2020/09/28

マーケティングとは何か?

このコラムにアクセスいただきありがとうございます。Marcheの水島です。
このコラムは、初めてマーケティングの責任者を任されたあなたのために書かせていただきました。

本題に移る前に、僕が初めてマーケティングを任されてがむしゃらになっていた時期のお話をできればと思います。
ここから物語調になりますが、お付き合いくださいませ。

マーケティングとは何か?

仮説1 : PVを増やすことがマーケティングである

「明日から、このプロダクトのマーケティングを完全に任せたい。」
2.5億円の資金調達を終えた代表は、当時大学4年生だった僕にそう言い切った。
大学時代からフルタイムでバリバリと働き、メディア会社のSEO担当出身だった僕は、
LPへのアクセスの数字を増やすことがマーケティングなのであろう。と躍起になってメディアを立ち上げた。

1ヶ月で100本以上の記事をほぼ自作で作り、月間のPVも50,000を超え、1日3人程度のユーザーが流入し始めた。
やはり、読みは間違っていなかった!と流入のログを見ると、自社のターゲット層とは全く異なる層が流入していた。
結局このメディアは、*DeNAショックとともに閉鎖し仮説1は実証することができなかった。

*DeNAショック… 医療に精通していないライターが命に関わる病気について言及し、Googleが大きなアルゴリズム変動を行なった。

仮説2 : 会員登録を増やすのがマーケティングである

この後、当時流入の大元であったfacebookの広告を任せてもらうことになる。
当時の日時予算は10万円、1ヶ月で300万円もの予算になった。こんな金額は任せてもらったことがなく、
とても緊張したのを覚えている。1獲得あたり1,500円だった*CPAは、日々の細かい改善で800円まで落ちた。
このまま獲得をしていけば目標を達成する…!そう思っていた僕は次の一手が必要だということを一切考えていなかった。

2ヶ月が経ち、広告の管理画面を開くと獲得単価は2,500円を超えていた。
*フリークエンシーの数字を見ると8.6の数字を叩き出していたのを今でも覚えている。
広告で獲得できる層を取りきってしまった。そして自分が頑張って改善していた数字は、
広告でユーザーを取りきるまでの期間を短くしていただけなのかもしれない。と思った。

*CPA … Cost Per Acquisition (顧客獲得単価)
*フリークエンシー … 1人あたりの同じ広告を見た回数

僕はマーケターではなかった

2つの仮説の検証に失敗した僕は、シリコンバレーでお世話になったAmazon Japan創業者の岡村さんの元を訪ねた。
岡村さんのお家は、床が抜けるんじゃないかと思うほどの本棚に囲まれていた。

「マーケティングが何なのか分からなくなってしまいました。」開口一番そう質問した私に、岡村さんは
「君の会社のサービスのターゲットは何人いるんだ?」と質問した。
わからないと答えると、岡村さんは「なら君はマーケター失格だ」と言った。

マーケターとはなんだったのか

ここまでで物語は終了です。このエピソードをお話しすると、
「私の今の状態ですね…」と反応をいただくことが多く、今回の執筆に至りました。

広告運用担当者・コンテンツディレクター・広報部
それぞれ大変な仕事ではありますが、これらの仕事をしたからといってマーケターになれるわけではない。
ということを思い知らされる時期があるのかもしれません。

今回は、『次に必要なことを見つけるためのフレームワーク』をお話ししますが、
今回ご紹介したエピソードから私も試行錯誤を重ね、
施策運用担当者とマーケティング責任者には下記の違いがあるという結論に至りました。

・マーケティング責任者は、マーケットにどれだけの潜在顧客がいるのかを答えられないといけない。
・マーケティング責任者は、顧客が何故、自分たちのサービスを選ぶのかを誰よりも答えられないといけない。
・マーケティング責任者は、P/Lを元にプライシングまで考えなければいけない。
・マーケティング責任者は、プロダクトの改善まで考えなければいけない。
・マーケティング責任者は、CACを自分の人件費すら込みで考えなければいけない。

プロダクトマーケットフィット(PMF)とは何か?

