
古物営業法第3条は、古物商・古物市場主の営業に都道府県公安委員会の許可を義務づけています。この許可の単位が、2020年4月1日施行の改正で変わりました。
改正前は営業所等の所在する都道府県ごとに許可が必要でしたが、改正後は主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会による1件の許可に一本化されています。複数店舗を出す場合でも、都道府県ごとに許可を取り直す必要はありません。
「店舗を出すたびに許可が必要」と書かれた解説を見かけたら、改正前の情報です。多店舗展開で必要になるのは追加の許可ではなく、後述する営業所ごとの管理者の選任です。
警察庁の統計で許可件数が平成30年の787,779件(古物商)から令和2年の395,526件へ半減して見えるのも、この改正によるものです。実数の減少ではありません。令和2年以降は毎年増え続けており、令和7年末は614,118件です。改正前後の数字をつなげて「市場が縮小した」と読まないでください。
許可の可否は、営業所として届け出る物件で決まります。古物商は原則として、事業用として登記された物件を営業所とする必要があります。
居住用の賃貸物件を無断で事業用に使うと、賃貸借契約の用法遵守義務違反にあたります。虚偽申請をすれば許可を失う原因になります。申請時には、賃貸物件なら賃貸借契約書の写しが、自宅など他人名義の物件なら使用承諾書が求められます。物件の申し込み前に、貸主から事業利用の承諾を得られるかを確認してください。
現実的な選択肢としては、施錠可能な個室のレンタルオフィスを使う、古物商許可が下りる賃貸物件を選ぶ、実家を営業所として登記する、といった方法があります。共用スペースのみのバーチャルオフィスは営業所の実態要件を満たしません。
判断は都道府県警によって運用が異なります。申請前に管轄警察署の防犯係で確認してください。
申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係です。手数料は19,000円で、不許可になっても返金されません。
標準処理期間は約40日です。書類の補正期間は含みません。不備があればさらに延びます。
金額としての19,000円は小さいものの、40日という期間の影響は大きくなります。物件を契約してから許可が下りるまでの間も賃料は発生し続けます。この40日分の固定費を開業資金に織り込んでいない試算が多いので、物件契約日を起点に逆算してください。
必要書類は、古物商許可申請書、略歴書、本籍記載の住民票の写し、誓約書、身分証明書、賃貸の場合は賃貸契約書の写し、自宅等の場合は使用承諾書などです。書類の種類と様式は都道府県警の公式ページで最新を確認してください。
| 項目 | 内容 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 申請先 | 主たる営業所の所在地を管轄する警察署 防犯係 | 2020年改正で1件に一本化 |
| 手数料 | 19,000円 | 不許可でも返金なし |
| 標準処理期間 | 約40日 | 書類の補正期間は含まない |
| 営業所の要件 | 原則、事業用として登記された物件 | 居住用の無断使用は用法遵守義務違反 |
| 賃貸の場合 | 賃貸借契約書の写し | 貸主の事業利用承諾が前提 |
| 自宅等の場合 | 使用承諾書 | 名義人の承諾が必要 |
| バーチャルオフィス | 不可 | 営業所の実態要件を満たさない |
| 管理者 | 営業所ごとに1人 | 法第13条第1項。多店舗なら店舗数分 |
古物営業法第13条第1項は、営業所または古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者として管理者を1人選任することを義務づけています。許可が1件に一本化された今も、この義務は営業所単位で残っています。
同条第2項により、未成年者、第4条第1号から第7号までの欠格事由に該当する者、心身の故障により管理者の業務を適正に実施できない者として国家公安委員会規則で定めるものは、管理者になれません。
同条第3項は、管理者に取り扱う古物が不正品かどうかを判断するために必要な知識・技術・経験を得させる努力義務を課しています。名前だけ置けばよいという性質のものではありません。
公安委員会は、管理者が職務に関し法令違反をした場合、情状により不適当と認めたときは、古物商に対して解任を勧告できます(同条第4項)。多店舗展開を計画するなら、店舗数と同数の管理者を確保できるかが制約になります。
許可を取れば終わりではありません。第12条第1項により、営業所・仮設店舗・古物市場ごとに、公衆の見やすい場所へ標識を掲示する義務があります。様式は国家公安委員会規則で定められています。
第12条第2項により、事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名または名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号を、インターネット上で公衆の閲覧に供する義務もあります。買取サイトを持つなら、この表示を入れる前提で設計します。
標識の掲示義務に違反すると、10万円以下の罰金です(第35条第2号)。
第31条第1号により、第3条に違反して許可を受けずに営業した者は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。偽りその他不正の手段で許可を受けた場合も同じ(同条第2号)。
許可申請書または添付書類に虚偽の記載をして提出した場合は、20万円以下の罰金です(第34条第1号)。
警察庁の統計では、無許可営業が古物営業法違反の検挙件数の最多を占めています(2020年)。「そのうち取る」で営業を始めるのは、この法律で最も重い部類の違反にあたります。
なお「懲役」ではなく「拘禁刑」です。2022年の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されました。懲役と書かれた解説は改正前の表記です。
許可申請は自分でもできます。手数料19,000円のほかに、行政書士へ依頼すれば報酬が加わります。判断の材料は費用だけではありません。
