
古物市場に関する情報は、入会の話と入会後の話が混ざりやすい領域です。混ざると、許可がないのに市場の相場の話を読むことになり、逆に入会済みの事業者は許可の説明を何度も読むことになります。買取ラボではこの2つを分けています。
この記事が扱うのは、入会するかどうかの判断と、入会にあたって自分の側が用意するものです。具体的には、古物市場が法律上どういう場か、参加するために自分が満たすべき条件は何か、入会前に自店の在庫について確認しておくことは何か、そして金額として公表されていない項目をどう扱うかです。
入会したあとの運用は別項目です。どの単位で出品するか、落札した品をどう自店の査定基準に戻すか、出品と落札を法定帳簿にどう記載するか、入金額から自店の手取り率をどう出すかは、そちらで扱っています。
順序としては、この記事で入会の可否を決め、入会が決まってから運用の記事に進む形になります。入会条件の一部は市場ごとに違い、公表されていないものも多いため、この記事では「どこまでが法令で決まっていて、どこからが個別の話か」を線引きすることを目的にします。
古物営業法第14条第3項は、古物市場においては古物商間でなければ古物を売買し、または交換してはならないと定めています。一般の卸売市場や販売サイトと違い、参加者の資格そのものが法律で限定されています。入会審査が形式的な手続きではなく、資格の確認になるのはこのためです。
市場を開設する側にも許可が要ります。第3条は、古物商・古物市場主の営業には都道府県公安委員会の許可が必要と定めています。古物市場主は古物商とは別の許可区分です。警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、令和7年末時点で古物商が614,118件、古物市場主が1,076件、合計615,194件です。古物市場主は古物商の1%にも満たない数で、市場は限られた数の運営者によって開かれています。
同じ統計には、古物競りあっせん業の届出が170件と載っています。古物市場主の許可1,076件とは別に集計されている区分です。参加を検討する場が、どの区分で運営されているのかは確認しておく項目です。
許可件数の推移を読むときには注意が要ります。平成30年の789,345件から令和2年の396,378件へ半減していますが、これは実数の減少ではありません。令和2年4月1日施行の改正で、許可単位が営業所等の所在する都道府県ごとから主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の1件に改められたためです。改正前後をつなげて「市場が半分になった」と読まないでください。令和2年の395,526件から令和7年の614,118件まで、5年で55%増えています。
第14条第3項が古物商間の取引に限っている以上、参加の前提は古物商許可です。許可がないまま古物の売買を業として行えば、第31条第1号の無許可営業に当たり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。2022年の刑法改正で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されているため、条文の表記は拘禁刑です。
許可の申請先は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署です。手数料は19,000円で、不許可でも返金されません。標準処理期間は約40日で、書類の補正期間は含まれません。入会を予定して逆算するなら、申請から2か月程度は見ておく計算になります。欠格事由と必要書類は都道府県ごとに案内が異なるため、管轄の都道府県警の公式ページで最新の要件を確認してください。
許可を持っていても、掲示と公表の義務を満たしていないケースがあります。第12条第1項は、営業所・仮設店舗・古物市場ごとに公衆の見やすい場所へ標識を掲示する義務を定めています。第12条第2項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名・許可した公安委員会の名称・許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務を定めています。第35条第2号により、第12条違反は10万円以下の罰金の対象です。
第13条第1項は、営業所・古物市場ごとに管理者を1人選任する義務を定めています。第13条第2項により、未成年者や第4条第1号から第7号までの欠格事由に該当する者は管理者になれません。第13条第3項は、管理者に不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を課しています。入会審査の前に、この3点が現状で満たされているかを自分で点検しておきます。
| 確認する項目 | 根拠・出典 | 満たしていない場合にどうなるか |
|---|---|---|
| 古物商許可を受けている | 古物営業法第3条、第14条第3項(市場は古物商間のみ) | 市場での取引ができない。無許可営業は第31条第1号で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 許可の申請先・費用・期間を把握している | 主たる営業所を管轄する警察署/手数料19,000円/標準処理期間約40日 | 入会予定日から逆算できない。補正期間は標準処理期間に含まれない |
