SEOシミュレーションの精度を上げる方法|各変数の出し方を実務目線で解説
SEOシミュレーションの正しい公式
SEOの投資対効果を社内で説明するとき、あるいはクライアントに施策を提案するとき、「このキーワードで上位表示できれば月間○○PV、○○件のCVが見込めます」というシミュレーションは欠かせません。しかし、そのシミュレーションの精度が低いと、施策開始後に「話が違う」となり、SEO施策そのものへの信頼が失われてしまいます。
せっかくSEOに挑戦するなら、最初の見積もりで損をしてほしくない――。この記事では、そんな思いから、SEOシミュレーションの精度を上げるために各変数をどうやって出すかを実務目線で解説していきます。「なんとなくの数字」ではなく、根拠のある数字でシミュレーションを組む方法を、具体的な手順・計算例とともにご紹介します。
よくある「検索ボリューム × CTR」の問題点
多くのSEO関連の記事やコンサルティング会社の提案資料で使われている公式があります。
月間検索ボリューム × 順位別CTR × CVR = 予想CV数
例えば「SEO 対策」の月間検索ボリュームが10,000で、1位のCTRが30%、CVRが1%なら、月間30CVが見込める――という計算です。一見シンプルでわかりやすいのですが、この公式には大きな問題が3つあります。
- 検索ボリュームの数値自体が不正確: Ahrefsが自社で行った調査によると、Googleキーワードプランナー(GKP)の検索ボリュームは54%が過大評価されています。おおよそ正確と言えるのはわずか45%にすぎません。GKPは類似キーワードをグルーピングして合算するため、個別キーワードの実際の検索回数よりも数字が膨らむ傾向があります。さらに、広告を出稿していない場合はレンジ表示(例: 1,000〜10,000)になり、精度が著しく低くなります。
- 順位別CTRの一律適用が非現実的: 「1位なら28%」「3位なら10%」といった平均CTRは、あらゆるクエリの平均値にすぎません。実際には、SERPに広告枠が4つ表示されるクエリと、広告がゼロのクエリではオーガニック1位のCTRがまったく異なります。AIオーバービューが表示されるクエリでは、オーガニック結果のCTRはさらに下がります。
- 「1位を取れる」という前提が甘い: この公式は暗黙的に「対象キーワードで上位表示できる」という前提に立っています。しかし、実際に100個のキーワードを狙って記事を書いても、すべてが1ページ目に入るわけではありません。この「表示率」を無視すると、シミュレーションは大幅に上振れしてしまいます。
実務でこの簡易公式を使って提案した結果、見込みの1/5〜1/10しか成果が出なかった――そんな経験をお持ちのマーケターの方も少なくないのではないでしょうか。問題は公式そのものではなく、各変数の出し方が粗すぎる点にあります。
精緻なシミュレーションの公式
簡易公式の問題を解決するために、私たちは以下の公式を使っています。
月間検索数 × 1ページ目表示率 × 3位内表示率 × 3位内クリック率 × CVR = CV
× 順位別CTR
× CVR
= 予想CV数
× 1ページ目表示率
× 3位内表示率
× 3位内クリック率
× CVR
= CV
各変数の意味を整理します。
| 変数 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 月間検索数 | 対象キーワード群全体の実際の月間検索回数 | 10,000回/月 |
| 1ページ目表示率 | 対象キーワードのうち、検索結果1ページ目(10位以内)に自社ページが表示される割合 | 30% |
| 3位内表示率 | 1ページ目に表示されたキーワードのうち、3位以内に入る割合 | 25% |
| 3位内クリック率 | 3位以内に表示されたときに実際にクリックされる率 | 20% |
| CVR | クリック(サイト訪問)からコンバージョンに至る率 | 1% |
上記の例で計算すると、10,000 × 30% × 25% × 20% × 1% = 月間1.5CV となります。
簡易公式で「月間検索数10,000 × 1位CTR30% × CVR1% = 30CV」と出していた場合と比べると、20倍もの差があります。どちらが現実に近いかは、実務経験をお持ちの方なら感覚的におわかりいただけるのではないでしょうか。