効いてくるのは標準処理期間の約40日です。この期間には書類の補正期間が含まれません。不備があれば、そのぶん開業が後ろにずれます。物件を押さえたあとであれば、ずれた日数だけ賃料が出ていきます。
自分で出す場合、書類の種類と様式は都道府県警によって運用が異なるため、事前に管轄警察署の防犯係で確認してください。営業所として認められるかの判断も都道府県警ごとに違います。
開業日が決まっていて後ろにずらせないなら、専門家に任せて確実に通すほうが結果的に安く済むことがあります。逆に時間に余裕があるなら、自分で出して手続きを理解しておく価値もあります。費用と期間のどちらを優先するかで決まります。
古物営業法第11条は、許可証等の携帯等を定めています。許可を受けて営業所を構えれば終わりではなく、営業の場面によって携帯や提示が求められます。
特に営業所以外の場所で古物を受け取る場合、この点が関わってきます。第14条第1項により、古物商は営業所または取引相手の住所・居所以外の場所では、古物商以外の者から古物を受け取れません。出張買取が成り立つのは、相手方の住所・居所が例外にあたるためです。
仮設店舗で営業する場合は、あらかじめ日時と場所を、その場所を管轄する公安委員会に届け出る必要があります(第14条第1項ただし書)。催事買取が可能なのはこの届出があるからで、届出なしに出張先で買い取ると第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
許可を取った後の運用まで含めて、どこで何ができるかを整理しておいてください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | その物件で古物商許可が下りるか、申し込み前に貸主の事業利用承諾を確認したか |
| 2 | 賃貸借契約書の写し、または使用承諾書を用意できるか |
| 3 | 手数料19,000円が不許可でも返金されないことを前提にしているか |
| 4 | 標準処理期間の約40日を開業スケジュールに織り込んでいるか |
| 5 | 許可待ち期間の家賃・固定費を開業資金に含めているか |
| 6 | 営業所ごとの管理者を確保できるか(多店舗計画なら店舗数分) |
| 7 | 管理者が欠格事由に該当しないか(未成年者、法第4条1〜7号該当者など) |
| 8 | 許可後の標識掲示と、氏名・許可番号のインターネット公表に対応できるか |
| 9 | 改正前の情報(営業所ごとの許可、懲役表記)で計画していないか |
| 10 | 開業日が動かせるかどうかで、自分で申請するか依頼するかを判断したか |
| 11 | 書類の様式と営業所の判断基準を、管轄警察署の防犯係で確認したか |
物件を契約してから、その物件では許可が下りないと判明するケースです。居住用の賃貸物件を無断で事業用に使うのは用法遵守義務違反にあたり、虚偽申請をすれば許可そのものを失います。物件の申し込み前に、貸主から事業利用の承諾を得られるかを必ず確認してください。
標準処理期間の約40日を工程に入れず、開業日が後ろにずれるケースです。この期間中も賃料は発生します。書類に不備があればさらに延びるため、余裕を持って申請してください。
改正前の情報をもとに、店舗ごとに許可が必要だと考えて計画してしまうケースです。2020年4月1日以降、許可は主たる営業所を管轄する公安委員会の1件に一本化されています。多店舗展開で必要になるのは追加の許可ではなく、営業所ごとの管理者の選任です。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 複数店舗を出す場合、店舗ごとに許可が必要ですか | 必要ありません。2020年4月1日施行の改正で、許可は主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会による1件に一本化されました。ただし古物営業法第13条第1項により、管理者は営業所ごとに1人選任する義務が残ります。多店舗展開の制約になるのは許可ではなく管理者の確保です。 |
| 取得までどれくらいかかりますか | 標準処理期間は約40日です。書類の補正期間は含まないため、不備があればさらに延びます。物件を契約してから許可が下りるまでの間も賃料は発生するので、この期間の固定費を開業資金に織り込んでください。 |
| 自宅やレンタルオフィスでも取得できますか | 自宅の場合、名義人の使用承諾書があれば可能性があります。レンタルオフィスは施錠可能な個室であれば取得できる場合があります。共用スペースのみのバーチャルオフィスは営業所の実態要件を満たしません。ただし判断は都道府県警によって運用が異なるため、申請前に管轄警察署の防犯係で確認してください。 |
| 許可を取らずに買取を始めるとどうなりますか | 古物営業法第31条第1号により、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。警察庁の統計では、無許可営業が古物営業法違反の検挙件数の最多を占めています。なお2022年の刑法改正で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されました。 |
| 許可を取った後に必要な手続きはありますか | 営業所ごとに標識を公衆の見やすい場所へ掲示する義務があります(第12条第1項)。また事業規模が著しく小さい場合等を除き、氏名または名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号をインターネット上で公衆の閲覧に供する義務があります(同条第2項)。標識の掲示義務違反は10万円以下の罰金です。 |
この課題の打ち手になりうる解決策を5件挙げます。直接の対処だけでなく、判断材料を得る手段や外部に頼る手段も含みます。





扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。古物商許可の取得手続きをジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