| 営業所ごとに標識を掲示している | 第12条第1項 | 第35条第2号により10万円以下の罰金 |
| 氏名・公安委員会名・許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供している | 第12条第2項(事業規模が著しく小さい場合等を除く) | 同上。取引先が自社を照合できない |
| 営業所ごとに管理者を1人選任している | 第13条第1項・第2項 | 選任義務違反。欠格事由該当者は管理者になれない |
| 管理者が不正品を判断する知識・経験を得る機会がある | 第13条第3項(努力義務)/管理者講習 令和7年 150回・19,602人 | 不正品申告129件のうち道具類37件・時計宝飾品類31件・機械工具類22件が上位。見分けがつかないまま取引することになる |
| 取引相手が古物商であることを記録として残せる | 第14条第3項、第16条(相手方の住所・氏名・職業・年齢) | 第14条第3項の範囲内で取引しているかを事後に示せない |
| 90日超の滞留在庫の点数をカテゴリ別に出している | 在庫回転期間 小売業全体33.5日/5人以下55.9日/6〜20人32.6日 | 入会の効果を前後で比較できない |
古物市場が紹介や推薦を求める形をとることがあるのは、第14条第3項の要件を市場の側が担保しなければならないからです。参加者に古物商でない者が混ざれば、市場そのものが法令違反の場になります。入会手続きで許可証の提示や写しの提出を求められるのは、この確認のためと理解できます。
同じ確認は、自分の側にも発生します。取引の相手が古物商かどうかは、自分が第14条第3項の範囲内で取引しているかを左右します。取引先の許可証番号と許可した公安委員会を控え、第12条第2項で公表されている情報と照合できる状態にしておきます。相手方の情報を記録として残す点は、第16条の帳簿の記載事項とも重なります。
第15条第3項は、不正品の疑いがあると認めるときは直ちに警察官へ申告する義務を定めています。市場での取引でもこの義務は外れません。警察庁の統計では、令和7年中の古物商による不正品申告は129件で、区分別には道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件です。上位3区分で90件、全体の約7割を占めます。
自分が扱う区分がこの上位に入るなら、市場での取引でも不正品に触れる確率が相対的に高い区分だという前提で入ります。ただし写真機類と金券類の0件は「その区分が安全」を意味しません。申告に至った件数が0だったという事実だけです。0件を安全と読み替えないでください。
古物市場の入会金、年会費、保証金、出品手数料、落札手数料について、官公庁が公表した統計はありません。業界全体で使える相場を示す一次情報が存在しないため、この記事では金額も率も書きません。検索で出てくる金額は、特定の市場の条件か、出典のない推測のどちらかです。
金額が分からない状態で判断するには、聞く項目をこちらで決めておきます。第一に、費用がどの単位で発生するか。入会時に一度だけか、期間ごとか、取引ごとかで、資金繰りへの影響がまったく違います。第二に、支払いのタイミングが入金の前か後か。落札代金の決済と会費の請求がずれると、月内の資金の谷が深くなります。
第三に、預けた金銭が返るものか返らないものか。第四に、取引が成立しなかった場合に発生する費用の有無。第五に、脱退するときの条件と、そのときに預けた金銭がどう扱われるか。この5項目は金額を聞く前に構造を確定させるための質問で、複数の市場を比べるときにも同じ枠で並べられます。
そのうえで、実際の負担は入会後に自分で測ります。第16条の帳簿には引き渡した年月日と品目及び数量が記録されるので、そこに市場での引き渡しという区分を足し、実際の入金額と突き合わせれば、入金額÷買取金額で自店の手取り倍率が出ます。3か月分を集計すれば、公表されていない手数料率を推し量るより確かな判断材料になります。この測り方の詳細は運用側の項目で扱います。
入会を検討する動機は、たいてい在庫が動かないことです。ところが入会の判断材料として売価を予想しようとすると、当日まで決まらない数字を予想する作業になります。先に決められるのは、自店の在庫のうち何点を市場に回すかという量の側です。
量を出すには、在庫を仕入日起点で区切ります。買取日から30日・60日・90日・180日で切り、カテゴリごとに点数と金額の両方を出します。60日の線には根拠があります。中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和6年確報(令和5年度決算実績)」の法人企業・小売業では、在庫回転期間が従業者5人以下で55.9日、6〜20人で32.6日、小売業全体で33.5日です。56日を超えていれば、同規模の小売業平均より滞留しています。
