
「あと何台入れるか」から入ると、設置が終わった後に「そのカメラは何を映しているのか」を説明できなくなります。買取店で記録として意味を持つのは、現金と品物が入れ替わる瞬間と、その前後で誰が触ったかです。局面を先に列挙し、局面ごとに記録の要否を決めれば、台数はその結果として出てきます。
営業所の中で起きる局面は大きく3つに分かれます。第一に受渡しの局面で、査定カウンターで現金が客に渡り、品物が店に入ります。第二に保管の局面で、買い取った品物と買取原資としての現金がその場に置かれます。第三に出入りの局面で、従業者・客・搬入搬出がここを通ります。性質が違うので、同じ基準でまとめて考えることはできません。
防犯カメラの機種・価格・解像度・録画容量について、公的機関が公表した一次情報が見当たりません。したがってこの記事では、どの製品が優れているかという順位付けを行いません。書けるのは、局面の列挙と、局面ごとに何を後から取り出したいかという要件までです。
この順序で決めておくと、増設の稟議も後の運用も同じ言葉で説明できます。「入口に1台足す」ではなく「搬出時に誰が持ち出したかを取引と結びつけたいので、この位置を記録対象にする」という形になります。
古物営業法第14条第1項は、古物商が古物商以外の者から古物を受け取る場所を、営業所または取引の相手方の住所・居所に限定しています。仮設店舗については、日時と場所をあらかじめ管轄の公安委員会へ届け出れば認められるという但書があります。違反すると第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
この3つのうち、自店の設備を常設できるのは営業所だけです。相手方の住所・居所は他人の場所であり、仮設店舗は開催期間しか存在しません。つまり、防犯カメラの増設という検討は営業所の中に閉じた作業になります。
営業所が複数あるなら、増設の検討も営業所の数だけ発生します。第13条第1項が営業所ごとに管理者を1人選任することを定めているので、どの局面を記録対象にするかを決める責任者も営業所ごとに存在します。本部で機種を統一するにしても、局面の列挙は営業所ごとにやり直すことになります。
受け取る場所が法律で列挙されているという性質は、防犯の設計では有利に働きます。守る地点が無限に増えないためです。営業所の外で起きる取引は例外として切り出し、カメラ以外の手段で記録することになります。
古物営業法第18条第1項が定める3年の保存は、帳簿等に対する義務です。最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面へ表示できる状態で保存します。この3年は防犯カメラの映像には及びません。
古物営業法に映像の保存期間を定めた条文はありません。したがって保存日数は自店で決めることになります。決めないまま運用すると、上書きの周期が機器の容量任せになり、必要になった時点で残っているかどうかが偶然で決まります。
決め方は、映像と突き合わせたい記録の側から逆算します。現金の残高照合を日次で行うなら、差異が出た日の映像が残っていればよいことになります。現物の棚卸を月次で行うなら、直近の棚卸日まで遡れる必要が出ます。出張買取をしていれば、特定商取引法の訪問購入として法定書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフ期間があり、その間に品物の返還を求められる場面が生じます。
保存日数を決めたら、それが実際に確保されているかを定期的に確認します。カメラを増設すると1台あたりの記録容量が減り、同じ機器で保存できる日数が短くなります。増設が保存期間を縮める方向に働くという関係を、増設の前に確認してください。
| 営業所の中の局面 | 記録として取り出したいもの | 突き合わせる相手 | 古物営業法との関係 |
|---|---|---|---|
| 査定カウンターでの受渡し | 現金を渡した時刻と、品物を受け取った時刻 | 自社の原価記録と現金出納 | 第16条の記帳は別に必要。映像では④⑤は埋まらない |
| 買取原資としての現金の置き場 | 開閉した時刻と、その場にいた者 | 日次の現金残高照合 | 古物営業法に定めなし。自店の運用で決める |
| 買い取った在庫の保管場所 | 出し入れの時刻と数量 | 現物棚卸と帳簿の数量 | 第16条の品目及び数量と突き合わせる |
| 搬出入口 | 誰が何を持ち出したか | 売却先への引渡し記録 | 第16条は引渡し時も記帳の対象 |
| 帳簿・記録装置の保管場所 | 入室した者 | 第18条第2項の届出要否の判断 | 帳簿等の亡失は直ちに所轄警察署長へ届出 |
| 宅配買取の開封場所 | 開封者と、開封時点の数量 | 送り状と到着時の数量 | 到着後は営業所内の取引として記帳の対象 |
