
求人媒体の採用単価、掲載料金、媒体別の応募率について、買取業に限定した公的統計は公表されていません。業界横断の平均値を持ってきても、古物商許可を持つ小規模事業者が母集団に含まれているかを確認できないため、この記事では金額を書きません。金額を書かないことは情報量を落とすことではなく、検証できない数字で判断を固定しないという選択です。
隣接する数字として、電通「2025年 日本の広告費」の総広告費8兆623億円、うちインターネット広告費4兆459億円(構成比50.2%)があります。ただしこれは日本全体の出稿額であって、1社が求人1件に払う費用でも、媒体の優劣でもありません。同じ資料で折込2,354億円(前年比96.4%)、フリーペーパー1,056億円(同80.9%)と紙系が縮んでいることは読めますが、そこから読み取ってよいのは「紙で配る手段全体が縮小している」までです。求人媒体の料金水準の根拠にはなりません。
では何を根拠にするか。自店の実測しかありません。媒体ごとに、応募・書類通過・面接実施・内定・入社の5段階の人数を3か月分そろえます。この5列があれば、媒体を変えるべきなのか、選考の途中で落ちているのかを切り分けられます。応募数だけを見て媒体を乗り換える判断は、面接段階で辞退が集中している店では効きません。
人材紹介と求人媒体の違いも、金額ではなく責任範囲で捉えます。紹介は候補者の絞り込みまでを外部が担い、媒体は接触面だけを提供します。どちらも、入社後に何をしてもらうかを決める作業は自社に残ります。次の節で扱うのはその部分です。
求人票の職務欄に「接客」「査定補助」とだけ書くと、実際に任せる業務のうち法令で義務づけられている部分が消えます。古物商が買い受けるとき、古物営業法第15条第1項により相手方の真偽を確認する措置をとり、第16条により取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分を帳簿等に記載します。この記帳を担当する人を採るのか、査定額を決める人を採るのかで、求める経験がまったく違います。
出張買取を任せるなら、さらに特定商取引法の訪問購入の義務が乗ります。勧誘に先立って氏名・勧誘目的・物品の種類を明らかにする第58条の5、申込みや契約時の書面交付の第58条の7・第58条の8、引渡しを受けるときに引渡しを拒める旨を告げる第58条の9です。これらは現場に行った人が実行しなければ果たされません。求人票に「出張あり」とだけ書き、書面交付と告知が業務に含まれることを書かないと、入社後に業務量の認識がずれます。
義務の重さは扱う品目でも変わります。本人確認は対価の総額1万円未満なら免除されますが(古物営業法第15条第2項、施行規則第16条第1項)、自動二輪車・原動機付自転車、エアコン室外機等、家庭用ゲームソフト、光学的方法で音や影像を記録した物、電線、金属製グレーチング、書籍の7品目は金額に関係なく確認が要ります。書籍やゲームソフトを扱う店では、少額の取引でも毎回の確認と記帳が発生します。低単価・多点数の店の求人票は、査定スキルより処理の正確さを前面に置くほうが実態に合います。
職務を法定義務のある業務とない業務に分けて書くと、応募者側で自己選別が働きます。応募数は減りますが、面接に来る人の職務理解が上がります。媒体を変えるより先に手を入れるのはここです。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、卸売業,小売業の所定内給与額は月349.1千円(前年比+1.6%)、平均年齢44.3歳、平均勤続年数14.5年です。この数字を求人票の給与欄にそのまま持ち込めない理由が3つあります。
1つ目は、この区分が「卸売業,小売業」の合算値であることです。買取業単独の値ではありません。2つ目は、集計対象が10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所であることです。中小企業実態基本調査では小売業の法人企業236,813社のうち16万社超が従業者5人以下でしたから、小規模な買取店はこの統計にほぼ入っていません。3つ目は、この「賃金」が所定内給与額の月額であり、賞与・残業代・通勤手当を含まず、年収でもないことです。12倍して年収として提示すると、実際の支給額と食い違います。
使い方を限定すれば材料になります。「同業種帯(卸売・小売、10人以上規模)では所定内給与額が月349.1千円」という形で、自店の提示額がどのあたりに位置するかを見る物差しとして扱います。産業間で見ると、最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業444.0千円、最も低いのは宿泊業,飲食サービス業277.2千円で、卸売業,小売業の349.1千円は16産業の中位からやや下です。
