
雇用関係助成金は厚生労働省の所管で、財源は雇用保険です。管轄は労働局とハローワークになります。一方、小規模事業者持続化補助金やデジタル化・AI導入補助金2026は中小企業庁の系統で、事業計画を提出して採択審査を受けます。申請すれば必ず通るものではありません。
助成金は、定められた要件を満たして所定の手続きを踏めば受給できる性質の制度です。事業計画の優劣を競う場面がないぶん、判断の軸は「要件を満たせるか」の一点になります。逆に言えば、要件を1つでも外すと、内容がどれだけ良くても支給されません。
年度途中で要件が変更されます。支給額、対象者の定義、加算の条件は年度ごとに見直され、期中の改定もあります。ここに書く金額は令和7年度版(令和7年4月1日現在)の内容で、取組を始める前に管轄の労働局・ハローワークで最新を確認するという前提で読んでください。
もう1つの違いは対象経費です。補助金は設備やシステム、広報物といった支出に対して交付されます。助成金は雇用や処遇の状態に対して支給されます。買取業では、前者は査定ツールやPOSに、後者は査定担当者の正社員化に効きます。用途が重ならないため、どちらかを選ぶ関係にはありません。
雇用関係助成金の「中小企業事業主」の範囲は業種ごとに定められています。小売業(飲食店を含む)は資本金・出資の総額5,000万円以下、または常時雇用する労働者の数50人以下です。サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です。
「または」である点が判定を大きく変えます。どちらか一方を満たせば中小企業事業主に当たります。資本金が5,000万円を超えていても常時雇用が50人以下なら中小企業事業主で、逆に人数が50人を超えていても資本金が5,000万円以下なら中小企業事業主です。資本金等のない事業主は労働者数で判定します。
判定の時点は支給申請時です。常時雇用する労働者とは、2か月を超えて使用され、かつ週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等の者を指します。繁忙期だけの短期雇用や、所定労働時間が明らかに短いパートは、この人数の判定とは別の扱いになります。
買取業が小売業として判定されるという整理は、他の制度とも整合します。信用保証協会の保証制度でも、小売業・飲食業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下で、同じ区分です。買取店は自社を小売業として扱う制度が多いという前提で、制度を横断して確認できます。
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の対象となるのは小規模事業者で、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は20人以下、製造業その他は20人以下です。買取店は商業・サービス業にあたるため5人以下が目安になります。
この5人という数字が頭に残っていると、従業員が8人いる買取店は「自分は小規模事業者ではないから公的支援の対象外だ」と判断しがちです。しかし雇用関係助成金の側は50人以下です。8人の店は余裕をもって中小企業事業主に当たります。
定義そのものも違います。持続化補助金では会社役員・個人事業主本人・一定条件を満たすパートタイム労働者を「常時使用する従業員」に含みません。雇用関係助成金の「常時雇用する労働者」は、2か月を超えて使用され週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等の者という定義です。同じ「従業員数」という言葉でも、数え方が制度ごとに違います。
制度を比較するときは、人数の数字だけを並べないでください。業種区分、人数、資本金、そして「かつ」なのか「または」なのかを、制度ごとに1つずつ確認します。雇用関係助成金は「または」ですが、それが他の制度でも同じとは限りません。
| 転換の種類・対象者・企業規模 | 支給額 | 支給の分割 |
|---|---|---|
| 有期雇用労働者→正社員/重点支援対象者・中小企業 | 80万円 | 40万円×2期 |
| 有期雇用労働者→正社員/重点支援対象者・大企業 | 60万円 | 30万円×2期 |
| 有期雇用労働者→正社員/上記以外・中小企業 | 40万円 | 40万円×1期 |
| 有期雇用労働者→正社員/上記以外・大企業 | 30万円 | 30万円×1期 |
| 無期雇用労働者→正社員/重点支援対象者・中小企業 | 40万円 | 20万円×2期 |
| 無期雇用労働者→正社員/重点支援対象者・大企業 | 30万円 | 15万円×2期 |
| 無期雇用労働者→正社員/上記以外・中小企業 | 20万円 | 20万円×1期 |
| 無期雇用労働者→正社員/上記以外・大企業 | 15万円 | 15万円×1期 |
| 加算:正社員転換制度を新たに規定して転換 | 20万円(大企業15万円) | 1事業所1回のみ |
