・書面交付・再勧誘の禁止を運用手順に落としたか |
| 10 | 開店前の広告文言を、景表法の5類型(参考価格・アップ・保証・何でも・どこよりも高く)で読み直したか |
物件を先に契約してから許可を申請し、営業できない期間の家賃を払い続けるケースです。標準処理期間は約40日で、書類の補正期間は含まれません。逆に営業所を決めないと申請もできないため、契約日と申請日を許可の下りる時期から逆算して並べる以外に短縮の手はありません。無許可で先に買い受ければ、第31条第1号により3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
内装・什器・看板に自己資金を使い切り、買取原資を残さないまま開店する失敗です。買取業は客にその場で現金を渡し、売れてから回収します。中小企業実態基本調査から小売業の在庫回転を計算すると、従業者5人以下の層で在庫が現金に戻るまで平均55.9日でした。月200万円分を買い取るなら常時370万円前後が拘束されます。資金が尽きるのは開業直後ではなく、集客が効き始めた3〜4か月目です。
集客の起爆剤として「どこよりも高く買取」「何でも買取」をチラシとサイトに載せてしまうケースです。消費者庁は令和6年4月18日の運用基準改定で買取サービスが景品表示法の対象になり得ることを明確化し、令和7年4月30日の実態調査報告書で問題になりやすい表示を5類型に整理しました。競合他社の買取価格を何ら調査せずに地域No.1と表示する例、持ち込まれた物品の一部または全部を買い取らないのに何でも買取と表示する例が、それぞれ名指しで挙げられています。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 開業までにどれくらいの期間を見ておきますか | 古物商許可の標準処理期間が約40日で、書類の補正にかかった期間はこれに含まれません。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係、手数料は19,000円で不許可でも返金されません。営業所の所在地が決まらないと申請できず、許可が下りないと買い受けられないため、物件契約日と申請日を許可の時期から逆算して並べてください。 |
| 自己資金はいくら用意すればよいですか | 買取業に限った統計はありません。全業種の新規開業を対象とした日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業費用が平均975万円・中央値600万円、開業時の資金調達額が平均1,219万円で、うち自己資金が平均279万円(22.9%)、金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9%)でした。分布では4割以上が開業費用500万円未満です。これに加えて買取原資を別枠で積む必要が買取業には出ます。 |
| 買取原資はどう見積もりますか | 月間買取額に、現金が戻るまでの日数を掛けます。中小企業実態基本調査から小売業の在庫回転を計算すると、従業者5人以下の層で平均55.9日でした。月200万円分を買い取る計画なら常時370万円前後、月300万円分なら550万円前後が拘束されます。開業月から満額が要るわけではなく、買取額が伸びるにつれ増えるため、目標値に到達した時点で必要になる額として置いてください。 |
| 公庫の限度額7,200万円まで借りられますか | 限度額は上限であって、実際の借入額とは別です。新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円ですが、同公庫の調査では開業時に金融機関等から借り入れた金額は平均827万円でした。限度額を事業計画の規模の根拠にしないでください。利率は基準利率が原則で、女性・35歳未満・55歳以上、認定創業支援等事業の支援を受けた者などの要件で特別利率A〜Cが適用されます。 |
| 出張買取から始めるのは効率がよいですか | 構成比で見ると小さい市場です。2023年の買取市場13,274億円のうち、店頭買取り78.2%、出張買取り10.0%、宅配買取り9.5%でした。加えて出張買取は特定商取引法の訪問購入に当たり、氏名等の明示(第58条の5)、勧誘の要請をしていない者への勧誘と再勧誘の禁止(第58条の6)、書面の交付、引渡しの拒絶に関する告知(第58条の9)、8日間のクーリング・オフが掛かります。2026年8月4日に九州経済産業局が3社へ業務停止命令9か月と指示を出した事例では、明示・書面・再勧誘の違反が並んでいます。 |
| 開業直後の広告で気をつけることは何ですか | 景品表示法の5類型で自分の文言を点検してください。買取参考価格・買取実績価格、買取価格アップ、買取価格保証、何でも買取り、どこよりも高く買取りの5つです。買い取った実績のない金額を買取実績価格と表示すること、期限付きキャンペーンを常態化させること、競合の買取価格を調査せずに地域No.1と表示することが、報告書で具体的に問題として挙げられています。次回使える買取価格アップ券は景品類に当たり、今回の買取価格が1万円なら上限は2,000円です。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を2件挙げます。


扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。独立開業(個人)をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