この集計で90日を超えた在庫の点数が出れば、それが市場に回す候補の量です。量が分かれば、入会の効果を後から検証できます。入会前の滞留点数と入会後3か月の滞留点数を比べれば、その市場が自店の回転に効いたかどうかが判定できます。売価の予想では、この検証ができません。
同じ調査で、粗利率は従業者5人以下31.7%、6〜20人31.2%とほぼ同じなのに、営業利益率は0.2%と1.5%で7倍以上開いています。差は在庫が現金に変わる速度です。市場への入会は、粗利率を上げる手段ではなく、回転を上げる手段として位置づけます。この前提で入会すれば、単価が店頭より低くても判断がぶれません。
複数の市場に入会すること自体は禁じられていません。ただし入会を増やしても、社内の体制は自動では増えません。増えるのは、開催日ごとの搬入と、取引ごとの記録と、入金の照合です。
記録の面では第16条が効きます。同条は、古物を受け取ったとき、または引き渡したときに、その都度帳簿等に記載する義務を定めています。記載事項は取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、第15条第1項でとった措置の区分です。買い受けだけの規定ではないため、市場に出した分も記録の対象になります。
第18条第1項により、帳簿等は最終記載の日から3年間、営業所等に備え付けます。電磁的記録の場合も3年間、直ちに書面に表示できる状態で保存します。第18条第2項は、帳簿等をき損・亡失・滅失したときは直ちに所轄警察署長へ届け出ることを定めています。第33条第2号は第16条・第17条の記載義務違反と虚偽記載を、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定めています。
体制の面では第13条第3項の努力義務が関係します。管理者に不正品かどうかを判断する知識・技術・経験を得させる義務です。警察庁の統計では、令和7年中の古物商等管理者講習は150回・19,602人で、うち自動車が47回・4,618人です。入会の数を増やす前に、管理者が実際にその区分の品を見分けられるかを確認しておきます。
入会が常に正解ではありません。市場は開催日という外部の日程に縛られ、搬入の手間がかかり、売価は当日まで確定しません。自店の滞留在庫が60日以内に収まっていて、店頭で回っているなら、入会で得られるものは小さくなります。
判断材料は入会する場合と同じです。90日を超えた在庫の点数、その点数を市場に回した場合に減る滞留日数、搬入と記帳にかかる時間、そして入会にともなう固定的な負担です。固定的な負担の金額は公表されていないため、市場側に構造を確認したうえで自店の月次の資金の谷と重ねます。
入会せずに滞留を減らす道もあります。査定の場で出口を決めてから買う、点数が出るカテゴリの受け入れ上限を金額ではなく点数で置く、出口の見えない品を買わない、といった入口側の運用です。市場は出口の1つであって、入口の設計を代替するものではありません。
入会を保留する場合でも、古物商許可、標識の掲示、インターネット上での公表、管理者の選任という4点は、市場と関係なく満たしておく項目です。この4点が整っていれば、入会を決めたときの手続きは在庫の集計から始められます。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 古物商許可を受けているか。許可証の番号と許可した公安委員会を、社内ですぐ出せる状態にあるか |
| 2 | 許可がまだなら、手数料19,000円・標準処理期間約40日を織り込んで入会予定日から逆算しているか |
| 3 | 営業所ごとに標識を掲示しているか(第12条第1項) |
| 4 | 氏名・公安委員会名・許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供しているか(第12条第2項) |
| 5 | 営業所ごとに管理者を1人選任し、欠格事由に該当しないことを確認しているか(第13条第1項・第2項) |
| 6 | 取引相手が古物商であることを、許可証番号を控える形で記録できる手順があるか |
| 7 | 自店の取扱区分が、不正品申告の上位(道具類37件・時計宝飾品類31件・機械工具類22件)に当たるかを確認したか |
| 8 | 在庫を仕入日起点で30日・60日・90日・180日に区切り、90日超の点数をカテゴリ別に出しているか |
| 9 | 市場側に、費用の発生単位・支払時期・返還の有無・不成立時の扱い・脱退条件の5項目を確認したか |
| 10 | 入会の目的を「粗利率を上げる」ではなく「在庫回転期間を縮める」に置いているか |
許可の取得と入会手続きを並行させ、入会予定日に間に合わない失敗があります。古物商許可の標準処理期間は約40日で、書類の補正期間は含まれません。手数料19,000円は不許可でも返金されません。古物営業法第14条第3項により古物市場では古物商間でしか売買できないため、許可がないまま参加はできません。入会を検討し始めた時点で、許可の有無と申請の進捗を先に確定させてください。
検索で見つけた会費や手数料の金額を前提に、資金計画を立ててしまう失敗があります。入会金・年会費・保証金・出品手数料・落札手数料について、官公庁が公表した統計はありません。出てくる金額は特定の市場の条件か、出典のない推測です。金額を集める前に、費用の発生単位、支払時期、返還の有無、不成立時の扱い、脱退条件という構造の5項目を市場側に確認し、そのうえで自店の月次の資金の谷と重ねてください。