| 加算:多様な正社員制度を新たに規定して転換 | 40万円(大企業30万円) | 1事業所1回のみ |
キャリアアップ助成金 正社員化コースは、有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給されます。支給額は、対象者が重点支援対象者に当たるかと、企業規模が中小企業かで4通りに分かれます。
有期雇用労働者から正社員への転換では、重点支援対象者・中小企業で80万円(40万円×2期)、重点支援対象者・大企業で60万円(30万円×2期)、それ以外・中小企業で40万円(40万円×1期)、それ以外・大企業で30万円(30万円×1期)です。無期雇用労働者からの転換は、重点支援対象者・中小企業で40万円(20万円×2期)、重点支援対象者・大企業で30万円、それ以外・中小企業で20万円、それ以外・大企業で15万円です。
重点支援対象者かどうかで金額が2倍変わります。定義は次のいずれかです。a 雇入れから3年以上の有期雇用労働者。b 雇入れから3年未満で、過去5年間に正規雇用だった期間が合計1年以下、かつ過去1年間に正規雇用でない者。c 派遣労働者(派遣先で直接雇用する場合)、母子家庭の母等・父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定訓練修了者。
買取業では a が効きます。アルバイトや契約社員として3年以上勤め、査定の判断ができるようになった人を正社員へ転換する場面が、重点支援対象者に当たります。支給は正社員として6か月雇用した時点で1期目、さらに6か月で2期目(重点支援対象者のみ)です。通算5年を超える有期雇用労働者は無期雇用労働者とみなされるため、3年以上5年以下の期間にいる人がどれだけいるかを先に確認してください。1年度1事業所あたりの支給申請上限は20名です(同一対象者の2回目の申請を除く)。
正社員化コースには加算があります。正社員転換制度を新たに規定して転換した場合20万円(大企業15万円)、多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか1つ以上)を新たに規定して転換した場合40万円(大企業30万円)です。いずれも1事業所あたり1回のみです。
1回限りという条件は、使うタイミングを選ぶという意味になります。就業規則を整える段階でどちらの制度も同時に規定してしまうと、2つの加算を両方とも1回ずつ取れる形になりますが、後から追加で規定し直しても2回目は出ません。制度設計の順序が金額を決めます。
多様な正社員制度の40万円は、買取業と噛み合います。勤務地限定は複数店舗を持つ事業者で、転勤を前提としない正社員区分を作る場合に当たります。職務限定は査定や真贋判断に職務を絞った区分、短時間正社員は営業時間の一部だけ勤務する正社員区分です。買取店は営業時間が長く、査定という専門職務が独立しているため、この3類型のいずれかは設計しやすい環境にあります。
重点支援対象者・中小企業の80万円に、正社員転換制度の新設20万円と多様な正社員制度の新設40万円を重ねれば、1人目の転換で受け取れる額は大きくなります。ただし加算は1事業所1回であり、2人目以降は基本額のみです。「1人あたりいくら」で資金計画を組まないでください。
共通の不支給要件のうち、買取業で引っかかりうるものが4つあります。ひとつは支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主であることです。申請の時点で是正されていても、過去1年に違反があれば対象外になります。
2つ目は、支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない場合です。個人事業として1人で運営してきた買取店が初めて人を雇う場合、雇用保険の適用手続きが先に必要になります。
3つ目は併給調整です。同一の行為に2つ以上の助成金を申請した場合、一方しか支給されないことがあります。4つ目は、労働者の処遇改善が図られていない場合、非正規雇用労働者の処遇低下がある場合の不支給です。正社員化と引き換えに他の非正規社員の条件を下げると、この要件に触れます。
買取業は営業時間が長く、査定の繁閑が読みにくいため、労働時間の管理が緩みやすい業種です。過去1年をさかのぼって見られるという条件は、助成金を検討し始めた時点で1年前まで結果が決まっているということを意味します。就業規則、労働時間の記録、割増賃金の支払いを先に整えてから、制度の検討に入る順序になります。
正社員化コースの支給は、正社員として6か月雇用した時点で1期目、さらに6か月で2期目です。転換した月に入金されるわけではありません。その間、上がった人件費は自社で負担します。
買取業はもともと支払いが先行する商売です。客にその場で現金を渡し、売れてから回収します。中小企業実態基本調査(令和6年確報・法人企業・小売業)では、従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日で、6〜20人の32.6日と比べて1.7倍かかっています。粗利率は5人以下31.7%・6〜20人31.2%と差がないのに、営業利益率は0.2%と1.5%で開いています。現金が戻る速度で負けている構造です。