この公式の最大のメリットは、各変数を個別に精査できる点にあります。シミュレーション結果が期待と合わないとき、「どの変数が甘いのか」を特定しやすくなります。月間検索数の見積もりが過大なのか、1ページ目表示率の想定が楽観的すぎるのか、CVRが高すぎるのか。変数を分解しているからこそ、原因の切り分けが可能になります。
さらに、施策を開始した後に各変数を実績値で置き換えれば、シミュレーションの精度を検証し、翌期の計画に反映できます。SEOは仮説と検証の繰り返しです。この公式はそのPDCAを回すための土台になります。
「月間検索数」はどの数字を使うとよいか
シミュレーションの出発点であり、最も精度のバラつきが大きいのが「月間検索数」です。この数字が2倍ズレれば、最終的なCV見込みも2倍ズレてしまいます。ここでは精度の高い順に3つの方法をご紹介します。
方法1: 広告のインプレッション数 ÷ インプレッションシェアから逆算する(最も正確)
リスティング広告を出稿されているなら、この方法が最も正確です。考え方はシンプルで、「実際に広告が表示された回数」を「表示される機会のうち何%で表示されたか(インプレッションシェア)」で割ることで、検索市場全体のボリュームを逆算します。
計算式: 広告インプレッション数 ÷ インプレッションシェア = 推定月間検索数
具体的な手順は以下の通りです。
- ステップ1: Google広告の管理画面にログインし、対象キャンペーンを開きます
- ステップ2: 「キーワード」タブ(検索キーワード)を選択します
- ステップ3: 表示項目の設定で「競合指標」カテゴリから「検索インプレッションシェア」を追加します。この列が表示されていないことが多いので、「表示項目の変更」から明示的に追加してください
- ステップ4: 期間を直近1ヶ月に設定します。季節変動を考慮したい場合は、直近3ヶ月や12ヶ月の平均を取るのがおすすめです
- ステップ5: CV発生キーワードに絞り込みます。「コンバージョン」列で0より大きいキーワードをフィルタリングしてください
- ステップ6: 各キーワードのインプレッション数とインプレッションシェアから逆算します
具体的な計算例:
あるBtoB SaaS企業が「勤怠管理 システム」関連のキーワード群でリスティング広告を運用しているとします。CV(資料請求)が発生したキーワード群のデータが以下だったとしましょう。
| キーワード | 広告imp | impシェア | 推定検索数 |
|---|---|---|---|
| 勤怠管理 システム | 3,200 | 80% | 4,000 |
| 勤怠管理 クラウド | 1,600 | 75% | 2,133 |
| 勤怠管理 比較 | 1,800 | 85% | 2,118 |
| 勤怠管理 おすすめ | 1,400 | 70% | 2,000 |
| 合計 | 8,000 | — | 10,251 |
この場合、対象キーワード群の月間検索数は約10,000回と推定できます。
ここで言う「めいっぱい広告を回す」とは、入札単価を十分に引き上げ、予算による制限がかからない状態にすることを指します。インプレッションシェアが50%を下回っている場合は、予算不足や入札の低さで表示機会を逃している可能性が高く、逆算の精度も下がります。理想的にはインプレッションシェア70%以上の状態でデータを取ることをおすすめします。
この方法が正確な理由: Googleが実際にカウントした広告の表示回数がベースになっているため、ツールが推定した数値と異なり、実測値に近いデータが得られます。キーワードプランナーのようなグルーピングや丸め処理が入らない、生のデータである点が大きなポイントです。
実務上の注意点: CV発生キーワードに絞ることが大切です。全キーワードで集計すると、CVにつながらない情報検索系のクエリまで含まれ、SEOのシミュレーションに不要なノイズが増えてしまいます。SEOで狙うキーワードと、広告でCVが出ているキーワードを突き合わせて対象を絞り込んでみてください。
制約: 広告を出稿していないと使えません。ただし、SEOのシミュレーション精度を上げるためだけに、1〜2ヶ月間だけ広告を配信してデータを取るという方法もあります。月額10〜20万円程度の予算でも、主要キーワードのデータは十分に取れるケースが多いので、ぜひ検討してみてください。
方法2: Search Consoleのインプレッション数を使う