入会を粗利率の改善策として位置づけ、単価が店頭より低いことを理由に使わなくなる失敗があります。中小企業実態基本調査の小売業では、粗利率は従業者5人以下31.7%、6〜20人31.2%とほぼ同じで、営業利益率だけが0.2%と1.5%に分かれています。差は在庫回転期間の55.9日と32.6日です。入会の効果は単価ではなく、90日超の滞留点数が入会後3か月で何点減ったかで測ってください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 古物商許可がなくても、見学だけならできますか | 見学の可否は市場ごとの運営方針で決まり、法令に定めはありません。ただし取引は別です。古物営業法第14条第3項は、古物市場においては古物商間でなければ古物を売買し、または交換してはならないと定めています。許可を持たないまま古物の売買を業として行えば、第31条第1号の無許可営業として3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。見学が認められる場合でも、その場で取引に加わらないことを事前に確認してください。 |
| 入会金や年会費はどのくらいかかりますか | 業界全体で使える公表データがないため、この記事では金額を示しません。入会金、年会費、保証金、出品手数料、落札手数料のいずれについても、官公庁が公表した統計は存在しません。市場ごとに条件が異なり、公開していない市場もあります。金額を推測するより、費用がどの単位で発生するか、支払時期は入金の前か後か、預けた金銭は返るか、取引が成立しなかった場合に費用は出るか、脱退時にどうなるか、の5項目を確認するほうが判断に使えます。実際の負担は入会後、第16条の帳簿の引き渡し記録と入金額を突き合わせて自店で算出できます。 |
| 複数の市場に入会しても構いませんか | 法令上の制限はありません。ただし入会を増やしても社内の体制は自動では増えません。増えるのは開催日ごとの搬入、取引ごとの記帳、入金の照合です。古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき、または引き渡したときに、その都度帳簿等に記載する義務を定めており、市場に出した分も記録の対象です。第18条第1項により帳簿等は最終記載の日から3年間の備付けが要ります。増やす前に、90日超の滞留在庫が実際に何点あるかを出し、その点数を1つの市場で消化できるかを確認してください。 |
| 取引相手が古物商かどうかは、どう確認すればよいですか | 第12条第2項が手がかりになります。同項は、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名・許可した公安委員会の名称・許可証番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務を古物商に課しています。取引先の許可証番号と許可した公安委員会を控え、公表情報と照合できる状態にしておきます。第16条の帳簿には相手方の住所・氏名・職業・年齢を記載するため、記録として残す手順とあわせて設計できます。第15条第3項により、不正品の疑いがあると認めるときは直ちに警察官へ申告する義務があり、これは市場での取引でも外れません。 |
| 古物市場は全国にいくつありますか | 市場そのものの数を示した公表統計はありませんが、開設者側の許可件数は分かります。警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」によると、令和7年末時点の古物市場主の許可は1,076件です。同時点の古物商は614,118件、合計615,194件なので、古物市場主は全体の1%にも届きません。なお同資料に都道府県別の内訳はありません。地域ごとの数を知りたい場合は、各都道府県警の公表資料を当たることになります。 |
| 入会したあとは何から始めればよいですか | 入会後の運用は別項目「古物市場(オークション)への入会」で扱っています。そちらでは、出品をロット単位で組む考え方、落札した品を自店の査定基準にどう戻すか、出品と落札を第16条の帳簿にどう記載するか、入金額と買取金額から自店の手取り倍率をどう出すかを扱っています。この記事の段階でやっておくと後が楽になるのは、在庫を仕入日起点で区切って90日超の点数をカテゴリ別に出しておくことと、帳簿に出口の区分を1列足しておくことの2点です。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を11件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。











扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。古物市場への入会をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


