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銀行のプロパー融資:在庫の中身を、自分の帳簿で説明できるかが分かれ目になる

プロパー融資は信用保証協会の保証が付かない融資で、返済されなかったときの損失を銀行が全部負います。だから見られるのは決算書と、その数字の裏付けです。買取業の決算書は棚卸資産が大きく、しかもその金額は自社が決めた査定額の積み上がりです。外から中身が見えない資産をどう説明するかを、古物営業法の法定帳簿から組み立てます。金利や審査期間、通過率は公表されていないため、この記事では扱いません。
資金解決策 🕐 2026-08-31 / 買取ラボ編集部
銀行のプロパー融資:在庫の中身を、自分の帳簿で説明できるかが分かれ目になる

保証が付かない融資は、決算書の外に逃げ場がない

信用保証協会付きの融資では、返済ができなくなったときに協会が金融機関へ代位弁済します。銀行から見れば損失の一部または全部が回避されるため、その分だけ判断の材料が広く取れます。代わりに事業者は保証料を負担します。保証料率は決算書の財務評価をもとに9段階の区分から決まり、責任共有の対象で年0.45%から1.90%まで4倍以上の開きがあります。

プロパー融資はこの保証が付きません。銀行が単独でリスクを負うため、判断は自社の決算書と、その数字を裏付ける資料に集約されます。保証料の負担は無くなりますが、その分の説明を自社が用意することになります。

審査の基準や通過率は金融機関が公表していません。「自己資本比率が何%あれば通る」といった線を引くことはできません。この記事で扱えるのは、決算書に何が載っていて、それがどう見えるか、そして見え方を補正する資料に何があるかまでです。

買取業で問題になるのは、貸借対照表の左側にある棚卸資産です。金額は大きく、しかも中身が外から確認できません。ここをどう説明するかが、用意できる資料の中心になります。

買取業の棚卸資産は、自社が決めた査定額の積み上がりである

一般の小売業では、仕入価格は取引先との交渉で決まります。買取業は違います。査定額をその場で自社が決め、その金額がそのまま仕入原価になります。棚卸資産の帳簿価額は、自社の判断の総和です。

この構造には二つの帰結があります。ひとつは、買取価格を上げれば粗利率が下がるということです。粗利率の低下は外部のコスト上昇ではなく、自社が買取価格を上げた結果として起きます。もうひとつは、売れない品物を高い査定額のまま持ち続けると、資産の額だけが膨らむということです。売れていない事実は、損益計算書ではなく貸借対照表に溜まります。

銀行がこの資産を見るとき、確認できるのは金額だけです。何がいくつ、いつから在庫になっているのかは、決算書の一行からは読み取れません。金額が大きいことは、換金力の裏付けにも、滞留の兆候にも読めます。どちらに読まれるかを自社で決められる資料が、後述する法定帳簿です。

中小企業実態基本調査(令和6年確報・令和5年度決算実績)で小売業の在庫回転期間を計算すると、法人企業全体で33.5日、従業者5人以下の層で55.9日、6〜20人の層で32.6日でした。自社の日数がこの線のどこにあるかは、自分で計算できます。

在庫の中身は、法定帳簿からしか説明できない

古物営業法第16条は、古物を受け取ったときと引き渡したときに、その都度、取引の年月日、品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、確認措置の区分を帳簿に記載することを義務づけています。帳簿は最終記載の日から3年間、営業所に備え付けなければなりません(第18条1項)。記載義務の違反には6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(第33条2号)。

この帳簿には、買取日と売却日が全件そろっています。業界平均が手に入らなくても、自社の在庫が何日滞留しているかは帳簿から作れます。品目別に「買取日から売却日までの日数」を出し、未売却分は決算日までの経過日数として集計すれば、在庫の年齢構成表になります。

作る表は三つです。品目別の在庫金額と点数、在庫の経過日数を区切った分布(例:30日以内・31〜60日・61〜90日・91日以上)、そして直近12か月の月次の買取額と売却額です。三つ目は、現金がいつ出ていつ戻るかを月単位で示します。

この資料があると、棚卸資産の一行が「何がいくつ、いつから」まで分解されます。滞留が長い区分があるなら、その理由と処分方針まで書きます。隠すより、区分して示すほうが説明として成立します。