ある程度SEO施策を進めていて、検索結果にページが表示されている状態なら、Google Search Console(GSC)のインプレッション数が有力なデータソースになります。
Search Consoleの「インプレッション」とは、ユーザーが検索したときに検索結果に自社ページが表示された回数のことです。これは推定値ではなく、Googleが実際に計測した表示回数なので、検索需要の実測値に近い信頼できるデータです。
具体的な手順:
- ステップ1: Google Search Consoleにアクセスし、「検索パフォーマンス」を開きます
- ステップ2: 「新規」フィルタをクリックし、「ページ」を選択します
- ステップ3: 対象ディレクトリのURLを入力します。例えば、コラム記事が格納されている「/column/」や「/blog/」など、CVが発生したことのあるディレクトリで絞り込みます。「次を含むURL」を選択し、対象のパスを入力してください
- ステップ4: 期間を設定します。季節変動を平均化するなら直近12ヶ月、直近のトレンドを見るなら直近3ヶ月を選びましょう。月間平均を出すために、選んだ期間の合計インプレッション数を月数で割ります
- ステップ5: 「クエリ」タブに切り替え、表示されているクエリ一覧とインプレッション数を確認します。エクスポートしてスプレッドシートで分析するのがおすすめです
具体的な計算例:
あるメディアサイトの /column/ ディレクトリで、直近3ヶ月のデータを確認したところ、合計インプレッションが150,000回でした。月間平均は50,000回です。ここからCVにつながりうるクエリ(商品やサービスに関連するキーワード)だけを抽出すると、月間インプレッション約12,000回でした。この12,000がシミュレーションに使う月間検索数の候補となります。
注意点:「サイトのインプレッション」と「ページのインプレッション」の違い
Search Consoleのインプレッションには2つのカウント方法があります。デフォルトは「サイトのインプレッション」で、1回の検索で自社サイトの複数ページが表示されても1インプレッションとカウントされます。一方、「ページのインプレッション」は各ページごとにカウントされるため、数値が大きくなります。シミュレーションでは「サイトのインプレッション」(デフォルト表示)を使うのが適切です。
この方法の制約: 自社サイトが検索結果に表示されていないクエリのインプレッションは当然ゼロになるため、市場全体の検索需要は把握できません。あくまで「自社が拾えている範囲」の数字である点にご注意ください。
対処法: この制約を補うために、AhrefsやSemrushで競合サイトが獲得しているキーワードを抽出し、自社のSearch Consoleデータと突き合わせてみてください。競合にはあって自社にはないキーワードが見つかれば、そのキーワード群の検索需要を上乗せして推定できます。例えば、自社のSCインプレッションが月12,000回で、競合分析から自社が取りこぼしているキーワード群の検索需要が月3,000回と推定されるなら、合計15,000回を月間検索数として使います。
方法3: Ahrefsの検索ボリュームを使う(手軽だが3〜10倍ズレることがあります)
広告データもSearch Consoleの蓄積もない場合、AhrefsやSemrushなどのSEOツールの検索ボリュームデータを使うことになります。手軽ではありますが、精度には大きな課題があります。
Ahrefsでの具体的な手順:
- ステップ1: Ahrefsの「Site Explorer」に競合サイトのURLを入力します
- ステップ2: 「Organic Keywords」をクリックし、競合が獲得しているオーガニックキーワードの一覧を表示します
- ステップ3: フィルタ機能で、自社のサービスに関連するキーワードに絞り込みます。キーワードに含む語句を指定したり、検索ボリュームの下限を設定して、ノイズを減らしていきます
- ステップ4: 同じ作業を競合2〜3社で行い、CVにつながりそうなキーワードをリストアップします
- ステップ5: 「Keywords Explorer」にキーワードリストを入力し、検索ボリュームの合計を確認します
なぜ3〜10倍ズレるのか:
Ahrefsの検索ボリュームデータは、Googleキーワードプランナー(GKP)のデータを参考値として使っています。そしてGKP自体に以下の問題があります。
