
古物営業法第3条により、古物商の営業には都道府県公安委員会の許可が要ります。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係で、手数料は19,000円です。不許可でも返金されません。標準処理期間は約40日で、書類の補正期間は含まれません。
つまり、営業所としてどこを使うかは、申請書を出す時点で確定しています。保管設備の選定はその後にしか進みません。物件を決める前に設備の候補を絞っても、置ける場所と置ける重さは物件ごとに違うので、選び直しになります。
賃借する場合は、契約の条件が設備の選択肢を先に狭めます。床の耐荷重、固定のための工事の可否、退去時の原状回復の範囲。この3点は貸主または管理会社に確認する事項で、記事や販売店の説明では決まりません。契約書に押印する前に確認してください。
第12条第1項は、営業所ごとに公衆の見やすい場所へ標識を掲示する義務を定めています。掲示の位置は許可の要件に関わるので、什器やカウンターの都合で動かすことはできません。標識の位置を固定してから、什器と保管設備の配置を決めると手戻りが減ります。
一般の小売業は、仕入れた商品を売って現金を得ます。閉店後は売上金を回収して銀行へ入れれば、店に残る現金を減らせます。手元にあるものは、まず商品で、あとから現金になります。
買取店は逆です。客にその場で現金を渡して品物を受け取ります。開店の時点で買取原資が手元にある状態を作らないと、営業が成り立ちません。開業初日は在庫がゼロですが、現金は満額そこにあります。
この順序の違いが、保管設備の選定に直接効きます。開業前に「在庫がまだ無いから小さいもので足りる」と判断すると、現金の側を数え落とします。初日に必要なのは、在庫を入れる容量ではなく、翌営業日ぶんの買取原資を施錠して置ける場所です。
決めるのは、店に残す現金の上限額、上限を超えた分をどこへ移すか、移すのは誰かの3点です。金額を決めずに「なるべく置かない」と運用すると、実際の残高が誰にも分からなくなり、必要な容量も見積もれません。
中小企業実態基本調査(令和6年確報、令和5年度決算実績/法人企業・小売業)によると、在庫回転期間は小売業全体で33.5日、従業者5人以下では55.9日、6〜20人では32.6日です。回転率では全体10.90回、5人以下6.53回、6〜20人11.19回になります。
5人以下の水準であれば、約2か月ぶんの在庫が常時その場にあることになります。開業直後は買い取った品物が積み上がる一方で、売却が始まるまで減りません。選定で見るのは開店日でも1週間後でもなく、この定常状態の量です。
この数字は日本標準産業分類の小売業全体の値で、買取業に限定した統計ではありません。古物市場への即売却を多用する事業者は回転が速く出ます。開業前は自店の実測がないので、どこへ売るかという出口の設計と合わせて仮置きし、開業後に実測と突き合わせてください。
仮置きした日数と、そのときの想定在庫金額を書き残しておくと、あとで容量が足りなくなった原因を追えます。書き残していないと、買取価格を上げたせいなのか、売却先が決まっていないせいなのかを区別できません。
| 順番 | 決めること | 根拠になるもの | 決めないまま先へ進むと起きること |
|---|---|---|---|
| 1 | 営業所として使う場所 | 第3条の許可。申請先は主たる営業所を管轄する警察署、手数料19,000円、標準処理期間約40日 | 設備を選んでも置ける場所と重さが分からず、選び直しになる |
| 2 | 標識を掲示する位置 | 第12条第1項(公衆の見やすい場所への掲示義務) | 什器の配置を決めたあとに掲示位置を動かせず、配置をやり直す |
| 3 | 店に残す現金の上限額 | 客にその場で現金を渡すため、開店時点で買取原資が手元に要る | 必要な容量が見積もれない。実際の残高が誰にも分からなくなる |
| 4 | 想定する在庫回転期間 | 小売業全体33.5日、従業者5人以下55.9日、6〜20人32.6日 | 開店日の量で選び、定常状態になったときに入りきらない |
| 5 | 許可申請で選ぶ古物の区分 | 施行規則第16条第1項の1万円と、第2項の7品目(書籍・ゲームソフト・光学的記録物ほか) | 少額買取でも発生する確認書類と帳簿の置き場が抜ける |
| 6 | 施錠区画の分け方 | 営業中に開ける区画と閉店後だけ開ける区画は、開いている時間帯が違う | 1つにまとめた結果、営業時間中ずっと開いたままになる |
| 7 | 設備に配分する金額 | 開業費用は平均975万円・中央値600万円、調達額は平均1,219万円(公庫調査、全業種) | 買取原資が不足し、開業した月に買い取れる金額が下がる |
買取店の中では、品物と現金が移動します。カウンターで受け渡し、検品して保管に回し、売却先へ出す。この流れのどこで施錠するかを決めるのが選定の中身です。
すべてを1つの設備にまとめると、営業時間中はそれを開けたままにすることになります。買取が発生するたびに現金を出し、品物を入れるためです。開けたままの設備は、施錠されていない棚と同じ状態です。
そこで、営業中に開いている区画と、閉店後だけ開ける区画を分けます。営業中に開く側には当日の買取原資と当日受け取った品物、閉ざしたままの側には翌日以降に触らないものを置く、という分け方です。この分け方が決まって初めて、何をいくつ買うかが決まります。
第13条第1項は営業所ごとに管理者を1人選任することを定めています。第13条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号の欠格事由に該当する者は選任できません。開業時に従業者がいなければ解錠するのは本人だけですが、増員したときに区画ごとの解錠権限をどう分けるかを、選定の段階で想定しておいてください。