パート・アルバイトの時給相場については、買取業に当てはめられる一次情報がありません。この記事では時給の目安を書きません。地域別最低賃金は毎年改定される公表値なので、そちらは自治体の公表資料で確認してください。
| 求人票に書く職務 | 根拠となる義務 | 未経験者に任せられるか | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 買受け時の本人確認 | 古物営業法第15条第1項。1万円未満は免除だが7品目は例外(施行規則第16条) | 手順化できるため任せやすい。免除の例外品目の判断だけ切り出す | 管轄警察署(古物担当) |
| 帳簿等への記載 | 古物営業法第16条。年月日・品目及び数量・特徴・相手方の住所氏名職業年齢・確認措置の区分 | 任せやすい。記載漏れは第33条第2号の罰則対象 | 管轄警察署(古物担当) |
| 帳簿等の保存 | 古物営業法第18条第1項。最終記載の日から3年間、営業所等に備え付け | 保管ルールを決めれば任せられる | 管轄警察署(古物担当) |
| 査定額の決定 | 法定義務ではない。仕入原価を自社で決める行為そのもの | 任せにくい。金額の権限をどこまで渡すかを先に決める | 自社(社内基準) |
| 出張時の氏名等の明示 | 特定商取引法第58条の5。勧誘に先立ち氏名・勧誘目的・物品の種類を明示 | 台本化できるが、実行漏れが処分事由になる | 消費者庁・経済産業局 |
| 出張時の書面交付 | 特定商取引法第58条の7・第58条の8 | 様式を固定すれば任せられる。交付漏れが処分事由になる | 消費者庁・経済産業局 |
| 引渡し拒絶の告知 | 特定商取引法第58条の9。引渡しを受ける時に、拒める旨を告げる | 実行のタイミングが決まっているため教育しやすい | 消費者庁・経済産業局 |
| 管理者の職務 | 古物営業法第13条第1項で営業所ごとに1人選任。第13条第2項に欠格事由 | 選任の可否を自己判断しない | 管轄警察署(古物担当) |
同じ調査の年齢階級別(卸売業,小売業、所定内給与額・千円/月)を並べると、20〜24歳241.0、25〜29歳272.7、30〜34歳302.2、35〜39歳336.7、40〜44歳361.5、45〜49歳385.4、50〜54歳418.1、55〜59歳423.4でピークを打ち、60〜64歳332.9、65〜69歳261.8と下がります。ピークは20代前半の1.76倍です。
査定は経験が価値になる職種です。相場の記憶、真贋の判断、断り方の引き出しは、年数でしか積みません。勤続を前提に採るなら、この賃金カーブの上昇分を先に織り込んで採用計画を立てる形になります。逆に、上昇分を織り込めないなら、経験者を長期で抱える前提の求人にしないという判断もあります。
実務では、経験者採用と未経験者採用のどちらを媒体に出すかで、求人票の構成が変わります。経験者を狙う求人で「未経験歓迎」を併記すると、応募母数は増えますが選考工数が増え、経験者からは条件が薄く見えます。1本の求人票で両方を取りにいかない、という設計判断が先にあります。
なお、60〜64歳で332.9へ落ちる形は、定年後の再雇用が統計に入ることによるものと読めますが、買取業でそうなっているかは確認できません。自店の賃金設計に転用するときは、あくまで同業種帯全体の形として扱ってください。
雇用関係助成金で採用場面に近いのはキャリアアップ助成金の正社員化コースですが、これは求人媒体の掲載料を補助する制度ではありません。有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換した後に支給される制度です。中小企業で、重点支援対象者を有期雇用から正社員に転換した場合80万円(40万円×2期)、それ以外の対象者では40万円(40万円×1期)です。無期雇用労働者からの転換は、それぞれ40万円・20万円になります。
支給の時間軸を先に見ます。正社員として6か月雇用した時点で1期目、さらに6か月で2期目です。つまり転換から最初の入金まで半年、2期目まで1年かかります。求人媒体に出稿する時点では1円も入りません。媒体費の資金繰りとこの助成金は接続しないという理解で計画を組みます。
対象になる事業主の範囲も、補助金とは定義が違います。雇用関係助成金の中小企業事業主は、小売業なら資本金・出資の総額5,000万円以下、または常時雇用する労働者50人以下です。「または」なので、どちらかを満たせば該当します。持続化補助金の「従業員5人以下」とは別の基準なので、混同しないでください。判定時点は支給申請時です。