次に、プロダクトマーケットフィットという言葉について考えていきます。
スタートアップ・ベンチャー企業にいる方は少しずつ一般的になってきた言葉ですが、
定義がないまま使われている気がしています。

「PMFしたら、広告費踏んでいきましょう〜」
「うちのサービスはPMFまだまだ遠いっすね。」
といった具合ですね。

今回は3つの観点からプロダクトマーケットフィットについて考えていきます。

プロブレムソリューションフィットができて、プロダクトマーケットフィットができていないケース

スタートアップのバイブル、「逆説思考のスタートアップ思考」では、PMFの前に、プロブレムソリューションフィットがある
と書かれています。ユーザーが抱えている問題に対しての適切なソリューションを定義すること。と言われていますが、
これができているからといってビジネスでうまくいくとは限りません。

マリー・アントワネットが言ったと言われている(厳密には諸説あるようですが)
「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」という言葉もプロブレムソリューションフィットであるのだと思います。
それでも、プロダクトマーケットフィットには程遠いアイデアであると言えるでしょう。

傘を持ち歩くのがめんどくさいから、空中で自動で追尾するドローン傘を開発したとして、
・30分で充電が切れて墜落してしまう
・1つ10万円する
・音が大きくて恥ずかしい
・そもそも法規制上、飛べない
となった時に、傘市場をリプレースできるのか?と言われると難しいでしょう。

こう言った、プロブレムソリューションフィットをプロダクトマーケットフィットに変えていく。
そして適切な市場を図っていく段階のことをPoC(Proof of Concept)と呼ばれています。

思ったより市場を大きく見誤ってしまうと

近年のスタートアップに多いケースがこちらだと思っています。
「AIプロダクト」というと一見世の中をディストラプトして、大きい市場を取ってくれるのではないか?
というイメージによって高い企業価値がつき、実際に製品ができてみれば、AIを使っていないプロダクトの方が便利で
市場には受け入れてもらえず、投資家に説明した売上を達成できていない会社が後を絶ちません。

自分の高校の卒業アルバムを、違う高校の生徒に売りつけても誰も買わない。
という話をたまにするのですが、「こんな当たり前のことを」と思いつつ、意外と自分はこれに準ずることをしたいたのかも?
と反省するきっかけにもなります。高校の卒業アルバムは、別の高校にも、高校の後輩にも売れません。
プロダクトについても、売上規模が違う。社員規模が違う。会社の雰囲気が違う。
こう言った少しの違いで、売れるものが突然売れなくなります。

プロダクトマーケットフィットを目指す前に、自分がターゲットにしている会社たちは、
本当に自社の商品を欲しいと思ってくれているのか?を考え直すことも大切です。

近年では、TAM,SAM,SOMという考え方も一般的になってきました。
潜在的にある市場のニーズ市場規模・自社のターゲットに据えたニーズの市場規模・現実的に獲得可能な市場規模
この考え方をまず持つことがマーケティングで大切だと言えます。

市場が策定できたら、キャズムの考え方を使う。

ジェフェリー・ムーア著書の「キャズム」は、エヴェリット・ロジャースの「普及学」をテクノロジーの普及になぞらえて書かれた名著で、プロダクトの普及には法則性があると説明しています。購買者の行動は
・イノベーター … 新規性のあるプロダクトを好み、実用性よりも革新性を重視する。
・アーリーアダプター … 新規性のあるプロダクトをブランドのように考え、実用性を元に購入する。
・アーリーマジョリティ … 実用性を求め、口コミを元に購入する。
・レートマジョリティ … 市場においていかれるのを恐れ、みんなが持っているからという理由で購入する。
・ラガード … 新規性のあるプロダクトを嫌い・最後まで取り入れない人。
の5つに分かれ、この3つは正規分布すると考えられています。

そのため、アーリーアダプターが口コミでアーリーマジョリティに広げていくことが市場を獲得していくために大切なファクターだと考えられ、
アーリーアダプターを獲得していたフェーズから、アーリーマジョリティのフェーズに移ることを「キャズムを超える」と表現しています。

マーケティングを実行していくには何を考えればいいのか?

