
依頼を検討する動機は「書類が面倒だから」であることが多いのですが、費用を払って戻ってくる価値は別のところにあります。申請書、略歴書、誓約書といった書式は、記入例に沿って埋められます。時間はかかりますが、詰まる作業ではありません。
詰まるのは判定の側です。①この物件を営業所として申請して通るか ②申請者と管理者が古物営業法第4条の欠格事由に当たらないか ③個人と法人のどちらの名義で取るか ④取り扱う古物の区分をどう申請するか。この4つは、申請書を書き始める前に決まってしまう論点です。
しかも、いずれも後から取り返しがききません。物件を契約してから通らないと分かっても契約は残ります。名義を個人で取ってから法人化すれば、扱いを改めて確認することになります。依頼の価値は、この4つの判定を、意思決定より前に受けられるかどうかに集約されます。
逆に言えば、物件を契約し、名義を決め、書類を揃え終えた段階で依頼しても、買えるのは代筆と窓口対応だけです。同じ費用を払っていても、防げる事故の量がまったく違います。
許可の可否は、営業所として届け出る物件で大きく左右されます。居住用の賃貸物件を無断で事業に使えば賃貸借契約の用法遵守義務に反し、その状態で申請すれば別の問題が積み上がります。賃貸なら賃貸借契約書の写し、自宅など他人名義の物件なら使用承諾書が要ります。
つまり、貸主が事業利用を承諾するかどうかが先にあります。この確認は、物件を申し込む前にしか意味がありません。申し込み後、契約後、内装着手後と進むほど、判明したときの損失が大きくなります。
依頼のタイミングを決める基準はここです。物件の候補が2〜3件に絞れた段階で相談に入れば、候補ごとの見込みを聞けます。契約書に判を押した後に相談すると、その物件で通す方法を探す作業になります。同じ報酬でも、前者は選択肢を増やし、後者は選択肢を減らした状態から始まります。
審査には一定の期間がかかり、その間も物件の賃料は発生します。期間の目安は「古物商許可の取得手続き」で扱っているとおりで、ここで繰り返しません。押さえるのは、その期間の固定費を負担するのは物件を契約した後だという順序のほうです。契約を後ろにずらせるなら、審査期間の家賃負担そのものを圧縮できます。
古物営業法第4条は許可を与えない場合を列挙しており、第13条第2項は、未成年者や第4条第1号から第7号までに該当する者などが管理者になれないことを定めています。これらは書類を見れば分かる情報ではなく、本人しか知らない事実で決まります。
行政書士に依頼しても、聞き取った内容以上のことは判定できません。伝えていない事実があれば、そのまま申請に進み、審査の段階で表に出ます。許可申請書または添付書類に虚偽の記載をして提出した場合は、第34条第1号により20万円以下の罰金です。偽りその他不正の手段で許可を受けた場合は第31条第2号にあたり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
依頼する側の準備は、この聞き取りに正確に答えられる状態を作ることです。申請者本人だけでなく、法人であれば役員、そして各営業所に置く管理者の全員が対象になります。人数が多いほど、確認の抜けが出ます。
管理者は営業所ごとに1人を選任する義務があり(第13条第1項)、同条第3項は、取り扱う古物が不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を古物商に課しています。名前を置けば足りる役ではありません。多店舗を計画しているなら、店舗数と同じだけ、欠格事由に当たらず、かつ実務を担える人を確保できるかが制約になります。
| 相談する時期 | まだ動かせるもの | 防げる事故 | 残る作業 |
|---|---|---|---|
| 物件を探し始めた時点 | 物件・名義・営業形態のすべて | 許可が下りない物件の契約。名義の取り直し | 候補ごとの確認と書類収集 |
| 物件の候補を2〜3件に絞った時点 | どの物件にするか | 承諾が得られない物件を選ぶこと | 貸主との承諾のやり取り |
| 物件を契約した後 | 書類の作り方のみ | 書類の不備による補正 | その物件で通す方法を探す |