| 標識の掲示位置 | — | 許可証の記載内容 | 第12条第1項。防犯上の都合では動かせない |
古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき、または引き渡したときに、その都度帳簿等へ記載する義務を定めています。記載事項は、①取引の年月日 ②品目及び数量 ③古物の特徴 ④相手方の住所・氏名・職業・年齢 ⑤第15条第1項でとった措置の区分の5つです。
このうち④と⑤は、映像を見ても分かりません。 住所や職業は本人確認の書類を確認して初めて記録できる項目であり、どの措置をとったかという区分も同様です。③の古物の特徴も、映像から型番やシリアルを読み取れる前提は置けません。カメラを何台増やしても、第33条第1号・第2号が対象とする確認義務違反や記載義務違反は減りません。
むしろ注意が要るのは、映像があることで「記録が残っている」という感覚が生まれる点です。法令が求めている記録と、自店が任意で持っている記録は別系統です。前者が欠けている状態を後者で埋めることはできません。
映像が実際に役に立つのは、記帳した内容と現物や現金の動きが食い違ったときに、どの取引でずれたのかを特定する場面です。帳簿の1行、自社の原価記録の1行、現金出納の1行が揃わない取引が出たときに、その時刻の映像へ戻れる。この使い方に限定して考えると、記録すべき局面も自然に絞れます。
古物営業法第12条第1項は、営業所・仮設店舗・古物市場ごとに、公衆の見やすい場所へ標識を掲示する義務を定めています。同条第2項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名または名称・許可をした公安委員会の名称・許可証の番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務を課しています。違反は第35条第2号で10万円以下の罰金です。
そこで古物の取引が行われていることは、法律によって外部へ公示されます。取扱いの事実を伏せて目立たなくする方向の設計は成り立ちません。増設の議論も、見られている前提の上で行うことになります。
掲示の位置は許可の要件に関わるため、カメラの画角や配線の都合で動かすことはできません。内装や什器の配置を変える段階で、標識の位置を先に固定してから撮影範囲を決めると、後の手戻りが減ります。
カメラを設置していること自体を掲示するかどうかは、古物営業法の論点ではありません。撮影の告知については個人情報の取扱いの問題として別に判断します。ここで確認しておきたいのは、店の所在と古物商であることは既に公示されている、という前提です。
第16条の記載事項には相手方の住所・氏名・職業・年齢が含まれ、第18条第1項によりそれが3年分その場にあります。防犯カメラを増設すると、これとは別の系統で、来店した人の姿という個人情報が増えます。系統が違うので、保存期間も、閲覧できる従業者の範囲も、別に決めることになります。
第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに直ちに所轄警察署長へ届け出る義務を定めています。これは帳簿等に対する義務であり、映像の消失は届出の対象ではありません。 逆に言えば、映像が消えても外部への報告義務は発生しない代わりに、消えたこと自体に誰も気づかない運用になりがちです。
閲覧の範囲を先に決めていないと、増設のたびに映像を見られる人が増えます。誰が再生できるか、再生した記録が残るか、外部へ提供する場面の判断を誰がするか。この3点は台数を増やす前に決める項目です。
警備会社や設備業者に保守を委託する場合は、委託先が映像に触れられるかどうかを契約で切り分けます。帳簿の保管場所と映像の記録装置が同じ部屋にあるなら、その部屋への入室権限が両方に効いてしまう点も確認してください。
警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、令和7年中の古物商による不正品の申告は129件でした。区分別では道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件で、上位3区分の合計90件が全体の約7割を占めます。写真機類と金券類は0件でした。
ここで0件という数字は「安全」を意味しません。申告に至った件数が0だったというだけで、持ち込みが無かったことの証明にはなりません。読み取れるのは、区分によって申告が発生する頻度に偏りがあるという事実までです。
高単価で点数が少ない区分では、受渡しの局面そのものが記録の対象になります。1件あたりの金額が大きく、査定額を告げるやり取りと現金の受け渡しが取引の中心にあるためです。逆に低単価で点数が多い区分では、点数の数え違いと持ち出しの検知が中心になり、保管と搬出の局面が効いてきます。