在庫について銀行に出せる資料と、その作り方

出す資料作る材料何が分かるか
在庫の年齢分布表法定帳簿の買取年月日(第16条)滞留がどの区分に溜まっているか
品目別の在庫金額・点数法定帳簿の品目及び数量金額の中身の内訳
買取額・売却額の月次推移帳簿の受取・引渡し記録現金が出る時期と戻る時期
在庫回転日数の自社実績上記から算出33.5日/55.9日/32.6日と比べた位置
資金繰り表(実績+6か月)月次試算表と買取計画増加運転資金の必要額

粗利率が高いのに営業利益率が低い決算書を、そのまま出さない

中小企業実態基本調査では、従業者5人以下の小売業の粗利率が31.7%、営業利益率が0.2%でした。従業者6〜20人では粗利率31.2%、営業利益率1.5%です。粗利率はほぼ同じで、営業利益率だけが7倍以上違います。

差がついているのは在庫が現金に戻る速さです。55.9日と32.6日で、1.7倍の開きがあります。粗利を取れていないのではなく、同じ粗利を稼ぐのに倍近い時間と資金を使っている状態です。買取業は買取のたびに現金が出ていくので、この日数の差はそのまま必要運転資金の差になります。

自社の数字がこの構造に当てはまるなら、決算書の説明もそこに合わせます。営業利益率が低い理由を「競争が厳しいから」と書くと、外部要因の話になって打ち手が出てきません。回転日数を出し、どの品目で何日かかっていて、それを何日にするために何をするかまで書くと、返済原資の話とつながります。

この表は中小小売業全体の値であり、買取業に限定した統計ではありません。自社の適正値ではなく、同規模の小売業と比べてどうかを見る物差しとして使ってください。

規模が大きければ利益率が高い、という前提は成り立たない

上場しているリユース企業の直近決算を並べると、営業利益率はトレジャー・ファクトリー9.8%、BuySell Technologies 9.0%、ハードオフ8.6%に対し、ゲオホールディングス3.0%、コメ兵ホールディングス4.2%、バリュエンスホールディングス1.7%です。売上規模で並べると順序は逆転します。大黒屋ホールディングスは増収でも営業損失が続いています。

この並びから読めるのは、売上を伸ばすことと利益を残すことが別の作業だという点です。買取業は買取を増やせば売上は伸びますが、同時に在庫と支払いが増えます。増収の計画を出すときは、それに伴って増える買取原資と在庫金額を同じ資料の中に書きます。

資金使途を「運転資金」とだけ書いた申込は、何にいくら使うのかが分かりません。買取原資であれば、月あたりの買取額をいくらに増やし、その在庫が何日で売却され、何か月後に現金が戻るのかを数字で示します。設備であれば、その設備が在庫回転か買取件数のどちらに効くのかを書きます。

上場企業の数値は自社IRの開示であり、規模も業態も自社とは違います。目標値として使うのではなく、規模と利益率が連動しないという事実を確認する材料として使ってください。

順番については、断定できることと、できないことがある

保証付き融資で実績を作ってからプロパーに進む、という順序はよく語られます。ただし、各金融機関がどういう順序で判断しているかは公表されていません。ここは断定できません。

断定できるのは、既に借りている融資の残高と返済負担が決算書に残るということです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は融資限度額7,200万円、設備資金の返済期間20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置5年以内)です。返済期間の長さは、月々の返済額と、その後の借入余力の両方に効きます。

また、公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業時の調達額が平均1,219万円、そのうち金融機関等からの借り入れが平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)でした。開業費用は平均975万円、中央値600万円です。限度額7,200万円と実際の借入額827万円は桁が違います。限度額を借入可能額の目安にしないでください。

自社がどの段階にいるかは、既存の借入残高、返済実績の年数、直近の決算内容で決まります。取引のある支店に、現状で何が足りないかを聞くのが最も早い確認方法です。

決算の一年に一回だけ数字を出すのをやめる

決算書は年に一度しか出ません。買取業は月ごとの買取額と在庫金額の振れが大きいので、年に一度の数字だけでは実態が伝わりません。月次で出す資料を先に固定しておくと、決算期以外の時期にも状況を共有できます。

固定する資料は、月次試算表、資金繰り表(実績と6か月先までの予定)、在庫の年齢分布、買取額と売却額の月次推移です。前の節で作った三つの表がそのまま流用できます。作り直す手間はほとんどかかりません。

