
仕入れ代行と呼ばれる形は3つに分かれます。海外の買い手に向けて集めるもの、国内の同業者に向けて集めるもの、そして特定の1点を探すものです。この項目が扱うのは3つ目です。
前の2つは、条件に合う品を「量」で集めます。買い手が求める幅の中に入っていればよいため、複数の候補が成立します。指名買いは違います。依頼されるのは特定の1点であり、代替が効きません。
この違いが原価の構造を変えます。買取業では通常、査定額がそのまま仕入原価になります。仕入原価を自分で決められる商売であり、だからこそ粗利率の低下は「買取価格を上げた」という自社の行動として読めます。
指名買いでは、そこに探索時間が乗ります。探した時間は、見つかっても見つからなくても発生します。1点を10時間かけて探した場合、その10時間は成約したときだけ回収されます。原価は査定額だけではなく、査定額と探索時間の人件費の合計になります。
中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和6年確報」の法人企業・小売業では、在庫回転期間が小売業全体で33.5日、従業者5人以下で55.9日、6〜20人で32.6日です。買取業に限った値ではありませんが、小規模帯の在庫は平均で2ヶ月近く現金に戻りません。
指名買いはこの拘束を受けません。買い手が先に決まっているため、手当てできればすぐ現金化されます。同調査で粗利率が5人以下31.7%、6〜20人31.2%とほぼ同じなのに営業利益率が0.2%と1.5%で7倍以上違うのは回転の差ですが、指名買いはその回転が構造的に速い形です。
その代わり、いつ手当てできるかを自社で決められません。市場に出るのを待つ、持ち込みを待つ、同業者からの連絡を待つ、といった受動的な工程が入ります。待っている間、探索の手間は発生し続けます。
したがって、期限と打ち切りの基準を最初に決める形になります。何日探して見つからなければ終了するのか、その時点で費用をどう扱うのかを、依頼を受ける前に文書で合意しておきます。この合意がないと、終わらない案件が担当者の時間を占め続けます。
探索の実費や着手金を先に受け取る設計、あるいは自社のポイントやチャージ残高として預かる設計を考える場合、資金決済法の前払式支払手段に当たるかどうかという論点が出ます。
資金決済法第3条は前払式支払手段の定義を置いています。証票等や電磁的方法により記録される金額に応ずる対価を得て発行され、発行者等から物品等を購入する際に代価の弁済のために使用できるもの、という構成です。自社でしか使えないものは自家型に分類されます。
第14条は基準日未使用残高が政令で定める額を超えるときの発行保証金の供託を定め、第20条は業務の廃止等の場合の保有者への払戻しを定めています。該当するかどうかは制度設計次第であり、条文だけで断定できません。
設計を固める前に、金融庁および管轄の財務局に確認してください。単発の着手金として受け取り、案件終了時に精算する形と、残高として積み立てられる形とでは扱いが変わりえます。仕組みを作ってから確認すると、作り直しになります。
| 論点 | 指名買い代行での扱い | 根拠・確認先 |
|---|---|---|
| 原価 | 査定額に加えて、探索にかけた時間の人件費が乗る | 自社の実測。不成立案件の時間も分母に入れる |
| 在庫の滞留 | 出口が先に決まるため原則発生しない(小規模小売業の平均は55.9日) | 中小企業実態基本調査 令和6年確報 |
| 日数の主導権 | 自社では決められない。期限と打ち切りを先に合意する | 依頼時の書面 |
| 前受金・着手金 | 設計によっては前払式支払手段に当たりうる。断定しない | 資金決済法第3条・第14条・第20条/金融庁・管轄財務局 |
| 募集の表示 | 成果や期間を掲げるなら根拠を持つ。買取サービスは2024年4月から規制対象 | 景品表示法第5条・第7条・第8条 |
| 盗品の誘因 | 探している品を公言する形。上位3区分で不正品申告の約7割 | 古物営業法第15条第3項/警察庁 令和7年概況 |
| 本人確認 | 1万円未満は免除。ただし7品目は1万円未満でも確認が要る | 古物営業法第15条/施行規則第16条 |
| 希望リストの管理 | 法定帳簿の外にある個人情報。利用目的の範囲で扱う | 個人情報保護法第17条・第18条・第23条・第27条 |
| 受け取れる場所 | 営業所または相手方の住所・居所。仮設店舗は事前届出 | 古物営業法第14条第1項 |
指名買い代行の集客では、成果を約束する表現が出やすくなります。景品表示法第5条は不当な表示を禁止しており、第1号が優良誤認、第2号が有利誤認です。買取サービスも2024年4月から規制対象に入っています。
成約率や探索期間を掲げるなら、その根拠を持っている形にします。第7条は措置命令を定め、第8条は課徴金納付命令を定めています。表示の根拠を持たずに書ける前提にしないでください。
実務では、実績を件数で示すほうが安全です。過去にどの区分で何件手当てできたか、平均で何日かかったかを、自社の記録から出します。記録が無ければ数字を出さないという整理になります。