古物営業法第15条第1項は買受け時の本人確認を義務づけ、第15条第2項第1号がその免除を定めています。免除される金額は施行規則第16条第1項で1万円と定められています。
ただし施行規則第16条第2項は、金額に関係なく確認が要る古物を7品目挙げています。自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンディショナーの室外ユニット等、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。
書籍やゲームソフト、CD・DVDを扱う計画なら、1万円未満の買取でも毎回確認と記帳が発生します。法第16条ただし書は第15条第2項各号の場合を記帳義務から除いていますが、この7品目はその除外に入りません。単価が低く点数が多い商材ほど、品物の容積より書類の量が先に増えます。
扱う区分は許可申請の時点で選びます。あとから区分を追加することはできますが、保管設備の要件は申請段階で決まり始めます。品物を置く場所だけを見て選定すると、この分の置き場が抜けます。
金庫の耐火等級、防盗性能、価格、設置工事費について、公的機関が公表した一次情報が見当たりません。この記事では製品を推奨せず、金額も示しません。他社の記事に相場が書かれていても、出所が示されていなければ根拠として使えません。
消防法および建築基準法の要件は、建物の用途・規模・所在地で変わります。ここで一般化した基準を書くと誤りになるため、断定しません。所轄の消防署と、自治体で建築を所管する部局に確認してください。
重量物を設置する場合の床の耐荷重も建物ごとに違います。物件の図面と、貸主または管理会社に当たる作業になります。賃借物件では、固定のためのアンカー工事が契約で禁じられている場合があります。
損害保険を検討するなら、保管方法や施錠に関する条件が契約の前提に入っているかを保険会社に確認してください。設備を選んだあとで条件が合わないと分かると、選び直しになります。確認の順番は、貸主、消防署と建築の所管部局、保険会社の順です。
日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日発表、調査時点2025年8月)によると、開業費用は平均975万円、中央値600万円でした。分布は250万円未満が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%で、4割以上が500万円未満です。
同じ調査で、開業時の資金調達額は平均1,219万円、うち金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)でした。この2つで90.7%を占めます。調達額と開業費用の差額が運転資金にあたります。
この調査は公庫の国民生活事業が融資した新規開業企業2,165社(回収率25.4%)が対象で、全業種を含みます。買取業に限定した統計ではないので、「買取店の開業費用は何万円」という使い方はできません。使えるのは、開業費用と調達額の関係という構造までです。
買取業では、この運転資金の相当部分が買取原資になります。設備に配分を寄せると、開業した月に買い取れる金額が下がります。買い取れなければ在庫が積み上がらず、保管設備の容量も使われません。選定は、買取原資をいくら残すかを決めてからの残額で行う作業です。
開業前の選定は、実測のない状態で仮定を置く作業です。仮定を書き残していないと、半年後に容量が足りなくなったときに、仮定が間違っていたのか運用が変わったのかを区別できません。
残すのは4つです。想定した在庫回転期間、店に残す現金の上限額、扱う区分と少額買取の想定件数、そして施錠区画をいくつに分けたかとその理由。いずれも数字か区分で書けます。
この記録は、増設や見直しの判断でそのまま使えます。実測が出たら並べて比べ、差が出た項目だけを見直します。全部を最初から考え直す作業を毎回やらずに済みます。
第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。開業後にこの記録が積み上がり始めるので、選定の段階でその置き場を図面に書き込んでおいてください。開業前なら、まだ図面を変えられます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 営業所として届け出る場所を確定させてから、設備の候補を絞っているか |
| 2 | 賃貸借契約の前に、床の耐荷重・固定工事の可否・原状回復の範囲を貸主に確認したか |
| 3 | 標識の掲示位置(第12条第1項)を先に決めてから、什器と設備の配置を決めたか |
| 4 | 店に残す現金の上限額と、上限を超えた分の移動先・移動する人を決めたか |
| 5 | 想定する在庫回転期間を数字で置き、その根拠を書き残したか |
| 6 | 許可申請で選ぶ区分に、施行規則第16条第2項の7品目が含まれるかを確認したか |
| 7 | 営業中に開ける区画と、閉店後だけ開ける区画を分けたか |
| 8 | 帳簿等を3年間備え付ける場所(第18条第1項)を図面に書き込んだか |
| 9 | 消防法・建築基準法の要件を、所轄消防署と自治体の建築所管部局に確認したか |
| 10 | 保険の契約条件に保管方法や施錠の条件が入っていないか、保険会社に確認したか |
| 11 | 買取原資をいくら残すかを決めてから、設備に配分する金額を決めたか |
| 12 | 選定時に置いた仮定(回転期間・現金上限・区分・区画数)を記録として残したか |