- 類似キーワードのグルーピング: GKPは「勤怠管理 システム」「勤怠管理システム」「勤怠 管理 システム」のような表記揺れを1つにまとめて合算します。そのため、個別キーワードの実際の検索回数よりも大きな数字が表示されます
- 近似バリエーションの合算: 「おすすめ」と「人気」のような類義語も同一グループとして扱われるケースがあります
- 季節変動の平均化: 繁忙期と閑散期の差が大きいキーワードでも、年間平均値で表示されるため、特定の月の実態とはズレが生じます
Ahrefs自身の調査でも、自社の検索ボリュームデータのうち37%は過大評価であることを認めています。
具体例: 私たちの経験では、Ahrefsで月間検索ボリュームが「5,000」と表示されていたキーワード群について、実際にSearch Consoleで確認すると月間インプレッションは500〜1,500程度だったケースが複数あります。特にニッチなBtoBキーワードほどこの乖離が大きい傾向にあります。
3つの方法の使い分けと優先順位
結論として、以下の優先順位で検索数を見積もるのがおすすめです。
中〜高
可能であれば、複数の方法を組み合わせてクロスチェックするのがベストです。例えば、方法1で算出した検索数が10,000回、方法2で確認できる範囲が8,000回、方法3(Ahrefs)の数値を1/3にしたものが9,000回、であれば、8,000〜10,000回のレンジで見積もるのが妥当と判断できます。
「1ページ目表示率」をどう見積もるか
月間検索数が正しく把握できても、すべてのキーワードで自社が1ページ目に入れるわけではありません。「1ページ目表示率」は、対象キーワード群のうち、自社ページが検索結果の1ページ目(1〜10位)に表示される割合を指します。
現状の順位分布から算出する方法
すでにSEO施策を進めているなら、現状の順位データから表示率を計算できます。
手順:
- ステップ1: Search Consoleの「検索パフォーマンス」で、対象ディレクトリのクエリデータをエクスポートします
- ステップ2: シミュレーション対象のキーワードリストと突き合わせ、各キーワードの平均掲載順位を確認します
- ステップ3: 10位以内に入っているキーワード数を数え、対象キーワード総数で割ります
具体例: 対象キーワード200個のうち、Search Consoleで確認して10位以内に入っているキーワードが60個だった場合、現状の1ページ目表示率は60 ÷ 200 = 30%となります。
ここで大切なのは、「現状値」と「目標値」を分けて考えることです。現状30%でも、半年後に40%、1年後に50%を目標とするなら、シミュレーションには目標値を使います。ただし、改善幅の想定が楽観的すぎないか、次のベンチマーク分析で検証していきましょう。
競合サイトの表示率をベンチマークにする
自社の目標値が現実的かどうかを判断するには、競合の到達水準を参考にするのが効果的です。
Ahrefsの「Site Explorer」で競合サイトのオーガニックキーワードを抽出し、対象キーワード群における順位分布を確認します。例えば、業界で最も強い競合サイトが対象200キーワード中120個で10位以内に入っている(表示率60%)なら、自社の上限目標を60%に設定するのが現実的です。
ただし、競合のドメインパワー(Ahrefsの場合はDR: Domain Rating)と自社のドメインパワーに大きな差がある場合、同じ水準に到達するのは短期的には難しくなります。自社DR30、競合DR60なら、競合の表示率の50〜70%程度を目標の上限と考えるのが堅実です。
コンテンツ投下量・ドメインパワーから現実的なラインを引く
新規サイトや、SEOをこれから本格的に始めるサイトの場合、過去データがないため、一般的な目安をベースに見積もります。
- 新規サイト(DR10以下): 10〜20%からスタートするのが現実的です。ニッチなロングテールキーワードから入り、徐々に拡大していく形になります
- 既存サイト(DR20〜40): 現状の表示率をベースに、半年で5〜10ポイント、1年で10〜15ポイントの改善が一般的な目安です。ただし、記事の本数や品質、内部リンク設計などの施策量に大きく依存します
- 強いサイト(DR50以上): すでに40〜60%の表示率があるケースが多く、ここからの改善は既存コンテンツのリライトや構造改善がメインになります