次に、このマーケットを獲得していくために、どんな行動をしていくべきか?という点を考えます。
特に注目するべき点は、先ほどのキャズムの中で、正規分布の頂点であるアーリーマジョリティへの認知の拡大には
口コミが欠かせない。という点です。訴求にどれだけのインパクトがあっても実態が伴っていなければ、
本当の意味でのマーケティング活動の成功には至れない。ということにマーケターは苦しむことになります。

「こんな訴求をしたらユーザーを集められるのに、集まったユーザーにがっかりされてしまうだろう。」
このような悩みを抱えるマーケターは少なくないのだと思います。
(「受注はできそうだけど、最悪クレームになるだろうな・・・」という営業の気持ちに近いかもしれません。)

特にプロダクトマーケティングを行うマーケターは、訴求だけでなく自社のサービスそのものをコントロールする必要があります。
その考え方をまとめられるのが以下のフレームワークになります。

マーケティング的思考のAIDMA

Attention(認知)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)
の頭文字を取ったAIDMAはマーケターなら誰しもが知っているフレームワークと言っても過言ではないです。
一方で、AIDMAだけでは口コミまでコントロールすることができず、プロダクトマーケティングには不十分だと言えます。
そのため、下記のフレームワークと組み合わせて使います。

プロダクト視点に立ったAARRR(アー)

Acquisition(登録)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Refferal(口コミ)、Revenue(収益化)
の頭文字を取ったAARRRはスマホゲームを扱う会社などでよく使われる指標です。
私は普段、AIDMAとAARRRを合体させたAIDMAARRR(アイドマー)というフレームワークを使ってマーケティングの戦略を立てています。

AIDMAARRR-Chasmフレームワーク

上記のフレームワークを組み合わせて、一つのフレームワークを作ってみました。
どんなマーケットの、イノベーターには認知されているのか、登録されているのか
使ってくれているのか、リピートしてくれているのか、
こういったことを俯瞰的にすべて見ることのできるフレームワークです。

こんなフレームワークを考えた後に、
私がどのようにマーケティングをしたのか。
ここからは後日談になります。お楽しみいただければ嬉しいです。

後日談、マーケターとはなんだったのか

岡村さんに勧めていただいた本を買い漁った僕は、
毎晩本を読んでは岡村さんに、「マーケティングとはこうなのではないでしょうか」とメッセージを送り続けた。

グロービスの講師の中でも、厳しいと有名な岡村さんから
「素晴らしい観察、分析だと思います。」と返信をもらったときは
マーケターとしての一歩を踏み出せたのだと思った。

当時私が出した仮説はこうだった。
・マーケターはまず最初に、この事業がどんな人達のどんな課題を解決するのか定義をする。
・マーケターは次に、その課題を持った人たちがどれだけ居て、それぞれがどれぐらいの金額をこの悩みの解決に支払うかを元に市場を定義する。
・マーケターは、市場の中にいるプレイヤーを熟知し、自分たちを選ぶ理由を明確に答えることができる。
・マーケターは、自社のいる市場が取り巻く環境が感情的、経済的、政治的様々な要因でどのように変化していくか説明ができる。
・マーケターは、そのそれぞれの市場に対して、現在自社の製品がどのステージに居るのか、仮説を持っている
・マーケターは、市場を取り切るために、プロダクトを磨き、あらゆる手段を用いて顧客にアプローチする

仮説3 : 既にキャズムを超えているターゲットがいるのかもしれない。

当時運営していた大学生向けのOB訪問サービスにおいて、新規ユーザー数を追うのではなく既存ユーザーの分析をすることに時間を使った。どの大学の何年生の何学部何学科がそれぞれ何人ずついて、既にユーザーになっているのはその中の何人か、使ってくれているのはその中の何人かというのを可視化してみた。

