
古物商許可の申請は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係に出します。営業所が決まっていなければ申請書は出せません。 つまり工程の実質的な起点は開業日ではなく、営業所として使う物件が確定する日です。
2020年4月1日施行の改正で、許可は主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会による1件に一本化されました。改正前は営業所のある都道府県ごとに許可が要りましたが、現在は複数店舗を出す場合でも取り直しは生じません。「店舗を出すたびに許可が要る」と書かれた解説は改正前の情報です。
物件側の確認も、契約前に済ませておく項目があります。賃貸物件なら賃貸借契約書の写し、自宅など他人名義の物件なら使用承諾書が申請時に求められます。居住用の賃貸物件を無断で事業用に使えば、賃貸借契約の用法遵守義務違反にあたります。共用スペースのみのバーチャルオフィスは営業所の実態要件を満たしません。
営業所として認められるかの判断は都道府県警によって運用が異なります。物件の申し込み前に、管轄警察署の防犯係と、貸主の両方に確認してください。 ここで手戻りが起きると、以降の工程がまるごとずれます。
古物商許可の標準処理期間は約40日です。この40日に、書類の補正にかかる期間は含まれていません。不備があれば、その分だけ後ろにずれます。
この期間の扱いを間違えると、そのまま費用になります。物件を契約してから許可が下りるまでの間も賃料と共益費は発生し続けます。内装工事を先に終わらせても、許可がなければ買取はできません。許可待ちの期間に発生する固定費を、開業資金へ織り込んでいない試算が多い部分です。
必要書類は、古物商許可申請書、略歴書、本籍記載の住民票の写し、誓約書、身分証明書、賃貸の場合は賃貸借契約書の写し、自宅等の場合は使用承諾書などです。書類の種類と様式は都道府県警ごとに運用が異なるため、事前に管轄警察署の防犯係で確認してください。
工程表には、申請日と許可見込み日を別の行として書いてください。申請日を書いて許可日を書かないと、40日が工程から消えます。
申請手数料は19,000円で、不許可になっても返金されません。金額そのものは開業費用の中では小さいものです。効いてくるのは、返ってこない前提で申請を出すという事実のほうです。
営業所として認められるか怪しい物件で申請を出し、不許可になれば、19,000円と、そこまでにかかった約40日と、その間の賃料を同時に失います。手数料の小ささに引きずられて、物件確認を省略しないでください。
順番の選択肢は2つあります。物件を契約してから申請する場合、許可待ちの賃料を負担しますが、工程は直線的に進みます。物件の申し込み前に警察署へ相談し、承諾を取ってから契約と申請を並べる場合、賃料の発生開始を後ろにずらせます。
どちらを取るかは、押さえたい物件の競合状況で決まります。埋まりやすい立地なら先に契約する判断もあります。判断の材料を「賃料×40日」という形で数字にしてから決めてください。
| 工程 | 期間・金額の目安 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 営業所の確定(物件) | 工程の実質的な起点 | 営業所が決まらないと許可申請を出せない |
| 貸主の事業利用承諾/使用承諾書 | 物件の申し込み前 | 居住用の無断使用は用法遵守義務違反 |
| 古物商許可の申請 | 手数料19,000円 | 不許可でも返金なし。主たる営業所を管轄する警察署 防犯係 |
| 許可が下りるまで | 標準処理期間 約40日 | 書類の補正期間は含まない。この間も賃料は発生する |
| 管理者の選任 | 営業所ごとに1人 | 法第13条第1項。第13条第3項で知識習得の努力義務 |
| 標識の掲示・ネット公表 | 許可後すぐ | 法第12条。違反は10万円以下の罰金(第35条第2号) |
| 補助金の申請 | 回次ごとの締切 | 持続化補助金は補助率2/3・上限50万円。原則、交付決定後の発注が対象 |
| 在庫が現金に戻るまで | 従業者5人以下の小売業で55.9日 | 中小企業実態基本調査。買取業限定の数値ではない |
古物営業法第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任することを義務づけています。許可が1件に一本化された今も、この義務は営業所単位で残っています。
同条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号までの欠格事由に該当する者は管理者になれません。開業時に経営者本人が管理者を兼ねるのであれば採用工程には影響しませんが、2店舗目以降は店舗数と同数の管理者を確保できるかが出店ペースの上限になります。
同条第3項は、管理者に、取り扱う古物が不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を課しています。名前を置けば終わりという性質のものではないため、採用の工程とは別に、開業前の教育期間を工程表へ入れてください。
採用は許可申請と並行して進められます。許可待ちの約40日は、面接・研修・査定の練習に充てられる期間でもあります。この40日を空白にするか教育に充てるかで、開業初月の査定精度が変わります。
買取店は、開業初日に売る商品を持っていません。仕入は客が持ち込むまで発生せず、仕入原価は自分がつけた査定額そのものです。飲食店や物販の小売のように、開店前に商品を仕入れて棚を埋めておくことができません。