この構造の上に、6か月から1年遅れて入る助成金を重ねます。助成金を人件費の原資として計算に入れると、入金までの期間の運転資金が不足します。入るのは「正社員化を決めた後の結果」であって、決断の原資ではありません。
使い方としては、正社員化そのものは自社の人件費計画で成立させ、受給できた分を採用・育成の追加投資や運転資金の厚みに回す並べ方になります。買取業では、査定できる人が増えることが仕入の量に直結します。人が確保できていない状態で買取原資だけを積んでも、買い取れる量は増えません。
雇用関係助成金は6つの分類に整理されています。雇用維持(雇用調整助成金、産業雇用安定助成金3コース)、雇入れ・再就職(特定求職者雇用開発助成金6コース、トライアル雇用助成金3コース、地域雇用開発助成金2コース、早期再就職支援助成金4コース)、人材育成(人材開発支援助成金6コース、キャリアアップ助成金8コース)、雇用環境整備・処遇改善(人材確保等支援助成金7コース、65歳超雇用推進助成金3コース、通年雇用助成金)、仕事と家庭の両立(両立支援等助成金8コース)、障害者雇用(障害者作業施設設置等助成金ほか計9種類)です。
買取業の実態に照らすと、まず見るのは人材育成のキャリアアップ助成金です。査定・接客をアルバイトや契約社員で回している店が多く、正社員化コースの対象者が実際に社内にいます。人材開発支援助成金は、真贋判断や商材知識の訓練を体系立てて行う場合に検討対象になります。
雇入れ・再就職の分類は、採用の局面で見ます。トライアル雇用助成金は、経験のない人材を試行雇用する枠組みで、査定という未経験者採用が中心になる職種と関係します。特定求職者雇用開発助成金は対象者の属性で分かれるため、採用の実態に当たるコースがあるかを確認する形になります。
雇用環境整備・処遇改善の分類では、65歳超雇用推進助成金が視野に入ります。ただし各制度のコース構成と要件はここに書ける粒度を超えており、どのコースが自社に当たるかは管轄の労働局・ハローワークで確認してください。このページで金額を示しているのはキャリアアップ助成金 正社員化コースのみで、他の制度の支給額は示していません。
| # | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 自社が小売業区分(資本金5,000万円以下 または 常時雇用50人以下)に当たるかを、支給申請時の状態で確認したか |
| 2 | 「または」であることを踏まえ、資本金と人数のどちらか一方で満たしていないかを確認したか |
| 3 | 持続化補助金の「従業員5人以下」と、雇用関係助成金の「50人以下」を混同していないか |
| 4 | 常時雇用する労働者(2か月を超えて使用され、週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等)の人数を、定義どおりに数えているか |
| 5 | 正社員化の候補者が重点支援対象者(雇入れ3年以上の有期雇用労働者 ほか)に当たるかを1人ずつ確認したか |
| 6 | 通算5年を超える有期雇用労働者が無期雇用労働者とみなされる点を踏まえ、対象者の在籍年数を整理したか |
| 7 | 正社員転換制度・多様な正社員制度を新たに規定するタイミングを、加算が1事業所1回であることを踏まえて決めたか |
| 8 | 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反がないか。就業規則・労働時間の記録・割増賃金の支払いを確認したか |
| 9 | 雇用保険適用事業所になっているか。初めて人を雇う場合、適用手続きを先に済ませたか |
| 10 | 正社員化と引き換えに他の非正規雇用労働者の処遇を下げていないか |
| 11 | 支給が6か月・12か月と後払いである前提で、その間の人件費を自社の資金計画で賄えるか |
| 12 | 1年度1事業所あたり20名という支給申請上限を、転換の計画に織り込んだか |
| 13 | 取組の実施前に、管轄の労働局・ハローワークで最新の要件を確認したか |
持続化補助金の「従業員5人以下」を覚えていて、従業員が6人以上いるから公的支援の対象外だと判断してしまう失敗です。雇用関係助成金の中小企業事業主は、小売業なら資本金5,000万円以下または常時雇用50人以下です。数字も「または」という結び方も、制度ごとに違います。人数の数字だけで判断せず、業種区分・人数・資本金・接続詞を制度ごとに確認してください。
助成金の入金を人件費の原資として資金計画に組み込んでしまう失敗です。正社員化コースの支給は、正社員として6か月雇用した時点で1期目、さらに6か月で2期目です。買取業はもともと客にその場で現金を渡し売れてから回収する商売で、中小小売業の従業者5人以下の在庫回転期間は55.9日、営業利益率は0.2%です。入金までの期間の運転資金が不足します。
