e-dash株式会社
e-dash株式会社
従業員数:27名(2023年8月時点)
2022年2月設立。三井物産株式会社のカーボンニュートラルに向けた新たな挑戦として誕生する。「脱炭素を加速する」をミッションに掲げ、請求書のスキャンからアップロードだけで、自社の二酸化炭素排出量の自動算出と分析を実現したSaaSサービスを提供。算出された排出量を元に、最適なエネルギーの調達や環境への取り組みから各種報告書の作成までを一気通貫で行う。
新規事業マーケティングチームの立ち上げ
マーケターとして立ち上げから参画
上流工程から各種戦略や施策を提案
マーケティングチームの土台形成に成功
チーム力の向上から、事業成長にも寄与
e-dash株式会社はMarcheと協働し、マーケティング体制の新規立ち上げを行っています。今回、同社代表取締役社長の山﨑さん、セールス&マーケティング部 部長の甲斐さんに導入時の課題感・支援の所感・今後の展望についてお話しいただきました。
【プロフィール】
山﨑 冬馬 (やまさき とうま)
代表取締役社長
2007年に三井物産株式会社に入社し、主に発電プロジェクト等の新規インフラ案件開発及びM&Aに従事。2015年から2020年にはシリコンバレーに駐在し、クリーンテック分野のスタートアップへの投資と共同事業開発を担当。帰国後、2022年2月にe-dash株式会社を立ち上げ、現在に至る。
甲斐 綾乃 (かい あやの)
セールス&マーケティング部 部長
2017年に三井物産株式会社に入社し、主にEV充電インフラや蓄電事業・VPP、分散型太陽光などの事業に従事。2022年2月からe-dash株式会社に参加し、法人営業からマーケティングまで幅広く担当する。
三井物産が手がける、脱炭素に向けた新規事業
ーーe-dashの事業内容を教えてください。
山﨑:二酸化炭素の排出量を手間なく簡単にかつ、経営に考慮できる状態で継続的に把握できるようなソフトおよびSaaSサービスの提供です。排出量の可視化から削減計画の策定とその報告、削減までを一気通貫で支援します。
脱炭素は社会問題として取り扱われ、国家レベルでの目標も設定されている世界的な課題の1つです。一方で、脱炭素の推進方法に悩む日本企業は多く、これが目標の達成に向けた進捗を妨げる遠因であると僕は感じています。大企業はこれまでも省エネ法(※)に基づきエネルギーの排出量を国へ報告してきましたが、残念ながら多くのケースでこれまで報告を出すことが目的化してしまい、経営指標の1つとして二酸化炭素の排出量を捉えて継続的にモニタリングし計画的にアクションを起こす体制までは至っていなかったように思います。。また、中小企業のほとんどはまだ手つかずの状況です。
少しでも脱炭素問題の改善ならびに日本企業の脱炭素経営の向上につながればと思い、三井物産のカーボンニュートラルに向けた新たな挑戦として、脱炭素の加速をミッションに掲げたe-dashを立ち上げました。
(※)省エネ法:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律の略称。一定規模以上の事業者に対し、エネルギーの使用状況等について定期的な報告、および省エネや非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を義務付ける法律。
ーーe-dashの当時のマーケティング課題を教えてください。
山﨑:僕たちは「マーケティングとは一体何なのか?」から分かりませんでした。三井物産は基本的に投資と物流の2軸で事業を進めており、かつ事業分野ごとにパートナーや顧客がすでにいることから、マーケティングによって何かを推し進めることがほとんどありません。立ち上げ当初は三井物産からの出向だけで事業を進めていたこともあり、マーケティングをどのような戦略・手法で行ったらいいのかを誰も知らなかったのです。
一方、e-dashはSaaS事業で、かつ中堅・中小企業からエンタープライズまで幅広い企業がターゲットのため、 求められるアプローチも多岐にわたります。これまで三井物産がターゲットとしてきた顧客層とも異なるため、e-dashに適したマーケティング戦略を理解することは急務でした。
求めるは「上流からマーケ戦略を立案できるスペシャリスト」
ーーMarcheに依頼するまで、マーケティングはどうしていましたか?