そのため工程表には、開業日とは別に「販売できる在庫がそろう日」を置きます。買取だけを先行させ、販売を後ろに置く立ち上げ方も、古物市場への即売却で回転を作る立ち上げ方も選べますが、どちらを取るかで必要な運転資金が変わります。
参考になるのは在庫が現金に戻る速度です。中小企業実態基本調査(令和6年確報/法人企業・小売業)では、従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日、6〜20人は32.6日で、1.7倍の差があります。買取業に限定した数字ではありませんが、小規模帯では買った商品が現金に戻るまで2か月近くかかる水準だと分かります。
買取業は支払いが先行します。 客にはその場で現金を渡し、回収は売れてからです。開業初月に買取が集まるほど現金は出ていきます。「集客がうまくいったのに資金が尽きる」という事態は、この順序から生じます。買取原資の残高を週次で見る運用を、開業日から始めてください。
日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表、2025年8月調査、回収2,165社)では、開業費用は平均975万円、中央値600万円です。平均と中央値が375万円離れており、少数の高額開業が平均を押し上げています。中央値のほうが実感に近い数字です。
分布は「250万円未満」20.1%、「250万〜500万円未満」21.7%で、4割以上が500万円未満。開業費用は長期的に少額化しています。ただしこれは不動産賃貸業を除く全業種の新規開業企業が対象で、買取業に限定した統計ではありません。「買取店の開業費用は◯◯円」という形では使えません。
同じ調査で、開業時の資金調達額は平均1,219万円。内訳は金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)で、この2つで90.7%を占めます。調達1,219万円に対して開業費用975万円で、差額が運転資金にあたります。
買取業では、この差額の使い道の中心が買取原資です。工程表の資金欄には、設備・内装・許可費用と、買取原資を分けて書いてください。同じ「開業資金」の中に混ぜると、内装のグレードを上げた分だけ買える商品が減るという関係が見えなくなります。
看板・チラシ・サイト制作を小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)で賄うなら、公募回次の締切が工程を縛ります。補助率2/3、補助上限50万円で、対象経費は8区分。②広報費で看板とチラシ、③ウェブサイト関連費でサイト制作が対象になります(第17回ガイドブック 2025年4月25日 第1版)。
在庫管理システムやPOSを入れるなら、デジタル化・AI導入補助金2026(正式名称:中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金)です。通常枠は業務プロセス1つ以上で5万円以上150万円未満、4つ以上で150万円以上450万円以下。補助率は1/2以内で、条件を満たす場合に2/3以内です。「IT導入補助金」は旧称です。
確認時点では、持続化補助金 第20回の申請受付締切が2026年12月15日(火)17:00、デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠の5次締切が2026年9月29日(火)17:00でした。締切は回次ごとに変わるため、必ず公式ページで最新を確認してください。
工程上の注意は、補助金は原則として交付決定後の発注が対象になる点です。締切に間に合わせるために開業日を動かすのか、補助金を使わずに先へ進めるのかを、早い段階で決めておいてください。
許可申請は自分でも出せます。行政書士へ依頼すれば手数料19,000円のほかに報酬が加わります。判断の材料は費用だけではありません。
効いてくるのは標準処理期間の約40日と、そこに含まれない補正期間です。書類に不備があれば開業が後ろにずれ、物件を押さえた後であれば、ずれた日数だけ賃料が出ていきます。開業日を動かせないなら、確実に通すほうが結果的に安く済む場合があります。
逆に、物件契約前で日程に余裕があるなら、自分で申請して手続きを理解しておく価値もあります。開業後も第12条の掲示、第13条の管理者選任、第16条の記帳、第18条第1項の3年保存と、同じ法律の義務が続きます。申請を自分でやると、この全体像が把握できます。
工程表の最後には、開業日ではなく「最初の月次を締める日」を置いてください。買取業は仕入原価を自分で決める商売なので、査定額が適正だったかは売却実績が出るまで分かりません。開業から最初の締めまでを1つの工程として設計すると、査定基準の見直し時期が先に決まります。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 工程表の起点を開業日ではなく、営業所が確定する日に置いているか |
| 2 | 物件の申し込み前に、管轄警察署の防犯係で営業所として認められるかを確認したか |
| 3 | 賃貸借契約書の写し、または名義人の使用承諾書を用意できるか |
| 4 | 標準処理期間の約40日を、申請日と許可見込み日の2行に分けて工程表へ書いているか |
| 5 | 許可待ち期間の賃料・共益費を開業資金に含めているか |