見つからなかった場合の費用の扱いも、募集の段階で示します。着手金が返らないのか返るのか、探索期間の上限は何日かを明示しておけば、依頼者との認識のずれが起きません。ここを曖昧にしたまま集客すると、有利誤認の論点に触れます。
指名買いは、特定の品を高く買う意思を外に向けて示す形です。買取業はもともと盗品が持ち込まれる前提の業種ですが、指名買いはその誘因を能動的に作ります。探している品が特定されているぶん、狙って持ち込まれる余地があります。
警察庁「令和7年中における古物営業・質屋営業の概況」による古物の区分別の不正品申告件数は、総数129件のうち道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件、書籍17件です。上位3区分で90件、全体の約7割を占めます。指名買いの対象になりやすい高単価品や希少品は、この上位区分と重なります。
古物営業法第15条第3項は、不正品の疑いがあると認めるときに、直ちに警察官へ申告する義務を定めています。同条第1項は買い受けようとするときの相手方の真偽の確認を義務づけ、第2項第1号で対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満の取引を免除しています。その金額は施行規則第16条第1項で1万円です。
ただし施行規則第16条第2項は、1万円未満でも確認が要る古物を7品目挙げています。自動二輪車及び原動機付自転車、エアコンディショナーの室外ユニットと電気温水機器のヒートポンプ、家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物、光学的方法により音又は影像を記録した物、電線、金属製のグレーチング、書籍です。指名買いで扱う品がここに含まれるかを、事前に確認しておいてください。
指名買い代行では、依頼者ごとに「何を探しているか」という情報が蓄積します。これは古物営業法第16条の帳簿に記載する事項ではありません。取引が成立していない段階の情報であり、法定帳簿の外にあります。
個人情報保護法第17条は利用目的の特定を、第18条は利用目的による制限を定めています。探索のために取得した希望品目や連絡先を、別の販促に転用してよいかは、取得時の利用目的の立て方で決まります。後から範囲を広げることには制限があります。
第23条は安全管理措置を、第26条は漏えい等の報告を、第27条は第三者提供の制限を定めています。探索のために同業者へ「この品を探している」と伝える場面では、依頼者を特定できる情報を渡していないかを確認する形になります。
法定帳簿の側は別の扱いです。第16条の記載事項には相手方の住所、氏名、職業、年齢が含まれ、第18条第1項により最終記載の日から3年間の備付けが要ります。法で保存を義務づけられた個人情報という二重性があるため、探索用のリストと同じ場所に混ぜず、保存期間と参照権限を分けて管理してください。
代行手数料の相場を示す一次情報はありません。この記事では率も金額も書きません。採算は自社の記録から作れます。
測るのは3つです。依頼を受けた件数のうち手当てできた件数、1件あたりに費やした探索時間、依頼から引き渡しまでの日数です。3ヶ月ぶん記録すれば、成約1件あたりに何時間かけているかが出ます。
計算は単純です。成約1件の粗利額を、その案件にかけた時間と不成立案件にかけた時間の合計で割ります。不成立の時間を分母に入れないと、実態より良く見えます。この値を、同じ時間を通常の査定や接客に使った場合の粗利と比べます。
そのうえで、探索の入口を絞ります。手当て率が低い区分は、依頼が来ても受けない形にします。買い受ける場所の制約も効きます。古物営業法第14条第1項により、古物商以外の者から古物を受け取れるのは営業所または相手方の住所もしくは居所に限られ、仮設店舗は事前届出が要ります。第14条第3項により、古物市場では古物商間でなければ売買・交換ができません。探索先ごとに、受け取り方が成立するかを先に確認してください。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 自社がやろうとしているのが、1点の探索か、海外の買い手向けか、国内の同業者向けかを言葉にしているか |
| 2 | 探索にかけた時間を、成約・不成立の両方で記録しているか |
| 3 | 成約1件あたりの粗利を、不成立案件の時間も含めた総時間で割っているか |
| 4 | 探索期間の上限と、打ち切り時の費用の扱いを、依頼を受ける前に文書で合意しているか |
| 5 | 着手金や前受金を取る設計について、資金決済法の適用を金融庁・管轄財務局に確認したか |
| 6 | 募集の表示で、成約率や期間を根拠なく掲げていないか(景品表示法第5条) |
| 7 | 見つからなかった場合の費用の扱いを、募集の段階で明示しているか |
| 8 | 探索対象の品が、1万円未満でも本人確認が要る7品目に該当するかを確認しているか |
| 9 | 不正品の疑いを認めたときに、直ちに警察官へ申告する手順を決めているか(第15条第3項) |
| 10 | 依頼者の希望品目リストを、法定帳簿とは別の保存期間・参照権限で管理しているか |
| 11 | 同業者へ探索を依頼する際に、依頼者を特定できる情報を渡していないか(個人情報保護法第27条) |