甲斐:設立当初、数ヶ月間だけ大手広告代理店にお願いしていたことがあります。Webサイトなど初期のデザイン整理や実装は順調に進みましたが、マーケティング体制や戦略の確立という観点では十分な成果が得られませんでした。例えば、データの分析や解析結果に基づく報告は行われていなかったため、実施したことに対してはどういう効果や成果が出ているのか、またその他に最低限やらなければいけないことが何なのかが不明瞭なまま進んでいました。
ーー今回、Marcheに依頼した理由を教えてください。
山﨑:初回の提案段階から論理的にかつテンポよく、e-dashの経営成長を踏まえて上流からの提案をしてくれたからです。「個人として企業を口説き落としたり、取引をまとめるのが総合商社の人は得意な傾向にありますが、今回の場合は市場にどのような顧客が存在するかを把握・分析した上で、誰にどのような方法でアプローチを行うかなどを上流から考えなくてはいけません」と課題をスパッと言われたのは印象的でした。
その後も契約までに2〜3度話しましたが、若くして専門性を高めて上流から考えられる人は、なかなかいないと思います。上流から俯瞰してビジネスを考えられる人は、事業の推進にあたってとても重要な存在です。
ーーお褒めいただき光栄です。マーケティング経験が無いとは仰いますが、事業経験が豊富な皆様でしたら自分たちで施策を検討し、実行まで移せるのではありませんか?
山﨑:やはり、餅は餅屋に限ります。スペシャリストは専門性が高く、実行までのスピードが早いからです。立ち上げ当初のe-dashはジェネラリストの集まりでした。三井物産の経験からメンバーは法務も経理も営業も把握しているとはいえ、新規事業を行うにはスキルが丸くまとまりすぎています。
事業立ち上げを成功させるためにも、専門性で突き抜けていくスペシャリストを仲間に持つことは絶対に必要だと考えていました。マーケティング周りの立ち上げ、設計と同時にスピードを落とさずに事業開発を進めたかったので、事業初期段階の立ち上げからマーケティング運用段階までを包括的にかつ迅速に行えるチームに依頼したいと思いました。
ーー依頼時、Marcheに期待した点を教えてください。
山﨑:大きく2つあります。1つ目は、検討から実行までのスピード感です。事業速度と同じ速さで動けるチームを求めていました。2つ目は、採用コストや育成の時間などを気にする必要がない点です。Marche担当者の人柄や能力などは提案段階で把握できていたため、すぐに事業の初期段階の立ち上げから支援をお願いできました。これはスペシャリストが参加する強みだと思います。
毎週行われた、分析と改善に向けた話し合い
ーーMarcheと行ったマーケティング内容について教えてください。
甲斐:戦略提案から実施までを幅広く行うなか、e-dashの経営状況やデータから得られた結果を考慮し、現在はSNSや検索エンジンなどの広告運用とSEOメディアの企画・運用の2つを柱に進めています。また広告から流入する顧客に合わせ、ランディングページ(LP)の最適化も行いました。加えて当社でも完結できる施策のアドバイスも柔軟にしていただきました。顧客顧客接点を増やす手段としての導入事例やホワイトペーパーの作成はMarcheのアドバイスを受け実施した内容の1つです。
Marcheはさまざまな領域において、パートナー企業やフリーランスとつながりを持つことから、ライターやエンジニアなど、実施したいことに対してすぐに受け入れ体制を整えていただくことができています。我々が自分で人材を探そうにもノウハウ、そして時間的な余裕がありませんでしたし、何より要望があればいくらでも対応できるネットワークがあることを、Marcheメンバーとの会話でひしひしと感じます。実際にe-dashが公開している「accel.(アクセル)」というメディアもMarche主導で企画から運営まで行われています。
ーーMarcheとのやり取りは、普段どのように進めていますか?
甲斐:基本的に毎週定例を行い、その週の広告やSEOメディアの運用成果などを見ながら、今後の戦略について話し合います。毎回、Marcheの担当者から結果の分析とそれを受けての改善策が提案されますが、最初はMarcheがこれら全てを1週間で行うことに驚いていました。「e-dashが同じ品質の対応をゼロから行うのは無理」と個人的に感じたぐらいです。
ーー今、社内にマーケティング関連のメンバーは何人いますか?
甲斐:私を入れて4名(取材当時)です。人数を増やしたい思いはありつつも、Marcheのメンバーが頼りになるため、この1年は他のチームの人材補強を優先しました。
ーー実際に取り組むなかで印象に残った点を教えてください。
甲斐:SEO施策におけるドメインパワーの話は特に印象深かったです。検索エンジンからの信頼度が強いURLに自分たちのサイトが掲載されると相乗効果を得られるというのは面白いと思いました。三井物産はドメインパワーが強いことから、効果的に利用できないかと考えるきっかけにもなりました。
マーケティング力の向上が事業成長に大きく寄与した
ーーこの1年間を振り返り、Marcheはどのような点でe-dashに貢献できましたか?