不支給要件のうち買取業で引っかかりうるものとして、支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主、支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない場合、非正規雇用労働者の処遇低下がある場合が挙げられています。1年度1事業所あたりの支給申請上限は20名です。年度途中で要件が変わる制度なので、取組の前に管轄の労働局・ハローワークへ確認してください。
媒体を「良い・悪い」で評価している間は、乗り換えを繰り返すだけになります。評価の単位を、応募数から選考段階別の人数に変えます。応募、書類通過、面接実施、内定、入社、そして入社後3か月の在籍。この6点を媒体ごとに並べると、問題が入口にあるのか選考にあるのか定着にあるのかが分かれます。
買取業に固有の観察点として、面接での辞退理由に「1万円未満でも本人確認が要る品目がある」「出張では書面を渡して引渡しを拒める旨を告げる」といった業務説明が出てきたかを記録します。求人票に書かず面接で初めて説明した項目が辞退理由に並ぶなら、媒体ではなく求人票の記載が原因です。
人材紹介を使う場合は、紹介会社に渡す要件定義書に、法定義務のある業務を条番号つきで書きます。「接客経験3年以上」より「第16条の帳簿記載を1日20件処理できること」のほうが、紹介側で候補を絞れます。抽象的な人物像だけを渡すと、絞り込みの精度は上がりません。
3か月の実測がそろうまでは、媒体の入れ替えを止めます。入れ替えながら測ると、どの変更が効いたのかが分からなくなります。
採る人数を決める材料は、外部の統計ではなく自店の帳簿にあります。古物営業法第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間備え付けられています。ここから月別・曜日別・時間帯別の取引件数を出せば、繁閑の形が実測で出ます。
帳簿の記載事項には第15条第1項でとった措置の区分が含まれるため、本人確認が要った取引と免除された取引を分けて数えられます。確認が要った取引の件数は、そのまま確認・記帳の作業量です。ここが増えているなら、査定できる人ではなく処理できる人を採るという判断になります。
出張買取を行っているなら、訪問件数と、そのうち物品を受け取れた件数を分けます。特定商取引法第58条の15により、相手方は引渡しの期日の定めがあっても引渡しを拒めます。行っても持ち帰らない便が制度上発生するため、訪問件数と成約件数は一致しません。人員計画を成約件数だけで組むと、実際の稼働より少なく見積もることになります。
この数え方をしておくと、求人票の職務欄が具体的になります。「月に何件の記帳を処理する」「週に何件の訪問に同行する」という書き方は、媒体の種類を問わず応募者の理解を揃えます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 求人票の職務欄に、第15条の確認・第16条の記帳が業務に含まれることを書いているか |
| 2 | 出張買取を任せる求人で、第58条の5の明示・第58条の7の書面交付・第58条の9の告知が業務に含まれることを書いているか |
| 3 | 扱う品目に書籍・光学メディア・家庭用ゲームソフトが含まれる場合、1万円未満でも確認と記帳が要ることを求人票と面接で説明しているか |
| 4 | 媒体ごとに応募・書類通過・面接実施・内定・入社・入社3か月在籍の6点を3か月分そろえているか |
| 5 | 給与欄の金額を、卸売業,小売業の月349.1千円という所定内給与額をそのまま持ち込んで決めていないか |
| 6 | 所定内給与額を12倍して年収として提示していないか |
| 7 | 経験者向けと未経験者向けを1本の求人票に混在させていないか |
| 8 | キャリアアップ助成金を採用費の補填として資金計画に組み込んでいないか(転換後6か月で1期目、さらに6か月で2期目) |
| 9 | 雇用関係助成金の中小企業事業主の判定(小売業は資本金5,000万円以下または常時雇用50人以下)を、持続化補助金の従業員5人以下と混同していないか |
| 10 | 採用人数を、帳簿から出した月別・曜日別・時間帯別の取引件数で裏づけているか |
| 11 | 出張買取の人員計画を、訪問件数ではなく成約件数だけで組んでいないか |
応募が集まらないことを媒体のせいにして、掲載先を短期間で入れ替える失敗があります。入れ替えながら測ると、どの変更が効いたのかを後から分離できません。媒体ごとに応募から入社3か月在籍までの6段階の人数を、最低3か月そろえてから判断してください。面接段階で辞退が集中しているなら、原因は媒体ではなく求人票の記載か面接での業務説明にあります。