先に転換を進めてから助成金を調べ始め、過去1年の労働関係法令違反で不支給になる失敗です。不支給要件は支給申請日の前日から過去1年間をさかのぼって見られるため、検討を始めた時点で1年前まで結果が決まっています。買取業は営業時間が長く査定の繁閑が読みにくいため、就業規則・労働時間の記録・割増賃金の支払いを先に整えてから制度の検討に入ってください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 買取店はどの業種として判定されますか | 小売業として判定されます。雇用関係助成金の中小企業事業主の範囲は、小売業(飲食店を含む)で資本金・出資の総額5,000万円以下、または常時雇用する労働者の数50人以下です。サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です。信用保証協会の保証制度でも小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下で、同じ区分になっています。 |
| 「または」とは、どちらか一方を満たせばよいという意味ですか | そのとおりです。資本金が5,000万円を超えていても常時雇用が50人以下なら中小企業事業主に当たり、人数が50人を超えていても資本金が5,000万円以下なら中小企業事業主に当たります。資本金等のない事業主は労働者数で判定します。判定の時点は支給申請時です。常時雇用する労働者とは、2か月を超えて使用され、かつ週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等の者を指します。 |
| 持続化補助金の「5人以下」との違いは何ですか | 制度が別で、定義も数字も違います。小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で常時使用する従業員5人以下が対象で、会社役員・個人事業主本人・一定条件を満たすパートタイム労働者を含みません。雇用関係助成金は小売業で50人以下です。所管も違い、補助金は中小企業庁の系統で採択審査があり、助成金は厚生労働省の所管で要件を満たせば受給できる性質です。管轄は労働局とハローワークになります。 |
| アルバイトを正社員にすると、いくら受け取れますか | キャリアアップ助成金 正社員化コースの場合、有期雇用労働者から正社員への転換で、重点支援対象者かつ中小企業なら80万円(40万円×2期)、それ以外の中小企業なら40万円(40万円×1期)です。重点支援対象者は、雇入れから3年以上の有期雇用労働者などが当たります。加えて、正社員転換制度を新たに規定して転換した場合20万円、多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか1つ以上)を新たに規定して転換した場合40万円の加算がありますが、いずれも1事業所につき1回のみです。2人目以降は基本額のみになります。これは令和7年度版(令和7年4月1日現在)の額で、年度途中で変更されます。 |
| 何人まで申請できますか | 正社員化コースの支給申請上限は、1年度1事業所あたり20名です(同一対象者の2回目の申請を除く)。あわせて、通算5年を超える有期雇用労働者は無期雇用労働者とみなされる点、新規学卒者で雇入れから一定期間経過していない者は対象外である点を、対象者の整理に織り込んでください。 |
| 申請すれば必ず受給できますか | 要件を満たせば受給できる性質の制度ですが、不支給要件があります。支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主、支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない場合は支給されません。同一の行為に2つ以上の助成金を申請した場合の併給調整もあります。労働者の処遇改善が図られていない場合、非正規雇用労働者の処遇低下がある場合も不支給です。過去1年をさかのぼって見られるため、就業規則・労働時間の記録・割増賃金の支払いを先に整えてください。 |
| 買取業で使う可能性がある助成金は他にありますか | 雇用関係助成金は6分類14制度に整理されています。買取業ではまず人材育成のキャリアアップ助成金(8コース)を見ます。査定・接客を有期雇用で回している店が多く、対象者が実際に社内にいるためです。真贋判断や商材知識の訓練を体系立てて行うなら人材開発支援助成金(6コース)、未経験者の試行雇用ならトライアル雇用助成金(3コース)が検討対象になります。ただし各コースの要件と支給額はここでは示していません。どのコースが自社に当たるかは、管轄の労働局・ハローワークで確認してください。 |
この解決策が打ち手になりうる課題を3件挙げます。



扱う商材によって、不要品の発生量も、値段が付くかどうかも、どこに売られるかも変わります。雇用関係助成金をジャンル別に見たページを用意しています。
店舗を構えるか、出張に出るか、宅配で受けるか。買取形式によって前提となる商圏も、かかる規制も変わります。