| 書類を揃え終えた後 | 提出の仕方のみ | 記載ミス | 代筆と窓口対応 |
| 法人設立と並行 | 商号・役員構成・本店所在地 | 個人で取ってから取り直す事態 | 設立登記との順序調整 |
| 多店舗を同時申請 | 管理者の人選 | 管理者が欠格事由に当たること | 営業所ごとの確認 |
報酬の相場について、買取ラボは一次情報を持っていません。したがって金額は示しません。事務所名や料金を挙げた比較記事を見かけたら、その数字がいつ時点のもので、何が含まれた金額かを確認してください。
金額を示す代わりに、見積もりを同じ条件に揃えるための項目を挙げます。総額だけを並べても比較にならないのは、含まれる範囲が事務所ごとに違うためです。
揃える項目は、①住民票・身分証明書など添付書類の取得代行が含まれるか ②申請前に管轄警察署へ事前相談をするか、同行するか ③物件が営業所として適するかの事前確認が含まれるか ④補正が出た場合の対応が報酬に含まれるか、追加になるか ⑤不許可だった場合に何が戻るか ⑥複数営業所や仮設店舗の届出を扱うか ⑦許可取得後の変更届に対応するか ⑧行政庁へ納める手数料が見積もりに含まれているか(含まれていない場合は総額が変わる)、の8点です。
買取業で効くのは②と③です。この2つが含まれていない見積もりは、書類の作成と提出の代行だけを指しています。安く見えても、防げる事故の範囲が違います。逆に、時間に余裕があり物件も決まっているなら、②③を外した範囲で足りることもあります。
許可申請では、手数料が行政庁に納められます。この手数料は、不許可になっても返金されません。詳細は「古物商許可の取得手続き」で扱っています。
問題は行政書士報酬の側です。不許可だった場合に報酬が返るかどうかは、事務所ごとの契約で決まります。返金する、一部を返す、返さない、いずれの取り扱いもありえます。契約前に書面で確認してください。口頭の説明だけで進めると、結果が出た後に争点になります。
同時に確認するのは、補正が出た場合の扱いです。書類に不備があって補正を求められたときの対応が報酬に含まれるのか、追加費用になるのかは、事務所によって異なります。補正の回数に上限があるかも聞いておいてください。
そして、そもそも不許可が見込まれる場合に、申請前に止めてくれるかどうかです。受任してから「やはり難しい」と言われるより、受任前に「この条件では難しい」と言われるほうが、依頼者の損失は小さくなります。そう言える相手かどうかは、初回の相談で物件と欠格事由の話をどこまで具体的に聞かれるかで見当がつきます。
代行が扱うのは入口です。許可が下りた後の義務は、依頼したかどうかに関係なく事業者に残ります。ここを混同すると、開業直後に義務違反が積み上がります。
残るのは、第12条第1項の標識掲示(違反は第35条第2号により10万円以下の罰金)、第12条第2項のインターネット上での氏名・公安委員会の名称・許可証番号の公表、第13条第1項の営業所ごとの管理者の選任、第15条第1項の相手方の真偽の確認、第16条の帳簿等への記載、第18条第1項の最終記載日から3年間の備付けです。
帳簿の記載事項は、①取引の年月日 ②古物の品目及び数量 ③古物の特徴 ④相手方の住所・氏名・職業・年齢 ⑤第15条第1項の規定によりとった措置の区分、の5つで、買取金額は含まれていません。目的が盗品等の流通防止にあるためです。所得を計算する側の帳簿は別に用意します。この2つの関係は「会計ソフト・記帳体制の整備」で扱っています。
第16条・第17条の記載義務違反や虚偽記載は、第33条第2号により6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。第15条第1項の確認義務違反、第18条第1項の備付け義務違反も同条第1号で同じ罰則です。開業初日から義務が始まるため、許可が下りるまでの期間に運用の設計を終えておいてください。
依頼が常に正解ではありません。自分で出したほうが合理的な条件は、はっきりしています。
第一に、開業日を動かせる場合です。補正で数週間延びても損失が家賃の数週間分にとどまるなら、時間を費やして手続きを理解する価値があります。第二に、物件がすでに要件を満たすことを管轄警察署で確認済みの場合です。判定の部分を自力で終えているなら、残るのは書類作成なので、代行で買う価値が小さくなります。