よくある失敗は、「半年で表示率を50%にする」のような目標を、現状値や競合分析なしに設定してしまうことです。根拠のない数字はシミュレーション全体の信頼性を損なってしまいますので、ぜひデータに基づいた設定を心がけてみてください。
「3位内表示率」をどう見積もるか
1ページ目に入るだけではクリックは十分に得られません。検索結果の4位以下はクリック率が急激に下がるため、実質的にトラフィックを獲得するには3位以内に入る必要があります。「3位内表示率」は、1ページ目に表示されたキーワードのうち、さらに3位以内に食い込める割合を示します。
1ページ目に入ったキーワードのうち何割が3位以内に入るか
Search Consoleのデータを使って、現状の3位内率を計算する方法は以下の通りです。
- ステップ1: Search Consoleから対象ディレクトリのクエリデータをエクスポートします
- ステップ2: 掲載順位が10位以内のキーワードを抽出します(これが1ページ目表示キーワードです)
- ステップ3: そのうち掲載順位が3位以内のキーワード数を数えます
- ステップ4: 3位以内キーワード数 ÷ 10位以内キーワード数 = 3位内表示率
具体的な計算例:
10位以内のキーワードが60個、そのうち3位以内が15個の場合、3位内表示率は15 ÷ 60 = 25%です。この25%が現状の実力値であり、シミュレーションの出発点になります。
ドメインの強さ・記事の質による現実的な想定
3位内表示率はドメインの強さとコンテンツの質に大きく左右されます。一般的な目安は以下の通りです。
| サイトの状態 | 3位内表示率の目安 | 背景 |
|---|---|---|
| 強いドメイン(DR50以上) | 30〜50% | ドメインの信頼性が高く、新規記事でも比較的上位に入りやすい |
| 中程度のドメイン(DR20〜50) | 15〜25% | コンテンツの質と内部施策次第で上位に食い込めるキーワードが出てくる |
| 新規・弱いドメイン(DR20未満) | 5〜15% | ロングテールキーワードなど競合が弱い領域から攻める形になる |
ただし、これはあくまで平均的な傾向であり、記事単位で見れば例外は多くあります。ドメインが弱くても、特定のテーマで圧倒的に詳しい記事を書けば3位以内に食い込めることはありますし、逆に、強いドメインでも内容の薄い記事は上位に入れません。
実務的には、3位内表示率を改善するには「既存記事のリライト」が最も効果的です。4〜10位に滞留しているキーワードを特定し、該当記事のコンテンツを改善することで、3位内表示率を引き上げることができます。シミュレーション時にリライト施策を織り込む場合は、対象記事の数と改善見込みを明示し、現状値から何ポイント上乗せするかを根拠とともに示すと、説得力が増します。
「3位内クリック率」をどう見積もるか
3位以内に表示されても、必ずクリックされるわけではありません。検索結果画面(SERP)の構成や、タイトル・ディスクリプションの魅力度によってクリック率は変動します。
Search Consoleの実データから自社の実績CTRを取る
最も信頼できるのは、自社サイトの実績データです。Search Consoleで以下の手順で確認できます。
- ステップ1: Search Consoleの「検索パフォーマンス」で、「平均CTR」と「平均掲載順位」にチェックを入れて表示します
- ステップ2: 「クエリ」タブで、掲載順位のフィルタを設定します。「掲載順位」が「3より小さい」で絞り込みます
- ステップ3: 絞り込まれたクエリの平均CTRを確認します。個別クエリのCTRも合わせて確認し、極端に低い・高いものがないかチェックしてみてください
一般的に公開されている順位別CTRの統計値は以下の通りです。
| 掲載順位 | 平均CTR |
|---|---|
| 1位 | 28〜39% |
| 2位 | 約15% |
| 3位 | 約10% |
| 5位 | 約10% |
| 10位 | 約2% |
3位以内の平均CTRは、単純平均すると18〜21%程度になりますが、実際には1位が圧倒的にクリックを集めるため、3位内のCTRは掲載順位の分布に依存します。自社データで確認した実績値があるなら、統計値よりもそちらを優先して使うことをおすすめします。
SERP特徴による変動