急な資金需要は買取業では実際に起きます。大口の遺品整理、法人の在庫一括処分、閉店に伴う什器・商品の引き取りは、話が来てから決済までの時間が短いことがあります。そのときに資料を一から作っていては間に合いません。月次の資料が既にあることが、時間を短くする唯一の手段です。

相談先は取引のある金融機関の担当者のほか、商工会議所・商工会の経営相談窓口、日本政策金融公庫の各支店です。いずれも申込前の段階で相談できます。

確認すべきこと

#チェック項目
1棚卸資産の金額が、自社の査定額の積み上がりであることを説明する資料を持っているか
2法定帳簿(第16条)から在庫の経過日数を集計し、年齢分布表を作ったか
3自社の在庫回転日数を計算し、33.5日・55.9日・32.6日と比べた位置を把握しているか
4粗利率と営業利益率を出し、差が回転の遅さから来ていないか確認したか
5資金使途を「運転資金」で止めず、買取額をいくら増やし何日で回収するかまで数字で書いたか
6増収計画に伴って増える買取原資と在庫金額を、同じ資料に書いたか
7既存借入の残高と月々の返済額を一覧にしたか
8月次試算表・資金繰り表・在庫年齢分布を毎月作る体制にしたか
9限度額(公庫7,200万円など)を借入可能額と混同していないか

よくある失敗

棚卸資産の金額だけを出して、中身の説明を用意しないケースです。買取業の在庫金額は自社が決めた査定額の積み上がりで、外からは何がいつから残っているのか分かりません。古物営業法第16条の帳簿には買取年月日と品目が全件あるので、経過日数の分布表と品目別の金額表は自社で作れます。金額だけでは、換金力の裏付けにも滞留の兆候にも読めてしまいます。

営業利益率の低さを外部要因として説明するケースです。中小企業実態基本調査では従業者5人以下の小売業が粗利率31.7%・営業利益率0.2%、6〜20人が31.2%・1.5%でした。粗利率はほぼ同じで、差は在庫回転期間の55.9日と32.6日です。原因を回転に置かないと、改善の打ち手が資料に書けません。

資金需要が起きてから資料を作り始めるケースです。買取業では大口の遺品整理や法人在庫の一括処分など、決済までの時間が短い案件が実際に発生します。月次試算表・資金繰り表・在庫年齢分布を平時から作っていないと、話が来てからでは間に合いません。

よくある質問

質問回答
プロパー融資と保証協会付き融資は何が違いますか返済できなくなったときの損失を誰が負うかが違います。保証協会付きは協会が代位弁済する代わりに保証料がかかり、料率は決算書の財務評価で9区分に分かれ、責任共有の対象で年0.45%から1.90%まで4倍以上の幅があります。プロパーは保証料がかからない代わりに、銀行が単独で損失を負うため、判断が決算書とその裏付け資料に集約されます。
どのくらいの財務内容ならプロパーが出ますか金融機関は審査の基準を公表していないため、この線を示すことはできません。自己資本比率や利益額で「何%あれば」という書き方をしている情報は、公表された基準に基づくものではありません。自社の位置を知る方法は、取引のある支店に現状で何が足りないかを直接聞くことです。
在庫が多いと不利になりますか在庫金額の大きさそのものが不利に働くかどうかは、金融機関の判断であり公表されていません。確実に言えるのは、決算書の一行では中身が分からないということです。古物営業法第16条の帳簿から経過日数の分布と品目別の金額を出せば、換金できる在庫と滞留している在庫を区分して示せます。滞留分は理由と処分方針まで書いてください。
資金使途はどう書けばよいですか買取原資であれば、月あたりの買取額をいくら増やすのか、その在庫が何日で売却される見込みか、現金が何か月後に戻るのかまで書きます。設備資金であれば、その設備が在庫回転と買取件数のどちらに効くのかを書きます。「運転資金」とだけ書くと、返済原資の説明につながりません。
限度額まで借りられるのですか限度額は上限であって、借入可能額ではありません。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は限度額7,200万円ですが、公庫の2025年度新規開業実態調査では開業時の金融機関等からの借り入れが平均827万円でした。開業費用は平均975万円、中央値600万円です。限度額を計画の目安に使わないでください。

「銀行のプロパー融資」が効く課題

この解決策が打ち手になりうる課題を11件挙げます。

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取扱ジャンル別に見る

扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。銀行のプロパー融資をジャンル別に見たページを用意しています。

買取形式別に見る

店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。

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