第三に、営業所が1か所で、申請者と管理者が同一人物の場合です。確認すべき人数が少なく、欠格事由の聞き取りが単純になります。逆に、法人で役員が複数いる、複数の営業所を同時に申請する、管理者を外部から採用する予定がある場合は、確認の量がそのまま作業量になります。
逆に依頼が効くのは、開業日が決まっていて動かせない場合、物件をこれから探す場合、法人設立と並行して進める場合、過去の経歴に確認が要る事情がある場合です。費用と期間のどちらを優先するかではなく、判定を必要とする論点がいくつ残っているかで決めてください。
相談の質は、こちらが持ち込む情報の量で決まります。何も決まっていない状態で相談に行くと、一般的な説明を聞いて終わります。
先に決めておくのは、①個人で取るか法人で取るか ②営業所の候補(住所と、賃貸か自己所有か、貸主の事業利用承諾の見込み)③取り扱う古物の区分 ④管理者を誰にするか ⑤出張買取・仮設店舗・宅配買取をやるかどうか ⑥開業予定日と、それを動かせるかどうか、の6点です。
⑤は見落とされがちですが、営業の形態によって関わる条文が変わります。第14条第1項により、古物商は営業所または取引相手の住所・居所以外の場所では、古物商以外の者から古物を受け取れません。出張買取が成り立つのは、相手方の住所・居所が例外にあたるためです。仮設店舗で営業するなら、あらかじめ日時と場所を、その場所を管轄する公安委員会に届け出ます。届出なく出張先で買い取れば、第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
宅配やフォーム申込で非対面の買取をするなら、古物営業法施行規則第15条第3項に列挙された13の方法のいずれかで相手方の真偽を確認します。どの号の方法を採るかで、開業時に用意するものが変わります。これらを決めてから相談に入れば、1回の面談で判定まで進みます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 物件を申し込む前に相談しているか。契約後になっていないか |
| 2 | 営業所の候補について、貸主から事業利用の承諾を得られる見込みを確認したか |
| 3 | 個人で取るか法人で取るかを、依頼する前に決めているか |
| 4 | 申請者・役員・管理者の全員について、欠格事由の聞き取りに正確に答えられる状態か |
| 5 | 営業所ごとの管理者を確保できるか(多店舗なら店舗数分) |
| 6 | 取り扱う古物の区分を決めているか |
| 7 | 出張買取・仮設店舗・宅配買取をやるかどうかを決めているか |
| 8 | 見積もりを金額ではなく、含まれる範囲の8項目で並べたか |
| 9 | 事前相談・物件の事前確認が見積もりに含まれているか |
| 10 | 補正対応が報酬に含まれるか、追加になるかを書面で確認したか |
| 11 | 不許可だった場合に報酬がどう扱われるかを、契約前に文字にしたか |
| 12 | 許可後の標識掲示・ネット公表・管理者・確認・記帳の運用を、許可が下りるまでに設計したか |
物件を契約してから依頼するケースです。許可の可否は営業所として届け出る物件で大きく左右され、賃貸なら賃貸借契約書の写し、自宅など他人名義なら使用承諾書が要ります。貸主が事業利用を承諾するかの確認は、申し込む前にしか意味がありません。契約後に相談すると、選択肢を減らした状態から「その物件で通す方法」を探す作業になり、同じ報酬でも戻ってくる価値がまったく違います。
欠格事由に関わる事実を伝えないまま申請に進むケースです。第4条の欠格事由は書類からは分からず、本人の申告でしか判定できません。伝えていなければ行政書士にも防げず、審査の段階で表に出ます。許可申請書または添付書類への虚偽記載は第34条第1号により20万円以下の罰金、偽りその他不正の手段で許可を受けた場合は第31条第2号により3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。法人なら役員、各営業所の管理者まで全員が対象になります。