同じ3位でも、検索結果画面の構成によってCTRは大きく変わります。シミュレーションの精度を上げるなら、対象キーワードのSERP特徴を事前に確認しておくと安心です。
- リスティング広告枠が多いクエリ: 検索結果の上部に広告が3〜4つ表示されると、オーガニック結果は画面のかなり下に押し下げられます。特にモバイルではファーストビューに入らないこともあり、CTRが10〜40%低下します
- 強調スニペット(Featured Snippet)が表示されるクエリ: 検索結果の最上部に回答が表示されるため、ユーザーがクリックせずに情報を得てしまいます。CTRが下がる一方、自社が強調スニペットを獲得できれば逆にCTRが上がります
- AIオーバービューが表示されるクエリ: 2024年以降、Googleが検索結果の上部にAIによる要約を表示するケースが増えています。これによりオーガニック結果のCTRは下がる傾向にあります。特に情報検索系のクエリで影響が大きくなっています
- ブランド名を含むクエリ: 「○○(自社サービス名)料金」のように、自社ブランド名を含む検索クエリでは、ユーザーが自社サイトを探して検索しているため、CTRが50%を超えることもあります
実務的には、対象キーワードの中から代表的なものを10〜20個ピックアップし、実際にGoogleで検索してSERPの状態を目視で確認してみてください。広告が多い、AIオーバービューが出ている、といった状況なら、CTRの想定を保守的に下げる判断ができます。
「CVR」をどう見積もるか
最後の変数がCVR(コンバージョン率)です。サイトに流入したユーザーが、問い合わせや資料請求、購入などのコンバージョンに至る割合を指します。CVRの見積もりを誤ると、それまでの変数をどれだけ正確に出しても、最終的なCV数が大きくズレてしまいます。
既存のオーガニック流入のCVRを使う
すでにオーガニック流入がある程度ある場合、GA4(Google Analytics 4)で実績CVRを確認するのが最も確実です。
GA4での確認手順:
- ステップ1: GA4にログインし、「レポート」>「集客」>「トラフィック獲得」を開きます
- ステップ2: 「セッションのデフォルトチャネルグループ」で「Organic Search」のデータを確認します
- ステップ3: 右上の「コンバージョン」イベントのフィルタで、対象のCVイベント(例: 資料請求、問い合わせなど)を選択します
- ステップ4: オーガニック検索経由のセッション数とコンバージョン数からCVRを計算します
ここで大切なのは、ランディングページ別・カテゴリ別にCVRを分けて見ることです。サイト全体の平均CVRを使うと、コンバージョンに近いページと遠いページが混在して平均化されてしまいます。
例えば、「/service/」ディレクトリ配下のページのCVRが3%、「/column/」ディレクトリ配下のCVRが0.3%だった場合、サイト全体の平均は0.8%かもしれません。しかし、SEO施策でコラム記事を増やす計画なら0.3%をベースに考える方が現実的です。
キーワードの検索意図別にCVRを分ける
CVRを正しく見積もるうえで最も大切なのが、キーワードの検索意図による分類です。すべてのキーワードに同じCVRを当てはめてしまうと、精度が大きく下がってしまいます。
| 検索意図 | キーワード例 | CVRの目安 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 情報収集系(Know) | 「勤怠管理とは」「勤怠管理 方法」 | 0.1〜0.5% | まだ課題を認識した段階。すぐにサービスを検討する段階ではない |
| 比較検討系(Compare) | 「勤怠管理 システム 比較」「勤怠管理 おすすめ」 | 1〜3% | 導入を前提に情報を集めている。比較コンテンツからの遷移率が高い |
| 購入意向系(Do/Buy) | 「勤怠管理 システム 料金」「○○(商品名) 導入」 | 3〜10% | 具体的なアクションを起こそうとしている段階。CVに直結しやすい |
よくある失敗: SEOで大量のコラム記事を公開する計画のシミュレーションで、サイト全体の平均CVR(例: 1.5%)を当てはめてしまうケースです。コラム記事の流入は情報収集系が中心なので、CVRは0.1〜0.5%が現実的です。平均CVRの1.5%を使うと、実際のCV数の3〜15倍も過大に見積もることになってしまいます。