| 6 | 手数料19,000円が不許可でも返らない前提で、物件と申請の順番を決めたか |
| 7 | 営業所ごとの管理者を確保できるか。2店舗目以降は店舗数分そろうか(法第13条第1項) |
| 8 | 許可待ちの約40日を、採用・研修・査定の練習に割り当てているか |
| 9 | 開業日とは別に「販売できる在庫がそろう日」を工程表へ置いたか |
| 10 | 開業資金の中で、設備・内装・許可費用と買取原資を分けて計上しているか |
| 11 | 補助金を使う場合、回次の締切と、交付決定後の発注という条件を工程に反映したか |
| 12 | 開業日ではなく「最初の月次を締める日」まで工程表に入れているか |
物件を契約した後に、その物件では営業所として認められないと判明するケースです。居住用の賃貸物件を無断で事業用に使うのは用法遵守義務違反にあたり、共用スペースのみのバーチャルオフィスは営業所の実態要件を満たしません。手数料19,000円は不許可でも返らず、約40日と賃料も同時に失います。物件の申し込み前に、貸主と管轄警察署の防犯係の両方へ確認してください。
内装工事と採用の日程だけを並べ、許可の約40日を工程へ入れていないケースです。この期間には書類の補正期間が含まれないため、不備があればさらに延びます。工事が終わっても許可がなければ買取はできません。申請日と許可見込み日を別の行として書き、その間の固定費を開業資金へ織り込んでください。
集客が計画どおりに進んだのに、開業から数か月で買取原資が尽きるケースです。買取業は客へその場で現金を渡し、売れてから回収するため、買取が集まるほど現金が出ていきます。中小企業実態基本調査では、従業者5人以下の小売業で在庫回転期間が55.9日、6〜20人が32.6日と1.7倍の差があります。開業日から買取原資の残高を週次で見る運用を始めてください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 開業までにどれくらいの期間を見ておけばよいですか | 動かしにくいのは古物商許可の標準処理期間 約40日で、ここに書類の補正期間は含まれません。営業所が決まらないと申請自体を出せないため、物件の確定日を起点に、申請日と許可見込み日を工程表へ別々に書いてください。内装工事や採用は許可申請と並行して進められますが、工事が終わっても許可がなければ買取はできません。 |
| 物件契約と許可申請は、どちらを先にすべきですか | 手数料19,000円は不許可でも返金されないため、営業所として認められるかを物件の申し込み前に管轄警察署の防犯係へ確認するのが前提になります。そのうえで、先に契約すれば工程は直線的に進みますが許可待ちの賃料を負担します。承諾を取ってから契約と申請を並べれば賃料の発生を後ろにずらせます。「賃料×40日」を数字にして、押さえたい物件の競合状況と併せて判断してください。 |
| 開業資金はいくら見ておけばよいですか | 買取業に限定した公的統計はありません。日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」では、不動産賃貸業を除く全業種の新規開業で開業費用が平均975万円・中央値600万円、250万円未満が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で4割以上が500万円未満でした。調達額は平均1,219万円(借り入れ827万円・自己資金279万円)で、開業費用との差額が運転資金にあたります。買取業では、この差額の中心が買取原資になります。 |
| 開業初日から販売もできますか | 買取店は開業初日に在庫を持っていません。仕入は客が持ち込むまで発生せず、仕入原価は自分がつけた査定額そのものです。工程表には開業日とは別に「販売できる在庫がそろう日」を置き、買取を先行させるのか、古物市場への即売却で回転を作るのかを決めてください。中小企業実態基本調査では、従業者5人以下の小売業の在庫回転期間は55.9日です。 |
| 補助金を使う場合、スケジュールで気をつけることはありますか | 回次ごとの締切と、原則として交付決定後の発注が対象になる点です。看板・チラシ・サイト制作は小規模事業者持続化補助金(補助率2/3・上限50万円、対象経費8区分)、在庫管理システムやPOSはデジタル化・AI導入補助金2026(業務プロセス1つ以上で5万円以上150万円未満、4つ以上で150万円以上450万円以下、補助率1/2以内、条件を満たせば2/3以内)が枠になります。締切は回次ごとに変わるため、必ず公式ページで最新を確認してください。 |
| 許可申請は行政書士に頼むべきですか | 開業日を動かせるかどうかで決まります。標準処理期間の約40日には補正期間が含まれず、不備があれば開業が後ろにずれ、物件を押さえた後ならその日数分の賃料が出ていきます。日程が動かせないなら確実に通すほうが安く済む場合があります。日程に余裕があるなら、自分で出して手続きを理解しておく価値もあります。許可後も第12条の掲示、第13条の管理者選任、第16条の記帳、第18条第1項の3年保存と同じ法律の義務が続くためです。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を10件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。










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