依頼したことで、許可後の義務まで任せた気になってしまうケースです。代行が扱うのは入口だけで、第12条第1項の標識掲示、第12条第2項のインターネット上での公表、第13条第1項の管理者の選任、第15条第1項の確認、第16条の記帳、第18条第1項の3年間の備付けは、開業初日から事業者に残ります。第16条の記載義務違反や虚偽記載は第33条第2号により6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。許可が下りるまでの期間に、運用を設計しておいてください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 行政書士に依頼すると、何が変わりますか | 書類作成の代行だけを見ると差は小さくなります。費用に見合う価値が出るのは、申請前の判定を受けられる場合です。具体的には、この物件を営業所として申請して通るか、申請者と管理者が第4条の欠格事由に当たらないか、個人と法人のどちらの名義で取るか、取り扱う古物の区分をどう申請するかの4点です。いずれも申請書を書き始める前に決まる論点で、後から取り返しがききません。 |
| いつ相談するのが適切ですか | 物件を申し込む前です。許可の可否は営業所として届け出る物件で大きく左右され、賃貸なら貸主の事業利用承諾が前提になります。候補が2〜3件に絞れた段階で相談すれば、候補ごとの見込みを聞けます。契約に判を押した後だと、その物件で通す方法を探す作業になり、選べる範囲が狭くなります。審査期間中も物件の賃料は発生するため、契約の時期を後ろにずらせるかどうかも同時に相談してください。 |
| 報酬はいくらくらいですか | 本記事では金額を示しません。買取ラボが一次情報として確認できている範囲を超えるためです。金額の代わりに、見積もりを同じ条件に揃える項目で比べてください。添付書類の取得代行、管轄警察署への事前相談と同行、物件が営業所として適するかの事前確認、補正対応の扱い、不許可時の扱い、複数営業所や仮設店舗の届出、許可後の変更届、行政庁へ納める手数料が見積もりに含まれるか、の8点です。事前相談と物件の事前確認が入っていない見積もりは、書類作成と提出の代行だけを指しています。 |
| 不許可になったら、支払った報酬は戻りますか | 事務所ごとの契約で決まります。返金する、一部を返す、返さない、いずれの取り扱いもありえるため、契約前に書面で確認してください。あわせて、補正を求められた場合の対応が報酬に含まれるのか追加になるのか、補正の回数に上限があるかも聞いておきます。なお行政庁へ納める手数料は不許可でも返金されません。この点は「古物商許可の取得手続き」で扱っています。 |
| 依頼すれば、許可後の手続きも任せられますか | 許可後の義務は事業者に残ります。第12条第1項の標識掲示(違反は第35条第2号により10万円以下の罰金)、第12条第2項のインターネット上での氏名・公安委員会の名称・許可証番号の公表、第13条第1項の営業所ごとの管理者の選任、第15条第1項の相手方の真偽の確認、第16条の記帳、第18条第1項の最終記載日から3年間の備付けが該当します。変更届の代理を業務範囲としている事務所はありますが、日々の運用は代行できません。 |
| 自分で申請したほうがよいのは、どんな場合ですか | 開業日を動かせる場合、物件が営業所の要件を満たすことを管轄警察署で確認済みの場合、営業所が1か所で申請者と管理者が同一人物の場合です。判定を必要とする論点が残っていないなら、代行で買えるのは書類作成だけになります。逆に、開業日が決まっていて動かせない、物件をこれから探す、法人設立と並行する、確認が要る経歴上の事情がある場合は、判定の論点が多く残るため依頼が効きます。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を7件挙げます。







扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。行政書士に古物商申請を依頼をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