甲斐:マーケティングの土台づくりに尽きます。Marcheと行ったことが全てe-dashにとってプラスに働いていた1年間でした。透明性のあるフィードバック、実務になれている人材の併走のおかげで、定量的に数字を可視化できるようになりました。マーケチームとして、この1年間で最低限行えるようになりたかった点はできるようになったと思います。
広告を1件獲得するのにかかるコストなど、数字の感覚も何も私たちの中に存在しない状態で最初は動いていましたが、マーケティングのプロに併走してもらうことで、最近では数字の感覚がつかめるようになってきました。自分たちだけではとても難しかったと思います。
山﨑:マーケティング力の向上が、事業成長に大きく寄与したのには違いありません。セールス組織において、顧客との最初の接点がマーケティングです。組織が上手に回っているという意味でも、重要な役割を果たしたのではないかと思います。スペシャリストとしての専門性の高さ、立ち上げまでのスピードは早く、依頼時に期待していた点は十分に満たしてくれました。
ーーMarcheのような少数で活動するプロ集団に依頼するメリットは何でしょう。
山﨑:一気にマーケティング体制を立ち上げられる点です。スペシャリストを雇用する採用コストはもちろんのこと、もし新しく雇用した人だけでチームを立ち上げようとしたら、何ヶ月もの時間がかかります。e-dashの場合、その時間をいかにセーブするかが重要な局面でした。専門知識を発揮しながら、並行してチーム環境がつくれる点にも価値があると思います。
甲斐:インスタントにかつ迅速に施策を実行できる機動力です。テンポよくやりたいと思ったときに動けるのは少数で活動するチームならではの強さだと感じました。
ーーMarcheのインハウス化の知見を活かし、マーケティングチームの強化や部署立ち上げの予定を検討していますか?
甲斐:今後少しずつチームメンバーは増える予定ですが、完全なインハウス化はもう少し先になると思います。あえて完全にインハウス化しないという選択肢もあるかもしれません。引き続きMarcheに伴走してもらうなかで、一般的なリアルなベンチマーク対比での客観的な評価も受けることができるので、今のフェーズのe-dashにおいて大事だと思います。
1から10への飛躍に向け、マーケティング領域を超えた戦略提言に期待
ーー今後のe-dashの経営目標を教えてください。
山﨑:設立2年目の企業ではありますが、脱炭素への社会的な注目が高まるタイミングで市場へ参入できたことで、一定のプレゼンスを発揮できていると思います。単に二酸化炭素の排出量可視化のSaaS提供会社ではなく、企業の脱炭素を一緒に進めるパートナーとして各社から認知され、社会へ貢献できるようになっていきたいです。
ーー目標達成に向け、Marcheに対し、どのような点を期待しますか?
山﨑:脱炭素に対する社会関心の高さから、二酸化炭素の排出量可視化削減サービスは今後より認知を得ていくと考えています。e-dashがその先頭を切っていけるよう、施策はもちろん、僕たちが持つ資産や発信できるタネを活かしたマーケティング戦略の上流観点からの提言に期待しています。
その上でe-dashでは、マーケティングに限らず、まだまだ取り組めることはたくさんあると思っています。二酸化炭素可視化のSaaSサービスの改善をはじめ、削減に向けた施策やそれ以外のサービス提供についてもどんどん拡充している最中だからです。経営として0から1への土台はこの1年で構築できましたので、Marcheには、1から10への飛躍にも貢献してほしいと思っています。
ーーマーケティング面での目標や実施予定の施策について教えてください。
甲斐:今期のe-dashのマーケティングは、実施中の施策をより丁寧に取り組むフェーズに入りました。この1年で一般的な手法も含め、Marcheとともにまずやらなければいけないことは軌道に乗ることができたからです。だからこそ山﨑の話にもありましたように、上流戦略を見直し、PDCAの改善に結びつけていけたらと思います。先の1年間で培ってきた顧客育成も、今期注力したい内容の1つです。
ーーこれからの上流設計や施策を進めるなかで、Marcheに対し、どのような点を期待しますか?
甲斐:次の1年間でe-dashが飛躍するためにも、上流工程の戦略見直し・検討からアドバイスをもらいたいです。実務面では、各施策のPDCAサイクルを回していくなかで、Check(評価)とAction(対策)を特にMarcheには補ってほしいです。目標を定め、その進捗をモニタリングするなかで、「データ上の何を見ないといけないのか」「どうやって整理をしておけば見えるようになるのか?」など、データの見方・扱い方という点でも助言をいただけると助かります。
ーー山﨑さん、甲斐さんありがとうございました。