書籍や家庭用ゲームソフト、光学的方法により音又は影像を記録した物は、施行規則第16条第2項により金額に関係なく本人確認と記帳が要ります。少額でもカウンターで書類のやり取りが発生するため、受渡しの局面が長くなります。自店の商材構成をこの観点で分けてから、局面ごとの優先順位を決めてください。
消費者庁の実態調査報告書に掲載された2023年のチャネル別構成比は、店頭買取78.2%、出張買取10.0%、宅配買取9.5%です。営業所の中で完結しない取引が約2割あることになります。
出張買取では、相手方の住所・居所で受け取ります(第14条第1項)。他人の場所なので自店の設備は置けません。ここで記録の代わりになるのは、特定商取引法の訪問購入として交付する法定書面の控えと、携行した現金の残高です。控えが当日中に営業所へ戻る経路を決めておくと、取引が起きたこと自体は記録に残ります。
仮設店舗は事前届出をした期間だけ存在する営業の場です。常設の機器を持ち込むかどうかは判断ですが、開催期間中に受け取った品物をいつ営業所へ戻すか、撤収時に誰が運ぶかという手順のほうが先に決まります。
宅配買取では現金の移動が起きない代わりに、品物が到着するまでの経路が自店の管理外にあります。開封の局面を記録対象にしておかないと、輸送中の欠損と店内での欠損を切り分けられません。営業所の中で唯一、外から来た荷物が最初に開かれる場所なので、局面としては優先度が高くなります。
防犯カメラの本体価格、工事費、保守料について、公的機関が公表した一次情報が見当たりません。「1台あたり何万円」「月額いくら」という相場を、この記事では示しません。他社の記事に金額が書かれていても、出所が示されていなければ根拠として使えません。
補助金で賄えるかどうかも、断定はできません。小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の補助対象経費には①機械装置等費が含まれますが、ガイドブックは汎用性が高く目的外使用になりうるものとして車・オートバイ・自転車・文房具・パソコン等・家庭用電気機械器具を明示して除外しています。防犯設備が対象になるかは回次ごとの公募要領で確認してください。
金額が出せない代わりに順序は決められます。判断材料は、その対象がどれだけの時間そこにあるかです。帳簿と電磁的記録は最終記載の日から3年間その場にあります。在庫は回転が終わるまでその場にあり、中小企業実態基本調査では従業者5人以下の小売業の在庫回転期間が55.9日でした。現金は営業時間と閉店後の運用次第です。
滞在時間の長い対象から順に手当てするという並べ方であれば、一次情報の裏づけなしに順位を付けたことにはなりません。増設の稟議に書けるのはここまでです。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 増設の検討を、台数からではなく営業所の中の局面の列挙から始めているか |
| 2 | 映像の保存日数を自店で決めているか(古物営業法に映像の保存期間の定めはない) |
| 3 | 増設によって1台あたりの記録容量が減り、保存日数が短くなっていないかを確認したか |
| 4 | 第16条の記載事項のうち④相手方の住所等と⑤措置の区分を、映像とは別に記録しているか |
| 5 | 映像を再生できる従業者の範囲と、再生した事実が残るかどうかを決めているか |
| 6 | 帳簿の保管場所と記録装置の設置場所が同じ部屋なら、入室権限を分けて検討したか |
| 7 | 保守や警備を委託する場合、委託先が映像に触れられるかを契約で切り分けているか |
| 8 | 自店の扱う区分が、不正品申告の多い道具類・時計宝飾品類・機械工具類と重なるかを確認したか |
| 9 | 施行規則第16条第2項の7品目を扱う場合、受渡しの局面が長くなることを配置に反映したか |
| 10 | 宅配買取の開封場所を、記録対象の局面として扱っているか |
| 11 | 出張買取と仮設店舗について、映像に代わる記録(法定書面の控えと携行現金の残高)の経路を決めているか |
映像を古物営業法の3年保存の対象だと考えてしまうことがあります。第18条第1項の3年は帳簿等に対する義務であり、映像には及びません。逆に古物営業法上の定めがない以上、保存日数は自店で決めるしかありません。決めずに運用すると上書きの周期が機器の容量任せになり、増設した分だけ保存できる日数が短くなります。増設の前に、現金照合や棚卸の間隔から必要な日数を逆算してください。