求人票の給与欄を、賃金構造基本統計調査の卸売業,小売業349.1千円から逆算して決めてしまう失敗があります。この値は卸売と小売の合算で、集計対象は10人以上の常用労働者を雇用する事業所です。小売業の法人企業236,813社のうち16万社超が従業者5人以下という規模構成を考えると、小規模な買取店はこの統計にほぼ入っていません。自店の粗利と件数から出した支払能力を先に置いてください。
採用にかかる費用をキャリアアップ助成金で回収する前提で出稿してしまう失敗があります。この助成金は正社員に転換した後、6か月雇用で1期目、さらに6か月で2期目という後払いです。出稿時点では入金がなく、支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反があると不支給になります。媒体費は自己資金で完結する前提に置いてください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 求人媒体と人材紹介は、どちらが買取業に向いていますか | どちらが有利かを示す一次情報がないため、優劣は書けません。判断できるのは責任範囲の違いです。媒体は接触面だけを提供し、候補者の絞り込みは自社に残ります。紹介は絞り込みまでを外部が担うため、渡す要件定義の精度がそのまま候補の質になります。紹介を使うなら、「接客経験3年以上」ではなく「古物営業法第16条の帳簿記載を1日20件処理できること」のように、法定義務のある業務を条番号つきで書いて渡してください。 |
| 求人票に給与をいくらと書けばよいですか | 外部の統計から金額を決める方法は取れません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査で卸売業,小売業の所定内給与額は月349.1千円ですが、卸売との合算値であり、集計対象が10人以上の常用労働者を雇用する事業所に限られ、賞与や残業代を含まない月額です。使えるのは「同業種帯ではこの水準」という位置確認までです。金額は、自店の粗利額と月間取引件数から出した支払能力を先に置いて決めてください。 |
| 未経験者を採って査定を任せられますか | 査定額の決定は法定義務ではなく、仕入原価を自社で決める行為そのものです。金額の権限をどこまで渡すかは社内で決める事項なので、外部の基準はありません。一方、第15条の本人確認と第16条の記帳は手順が法令で決まっているため、未経験者にも手順書で任せられます。求人票を分けて書くなら、記帳と確認を中心にした募集と、査定額の権限を持つ募集を別に立てるほうが応募者の理解が揃います。 |
| 出張買取の担当者を採るとき、求人票に何を書いておくべきですか | 訪問購入に当たる業務であることと、現場で実行する義務を具体的に書きます。勧誘に先立って氏名・勧誘目的・物品の種類を明示すること(第58条の5)、申込みや契約時に書面を交付すること(第58条の7・第58条の8)、引渡しを受ける時に引渡しを拒める旨を告げること(第58条の9)です。また、相手方は引渡しの期日の定めがあっても引渡しを拒めるため(第58条の15)、訪問しても物品を持ち帰らない便が発生します。この点を伏せると、入社後に成果評価をめぐる認識のずれが出ます。 |
| 採用にあたって使える助成金はありますか | 求人媒体の掲載料そのものを補助する雇用関係助成金は確認できていません。近いのはキャリアアップ助成金の正社員化コースで、中小企業が重点支援対象者を有期雇用から正社員に転換した場合80万円(40万円×2期)、それ以外の対象者では40万円です。転換後6か月で1期目、さらに6か月で2期目という後払いで、1年度1事業所あたりの申請上限は20名です。中小企業事業主の判定は小売業として資本金5,000万円以下または常時雇用50人以下で行います。年度途中で要件が変わるため、取組の前に管轄の労働局・ハローワークへ確認してください。 |
| 応募者に古物営業法の欠格事由を確認しておくべきですか | 第13条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号までの欠格事由に該当する者は管理者になれません。ただし、採用選考の場でどこまで何を確認してよいかは労働法と個人情報保護の領域にかかるため、この記事では手順を断定しません。管理者として選任する予定があるなら管轄警察署(古物担当)へ、選考時の確認の可否は社会保険労務士または労働局へ確認してください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を3件挙げます。



扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。人材紹介・求人媒体の活用をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