シミュレーションの精度を上げるには、キーワードリストを検索意図別に分類し、それぞれに適切なCVRを当てはめることが大切です。手間はかかりますが、この分類をするだけでシミュレーションの精度は格段に上がりますので、ぜひ取り組んでみてください。
シミュレーションを組み上げる手順まとめ
ここまでの各変数の出し方を踏まえて、実際にシミュレーションを組み上げる手順を整理していきます。
ステップ1: キーワードリストの作成と分類
対象とするキーワード群をリストアップし、検索意図別に分類します。広告のCVデータやSearch Consoleのクエリデータ、Ahrefsの競合分析を使って、CVにつながるキーワードを洗い出していきましょう。
ステップ2: 月間検索数の算出
方法1〜3のうち、使えるデータソースに応じて月間検索数を算出します。可能な限り複数の方法でクロスチェックすると精度が上がります。
ステップ3: 1ページ目表示率の設定
現状値をSearch Consoleから取得し、競合ベンチマークを参考に目標値を設定します。
ステップ4: 3位内表示率の設定
現状値をSearch Consoleから取得し、ドメインの強さと施策計画を考慮して目標値を設定します。
ステップ5: 3位内クリック率の設定
Search Consoleの実績CTRと、対象キーワードのSERP特徴を踏まえて設定します。
ステップ6: CVRの設定
GA4の実績データをベースに、検索意図別にCVRを設定します。
ステップ7: 3シナリオの作成
各変数を「保守」「標準」「楽観」の3パターンで組み、幅を持たせたシミュレーションを作成します。
保守・標準・楽観の3シナリオで幅を持たせる理由
SEOシミュレーションは、どんなに精緻に作っても不確実性があります。単一の数字で「月間○○CV見込み」と提示すると、それが「約束」として受け取られるリスクがあります。3シナリオで幅を持たせることで、関係者の期待値を適切にコントロールできます。
具体的には、以下のように使い分けます。
- 保守シナリオ: 「最低でもこのくらいは見込める」という下限です。予算承認の際に「最悪でもこの投資は回収できる」と示すために使います
- 標準シナリオ: 最も蓋然性が高いと考える見積もりです。KPI設定のベースにします
- 楽観シナリオ: 施策がうまくハマった場合の上限です。「ここまで伸びる可能性もある」というアップサイドを示します
BtoB SaaSの具体的なシミュレーション例
ここでは、BtoB SaaS企業が「勤怠管理」関連キーワードでSEO施策を行うケースを例に、3シナリオのシミュレーションを組んでみましょう。
前提条件:
- 対象: 勤怠管理関連のキーワード群(約200キーワード)
- 現状: SEOは初期段階。コラム記事を月8本ペースで公開予定。DR25程度
- CV定義: 資料請求
- 施策期間: 12ヶ月後の見込み
月間検索数の算出プロセス:
広告データ(方法1)で、CV発生キーワードの推定月間検索数は約10,000回でした。Search Console(方法2)では対象ディレクトリで月間6,000impが確認できましたが、まだ拾えていないキーワードが多いため、実際の市場規模はこれより大きいと考えられます。Ahrefsの検索ボリューム合計は35,000ですが、1/3〜1/5に割り引くと7,000〜11,700です。これらを総合し、月間検索数は10,000回と設定しました。
| 変数 | 保守 | 標準 | 楽観 | 設定根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 月間検索数 | 8,000 | 10,000 | 12,000 | 広告データ逆算+SCクロスチェック。保守は方法2ベース、楽観は方法1の上振れを考慮 |
| 1ページ目表示率 | 20% | 30% | 40% | 現状10%。DR25で月8本投稿を12ヶ月。競合ベンチマーク上限55%。標準30%は競合の約半分で保守的な設定 |
| 3位内表示率 | 15% | 20% | 30% | 現状の3位内率10%。DR25ならロングテール中心に15-25%が妥当。楽観30%はリライト施策の効果を織り込み |
| 3位内CTR | 15% | 18% | 22% | SC実績で1-3位の平均CTR 17%。広告枠が多いクエリが3割程度あるため保守15%。ブランド認知向上で楽観22% |