在庫がまだ無い状態で選定を始め、現金の側を数え落とす失敗があります。買取店は客にその場で現金を渡して品物を受け取るので、開店の時点で買取原資が手元にあります。開業初日は在庫がゼロでも現金は満額そこにあり、一般の小売業とは順序が逆です。開店日の在庫量を基準に容量を決めると、翌営業日ぶんの現金を施錠して置く場所が確保されません。先に店へ残す現金の上限額を決め、そのうえで在庫の容量を積んでください。
設備の候補を先に絞ってから物件を探し、置ける場所と重さが合わずに選び直す失敗があります。古物商の許可は主たる営業所の所在地を管轄する警察署へ申請し、手数料19,000円は不許可でも返金されず、標準処理期間は約40日です。営業所の場所は許可の手続きの中で確定するため、設備の選定はそのあとにしか進みません。床の耐荷重・固定工事の可否・原状回復の範囲は貸主に確認する事項で、記事や販売店の説明では決まりません。
品物を置く容積だけで選定し、少額買取で発生する書類の置き場を落とす失敗があります。本人確認が免除される金額は施行規則第16条第1項で1万円ですが、同条第2項は書籍、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物など7品目を除外しており、これらは金額に関係なく確認と記帳が要ります。単価が低く点数が多い商材ほど、品物より先に書類が増えます。扱う区分は許可申請の時点で選ぶので、この分の置き場も申請前に見積もってください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| どの等級の金庫を選べばよいですか | 金庫の耐火等級や防盗性能について参照できる一次情報がないため、この記事では等級を指定しません。消防法および建築基準法の要件は建物の用途・規模・所在地で変わるので、所轄の消防署と、自治体で建築を所管する部局に確認してください。賃借物件であれば、固定工事の可否と原状回復の範囲を貸主または管理会社に確認する作業が先に来ます。等級より前に、置ける場所と置ける重さの上限を物件の図面で確認しておくと、選び直しが減ります。 |
| 開業前で在庫がありません。容量はどう見積もればよいですか | 開店日の量ではなく、在庫が回り始めたあとの定常状態で見積もります。中小企業実態基本調査によると在庫回転期間は小売業全体で33.5日、従業者5人以下で55.9日、6〜20人で32.6日です。5人以下の水準なら約2か月ぶんが常時その場にあることになります。これは小売業全体の値で買取業に限定した統計ではないため、どこへ売るかという出口の設計と合わせて仮置きし、その数字を書き残してください。開業後に実測と突き合わせれば、差が出た理由を追えます。 |
| 金庫は1つあれば足りますか | 施錠する対象を1つにまとめると、営業時間中はそれを開けたままにすることになります。買取が発生するたびに現金を出し、受け取った品物を入れるためです。開いている設備は施錠されていない棚と同じ状態になります。営業中に開ける区画と、閉店後だけ開ける区画を分けてください。分け方が決まって初めて、いくつ用意するかが決まります。第13条第1項により管理者は営業所ごとに1人選任するので、増員したときの解錠権限の分け方も選定の段階で想定しておきます。 |
| 扱う品目によって保管設備の要件は変わりますか | 変わります。本人確認が免除される金額は施行規則第16条第1項で1万円ですが、同条第2項の7品目は金額に関係なく確認が要ります。書籍、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンディショナーの室外ユニット等、電線、金属製のグレーチングです。これらを扱うと少額買取でも書類が発生し、品物の容積とは別に置き場が要ります。区分は許可申請の時点で選ぶので、申請前に見積もってください。 |
| 設備にいくらまでかけてよいですか | 金額の一次情報がないので上限は示しません。判断の順序として、買取原資をいくら残すかを先に決め、その残額で設備を選びます。日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査では、開業費用が平均975万円・中央値600万円、開業時の資金調達額が平均1,219万円で、うち金融機関等からの借り入れが平均827万円、自己資金が平均279万円でした。全業種が対象で買取業の値ではありませんが、調達額と開業費用の差額が運転資金にあたるという関係は使えます。買取業ではこの運転資金の相当部分が買取原資になります。 |
| 古物台帳の置き場も開業前に決めるのですか | 決めます。第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。電磁的記録で保存する場合も3年間、直ちに書面へ表示できる状態での保存が条件です。開業後は最初の取引からこれが積み上がり始めるので、図面を変えられる開業前のうちに置き場を決めておいてください。第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときに直ちに所轄警察署長へ届け出る義務を定めています。置き場を決めるときは、失われたと分かる状態にできるかも合わせて考えます。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を7件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。







扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。金庫・保管設備の選定をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