| 12 | 探索先ごとに、受け取れる場所の制約(第14条第1項・第3項)が成立するかを確認しているか |
在庫を持たないから低リスクだと考え、探索時間を原価に入れない失敗があります。買取業では通常、査定額がそのまま仕入原価になりますが、この形だけは探した時間が上に乗ります。しかも不成立案件の時間は回収されません。成約1件あたりの粗利を、不成立案件の時間も含めた総時間で割ってください。分母を成約案件だけにすると、実態より良く見えます。
探索期間の上限と打ち切りの条件を決めずに依頼を受け、終わらない案件が担当者の時間を占め続ける失敗があります。指名買いは、いつ手当てできるかを自社で決められない形です。市場に出るのを待つ、持ち込みを待つという受動的な工程が入るため、期限がなければ探索の手間だけが積み上がります。何日で終了し、その時点で費用をどう扱うかを、依頼を受ける前に文書で合意してください。
「探しています」と公言することで、狙った持ち込みを招く失敗があります。買取業は盗品が持ち込まれる前提の業種ですが、指名買いは対象が特定されているぶん誘因が強く働きます。警察庁の資料では不正品申告は総数129件のうち道具類37件、時計・宝飾品類31件、機械工具類22件と上位3区分に約7割が集中しており、指名買いの対象になりやすい区分と重なります。古物営業法第15条第3項は、疑いがあると認めるときの直ちの申告を義務づけています。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 海外バイヤー向けの仕入れ代行や業者向け専門調達と、どう違いますか | 探す対象が違います。海外バイヤー向けと業者向け専門調達は、買い手が示した条件の幅に入る品を量で集める形で、候補が複数成立します。指名買い代行は特定の1点を探す形で、代替が効きません。この違いが原価の構造を変えます。前の2つは在庫リスクが主な論点ですが、指名買いは在庫を持たない代わりに、見つかっても見つからなくても発生する探索時間が原価になります。 |
| 手数料はどのくらいに設定すればよいですか | 相場を示す一次情報がないため、率も金額も示しません。設定は自社の記録から作ります。3ヶ月間、依頼件数、手当てできた件数、1件あたりの探索時間、依頼から引き渡しまでの日数を記録してください。成約1件の粗利額を、その案件と不成立案件にかけた時間の合計で割ると、1時間あたりの稼ぎが出ます。同じ時間を通常の査定や接客に使った場合と比べれば、料金の下限が決まります。 |
| 着手金を先にもらう形にしても問題ありませんか | 設計によって資金決済法の前払式支払手段に当たる可能性があるため、断定できません。同法第3条が定義を置き、第14条が発行保証金の供託、第20条が保有者への払戻しを定めています。単発の着手金として受け取り案件終了時に精算する形と、自社の残高として積み立てられる形とでは扱いが変わりえます。仕組みを作る前に、金融庁および管轄の財務局に確認してください。作ってから確認すると作り直しになります。 |
| 「見つからなければ全額返金」と広告に書いてよいですか | 実際にその運用ができるなら書けますが、条件を省いて書くと表示の問題になります。景品表示法第5条は不当な表示を禁止しており、買取サービスも2024年4月から規制対象に入っています。第7条は措置命令、第8条は課徴金納付命令を定めています。返金の範囲、探索期間の上限、返金しない費用があるならその内訳まで含めて表示してください。成約率や平均日数を掲げるなら、自社の記録という根拠を持っている形にします。 |
| 依頼者の希望品目リストを、他の販促に使ってもよいですか | 取得時の利用目的の立て方で決まります。個人情報保護法第17条は利用目的の特定を、第18条は利用目的による制限を定めており、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことはできません。第23条の安全管理措置と第27条の第三者提供の制限も併せて確認してください。なお古物営業法第16条の法定帳簿は、第18条第1項により最終記載の日から3年間の備付けが要る別の記録です。探索用のリストとは保存期間も参照権限も分けて管理してください。 |
| 探した品を、どこで受け取ってもよいですか | 受け取れる場所は決まっています。古物営業法第14条第1項により、営業所または取引の相手方の住所もしくは居所以外の場所で、古物商以外の者から古物を受け取ることはできません。仮設店舗については、日時と場所を事前に管轄公安委員会へ届け出れば可能です。また第14条第3項により、古物市場では古物商間でなければ売買・交換ができません。探索先ごとに受け取り方が成立するかを、依頼を受ける前に確認してください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を3件挙げます。



扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。探索型・指名買い代行をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