| CVR | 0.5% | 0.8% | 1.2% | GA4実績: コラム記事経由CVR 0.6%、比較記事3.2%。記事構成比(情報系7:比較系3)で加重平均。保守は情報系中心を想定 |
計算結果:
保守で月1.8件、標準で月8.6件、楽観で月38件です。この幅があることで、「最低でも月2件の資料請求は見込めます。標準的には月8〜9件、うまくいけば月30件以上の可能性もあります」という説明ができます。
各数字の設定プロセス解説:
月間検索数の保守値8,000は、Search Consoleで現在確認できているインプレッション6,000に、拾えていないキーワードの推定2,000を上乗せしたものです。標準の10,000は広告データからの逆算値です。楽観の12,000は、市場が成長傾向にあることと、広告データでカバーしきれていない周辺キーワードの需要を加味した数字です。
CVRについては特に慎重に設定しました。記事の構成比として、情報収集系の記事が7割(CVR 0.3%)、比較検討系が3割(CVR 3.2%)を想定すると、加重平均CVRは 0.3% × 0.7 + 3.2% × 0.3 = 1.17%になります。ただし、これは比較検討記事が計画通りにCVを出せた場合の数字なので、標準値は0.8%に、保守値は情報系記事中心を想定して0.5%に設定しました。
シミュレーションは定期的に更新していきましょう
シミュレーションは一度作って終わりではありません。施策開始後、四半期ごとに各変数を実績値で置き換えて精度を検証することがとても大切です。
- 3ヶ月後: 月間検索数と1ページ目表示率の実績を確認します。記事投稿ペースが計画通りか、順位がつき始めているかをチェックしましょう
- 6ヶ月後: 全変数の実績値が出そろい始めます。保守・標準・楽観のどのシナリオに近いかを判断し、必要に応じて施策内容やKPIを修正していきます
- 12ヶ月後: シミュレーションと実績の差分を分析し、次年度の計画に反映します。どの変数が想定と乖離していたかを特定し、見積もり方法を改善していきましょう
この振り返りこそが、冒頭でご紹介した公式の真価が発揮される場面です。変数を分解しているからこそ、「月間検索数の見積もりは正確だったが、1ページ目表示率が想定の半分だった。原因はコンテンツの品質が足りなかったのか、競合が想定以上に強かったのか」といった具体的な分析が可能になります。
まとめ|「当たるシミュレーション」は正しい変数選びから
SEOシミュレーションの精度を上げるポイントを改めて整理します。
- 公式を細分化する: 「検索ボリューム × CTR」ではなく、「月間検索数 × 1ページ目表示率 × 3位内表示率 × 3位内クリック率 × CVR」に分解することで、各変数を個別に検証できるようになります
- 月間検索数は実測値を優先する: 広告インプレッション ÷ インプレッションシェアが最も正確です。Search Consoleのインプレッション数が次点です。Ahrefsの検索ボリュームは1/3〜1/5に割り引いて使いましょう
- 表示率は現状値と競合ベンチマークから設定する: 根拠なく高い数字を置かないようにします。Search Consoleと競合分析で裏付けを取ることが大切です
- CTRはSERPの状態を加味する: 広告枠やAIオーバービューの影響でCTRが下がるクエリは保守的に見積もるのがおすすめです
- CVRは検索意図別に分ける: 情報収集系と購入意向系では10倍以上の差があります。サイト全体の平均CVRを一律に使わないようにしましょう
- 3シナリオで幅を持たせる: 保守・標準・楽観の3パターンを作り、関係者の期待値を適切にコントロールします
- 定期的に実績値で更新する: シミュレーションは仮説です。四半期ごとに実績と照合し、精度を高めていきましょう
「当たるシミュレーション」を作るために必要なのは、高度な統計スキルではありません。正しいデータソースから、根拠のある数字を丁寧に拾い、現実的な前提条件でシミュレーションを組むことです。各変数の出し方に手間をかけた分だけ、シミュレーションの精度は確実に上がります。
まずは自社で利用可能なデータを棚卸しして、どの方法で月間検索数を出せるか確認するところから始めてみてください。一歩ずつ進めていけば、きっと「施策が終わってから後悔する」ということはなくなるはずです。私たちも、皆さんのSEO施策の成功を心から応援しています。