カメラを増やせば記録が揃うと考えて、記帳の運用を後回しにすることがあります。第16条の記載事項5つのうち、④相手方の住所・氏名・職業・年齢と⑤第15条第1項でとった措置の区分は、映像からは分かりません。確認義務違反と帳簿の備付け義務違反は第33条第1号、記載義務違反と虚偽記載は同条第2号で、いずれも6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。映像は法定記録の代わりになりません。
写真機類と金券類の不正品申告が0件であることを「その区分は安全」と読んでしまうことがあります。令和7年の申告総数129件のうち写真機類0件・金券類0件というのは、申告に至った件数が0だったという意味にとどまります。持ち込みが無かったことの証明ではありません。区分別の偏りは局面の優先順位を決める材料に使えますが、記録を省く根拠にはなりません。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 防犯カメラは何台必要ですか | 台数の根拠になる公的な基準はなく、この記事では推奨も順位付けもしません。決められるのは局面のほうです。営業所の中で、査定カウンターでの受渡し、現金の置き場、在庫の保管場所、搬出入口、宅配便の開封場所のうち、どれを記録対象にするかを先に決めてください。台数はその結果として決まります。なお第14条第1項により受け取れる場所は営業所・相手方の住所居所・届出済みの仮設店舗の3つに限られるため、常設の機器を置ける地点は営業所だけです。 |
| 録画は何日残しておけばよいですか | 古物営業法に映像の保存期間を定めた条文はありません。第18条第1項の3年保存は帳簿等に対する義務なので、そのまま映像へ当てはめることはできません。決め方としては、映像と突き合わせたい記録の間隔から逆算します。現金の残高照合が日次なら差異の出た日まで、現物棚卸が月次なら前回の棚卸日まで遡れる日数が要ります。出張買取をしていれば、法定書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフ期間も判断材料になります。 |
| カメラを増やせば古物台帳の記載を省けますか | 省けません。第16条は取引の都度、①取引の年月日 ②品目及び数量 ③古物の特徴 ④相手方の住所・氏名・職業・年齢 ⑤第15条第1項でとった措置の区分を記載することを定めています。④と⑤は本人確認の書類を確認して初めて記録できる項目で、映像からは埋まりません。記載義務違反と虚偽記載は第33条第2号で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。映像は、記帳と現物・現金の動きが食い違ったときにどの取引かを特定する手掛かりとして使ってください。 |
| 撮影していることを客に知らせる必要はありますか | 古物営業法にカメラの告知を定めた条文はないため、この記事では要否を断定しません。撮影の告知は個人情報の取扱いとして別に判断する事項です。ただし前提として、第12条第1項の標識掲示と第2項のインターネット公表により、そこで古物の取引が行われていること自体は法律によって公示されています。店の存在を伏せる方向の防犯設計は取れない、というところまでは確定しています。 |
| 出張買取のときはどう記録を残せばよいですか | 相手方の住所・居所は他人の場所なので、自店の設備は置けません(第14条第1項)。記録の代わりになるのは、特定商取引法の訪問購入として交付する法定書面の控えと、携行した現金の残高です。控えが当日中に営業所へ戻る経路を決めておけば、取引が起きた事実は社内にも残ります。書面が交付されていない取引は、社内にも記録が残らないという関係になります。チャネル別では出張買取が10.0%、宅配買取が9.5%で、営業所の外で起きる取引は約2割です。 |
| 増設の費用はどのくらい見ておけばよいですか | 防犯カメラの本体価格・工事費・保守料について参照できる一次情報がないため、金額は示しません。決められるのは順序までです。対象がその場にある時間の長い順に手当てするという並べ方であれば、根拠を持って説明できます。帳簿と電磁的記録は最終記載の日から3年間、在庫は回転が終わるまで(従業者5人以下の小売業平均で55.9日)その場にあります。補助金については、小規模事業者持続化補助金のガイドブックが汎用性の高い物品を除外しているため、防犯設備が対象になるかは回次ごとの公募要領で確認してください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を6件挙げます。






扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。防犯カメラの増設をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