すると、明らかに異常値を叩き出している大学、学年、学部、学科があった。また、そのユーザーたちの動きを見てみると、同じ人に会いに行っているようだった。

その学生たちにコンタクトを取って会ってみた。すると、
「将来◯◯をしたいと思っていて、友人からこのサービスで◯◯さんに会うとアドバイスを貰えると聞いたんです」
「大学の教授からこのサービスに登録して◯人の社会人に会いなさい。と課題が出たんです。」
と口を揃えて言っていた。

私が「キャズム」を身近に感じた瞬間だった。

 

仮説4 :ユーザーが素晴らしいサービスだ!!!と喚起する瞬間をデザインすればいい

当時、毎日100人近いユーザーが会員登録していたが、使ってくれているユーザーがあまりいないことを課題に思った。

私は、毎日3〜5人の学生と出会い、月に100人近いユーザーに、
・自分はなぜこの会社でこのサービスを提供しているのか
・このサービスの使い方、学生がこれを使うことで人生がどのように変わるのか
・自分と会った後に、会ってみてほしい人
を紹介するようにした。

僕に会った後、僕の紹介した人に会った学生たちはこのサービスを使い続け、
友人をひたすら会員登録させ、僕に紹介してくれる”コアユーザー”に変わっていった。

その年、このサービスを使って就職していった子たちはほとんどがこの3ヶ月間に僕が出会った子たちだった。

 

仮説5 :ユーザーが喉から手が出るほどほしいサービスは何か?

翌年、私は営業チームに異動していた。学生ユーザーが増えていく中、企業をもっと動かす必要があった。
私はSMBの担当だったが、あのときの学生たちを満足させるほどの中小企業の人事を見つけることに苦労していた。

(もう、社長に動いてもらうしかない)
とにかく面白そうな中小企業の社長のリストを作り、社長めがけて電話をした。

私が電話で言い続けたことはこれだ
「社長!新卒採用は、未来の幹部、会社を作る人財が必要ではないでしょうか。
弊社のサービスには”親が経営者”である学生が100人以上登録しています。
私も親が経営者で、その背中を見て育ってきました。まだ23歳で社会人1年目です。
一度お話聞いていただけないでしょうか。」

その時契約をいただいた企業さんが、新卒採用に本当に成功し
新卒から大阪支社長が生まれ、もうすぐ上場するという話を最近聞いた。

(もちろん”親が経営者”であるユーザーたちは、あの時出会った約200人の学生から紹介してもらい登録をしてもらった)

 

仮説6 :世間一般的なマーケティングとスタートアップのマーケティングは違う

こんなことをしている最中、本の中に書いてあるマーケティングと、僕がしているマーケティングでは違うな。と思うことが多々あった。何より自分が今行っていることを続けた時に、テレビCMを行っている未来が見えなかった。

この違いは、「既にマーケットが存在するか?」という問いから来るものだと分かった。

例えば、歯磨き粉のマーケティングをするとしよう
日本人の人口、歯磨きの頻度、1回の歯磨きに使う歯磨き粉の量をかけ合わせ
歯磨き粉1本あたりに含まれる量で割ると、ある一定期間に使用される歯磨き粉の本数は統計的に決まった数である

テレビCMや市場の認知度調査のようなものはこういった、
統計的に判断ができるマーケットを奪い合う時に使える考え方だった。

一方でスタートアップにはそんな市場はない。
OB訪問をオンラインで学生が行う文化もなければ、OB訪問で採用するという企業側の文化も
OB訪問に企業がお金を払うという考え方もなかった。

こんな状態で認知に大きく予算を張ったとしても、ユーザーが獲得できたとしても
そこから広告費を回収できるなんてことはないだろう。愚直に学生に会いながら
企業に電話をしながら、マーケットができるのを待つしかないのかもしれない。

そう思っていた時、当時の上司で現在弊社MarcheのCFOである齋藤が
業界大手企業との業務提携を締結し、ものすごい数のユーザーと、企業が流れ込んでくるようになる。
人生最大の悔しさとともに、ビジネスの面白さを真に感じた瞬間だった。

 

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